JEWEL

2014/03/02(日)15:22

暁の鳳凰 第48話

完結済小説:暁の鳳凰(84)

「お疲れ様でした~」 「お疲れ様です!」 CMの撮影が終了し、総美はスタッフ達に挨拶をするとスタジオから出て行った。 「あれ、沖田総美じゃない?」 「フィギュアスケートの?どうしてそんな子が此処に居る訳?」 「最近テレビによく出てるじゃん。オリンピック効果ってやつ?」 「今だけよ、あの子にテレビの仕事が来るのは。」 廊下で自分の事を話している某有名アイドルグループの会話を聞きながら、総美は衣装を着たまま控室に戻った。 衣装を脱いで私服に着替えた総美は、ソファに座るとバッグの中からスマートフォンを取り出した。 『さとみ、金メダルおめでとう!』 『これからもスケート、頑張ってね。』 『応援しているからね^0^』 メールボックスを開くと、高校の同級生達から励ましと労いのメールが20件もきていた。 そのメールに総美が一通ずつ目を通していると、控室のドアを誰かがノックした。 「どうぞ。」 「失礼します。わたくし、こういう者です。」 控室に入ってきたのは、スーツを着た長身の男性だった。 「“週刊名宝”・・吉田先生の隠し子騒動を取材されていた雑誌ですか?」 「ええ。吉田先生の隠し子である荻野千尋さんと、沖田選手は小学校時代には仲が良かったと聞いておりますが・・事実なのですか?」 「ええ。荻野さんとわたしは、小学校の頃一緒にバレエを習っていました。でもわたしが東京に引っ越してしまって、それ以来彼女とは疎遠になっていますけど。」 「そうですか・・ありがとうございました。」 『名宝』の記者と名乗るスーツ姿の男は、そう言うと総美に頭を下げた後控室から出て行った。 「ママ、遅かったわね。」 「トイレが混んでいたのよ。それよりもさっきの方、どなたなの?」 「週刊名宝の記者ですって。千尋ちゃんとの関係を聞かれたわ。」 「まぁ、あなた何て答えたの!?」 「本当の事を答えたわよ。千尋ちゃんとは小学校の頃一緒にバレエを習っていたって。」 「そう・・総美、今日のお仕事はもう終わりよ。何処か外で食事をして家に帰りましょう。」 「わかったわ、ママ。」 美香と共に六本木ヒルズにあるレストランで総美が食事をしている頃、金沢のホテル内にあるレストランで千尋は初めて吉田議員の長男・拓人と会った。 「君が、僕の腹違いの姉さんなの?」 「はい、そうです。この度は、わたしの所為で先生や奥様にご迷惑をお掛けしてしまって、申し訳ないと思っています。」 「あなたが謝る必要はありません。これは父と母の、夫婦の問題です。千尋さん、ひとつお聞きしたい事があるんですが・・」 「何でしょう?」 「あなたは、僕達と一緒に暮らしたいですか?」 「それは、あなたと奥様次第です。わたしは、今までどおりの生活を送るつもりです。」 「そうですか・・」 拓人は千尋の言葉を聞いた後、何かを考え込むようにそっと目を閉じた。 「僕は、あなたと東京の家で家族として暮らしたいです。母はきっとあなたの事を拒絶すると思いますが・・それでも、僕はあなたを家族の一員として受け入れたいんです。」 「そうですか・・」 千尋がコーヒーを一口飲もうとした時、二人の前に浅田が現れた。 「先生は明日、退院されるそうだ。千尋ちゃん、先生は君を吉田家の娘として引き取りたいとおっしゃっている。」 「父がそう言うのなら、わたしは父の意思を尊重し、父に従うまでです。」 ライン素材提供:White Board様 にほんブログ村

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