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[木谷ポルソッタ倶楽部ほか] カテゴリの記事

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• 家族ふれあい新聞第５２９号の中のポルソッタ倶楽部

  平成１６年第５２９号　平成１６年２月１８日号発行 　　家族ふれあい新聞 木谷ほのぼの通信　【星野監督の涙】大阪の屋台で知り合いのある新聞社の記者が秘話を披露してくれた。それは、二年前、記者がタクシーに乗った時そのタクシーの運転手から聞いた話である。それはこんな話だった。「お客さん、もしお耳障りでなかったら、私の話を聞いていただけませんか。」運転手はこう言って、話し出した。　　　　　　　　　■私は生まれた時からジャイアンツの洗礼を受けて育った者です。両親も弟も親戚もみんな、野球はジャイアンツでした。私の弟は名古屋で葬儀社の運転手をしておりまして、ある日偶然、中日の星野監督の奥さんの葬儀の霊柩車の運転をさせて頂きました。出棺の際、監督は大勢の弔問客に涙をこらえながら挨拶をしました。「妻はナゴヤドームでお父さんの胴上げを見たいね。それまで生きていたい、と言い続けていました」いよいよ火葬場へ出発の段になって、星野さんは後続の運転手に何事か話し、霊柩車には自分一人にしてくれと言って出発しました。星野さんは弟に言いました。「運転手さん、ナゴヤドームヘ行って下さい」前例のないことに、弟は「ナゴヤドームですか？」と驚いて聞き返したそうです。霊柩車はそぼ降る小雨の中、ドームを一周し、雨よけのひさしのある所に止まりました。監督が、突然、叫ぶかのように言いました。「運転手さん、家内の棺を出したいので、手伝って下さい。全部下ろさなくてもいいですから、下ろせる所まで下ろしたいのです」弟は何事が起きるかと恐れながらも、それに従いました。棺は頭の方を車にかけ、斜めに下ろされたそうです。すると監督は小さく言いました。「運転手さん、五分間だけ私をそっとさせて置いてください」そして、監督は棺にすがりついて号泣しはじめたそうです。「なぜ死んだんだ。ドームでパパの胴上げを見たいね、それまで頑張ると約束したではないか。かあさん、なぜ死んだんだ！」弟は感動に打ち震えながら、監督に負けないくらい泣いたとのことです。「必ず優勝して見せる。かあさん、見守っててくれ」監督はそう言って、火葬場へ向かったそうです。弟はその年の暮れ、正月前に休暇で帰った際、親戚が集まった席でこの出来事を涙ながらに語ってくれました。弟はこの日のことは一生忘れないと言いましたがジャイアンツファンの私たち家族だって星野ドラゴンズを決して忘れませんよ。　　　　　　　　　　　■この話を聞いた記者も、それを話す運転手さんも泣いたそうです。「お客さん、この話は初めて人に話すことなんです。誰かに伝えたいと、いつも思っていました。今日、やっと弟の感動をお客さんに話すことが出来ました…」「ブログに『家族新聞の中のポルソッタ』とかいうのありますよね、あれは何なんですか？」第１１回報徳記を読む会の懇親会でＨさんから聞かれた。「大分に木谷文弘さんという方がいてね、１月２８日に亡くなられたというんだ。昔、故郷の父母に１２００号くらい家族新聞を送り続けていたんだけど、木谷さんから毎日のようにメールで送られてくる木谷ポルソッタ倶楽部の一部をね、家族新聞に載せて父母と一緒に楽しんだんだ。本当に亡くなった聞いたときには哀しくてね、観音霊場を少し歩いて巡って心を慰めたんだけれども、木谷さんのレクイエム（原義は「安息を」の意味で鎮魂曲〕ということで載せているんだ。

  2009年02月23日

• 家族ふれあい新聞第５２５号の中のポルソッタ倶楽部

  平成１６年第５２５号　平成１６年２月８日号発行 　　　　　家族ふれあい新聞木谷さんに田舎に戻りますとメールしたら、「Gさん、今夜の大分はとても寒いのです。暖房がなかなかききません。そうですか。「田舎へ帰ってきます」そう、なかなかの言葉ですよね。「自選坂上真民詩集」を平成に入った頃に、私は求めました。時々、パッと開いてはその頁を読みます。いろいろな示唆を与えてくれます。そう、こんな詩もありました。「こつこつ　こつこつ　書いてゆこう　こつこつ　こつこつ　歩いてゆこう　こつこつ　こつこつ　掘つてゆこう」こつこつという響きが忘れられません。」 と返信がきた。木谷さんの表現は味がある。 　迷いながら　つまづきながら　求めながら　泣きながら　耐えながら　 己をつくり　佛へ近づく　　　　　（坂村真民詩集より） 梅　寒苦を経て　香し「ツキを呼ぶ魔法の言葉ゴールドラッシュ」マスオさん朗読ＣＤを聞くこと２７２回今野華都子先生の講演会のＣＤを聴くこと５９２回

  2009年02月15日

• 家族ふれあい新聞第５１８号の中のポルソッタ倶楽部　人間が本当に感動したときの言葉は、こういうものです

  平成１６年第５１８号　平成１６年１月２９日号発行 　　　　　　家族ふれあい新聞　　木谷ほのぼの通信鈴木 健二さんの本に書かれていた話です。美しい生き方に感動すること、そこに、感動できる「人生」があるのでしょうね。　　【ありがとう、ありがとう－１】一人のお母さんから、とても大切なことを教えられた経験があります。そのお宅の最初に生まれた男の子は、高熱を出し、知的障害を起こしてしまいました。次に生まれた弟が二歳のときです。ようやく口がきけるようになったその弟がお兄ちゃんに向かって、こう言いました。「お兄ちゃんなんてバカじゃないか」お母さんは、はっとしました。それだけは言ってほしくなかった言葉だったからです。そのとき、お母さんは、いったんは弟を叱ろうと考えましたが、思いなおしました。――弟にお兄ちゃんをいたわる気持ちが芽生え、育ってくるまで、長い時間がかかるだろうけど、それまで待ってみよう。その日から、お母さんは、弟が兄に向かって言った言葉を、自分が耳にした限り、毎日克明にノートにつけていきました。そして一年たち、二年たち……しかし、相変わらず弟は、「お兄ちゃんのバカ」としか言いません。お母さんはなんべんも諦めかけ、叱って、無理やり弟の態度を改めさせようとしました。しかし、もう少し、もう少し……と、根気よくノートをつけ続けました。弟が幼稚園に入った年の七夕の日、偶然、近所の子どもや親戚の人たちが家に集まりました。人があまりたくさん来たために興奮したのか、お兄ちゃんがみんなの頭をボカボカとぶちはじめました。みんなは 「やめなさい」 と言いたかったのですが、そういう子であることを知っていましたから、言い出しかねていました。そのとき、弟が飛び出してきて、お兄ちゃんに向かって言いました。「お兄ちゃん、ぶつならぼくだけぶってちょうだい。ぼく、痛いって言わないよ」お母さんは長いこと、その言葉を待っていました。その晩、お母さんはノートに書きました。「ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう・・・」ほとんど無意識のうちに、ノートの終わりのページまで鉛筆でぎっしり、「ありがとう」を書き連ねました。人間が本当に感動したときの言葉は、こういうものです。

  2009年02月15日

• 家族ふれあい新聞第５１４号の中のポルソッタ倶楽部

  平成１６年第５１４号　平成１６年１月２３日号発行 　　　　　　　　家族ふれあい新聞朝五時前木谷さんにメールを送った。ＪＲ九州の大分支社が企画したグルメ列車の記事を雑誌で見つけ、とてもよかったので「大分は元気ですね」とお便りしておいたのだ。ついでに昨日Mさんと蕎麦屋で軽く飲んだ話も。「Gさん、おはようございます。今朝の大分はとても寒いです。まあ、冬ですからあたりまえですよね。「蕎麦屋でお酒」私が教えた。それはどちらでしょうかね。Gさんこそ、あの蕎麦屋のはしご。あれは痛快そのもの、愉しかったですよね。　そうそう、現在の大分駅の駅長や企画課長という方達がやる気があるというか地域を見ていてくれるのです。「法律に違反しなければなんでもやります」そのようなことを言ったとかの話を聞いています。なにか嬉しいことですよね。ただ、地元がその受け入れを一度で終わらせずに継続していくことが大切なのです。一度やって、それで満足、それでは駄目ですよね。「地域づくりは百年のスタンスで考えなくてはいけない」それを、私は由布院から教わりました。　坂村真民さん、これは細川熊本知事が書かれた『鄙の記憶』から知りました。そう、「二度とない人生だから」それを掲載していました。それに感動をして、本屋へ行きました。でも、坂村真民さんの本はありませんでした。そこで、「自選坂村真民詩集」（大東出版社）を予約しましたよ。それから暇な折りには、その詩集をぼんやりと読んでいます。次のような「三行詩」には、私自身を振り返りました。「　　　　冷たい雨　また視力が落ちましたね　　そう言われて病院を出る　外には冷たい雨が降っていた」Gさん、寒い日はまだまだ続きます。風邪などひかぬようお体をご自愛下さい。以上、朝のメールでした。」【二度とない人生だから】 　 二度とない人生だから一輪の花にも無限の愛をそそいでゆこう一羽の鳥の声にも無心の耳をかたむけてゆこう二度とない人生だから一匹のこおろぎでもふみころさないようにこころしてゆこうどんなにかよろこぶことだろう二度とない人生だから一ぺんでも多く便りをしよう返事は必ず書くことにしよう二度とない人生だからまず一番身近な者たちにできるだけのことをしよう貧しいけれどこころ豊かに接してゆこう二度とない人生だからつゆくさのつゆにもめぐりあいのふしぎを思い足をとどめてみつめてゆこう二度とない人生だからのぼる日 しずむ日まるい月 かけてゆく月四季それぞれの星々の光にふれてわがこころをあらいきよめてゆこう二度とない人生だから戦争のない世の実現に努力しそういう詩を一遍でも多く作ってゆこうわたしが死んだらあとをついでくれる若い人たちのためにこの大願を書きつづけてゆこう

  2009年02月13日

• 家族ふれあい新聞第５１３号の中のポルソッタ倶楽部　中谷さんの詩とエッセイ

  平成１６年第５１３号　平成１６年１月２２日号発行 　　　家族ふれあい新聞　ポルソッタ倶楽部（中谷さんの詩とエッセイ） 　人材育成ゆふいん財団ニュース（新年号）に掲載された中谷さんの詩です。そう、これは詩ですよね。露天風呂に入ってちょっと呑んでの詩でしょうね。ふふふふふ。　　■自分の速さで歩くこと 　「そういうものに」 人材育成ゆふいん財団顧問　中谷健太郎ふと気がついたら　正月になっていた風に吹かれて　露天風呂にはいった雪の積もった　初春の由布岳が見えたふんわりと　湯気が流れていった今朝方、どうやら初夢をみた「頑張らんでもいい」と、東北の県知事が言い、「そのとおり」と、私が答えた頑張って、人に差をつけることはない頑張って、人に追いつくことはない頑張って、人を追い抜くことはない大事なことは「自分の速さで歩くこと」だ自分の速さで歩けば、周りの風景がさんざめいてくる水がさんざめき、光がさんざめき、自分がさんざめく もちろん人々がさんざめく世界がさんざめいて、やさしく輝き始める頑張らない光のオーロラ周りの光りを受けて、自分が光り始める周りの人の速さを褒め 周りの人の涙を拭い 周りの人の幸せを祝う「正義」という、怪しげな旗を立てず「国益」という、わがままな利益に加担せず「発展」という、とめどない幽霊に惑わされない「希望」と「安心」を前、後ろに振り分けて、悠々と自分の速さで配って歩くさんざめきながら配って歩くそういうものに私はなりたいと二千四年の初春の午前九時、露天風呂の中でぼんやり考えている。　　火星探検　夜空に浮かぶ赤い星「火星」。北欧では「軍神の星」という。その星にアメリカの探査機が着地した。ニュースを聞いて、みんな喜んだ。科学者も、経済人も、政治家も。私だって少々わくわくしたのだ。　だけど私の知人の地球物理学者は腹をたてている。「危ないからよせ」と言ったのに、欧米の科学者の多くは言うことをきかなかった。「未知の世界を明らかにするのが科学者の使命だ」。「違う」と知人は学会で頑張った。未知の世界には、未知の生命が存在する、かもしれん。それらの生命は地球から送られた物体に出会って絶滅する、かもしれん。「知りたいという欲望のために、未知の生命を危うくすることなかれ」。こっちだって危ないぞ。火星からの獲物や資材に、どんな生命体がくっついてくるか、分かりはしない。むろんその繁殖力も、免疫性のことも。　二十世紀後半、大国の核エネルギーが生み出した死者の群れを、政治家や経済人に押し付けて、科学者は二〇〇四年の春、胸を張って火星に探査機を飛ばすのか。あなた方の無神経な好奇心と開発信仰が、アメリカ大陸を発見し、先住民をインディアンと呼び、海の向こうの日本国に飛んで、「核の発明品」の実験をやらかした。　イラクは遠くて、分かりにくい国だけれど、それでも火星よりはるかに近い。　知らない土地のものを、力ずくで掻っとって、自分たちのものにする大国が、世界を飛んでゆく。　　　　　　　（地域生活圏研究所ゆふいん代表、湯布院町）「聞いてくれる。しんみんさんの詩をまた読むから」と息子に言う。　　《思議を超えた大きな世界》かってわたしの命の火が消えようとした時わたしのために出現なされた観音さまのお絵像をわたしはいつもふところに入れているそんなわたしであるから中田の観音さまと 野口英世博士とその母上とのおんつながりの奇しき物語を信ずることが出来るのであるわたしは多くの人に告げたい観音は生きていますことをそのおん力のあかしを今も見ることをどのように科学が進歩しても解明できない思議を越えた大きな世界のあることを 「真民さんは旅に出る時必ず、タンポポ堂の観音さまの写真を胸のポケットに入れて行くんだって。この観音さまは、真民さんが一番苦しんでいた時、真民さんが師と仰いだ杉村春苔先生という尼さんの方の枕元にお立ちになって『これから四国の坂村真民さんの処に行ってきます』と言われた若い観音さまだって。　杉村先生は、『よろしくお頼みします』と言って、すぐに絵に描いて真民さんに送った。お年は十六、七歳ぐらいの宝瓶をお持ちの観音さまだって。いい話だね。一度拝んでみたいものだとお父さんは思うんだよ。」「ツキを呼ぶ魔法の言葉ゴールドラッシュ」マスオさん朗読ＣＤを聞くこと２７１回今野華都子先生の講演会のＣＤを聴くこと５９１回

  2009年02月12日

• 秋の空高く巡査に叱（しか）られたby山頭火

  新聞に山頭火の句碑が大分の宇佐に建てられたという記事が載っていた。山頭火は湯布院の湯平温泉にも宿泊して、温泉町の人の人情に涙したことがあるとこの１月２８日に亡くなった木谷文弘さんに教えてもらったことがある。記事を読むと「秋の空高く巡査に叱（しか）られた」の句にご縁を感じた。一昨年母の四十九日の法事が終わった後、鹿児島県の志布志（しぶし）のTさんと２人、大分に寄って、木谷さんに由布院の町を一日案内して頂いていたのである。志布志のＴさんに「木谷さん亡くなったそうです。木谷さんのブログに姪御さんがそう載せていました。僕が亡くなったらこのブログを閉じてね。」と言い残して痛そうです。Ｔさんは驚いて言葉を失っていた。山頭火、お巡りさんに叱られた　大分・宇佐、記念の句碑2009年2月12日 「秋の空高く巡査に叱（しか）られた」。漂泊の俳人、種田山頭火の句を刻んだ石碑が大分県宇佐市に建てられた。県警宇佐署の四日市交番横にある広場だ。 　句は鹿児島県志布志市での実体験を詠んだとされる。広場のそばに住む山頭火ファンの元歯科医、江口正昭さん（８１）が自費で碑をつくり、市に寄贈した。 　山頭火は１９２９年秋に訪れた宇佐でも「挙動不審」として警官に事情を聴かれたという。広場は警察署跡でもあり、江口さんは「当地の方がイメージにぴったり」。 山頭火の日誌より抜粋してみよう。十月十一日　晴、曇、志布志町行乞、宿は同前。九時から十一時まで行乞、こんなに早う止めるつもりではなかつたけれど、巡査にやかましくいはれたので、裏町へ出て、駅で新聞を読んで戻つて来たのである（だいたい鹿児島県は行乞、押売、すべての見師の行動について法文通りの取締をするさうだ）。今日は中学校の運動会、何しろ物見高い田舎町の事だから、爺さん婆さんまで出かけるらしい、それも無理はない、いや、よいことだと思ふ。隣室の按摩兼遍路さんは興味をそゝる人物だつた、研屋さんも面白い人物だつた、昨夜の「山芋掘り」も亦異彩ある人物だつた、彼は女房に捨てられたり、女房を捨てたり、女に誑されたり、女を誑したりして、それが彼の存在の全部らしかつた、いはゞ彼は愚人で、そして喰へない男なのだ、多少の変質性と色情狂質とを持つてゐた。（略）夕べ、一杯機嫌で海辺を散歩する、やつぱり寂しい、寂しいのが本当だらう。行乞してゐる私に向つて、若い巡査曰く、托鉢なら托鉢のやうに正々堂々とやりたまへ、私は思ふ、これでずゐぶん正々堂々と行乞してゐるのだが。隣室に行商の支那人五人組が来たので、相客二人増しとなる、どれもこれもアル中毒者だ（私もその一人であることに間違ひない）、朝から飲んでゐる（飲むといへばこの地方では藷焼酎の外の何物でもない）、彼等は彼等にふさはしい人生観を持つてゐる、体験の宗教とでもいはうか。コロリ往生――脳溢血乃至心臓麻痺でくたばる事だ――のありがたさ、望ましさを語つたり語られたりする。人間といふものは、話したがる動物だが、例の山芋掘りさんの如きは、あまり多く話す、ナフ売りさんはあまりに少く話す、さて私はどちらだつたかな。（略）　十月十二日　晴、岩川及末吉町行乞、都城、江夏屋（四〇・中）九時の汽車に乗る、途中下車して、岩川で二時間、末吉で一時間行乞、今日はまた食ひ込みである。　年とれば故郷こひしいつく／＼ぼうし　何とたくさん墓がある墓がある　海は果てなく島が一つ　秋寒く酔へない酒を飲んでゐる　一きれの雲もない空のさびしさまさる　波のかゞやかさも秋となつた　線路へこぼるゝ萩の花かな　秋晴れて柩を送る四五人に　岩が岩に薊咲かせてゐる（鵜戸）　何といふ草か知らないつゝましう咲いて　まづ水を飲みそれからお経を　家を持たない秋がふかうなつた　　　行乞即事　秋の空高く巡査に叱られた

  2009年02月12日

• 家族ふれあい新聞第５１２号の中のポルソッタ倶楽部【北欧での実話「母と子の出来事」】

  平成１６年第５１２号　平成１６年１月２０日号発行 　　　　　　家族ふれあい新聞木谷さんに、Ｂさんからエアメールが届いたというメールを送ったら返信がきた。「ＢさんやＡさんとＧさんご一家のおつきあい、羨ましいですね。長期休暇があたりまえの欧米と比較してこの国はなかなか休みがとれませんからね。もっとゆっくりすればいいと思うのですがせわしい人が多いですからね。それとも、休むと「不安」になるのでしょうか。最近、私も自由に休みがとれるのにいつも動いている。自分で自分にあきれております。「もっとゆっくり生きていこうよ」自分にそう言い聞かせておりますが、なかなか。「まちづくり」と「観光」のＮＰＯに入ってくれそんな誘いも多いのです。知人だとなかなか断りにくいですからね。ああ。・・・ではでは……今夜の大分は冷え込んできそうです。」　　ポルソッタ倶楽部【北欧での実話「母と子の出来事」】雪の降るクリスマス・イヴのこと、出産が間近に迫った一人の女性が、宣教師の家を目指して急いでいた。助けてもらいたいことがあった。もう少しで宣教師の家だというところに、谷があった。谷には橋がかかっていて、この橋を渡れば、宣教師の家はすぐだった。ところが、橋のそばまで来たとき、彼女は雪に足をすべらせた。突然、激しい陣痛が彼女を襲った。もう歩けなかった。先へ進むことは無理だと悟った彼女は、這うようにして橋の下に身を寄せると、凍えるような雪のなかで、一人の男の子を産んだ。橋の上を通る人もなく、助けを呼ぶにも、振り絞る声さえなかった。彼女は、産着どころか、自分の着ているもの以外には、なにも持っていなかった。雪の中に身を横たえた彼女は、自分の着ていたものを次々に脱いでは、生まれたばかりの赤ちゃんを包んでいった。赤ちゃんは、繭のように包まれて、力尽きた母親の胸に抱かれていた。次の日の朝、宣教師は、クリスマスのプレゼントを配るために家を出た。ところが、橋のところまで来ると、車が故障したのか動かなくなった。しかたなく車を降りた宣教師は、かすかな赤ちゃんの泣き声を聞いたような気がした。声のするほうへ寄ってゆくと、なんとしたことか、橋の下で、繭のようにくるまれた赤ちゃんと、その繭を抱きかかえるようにして、すでに冷たくなっていた裸同然の女性を見つけたのである。宣教師は赤ちゃんを引き取って育てることにした。子供は成長し、やがて自分の母親のこと、自分が発見されたときのことを、しきりにたずねるようになった。少年は１２歳の誕生日を迎えるクリスマスには、どうしてもお母さんのお墓に行きたいとせがむようになった。一度も見たことのない、母親の墓だった。墓は、雪に埋もれていた。少年は、一人で祈りたいから、少しのあいだ、ひとりにしてほしいと言った。宣教師は彼をひとりにし、遠くで見守っていた。少年は、しばらく墓の前に立っていた。少年の背中が、激しく震えていた。泣いていた。少年は、やがてていねいに墓の雪を手で払うと、なにを思ったか、自分の着ていた服を脱ぎはじめ、それで母親の墓を包んでいった。宣教師は驚き、まさか全部脱いだりはしないだろうと思っていた。しかし、少年は身につけていたもののすべてで、すっぽり墓を包むと、震えながら墓の前にうずくまった。真っ裸だった。風邪をひいてしまう。宣教師が駆け寄ろうとしたとき、裸の少年が一度も会ったことのない母親に向かって泣き崩れ、叫ぶのを聞いたのである。「お母さん、お母さん、僕のために、　これよりも、これよりも、もっと寒かったのですか！」あの時分、木谷さんは毎日のようにポルソッタ倶楽部のメールをくれたものだ。４００名ほどに配信していたという。そのころ私もまた週に３，４回家族ふれあい新聞を故郷の父母だけのために作っては送っていた。合計１２００号を越えたものだ。だから木谷さんが送ってくれたポルソッタもまた一緒に掲載し、わが家の出来事、私が読んだり感動したこととともに三本柱的に登載していたものだ。もちろん木谷さんの送ってくれるペースが早く、家族新聞に登載したのはその一部でしかない。そうであっても掲載するなかで何度もその文章に目を通し、感動したり笑ったりもした。私と両親の心を豊かにつちかってくれた木谷さんに感謝である。　合掌　心一つで楽しく　生きていることが楽しくならねばならぬ　たとえ貧乏していても　ベッドに寝たきりでいても　心一つで楽しくなれるものだ　光が射してくるものだ　人々の幸せのために　湧出してこられた仏さまがたが　手を差しのべていられるのだ　しっかりおん手を握って生きてゆこう　by　坂村真民

  2009年02月12日

• 家族ふれあい新聞の中の木谷ポルソッタ倶楽部【路　地】

  平成１６年第５０９号　平成１６年１月１４日号発行　 　　家族ふれあい新聞　　木谷ポルソッタ倶楽部【路　地】　研究室への通勤路は「路地」と決まっている。県庁を辞めるとなぜか通勤も楽しくなった。そう、何をしなければならないではなく、今日は何をしようか。そんなことをぼんやりと考える。その場所としては「路地」は最適なのだ。それに、通勤路となる長浜小学校、大分気象台その周辺になぜか路地が多い。長浜小学校は、私が小学校の一年、二年と通った母校だ。その頃も、その路地を通っているはすだ。一メートル程度のその路地の幅が今ではやけに狭く感じる。そうだろう。身長八十センチだった私でも、今は、一メートル六十となっている。路地が狭く感じる。その時の隔たりが感じられてやけに嬉しい。なにしろ路地は車が通らない。ゆっくりと歩ける。騒音がない。静かだ。それにゴミがひとつも落ちていない。なにか気持ちも清々しくなる。永六輔さんが言っていた。「路地の掃除はそれぞれの家がそれぞれの家の前を掃除をする。ある小僧が親切心から正面の家の前まで掃除をしたら、その正面の家の隠居から叱られた。『私の愉しみを奪うのかい。半分だけ掃除をすればいいのさ』。そこで、小僧は翌日から路地の半分までをきちんと掃除をした。また隠居から叱られた。『少しははみ出して掃除をするものさ。互いにはみだして掃除をする。すると、路地を歩く人は掃除を二度されたところを歩けるのさ』」うん、その話を聞いた時、路地は粋なのだなと思った。路地を掃除しているとおばちゃんに会うと、「お疲れ様です」と声をかけてしまう。路地を歩いていて人とすれ違うと、見知らぬ人でも思わず「おはようございます」と挨拶をしてしまう。そして……知らずのうちに歌を口ずさんでしまう。静かだから安心安全だから、そうなってしまうのかもしれない。路地は狭いから側溝は中央にひとつだけ走っている。自転車はその上を走るということになる。すると、側溝蓋がカタカタと音をたてる。その音により、自転車が来たことを知る。脇に避ける。「すみませ～ん」女子高生が通り過ぎる。なんとなく快くなる。路地に沿って造られている家は建て替えがなかなかできない。だから、古い造作の家が多い。だから昭和の三十年代を思い出させる光景に何度も出くわす。黄昏、西陽が路地いっぱいに入り込むところがある。ガラスが輝く。植木鉢の花に光が注がれる。夕食の惣菜をつくっているのだろう匂いが漂ってくる。犬の鳴き声がひとつする。私は立ち止まってしまう。空を見上げる。雲が茜色に染まりつつある。そんな光景に出会うと、通り過ぎて逝った友人、恩師、先輩、父親の顔が浮かんでくる。「生きているということは寂しいものさ。寂しさにはね、友人と酒を酌み交わしたり、映画を見たり、旅へ出たりと気持ちをまぎらわせれば耐えることはできる。でもね、寂しさが深くなるとせつなくなる。せつなさはどうしようもないのだよ。そう、ただため息を吐くしかないものね。長生きをするということは、そのせつなさに耐える強さをも鍛えなくてはいけないことなんだよ。辛いよね」ある作家がそう言っていた。そう、路地はいろいろなことを考えさせてくれる。塀と舗装の間の狭い空き地に、小さな花が咲いている時もある。住んでいる人が種を播いたのだろうか。それとも風に乗って、ここまでたどり着いたのだろうか。でもね、その可憐な花はね、ちょっぴりの「元気」をくれるんだ。「こんなところでも、花は健気に咲いている。そうだよな。自分もがんばらなくてはな」だから、私は今日も路地裏を歩くのだ。木谷さんはよく寂しさを口にした。正直自分のことをネガティブにとらえすぎではと思ったりもした。でもね、こうして木谷さんがいないことがこたえる。ある時期毎日のようにポルソッタ通信が来て、またメールでもしょちゅう対話を交わしていた。これほど呼応するように言葉を返してくれた人はいなかった。その楽しみを故郷の父母にも知ってもらいたくてわたしも次から次へと来るポルソッタ倶楽部の文章を家族新聞用に加工して載せていた。だから木谷さんの原文どおりではなく、長い文章の場合はばっさりカットもした。「花は健気に咲いている」か・・・真民先生のタンポポ精神を思い出すね。　　　タンポポ魂　　踏みにじられても　　食いちぎられても　　死にもしない　　枯れもしない　　その根強さ　　そしてつねに　　太陽に向かって咲く　　その明るさ　　わたしはそれを　　わたしの魂とする坂村真民--詩集　「念ずれば花開く」真民先生がお元気な頃、詩集を直接2冊求めたことがある。するとその見返しに「光」と墨でサインをしてくださっていた。その1冊を母に贈って喜ばれたことがあった。真民先生も、母も、そして畏友木谷さんももういない。生きる事、長生きすることは敬愛する人、愛しい人、親しい人を見送ることでもある。そしていずれ・・・私もまた　太陽に向って咲くその明るさを魂としよう　　合掌

  2009年02月11日

• 家族ふれあい新聞５０６号の中のポルソッタ倶楽部

  平成１６年第５０６号　平成１６年１月１０日号発行 　　　　　　　家族ふれあい新聞　　ポルソッタ倶楽部【お姉さんの割烹着】三十数年前、学生時代を、私は愛媛の松山で過ごした。緑ゆたかな城山の近くにこぎれいな小料理屋があった。一階に七席程度の白木のカウンター、二階に六畳ほどの小部屋があった。そこが、私たち仲間のたまり場だった。おばあさんがひとりで切り盛りしていた。違う。七時を過ぎた頃になるとおばあさんの孫である娘さんが来た。昼はデパートに勤めていて、夜の忙しい時だけおばあさんの手伝いに来ていた。彼女は、二十五、六歳といったところだ。私たちにとってはお姉さんだった。それは、私たちが接するはじめての社会人の女性、まぶしい大人の女性だった。お姉さんは化粧をしていなかった。でも、瞳はいつも輝いて肌は白く髪は長く、私たちにとっては憧れの人だった。お姉さんは店へ来ると、紺絣の着物に着替えた。そして、白い割烹着をつけた。「私はあわてん坊だからと、おばあちゃんが割烹着をつくってくれたの」お姉さんが微笑みながら言った。そう、お姉さんはあわてん坊だった。割烹着に酒や醤油をよくこぼしていた。そしてね、急な階段をけたたましい悲鳴とともに滑り落ちることも珍しくなかった。私たちは我がちにと階段の上から助けに行く。お姉さんはお尻をさすりながら私たちを仰ぎ見る。着物の裾から見える白い足に、私たちは興奮しまた感動した。お姉さんは慌てて裾を直す。その仕草がとても愛くるしく、私たちはまた感動したものだ。仲間たちの来るのが遅くて、私ひとりがお姉さんと向かい合うこともあった。そうだよな。お姉さんを独り占めして語り合える。それは、私にとって至福のひとときだった。「木谷くんは、どんな社会人になるのかな。私、楽しみだな」お姉さんがお酌をしてくれながらささやいた。うん、私はなにも言えなかった。ある日の夜だった。料理がいつもと違ってやけに豪華だった。「今夜は、私のおごりよ。みんな、どんどん呑んでよね」お姉さんが私たちに叫ぶように明るく言った。そして、お姉さんは割烹着をはずした。私たち、ひとりひとりにお酌をしてくれた。普段は化粧をしていないお姉さんが薄化粧をしていた。それはとてもきれいなお姉さんだった。私たちは酔っぱらった。お姉さんも酔っぱらった。私たちは唄った。フォークソング、ロシア民謡、叙情歌などを、次から次へと唄った。そして、一段落した時、お姉さんがぽつりと言った。「みんなで城山へ登ろうか」みんなで城山に登った。松山の夜景がとてもきれいだった。風が頬に快く吹いてきた。「これが私の故郷なのよね。そして、みんなと楽しく過ごしたところなのよね」お姉さんが涙声でつぶやいた。それは、私にだけしか聞こえなかった。私はお姉さんを見た。白い顔が少し紅潮していた。長い髪が風にゆらりゆらりと揺れていた。いつも輝いている瞳がどことなく細くなっていた。翌日からお姉さんは来なくなった。おばあさんが一通の手紙を私たちに差し出した。「みなさんにさよならを言うのが辛かったから黙っていました。私は結婚します。大阪にいる彼のところへ行きます。みなさんは頑張って立派な社会人になって下さい」おばあさんはカウンターの中の椅子に座っていた。小さなからだがより小さく見えた。　やがて、大学紛争がより激しくなり、大学は荒れていった。思想も哲学もなかった私は「山登り」に夢中になっていった。そして三十数年が過ぎた。割烹着をつけた女性を見ると、私はお姉さんを思い出す。そう、お姉さんは今でもあの頃の若いままなのだ。そのお姉さんに、私は語りかけてしまう。「あわてん坊のお姉さん、今でも白い割烹着をつけて頑張っているのですか？」木谷さんの描く女性はとても魅力的である。何か芯が強く、そして優しく、面倒見がいいのである。どうも映画の寅さんのように女性に憧れにも似たものでも持っていたのか。だから女性にももてるのである。かといって本質的にシャイでるからいわゆる男女関係まではいかない。ふむ、ますます寅であるわい。まあこれはわたくしの世界における寅さんだから、実像はまた違うのであろう。本当に木谷さんの描く女性は素敵なのである。　合掌「ツキを呼ぶ魔法の言葉ゴールドラッシュ」マスオさん朗読ＣＤを聞くこと２６８回今野華都子先生の講演会のＣＤを聴くこと５８８回

  2009年02月10日

• 家族ふれあい新聞の木谷ポルソッタ倶楽部

  梅の香や　友を偲（しの）びて　巡礼す　by　GAIA平成１６年第５０２号　平成１６年１月３日号発行 　　　　家族ふれあい新聞一月二日（金）○木谷さんからメールが来た。「 Gさんおめでとうございます。今年もよろしくお願いします。さてさて、新年早々、お互いの「縁」を感じますよね。首藤さんと私は友達なのです。そう、ぐうたらなつきあいですがね。へへへへ。役場の職員でしたが、二年前に辞めて、旅館の跡を継ぎました。そして、去年、県議会議員となりました。自民党の推薦ということでしたが「共産党の議員でもいい意見には賛成をしようではないか」うん、首藤さんらしい行動を開始しました。県議会事務局の職員も感動をしています。・自分の言葉で質問をしている。・自分で県庁内を歩き職員に教えを請うている。・議員だからといって威張っていない。なかなかの人です。ということで、Gさん、今年もよろしくお願いします。そう、「旅にでないワイン」を今度持って行きます。ゆっくり呑みましょうね。ウハハハハハハハ。」 木谷ポルソッタ倶楽部■年頭の挨拶 ２００４／１／１---------------------------------------------------------------新しい年があけました。あらためておめでとうございます。去年はいろいろとお世話になりました。今年もよろしくお願いします。---------------------------------------------------------------正月といえば、私は子供の頃の遊びをなぜか思い出してしまいます。そう、凧揚げ、羽根突き、コマ回し、すごろくなどは正月の遊びでした。昔の子供の遊びには、季節ごとの旬というものがありましたよね。そして、昔の道路は子供たちの遊び場でした。舗装などされていませんでした。だから、棒きれ一本あればどのようなことでもできました。大きな円を描けば土俵のできあがりです。ベースを書いて線を引けば野球場です。道は狭くて細長い……だから、「三角ベース」とかのルールをつくり、竹の棒とゴムボールで野球に興じたものです。母が呼びに来るまで夢中になったものです。「イッケンパー」「エス」などという遊びをご記憶でしょうか。片足でケンケンしたり、土に転がったりして、よく土まみれになったものです。遊ぶ子供たちの周りには、いつも砂埃がほのかに舞い上がっていました。車も時々は通りかかります。運転手のおじさんは、車を停め、窓を開け大声でどなります。「おい、ちょっと通らしてくれんかのう」それで、私たちの遊びは一時中止です。「遊びの邪魔をしてすまんな」運転手のおじさんは遠慮しながら通り過ぎていきます。通り過ぎる車の土埃を浴びながら、いつかは運転したいよなと、幼い私たちは憧れたものです。そう、それはそれはほのぼのとのんびりしたものでした。それがこのような車社会になるとは……。道は危なくて、子供たちは遊ぶどころか歩くのもヒヤヒヤものです。それになにより、道は舗装されて「土の香り」が消えました。落葉も所在なげにカサコソと寂しそうに舞っているだけです。そう、子供たちのもうひとつの遊び場「空き地」も、すぐに駐車場となってしまいます。子供たちが自由に遊べる場がなくなった。心のゆとりをなくしつつある……ああ。この国の「行く末」はどうなるのでしょうかね。今年も、「こころの空き地」を求めて旅を続けたいと思います。そう、いずれにしても、新しい年が明けました。今年一年がみなさんにとって「良き年」となりますように……。そして、今年もどうかよろしくお願いします。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　合掌木谷さんは、よく最後に「合掌」という言葉を使った。こうして訃報に接すると、「合掌」もまた新たな意味を帯びて立ち現れる。木谷さんの世界に立ち現れたありとあらゆるご縁に合掌されていたのかもしれない。

  2009年02月09日

• 木谷ポルソッタ倶楽部　秋の宇佐平野散策

  【秋の宇佐平野散策－４】散策が終わって、私たちは教覚寺へ戻った。平田さんが教覚寺を案内してくれた。寺の中とはなかなか面白いものだ。寺の中が「路地裏」のような感じさえする。それになにより、平田さんの説明が面白い。あっという間に時間が過ぎていく。時計を見た。四時を過ぎていた。講演の時間まで二時間ほどあった。「これから簡保の温泉にでも入りに行きますか？」平田さんから誘われた。「少し近所を歩いてみたいのです」稲刈りの始まった宇佐平野を、私は歩いてみたかった。「六時には戻ってきて下さいよ。寺の屋根を目印にすれば迷いませんからね」私は寺の門を出た。宇佐平野が広がっていた。西の空に夕陽が浮かんでいた。遠くに八面山という名の山が見えた。茜色の空を背景に黒いシルエットとなっていた。畦道を歩いていると、コンバインの音がした。稲刈りをしているようだ。私は歩みを止めて佇んだ。刈り取った稲の薫りがした。秋の薫りだ。せつなくなるような薫りだ。麦わら帽子を被ったオヤジがコンバインのハンドルを操りながら稲を刈っていた。稲に喰いついたかと思うとコンバインの中へ吸い込まれていく。後には、切り株とこまかく刻まれた藁だけが残っていく。農作業の光景も変わっていくのだよな。ある種の感慨を抱いて、私は見つめていた。 　 オヤジはコンバインを進めていく。進めていく。オットー、ピーピーと危険音がせわしく鳴った。オヤジはコンバインを停めた。背後へ回り、カバーを開けて中を見た。詰まっていた藁を放り捨てた。危険音がやんだ。前へ戻る時、オヤジは私を見た。〈あいつは何者なんだろう？〉そのような目つきだった。ああ。　私を無視するかのように、オヤジはコンバインに乗ると走り始めた。ピーピー、また、危険音がよりせわしく鳴った。エンジンを切りながら、オヤジはまた私を見た。背後へ回ってカバーを開けて藁を捨てた。前へ戻りながら、オヤジは私を睨みつけた。オヤジはコンバインを動かし始めた。おや？刈らないようだ。コンバインでそのまま田圃の端っこに停めていた軽四輪の方へ行くではないか。軽四輪のところへ着くと、オヤジはコンバインを停めて軽四輪へ乗った。ドアがバターンと閉められた。軽四輪が走り始めた。オヤジが私を睨みながら家の方へ戻っていく。これは、コンバインを壊したのは私だと、オヤジは思っているのだろうか。ああ。いいや、それとも、最近はやりの「米泥棒」と決めつけたのかもしれない。こん棒でも取りに帰ったのだろうか。これはやばい。退散しなくてはいけない。オヤジのいなくなった田圃は静かだ。残照の中、刈り取られなかった稲穂がほんのりと浮かんでいた。海からの潮風にゆらゆら揺れている。そうだよね。あの稲穂たちは一日「命」が延びたということだからね。秋をたっぷりと味わうといい。私はゆっくりと歩き始めた。夜のとばりが、私の体を包み始めた。遠い昔の想い出がよみがえってきた。そう、宇佐でともに働いた同僚のひとりが十年前に突然亡くなった。そうだよな、あいつはいつも微笑みながら八面山を見ていたよな。「木谷さん、秋の宇佐平野が、私はとても好きなんです。特に夕暮れがね。この夕靄の向こうの八面山を見ると、なにかとても快くなるのです」あいつはなぜあんなにも早くに逝ってしまったのだろう。私は泣きたくなった。そう、宇佐平野、季節は秋だった。平成１５年第４６４号　平成１５年１１月２日号発行 　 　　　 家族ふれあい新聞木谷さんからのメール○木谷さんにヒューストンから小包が届いたことをメールした。するとすぐ返信があった。「Gさん、おはようございます。うん、Gさん、グローバルしていますよね。そうですよね。これからは「国境」などないのですよね。成田からドイツへ行くか。カナダへ行くか。中国へ行くか。羽田から札幌へ行くか。由布院へ行くか。沖縄へ行くか。そういうことなんですよね。交通体系も整備され、どんな情報でも入りますからね。「これからの由布院の競争相手は、黒川や草津ではないのです。ドイツであり、ハワイであり、オーストラリアであるのです。だから、国内で一番いいとか言っている場合ではないのです」由布院の溝口さんがそう言っていました。そして、こうも言っていました。「ベストワンになるには金もいる。時間もいる。それになにより、戦わなくてはいかないから疲れる。そして競争相手とは連携できない。しかし、オンリーワンなら今日から始められる。自分にしかできないことをやればいいからね。そして、競争をしないからお互いに連携できるんだ」そうですよね。「ベストワン」よりも「オンリーワン」ということですよね。Gさんからのメールを読ませて戴きながらG家の幸せな光景が目に浮かびます。いいですよね。「GAIA家の家庭」うん、いいですよね。それにしても、GAIAさんは早起きですよね。現在の私は七時半起き、八時半出勤です。おっと八時半を過ぎました。それではここらへんで、おっととととととととととと、ーッ。以上、朝のメールでした。」○おお、夕方また木谷さんからメールが届いている。猫手と猫にお手を教えられないという笑い話を送っていたのだ。「Gさん、こんばんわ。秋が深まっていきます。大分の紅葉もやがて見頃になりそうです。四月から始まった、仕事と遊びの生活も半年が過ぎました。どうなるのか。寂しくなると思ったのですが、まあまあ楽しく過ごしています。「県庁を早期に辞めたことを後悔しないかい」最近、みなさんからよく尋ねられます。う～ん、そう唸って、エヘラエヘラと笑って「印鑑を押さない。人から命令をされない、なかなか快適です」そう答えておりますが、ひとりの事務所生活はちょっと寂しいこともあります。でも、ワガママな人生を過ごしているのですから、それぐらいは我慢しなくてはと頑張っております。Gさんとこうやっていろいろと「語る」ことができる。それも、私の大切な時間になりました。「人はひとりでは生きていくことはできない」そんなことを聞いたことがあります。そうですよね。だから「家族」があり「友人」があり「仲間」がいるのですよね。県庁の人とのつきあいが減ったら民間というかマスコミの方とのつきあいがなぜか多くなりました。東京行きを計画しているのですが、次から次へと藪用が入って……ああ。それにしても、朝夕めっきり寒くなりましたよ。そして、日中は暑くなるという不順な天候。Gさん、風邪などひかぬようお体をご自愛下さい。以上秋の宵のメールでした。」　

  2009年02月08日

• 木谷ポルソッタ倶楽部　【秋の宇佐平野】

  ■木谷ポルソッタ倶楽部・２００３／１０／１９　　　　　　　【秋の宇佐平野】「『まちづくり雑談』のような話をしてくれないか？」宇佐の教覚寺の住職である平田さんから頼まれた。平田さんはまちづくり塾の塾頭だ。恥ずかしいと思ったが、私は「木谷ムラマチ研究室」の研究員だ。「講演」も仕事のひとつだ。講演会の後に交流会もある。「呑める」ということだ。私は承諾の返事をした。それにね、宇佐で、私は二十年前に働いたことがある。いろいろな想い出がある場所なのだ。「集まりの前に、『四日市散策』をみんなでする。できれば一緒に歩いてくれないか」平田さんから言われた。すぐに了承をした。想い出の町を散策できる。ありがたい話だ。　四日市の町中を、みんなで歩いた。本願寺の東別院、西別院とふたつの大きな建物に、私は驚いた。宇佐に三年もいたのに、私はふたつの寺に来たことがなかった。東別院が西に、西別院が東にあった。うん、面白い。それにね、みんなが「お東さん」「お西さん」という呼称でふたつの寺を呼ぶ。その響きに、お寺を愛していることが伺われた。散策が終わって、教覚寺へ戻った。四時だった。講演の時間まで二時間あった。「簡保の温泉にでも入りに行きますか？」平田さんから誘われた。「少し近所を歩いてみたいのです」私は稲刈りの始まった宇佐平野を歩いてみたかった。「六時には戻ってきて下さいよ。寺の屋根を目印にすれば迷いませんからね」私は寺の門を出て宇佐平野を歩いた。西の空に夕陽が浮かんでいた。遠くに八面山という名の山が見えた。茜色の空を背景に黒いシルエットとなっていた。畦道を歩いていると、コンバインの音がした。稲刈りをしているようだ。私は歩みを止めて佇んだ。刈り取った稲の薫りがした。秋の薫りだ。せつなくなるような薫りだ。麦わら帽子を被ったオヤジがハンドルを操りながら稲を刈っていた。稲に喰いついたかと思うとコンバインの中へ吸い込む。後には、切り株と切り藁だけが残っていく。農作業の光景も変わっていくのだよな。ある種の感慨を抱いて、私は見つめていた。オヤジはコンバインを進めていく。進めていく。オットー、ピーピーと危険音が鳴った。オヤジはコンバインを停めた。背後へ回り、カバーを開けて中を見た。詰まっていた藁を放り捨てた。危険音がやんだ。前へ戻る時、オヤジは私を見た。コンバインを動かした。また、危険音が鳴った。エンジンを切りながら、オヤジはまた私を見た。背後へ回ってカバーを開けて藁を捨てた。前へ戻りながら、オヤジは私を睨みつけた。 オヤジはコンバインを動かし始めた。おや？刈らないようだ。コンバインでそのまま軽四輪の方へ行くではないか。軽四輪のところへ着くと、オヤジはコンバインを停めて軽四輪へ乗った。軽四輪が走り始めた。オヤジが私を睨みながら家の方へ戻っていく。これは、コンバインを壊したのは私だと、オヤジは思っているのだろうか。ああ。オヤジのいなくなった田圃は静かだ。残照の中、刈り取られなかった稲穂がほんのりと浮かんでいた。海からの風にゆらゆら揺れている。そうだよね。一日「命」が延びたということだからね。秋をたっぷりと味わうといい。　私はゆっくりと歩き始めた。夜のとばりが、私の体を包み始めた。遠い昔の想い出がよみがえった。私は泣きたくなった。そう、宇佐、季節は秋だった。【秋の宇佐平野散策－２】秋晴れの空の下、私たちは歩き始めた。お東さんの北側の門を出た。なんと古い雰囲気を漂わせている街並みが続いているではないか。白い壁に瓦屋根の建物が並んでいる。「昔はこれがずっと続いていたのです。でも、最近はね、壊されてね…」小倉さんや鹿瀬島さんが残念そうな顔を浮かべる。いいよ。少しでも残っているのだからね。これからは、残っているものをどう保存していくかということだ。「この建物を、地域づくりの集まりの場所に使いたいのですがね」平田さんが角にある建物の玄関を指さした。仕舞屋風なこじんまりとした家屋があった。そう、まちづくりの拠点がこのようなところにあるといいよね。東京の下町のまちづくりの拠点「谷中学校」のことを、私は思い出していた。「ここが常徳屋という酒屋なのです。アッ！四日市人形がある」説明をしていた小倉さんが店の中へ入っていく。店の奥さんが出てきた。「確かに四日市人形です。でも、落書きなどをして痛んでいますからね」奥さんが残念そうに話をしてくれる。「四日市人形」とは、縁起物の人形で祭などでよく売られたものらしい。奥さんが奥へ案内してくれた（シャレではないよ）。オット、ここにも壁に飾られた対の人形の面があった。不思議な気持ちにさせる面であった。このような発見がある。だから、町中散策は楽しいのだ。さあ、散策を続けよう。レンガ造りの建物があった。寂れているが趣のある建物だ。寂れる、そう建物は使われないと寂れる。建物は使うことにより、磨かれるのだ。「この建物は昔の大分銀行なのです。これも何かに活用したいですよね」小倉さんが建物を見上げた。なるほど大分銀行のマークが壁に残っていた。そうだよね。このような建物を残すということは、想い出を残すということなんだ。旧道へ出た。駐車場がやけに多くなった。昔の建物が壊されているということだろう。それにしても、歩いている人が少ない。私たちだけだ。これでは商店街は成り立っていかない。商店街が商店街でなくなる。住む人の喜びの場所が消えていく。陣屋への道が続いている。昔はもっと広かったらしい。両脇には樹木がずらりと植えられていたそうな。その話を聞くと、往時の風景が浮かんでくる。人はどうして「美しい風景」を自ら壊していくのだろう。ああ。陣屋門も相当に傷んでいた。行政の保存にも限界があるということなのかもしれない。陣屋の中はテニスコートだった。「ここには陣屋の基礎などが残っていただろうね。テニスコートをつくる前にもっと調査をしたかったですよね」小倉さんが残念そうにテニスコートを見ていた。一度壊された古いものは完全には再現できないのだ。空を見上げた。青い空が広がっていた。自然は変わらない。しかし、人のつくるものは変わっていく。変わって変わって消えていく。陣屋門の横の狭い道を歩いていく。「ここ、このお墓を説明してよ」鹿瀬島さんが小倉さんへ声をかけた。なるほど家屋に囲まれた敷地に墓が群れてあった。昔、源昌院という禅宗の寺があって、その墓場であっただろうとのことだ。その墓のひとつひとつにはいろいろな話があるらしい。宇佐の歴史ここにありということだろう。小倉さんの話に、みんなは頷きながら墓石を見つめていた。二、三分歩くと、「伊勢山塾跡」に着いた。近世の宇佐の漢学発展に寄与した塾の跡だ。今は、石碑以外は何も残されていない。草が生えた荒れ地だけだ。みんなで碑を眺めた。そう、今は、眺めるしか術がないのだ。散策は続く。水路に架かった橋を渡る。「平田水路」だ。道路に沿って流れている。「田植えの時期には満々と水を湛えて流れます。この水路の上流の小学校の生徒に龍の模型を造って流してもらうのです。それを次の小学校の生徒が受け継ぎ、水路沿いの四つの小学校がそれにより繋がる。そのようなイベントを仕掛けたいのです」小倉さんが水路の流れを指さした。平田さんが微笑んでいた。新しいものごとが始まるかもしれない。大きなできごとは、小さなできごとから始まる。うん、そういうものだ。それにしても、水路の上に、何軒もの家が建てられていた。水路の美しい風景が消えていた。これを合理的な近代化というのだろうか。ちょっと哀しい。散策は続く。平成１５年第４５８号　平成１５年１０月２５日号発行 　　家族ふれあい新聞十月二十五日（土）○木谷さんにメールを送った。新しいパソコンを購入してから初めてだ。「朝夕めっきり寒くなってきました。虫の音もついこのまえまでは命いっぱい鳴いていたのに、かほそく聞こえるだけです。「秋の宇佐平野」収穫の秋、紅葉や秋の気配をたたえていいですね、木谷節がさえてきますね。私も昔、宇佐神宮に行ったことがあります。国東半島まで回り、石仏を見て回りました。　先日、古本屋で「山岡鉄舟の武士道」という本を見つけて買いました。その中に宇佐八幡宮のことが取り上げられています。「人皇十五代の天位にのぼられた応神天皇は、ご崩御後、欽明天皇のとき、肥後の国、菱形の池に神として出現したまい、「われは人皇十五代の誉田の八幡丸なり」と勅（みことのり）あそばした。誉田とは応神天皇のご幼名である。そしてこの神様の宮殿を豊前の国、宇佐にいわいたてまつったのである。　しかるところ、清和天皇のときにあたり、京都大安寺の僧、行教という人が、宇佐八幡宮に参詣して昼は大乗経、夜は密咒をとなえ、おつとめ申し上げたところ、最後の結願にあたり「神われ汝とともに都に行かん」と神勅あらせられた。　行教は京都の男山である岩清水に地に奉安しまいらせたのである。誉田皇子に遊ばす方は、一方には応神天皇とご出世遊ばし、他方には八幡大菩薩として出現され、あまねく衆生を済度し、霊妙妙応、このようである。　見よ、武士に信仰心があつく、源氏の子孫は、義家が顕著な働きも、全く八幡神の弓矢の守護にかかわるという思いより、いやしくも身を武門に投じるものは、信神が肝要であるというので、子孫が戦場に立つには、八幡太郎云々という口調で戦功を奏し、府を鎌倉に開くに至っては、八幡宮を建てて参拝したのである。」　ふふ、してみると大分と鎌倉は縁がありますね。」平成１５年第４５９号　平成１５年１０月２５日号発行 　　　　　家族ふれあい新聞○家に帰ってパソコンを立ち上げると木谷さんから、返信メールが来た。素早く返信メールが帰ってくるからパソコンを開くのが楽しみだ。「ＧＡＩＡさん、おはようございます。今朝の大分は「秋」そのものといった様相を見せています。それにしても「秋晴れ」の空を見上げるとき、私は「平和」ということをしみじみと感じます。「稲刈り」「コスモス」「紅葉」「青い空」なにかその「キーワード」だけで「日本のまちの原点」というかそう「静かにゆったり」と生きていける。そうなのですよね。それを人工的なもので壊しつつある。由布院の中谷さんと話したことがあります。「由布院のまちづくり、得たものも確かにある。でも、失ったものも多い。これからの由布院のまちづくりは「失ったもの」を取り戻すことをしなければならない」そう言って、中谷さんは「失ったもの」をいろいろとあげました。「静かな時間」「柿の木」「畦道」「隣とのおつきあい」「地区の約束事」「のんびりとした空間」「あけび採り」「水たまりのある土の道」。ＧＡＩＡさん、すべてが懐かしいものです。そう、「想い出」の場というものが失われていっているのです。そう、宇佐神宮は、全国の「八幡様」の総本山のためかいろいろな伝承や話が残っています。宇佐の人達と話をすると、ちゃんとした話から怪しい話までなかなか楽しいひとときを過ごすことができます。東大寺の大仏を建てる時、その資金に困っていたら「必ず国内より金は出る」と、次々と託宣を発し宇佐神宮が「金」のある場所を告げて、その資金を捻出したそうです。そこで今年の夏、東大寺大仏の「開眼供養」から千二百五十年の節目に、神輿発祥のきっかけとなった史実を再現ということで、宇佐市の人達が神輿とともに市民約五百人が東大寺の参道約一キロを練り歩いたそうです。」

  2009年02月08日

• やかまし村はいつもにぎやか　　「退屈でつまらないかもしれませんね」「なんて、ばかなことをいうんかな！」

  リーサはモニカのブローチをながめていた。「あなたのブローチ、とてもすてきな。」「あなた、これほしい？」リーサはそんなつもりで言ったんじゃないのに、モニカはブローチをはずしてリーサの手にのせる。モニカのお母さんも「とっておきなさいよ」と言う。「いいえ、それはだめですよ」とリーサのお母さんは言ったが、結局もらうはめになった。それは小さな赤い玉が一面についたきれいなブローチだった。モニカのお母さんはサクランボ・ジュースを飲むと自動車の方へ行って席に座った。モニカも行かないわけにいかない。「わたしも、ここに住みたいわ。」モニカのお母さんは周りを見渡してリーサのお母さんにこう聞いた。「こんな森のおくにすんでいたら、退屈したりつまらなくなったりしませんこと？」「することがたくさんありすぎて、そういうこと、考えるひまもありませんわ。」リーサとブリッタとアンナは、北屋敷の屋根裏部屋にいる「おじいさん」のところにとんでいった。ブリッタとアンナのおじいさんで、目がほとんど見えなかった。おじいさんはやかまし村の出来事を何から何まで知りたがった。だからリーサは自動車とモニカのことを話しに行ったのだ。「子どもたちがいなかったら、わしは、何も知る事ができまいよ。・・・」と言っていたのだ。モニカがくれたブローチも、おじいさんの手にのせてあげた。「これには小さな、赤い玉が、いっぱいついているのよ。」「頭の中で、よーく、見えるよ。なるほどきれいなブローチだ。」モニカのお母さんの「退屈でつまらないかもしれませんね」って言葉も伝えた。「なんて、ばかなことをいうんかな！！」おじいさんの考えもリーサと同じ。やかまし村は、いつでも楽しいのです。☆「ハイジ」にも目の見えないおばあさんが出てくる。ハイジはおばあさんが大好きでいろいろお話に行く。おばあさんもハイジが来ておしゃべりしてくれることを楽しみにしている。ああ、患った年寄りと子供達の距離の近いこと、気持ちの通じ合うこと、日本でも以前はそうだったのだろう・・・

  2008年11月02日

• やかまし村はいつもにぎやか 人を喜ばせるためには、全くいろいろ苦労をするなあ

  午後遅く、図書館に行ったら、リサイクルのコーナーに「だれも知らない小さな国」（佐藤さとる）と「やかまし村はいつもにぎやか」（リンドグレーン）があった。「だれも知らない小さな国」は少年の頃読んで好きな本だ。でも「やかまし村はいつもにぎやか」は読んだことがなかった。きっと子供達が大きくなって不用として寄付されたのであろう。謹んで読ませていただこう。リーサの母談「この村に『やかまし村』って名がついたのは、ここの子たちが、やたらと騒ぎまわって、やかましいせいにちがいないわ。たった６人くらいの子に、どうしてこんな大騒ぎができるか、ほんとに、見当もつかないくらいよ。少なくとも、その３倍はいるような騒ぎだわね。」やかまし実らはとても高い見晴らしのいいところにある。見えるのは広い広い森ばかり。ある日、自動車でとても立派な奥様がモニカという女の子を連れてやってきた。リーサのお母さんは「うちの庭に入って、サクランボ・ジュースでも飲みませんか？」と声をかけた。そしてリーサにモニカとお喋りするように言いつけた。ほかの女の子はいないで、一番やかましいラッセとポッセとオッレが家にいて、家の角の隠れて面白がっていた。「あの子たち、あなたの兄弟？」とモニカ。「ラッセとポッセだけ。オッレは違うわ。」「オッレって、どの子？」「髪の毛がとても薄いのが、オッレよ。」その時、ラッセが竹馬に乗って出てきた。２階の窓も覗ける高い高い竹馬。「こんなに高いと、すごく眺めがいいぜ！」その時、女中のアグダが、ブタの餌にする食べ残しを桶に入れて、台所のドアの外に出していた。そこでラッセがひっくりかえってしまったのです。モニカも一緒に大笑い。ラッセは、洗濯室の蛇口で体を洗い、びしょぬれで帰ってきて、得意な顔でこう言った。「人を喜ばせるためには、全くいろいろ苦労をするなあ！」☆うん、人を喜ばせるために苦労するっていうのがいいなあ。人を喜ばせるって楽しいなあ。

  2008年11月01日

• 喧嘩というものは、両方が腹をたてているのでなければできません。byふくろねずみのビリーおじさん

  家族ふれあい新聞第９６５号より午前中、図書館に行って絵本のコーナーで「ふくろねずみのビリーおじさん」を借りてきた。公園の裏山の入口脇のベンチに座って読む。本の最後に探してた文句があった。「もともと、喧嘩というものは、両方が腹をたてているのでなければできません。相手が怒っていないのに、こっちだけ怒るのは難しいものです」原文ではこうなる。Nowit always takes two to make a quarrel, and one of the hardest thingsin the world is to keep cross when the one you are cross with won'tkeep cross, too. 階段を登って谷戸を望む丸太のベンチへと向かう。昨日一日雨が降り続いていたが、乾いた落葉が雨水を吸ったせいか、泥道ではなく歩きやすい。日の光が柔らかく春の気配だ。日の光をあびるとニコニコ微笑んでしまう。ああ、あの太陽のように光を放って周りを幸せな気分にしたいものだ。絵本で、リスのハッピー・ジャックが歌っていた。「ぼくは散歩が大好き　遊ぶのが大好き　一日中、とってもとっても愉快だよ　ぼくは雪が大好き　柔らかくて白いから　明るく輝くお日様も大好き　世の中の何もかも大好き　だってわかるだろう　　世の中はいいことばかりだもの」著者のバージェスは、1874年マサチューセッツ州に生まれた。生後九ヶ月目に父がなくなり、母が苦労して育てた。母は動物や植物が好きで、自然と彼も好きになり、野原や沼地を魚釣りしたり動物の跡をつけたりした。きっとバージェス少年が森の中を散歩していた頃の気持ちだろうな。ふくろねずみのビリーおじさん　と　うかれリスのジャックホームページを見てたら、こんなメッセージがあった。「ふくろねずみのビリーおじさん」という本だったと思うのですが、小学校の時、大事な文章を読みました。『ケンカは両方が怒ってないと成り立たない。』相手が怒っていても私は怒らないことにしよう、と決意しました。そうしたら、ケンカは回避されますもんね。」「ふくろねずみのビリーおじさん」という絵本は、金の星社から出版されているが、Googleで検索したら絶版だという。でも、どうも気になって今日図書館から借りてきた。公園の裏手の小山に登る手前にあるベンチに座って読んでみる。昨日は久しぶりに午後から雨が降ったが、朝の日の光が柔らかい。「ビリーおじさんが、つかまった　ある夕方　みどりがはら　は、大騒ぎになりました。　向こうの　むらさきがおか　から、黒い影が、しのびよってきて、あたりを、まっくらにしてしまったようにみえました。きつねのレッドが、悪いニュースを持ってきたのです。レッドは、うれしそうに、にやにやしながら、「ふくろねずみのビリーおじさんが、死んだよ。お百姓のブラウンさんの、息子が、あいつのしっぽをつかんで、裏へ、運んでいくのを、俺は、この目でみたんだ。な、あいつは、君たちが思っていたほど、りこうじゃなかったんだ。」と言いました。　けれども、始めは誰も、きつねのレッドの言うことなど、本気にしませんでした。レッドが大うそつきだということを、みんな知っていたからです。けれど、スカンクのジミーが、泣き出しそうな顔でくねくね　こみちをやってきて、レッドの話は本当だというと、みんなも、信じないわけにいかなくなりました。(略）」　実はビリーおじさんは、ブラウンさんの鳥小屋に忍び込んで、卵を夢中で食べていたのです。急に鳥小屋の戸が開いて、ブラウンさんの息子が入ってきたのです。ビリーおじさんは逃げるひまがなく、その場で死んだふりをしました。ブラウンさんの息子はビリーのしっぱをつかんで、家の裏にひきずっていきました。そこをきつねのレッドとスカンクのジミーが見かけたのです。でも、ビリーおじさんは懲りずにブラウンさんの鳥小屋に忍び込んで、卵を夢中で食べたのです。しかも眠気がさして、鳥小屋のふかふかの藁の寝床の中にもぐりこんで寝入ってしまったのです。ブラウンさんの息子は、食べ散らかした卵の殻を見つけてかんかんに腹を立てます。そしてなんと入り口という入り口にわなをしかけたのです。外では犬のバウザーが見張りをしています。さあ、ビリーおじさんは今度は逆に小屋から出るに出られなくなりました。ところが、ある日、雪が降り始めました。ビリーはチャンスだと一生懸命穴を掘ってやっと外に出ることができました。ところが雪の上にはビリーの足跡が付きます。ビリーは、後ろを振り返って、「これではどこまでも息子が追いかけてくるだろう」とうめきました。ビリーが思ったとおり、息子は犬のバウザーを連れて足跡を発見してついてきたのです。足跡は、一本の木のところで終わっていました。その木のてっぺん近くに木の穴がありました。息子は斧を家から取りに帰り、その木を切り倒しにかかったのです。ところが、倒れた木の穴には、ふくろねずみはいなかったのです。ビリーおじさんはこういうことがあろうかと自分の巣穴のある木には戻らなかったのです、そして木の梢が重なっているのを伝って隣の木の穴に隠れていたのです。息子は、ひきあげていったのです。ビリーはすっかり安心してその穴の中で眠ってしまいました。ところがその穴はリスのうかれジャックの前使っていた巣穴でした。ジャックは中に木の実が残っていないかしらと穴をのぞきました。するとビリーがねていたのです。「一体全体、何の怨みがあって、正直者を脅かすんだ」とゆくぬくと楽しい夢を見ていたビリーは怒ります。「人のうちに勝手に入り込むなんてそっちこそどういう気持ちだ」とジャックもまけずにどなりかえしました。ビリーとジャックは互いにののしりあいました。けれどビリーは本当はお人よしでした。だから気持ちが落ち着いてジャックの穴に勝手に入り込んだ自分が悪いのだと気がつくと、おなかの虫はおさまってきました。にやにやしてワハハと笑いました。もともと、喧嘩というものは、両方が腹をたてているのでなければできません。相手が怒っていないのに、こっちだけ怒るのは難しいものです。ビリーのにこにこ顔を見ると、ジャックのほうも気がぬけてきました。そしてまもなく、笑い始めました。「ワハハハ・・」二人は声をそろえて、笑いました。そして仲直りしたのです。Nowit always takes two to make a quarrel, and one of the hardest thingsin the world is to keep cross when the one you are cross with won'tkeep cross, too. Happy Jack tried hard to stay angry, but every timehe looked at Unc' Billy Possum's twinkling eyes and broad grin, HappyJack lost a little of his own temper. Pretty soon he was laughing justas hard as Unc' Billy Possum."Ho, ho, ho! Ha, ha, ha!" they laughed together. Finally they had tostop for breath.

  2008年06月15日

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  どんなに君のことが大好きかあててごらん

  アメリカのヒューストンからエアメールが届いた。このところご無沙汰していた。先日も電話がきて「いつ、アメリカに来るんですか？」と聞かれている。「いま、喪に服していますから」と言い訳しているが、いつかは行かねばなるまい。手紙には英語でこんなふうに記されていた。「２００８年にあなた方に喜びと幸せがあるように願っています。　　　　　　　　　B、A＆C　あなたのお母様が亡くなられたことを聞いて悲しんでいます」Bさんと娘のAには、銀座のソニービルで１０年ほど前に出会った。ちょうど小学生になる息子を連れて銀座に遊びに行って、息子をゲームのコーナーで遊ばせて、夫婦して銀ブラを楽しんだ。ちょうど歌舞伎座の前にある岩手県のアンテナ・ショップ、岩手銀河プラザを覗いたとき、レジで岩手県にちなんだ「宮沢賢治」や「ちゃぐちゃぐうまっこ」の切手が売っていた。それらを買ってソニーステーションに帰ると一生懸命ゲームしている息子の後ろから画面を覗き込んでいる同い年くらいの女の子がいて、それを見守っている母親がいた。それがBさんだった。Bさんは片言の日本語で、「この子のご両親ですか？」と聞いてきた。Bさんと娘のAの２人で日本に遊びにきたのだという。Aが漫画が好きで、どこか近くに漫画を売っている本屋さんはないかと聞かれた。そこで東京駅前のブック・ステーションを地図を書いて教えた。そして別れ際に「宮沢賢治」の切手を日本を訪問された記念にさしあげたのだ。「これは誰ですか？」「宮沢賢治という有名な詩人、童話作家です。」「アメリカに帰ったら読んでみます。」こうしてBとの交流が深まったのである。その後は数年後日本に再来日した母娘を鎌倉・横浜案内したことがあり、なんと家内にはコーチのバックを贈ってくださったこともあった。普通、銀座で外国人に話しかけられたとしても、道を教えてそれきりである。たとえそれがきっかけで文通しても、英語力のない人間にとって交流が苦痛になって次第に絶えてしまうことであろう。そういうふうに次第に交流が絶えていったのだった。ところが、いつかBさんの神戸の親友からこんなふうに聞いたことがある。「Bはね、これまでとっても苦労したの。でもね、彼女はこれまでの人生で多くの天使に助けられたというの。彼女はね、ガイアさん、あなたもそのエンジェルの一人だと言っていたわ。」ええっ、私がエンジェルの一人！思いがけない言葉に驚き、また感動した。わたくしのことをそういうふうに思っていてくださる人がいるんだ。その日以来どうにもBのことが気になってならないのだ。一昨年、五日市剛さんの講演会を聞きにいったら、最後にこうおっしゃった。「イスラエルのおばあさんから、その後何度かお手紙をいただきました。今でもそれらは私の宝物で何度も読み返しています。おばあさんの手紙にはいつも最後に同じ文章が書いてあって、それは私を喜ばしました。『私はいつもあなたのことを思っていますよ』手紙の最後にはいつもこう書いてあったのです。皆さんも講演会から家に帰られたら、遠く離れた息子さんや娘さんがいたら、電話したり手紙で言ってあげてくださいね。『いつもあなたのことを思っているよ』と。」そこでわたくしもまた、Bさんにエアメールを出した。「私はいつもBさんとAのことを思っていますよ」すると、私たち家族のセーターを詰め込んだエアメールが届いたのだ。「私たちもあなたとご家族のことを思っていますよ。　A、B＆C」CとはBさんの息子のことで、まだ会ったことはない。大きな兔と小さな兔がどんなに相手のことが大好きか比べあう「どんなに君のことが大好きかあててごらん」という絵本がある。原題は「Ｇｕｅｓｓ　Ｈｏｗ　Ｍｕｃｈ　Ｉ　Ｌｏｖｅ　Ｙｏｕ」というらしい。「ぼくは君のことがこのくらいダイスキだよ！」何度も比べあったところで、もうチビウサギは眠くて何も思いつかなくなり、「ぼく、おつきさまにとどくぐらい　きみがすき」といって目をとじる。すると、デカウサギはチビウサギを木の葉のベッドに寝かせると、おやすみなさいのキスをして、「ぼくは、きみのこと、おつきさままでいって・・・かえってくるぐらい、すきだよ」と言うのだ。「いつもあなたのことを思っていますよ」と言ってくれる人がこの人生にいることのありがたさを思う、そして「いつもあなたのことを思っています」といえる友人がいることの幸せを思う。

  2007年12月24日

• 左の指が６本だった子

  家族ふれあい新聞　平成１７年第８３２号より「お母さんね、インターネットを見てたら、自由が丘に鈴木きよみさんというマッサージの方がおられてね、その人の息子さんは、生まれた時、左手の指が６本あったんだって。一歳の時に手術したけど、その子が小学生の時、「お母さん、左の親指の横が痛い。」て訴えた。そこできよみさんは息子さんに始めて、生まれた時左手の指が６本あったことを教えた。「へえ、でもこんなにきれいになったんだ」息子さんは驚きながらも、それで終わっていた。そうしたら、その子が中学２年生の時、「おふくろ、俺、最近、左の指が６本だったことを自慢できるようになったんだ。友達に言うとびっくりされるんだけど、俺は特別な星の下に生まれてきたんだと思えて嬉しくて初めてあった友達にもこのことを言えるようになったんだ。」と家族で外食した時お母さんに打ち明けた。鈴木さんは、息子が小さな胸のうちで、３年間もずーっとそんな思いを抱えていたということを始めて知って、さらには、赤ちゃんの頃、人に抱っこしてもらうのも憚られたことなど思い出されて、ポロポロ涙がとまらなくなったんだ。しかしねえ、本人の記憶にはなくても、今はない指が痛むということは、体は６本目の指を記憶しているっていうことだよね。すごいねえ。」息子が朝食をとりながら、それとなく聞いているように思えた。そうだよな、子どもがこうして健康に生まれ育つということのありがたさ。

  2007年12月09日

• <こわいもの>をみつけた子ども　　３

  今朝、病院に開診３０分も前にいって、「すみれ色の童話集」の　をみつけた子ども　の続きを読んだ。子どもの見つけた＜こわいもの＞とは思わぬ壮大なもので驚いた。「僕に綱をください」と子どもは言って、綱をもらうと、片方の端を体にしっかり巻き付け、一方の端をマストに縛り付けて、海へざぶんと飛び込みました。ずんずん、ずんずん、ずんずん、下へ降りていって、とうとう海の底に足が届きました。そこにいたのはいやらしい顔をした海の娘だった。娘は、鉄の鎖を船にひっかけて引っ張りこもうとしていたのだ。子どもは、両手で娘の腕をつかまえて、鎖から手を離させて、船を無事に解き放った。子どもは足元の海草の林の中から錆びたナイフをとって、腰に巻きつけた綱を切って、その綱で海の娘をしっかりと石に結び付けて岸へと泳いで帰った。子どもは岸に脱ぎ捨てた着物を着ると何事もなかったかのように歩いていく。すると美しい庭に出た。花が咲き乱れ、澄んだ小川があった。子どもは赤い花のしげみで横になって眠り込んだ。いきなり、ばたばたとする羽の音と冷たいそよ風に子どもは目をさました。３羽の鳩が小川に飛び込んで、深い池の底へ潜った。もう一度水の上に出てきたのは３人の美しい娘だった。娘たちは真珠をちりばめたテーブルを持ってきて、その上に桃色と緑の貝殻でこしらえたグラスをおいて、透き通った水晶の大きなさかずきから、グラスに酒をそそいだ。すると姉の娘が言った。「誰の健康を祝ってのむの？」「お菓子をこしらえて、そのお菓子に土の中から私が手を伸ばした時、スプーンで私の手をたたき、少しも怖がらなかったあの子のためによ。あなたは誰の健康を祝ってのむの？」「私が池の端で肩にのぼった時、ぐいと私をはねのけて、何時間も気を失わせた、あの子のためによ。姉さん、あなたは誰のためにのむの？」「海の底で船をつかまえて揺すって引っ張っていたの。そのうち船は沈むところだったのに、一人の子どもがやってきて、船を自由にして私を岩に縛り付けたの。あの子のために私はのむわ。」そう言うと３人はグラスを持ち上げてのみほした。すると子どもはその前に姿を現した。「皆さんが健康を祝ってのんでくれた子どもは私です。あなた方の一人の腕から落ちたに違いない、あの宝石の腕輪にふさわしい腕輪を私にください。」「それでは私たちと一緒にいらっしゃい。」娘たちは、子どもを連れて小道から広間に連れて行った。部屋から部屋へと案内され、金貨や宝石のうずたかくのっている棚から、一番上の姉が腕輪をとって、子どもの腕にはめました。こうして子どもは裁判官のところにあったもう一つの腕輪をもらったのです。そしてまた＜こわいもの＞を見つけに出かけたのです。どんどん歩いていったけど、恐ろしいものには一度も会わない。ある日のこと大きな町に入っていった。その町という通りという通り、広場という広場にはぎっしり人が集まっていた。「どうしてこんなにみんな集まっているの？」「この国の王様が死んだんだ。子どもがいなかったので、後継ぎを選ばなければならない。だから、毎朝、一羽の神聖な鳩を向こうの塔から放すのだ。その鳥が誰かに止まったら、止まられた人が王様になるんだよ。もうすぐ鳩が飛ぶ、どうなるか、ここで見ていなさい。町の真ん中の塔の戸が開いて、桃色と灰色と、青と緑に輝く、美しい鳩がバタバタと風を切って飛び立った。鳩が飛ぶ、パタパタパタパタ。そして子どもの頭の上に止まった。叫び声が大きくあがった。「王さまだ！王さまだ！」子どもは、その叫び声に耳をすますと、稲妻より速い、一つの幻がパッと心に浮かびました。王座に座っているのは自分でした。貧しい人々を豊かにし、みじめな人たちを幸せにし、悪い心を持った人たちをよくしようと努力しながら、一度も成功しないで一生を送っているのです。したいと望むことは何一つできず、愛している娘とも結婚できない、自分の幻を見たのです。「いやだ！いやだ！」と両手で顔をおおって、子どもはかなきり声をあげました。でもその声を聞いた人たちはその子に与えられたものが、あまりにも大きすぎたので、気持ちが乱れたのだと思って、少しも気にとめませんでした。「さあ、すっかり決まったのだから、もっと鳩を飛ばせ」とみんなが言いましたので、鳩は次々に飛び、前よりももっと大きな叫び声があがりました。「王さまだ！王さまだ！」その声を聞いているとき、どういうわけかわからなかったのに、ぞっとするようなおののきが子どもの体をつらぬきました。「これが、おまえが長らく探していた、恐ろしいことなのだよ。」一つの声がささやきました。だが、その声は、ただ一人、子どもの耳にだけ聞こえたようでした。もう一度幻が目の前をひらめきすぎていく時、子どもは頭を下げて、与えられた自分の運命を受け入れました。そして、自分のそばに＜こわいもの＞を置いて一生を過ごす覚悟を決めました。　なんという深い意味をもった童話であろうか。論語憲問第１４に言う。子路君子を問う。子曰く、『己を修めて以て敬す。』曰く、『斯の如きのみか。』曰く、『己を修めて以て人を安んず。』曰く、『斯の如きのみか。』曰く、『己を修めて以て百姓を安んず。己を修めて以て百姓を安んずるは、堯舜も其れ猶諸を病めり。』己を修めてすべての人民を安んずるのは、昔の聖王、堯・舜もこれを病めり「これが、おまえが長らく探していた、恐ろしいことなのだよ。」そして、子どもは「与えられた自分の運命を受け入れて、自分のそばにその＜こわいもの＞を置いて一生を過ごす覚悟を決めた」のであった。すごいねえ、なんと壮大な結末であろうか。　

  2007年06月16日

• <こわいもの>をみつけた子ども　　２

  をみつけた子ども　１　に続く＜あらまし＞森の中にお母さんと二人暮らしの子どもがいた。子どもは＜こわいもの＞がなかった。それを見つけるためにある日旅に出た。山賊やお化けや町の詐欺師に会うが＜こわいもの＞には出会わない。さらに旅を続け、海辺へと出ると、座礁して沈没寸前の船があった。子どもは海に飛び込んで船乗り達を助けにいった。病院に備え付けの子供用の「ランゲ童話集」を読んでいたのだが、ここで会計に呼ばれて続きが読めなかった。イメージがふくらんできて、話の終わりを作ってみる。子どもはきっと海の底で腕輪のもう一方を見つけ、船乗りを救い、さらに旅を続けるに違いない。そしてラストで子どもは＜こわいもの＞を見つけるのだ。一体それはどんなものだろう。たとえばこんなの。子どもは冒険を終えて、森の中の家に戻りました。両方の腕に腕輪をつけて、助けた船の船長からお礼にもらったりしたお金もいっぱいもって。きっとお母さんは喜んでくださるだろう。あの日の朝早く、お母さんが眠っているうちに、書置き一つしないで＜こわいもの＞を見つけに家を出たのだった。結局この世に＜こわいもの＞など見つからなかったよとこの腕輪を見せてお話しよう。お金もあるし、お母さんを喜ばせてあげよう、そう思ってわくわくしながら、昔お母さんといっしょに住んでいた小屋に戻ったのだった。ああ、なんということだ、あんなにも深く大きかった森がちっぽけに見える。あんなに高かったなじみのモミの木の幹も今にも届きそうだ。勇気をリンリンと燃やしていればこの世に僕が怖いと思うものはなかった。人はきっと怖いと口に出し、怖がるそぶりをするから怖くなるんだ、人は不安を抱くから不安がダブルになっておこってしまうのだ。子どもは、懐かしい我が家にたどりついた。ああ、嵐の日、あの戸が風にあおられてバタンと大きな音をたてて、お母さんがこわがったんだった。あのとき、お母さんが何をおびえてるか、わからなかった、結局＜こわいもの＞なんて僕にはないとわかった。子どもは勢い込んで「ただいま、お母さん」と戸を開けた。家の中は暗かった。返事もなかった。そのとき、初めて子どもの心に不安というものが芽生えた。心臓が高鳴った。子どもは急いで部屋の中に入った。ベッドに母親が横たわっていた。頬はやつれ、髪は白くなり、苦悩のシワが刻まれていた。母親は子どもがふいにいなくなってからどんなにか心配したことだろう、捜しても一向に行方が知れなかった。子どもの無事を神に祈る日が続いていた。そして心労のあまり病に倒れ、いまわの際を迎えていた。「ああ、お母さん、僕です、目を開けてください」子どもは母親にすがりついて泣き叫んだ。そのとき初めて子どもは愛する者と別れなければならないという＜こわいもの＞を初めて知ったのだった。さあて、この後どうしよう、お母さんは愛するわが子の声に目を開けて、子どもをみとめるか、それともそのまま息を引き取って、こどもは悲しみのうちにこの世に自分の思い通りならない＜こわいもの＞を知ったということにするか。それともお母さんは元気を取り戻し、元通りに母子二人仲睦まじく暮らしましたとハッピィエンドにするか、ふふふ、物語というものはいろんな展開の可能性があるものだ。そして今日また病院に行って、診察の名前を呼ばれるまで、じっくりと「すみれ色の童話集」を開いてみた。そして、驚いた。子どもの知った＜こわいもの＞とは全く別なものだった、何だったか想像してみてください。

  2007年06月16日

• <こわいもの>をみつけた子ども　　１

  左手首を骨折してギブスをしている。一週間おきにレントゲンをとるが、まだヒビがあるとかでなかなかギブスがとれない。先週、会計で呼ばれる間に、備え付けの「すみれ色の童話集」というのを手にとってパラパラと読んだ。そのなかに「をみつけた子ども」という話があった。それが途中まで読んだところで会計に呼ばれた。そうするとお話の結果がどうなるのだろうと気になるではないか。こんなお話だ。むかしむかし、一人の女の人がありました。一人息子をたいそうかわいがっていました。住んでいる小屋は、森のはずれにあって、隣近所に家がなかったので、ひどく寂しい場所でした。男の子は、家にいて、お母さんの話し相手になっていました。　ある冬の夕方、二人が一緒に座っていると、いきなり嵐になって、風にあおられて戸が開きました。お母さんは飛び上がって、肩越しに後ろを眺めて震えました。まるで、後ろに恐ろしいものがいると思っているようでした。お母さんは慌てて息子に言いました。「戸を閉めておいで。こわいから。」「こわい。こわいって。いったいどういう気持ちなの。」「つまり・・・こわいのよ。おまえには、どういうものか、まだ分からないのだろうけれど、何か、こわくなることがありますよ。」「そんな気持ちは、ずいぶんおかしなことだなあ。僕は、世界中を歩いて、こわいものをみつけだしてやろう」それで、子どもは、あくる日の朝、お母さんがまだ眠っているうちに、森を後にしました。こうして子どもは山について頂上近くで焚き火をしていた山賊の群れに出会った。「みなさん、こんばんは。」と山賊たちの間にもぐりこんで火にあたった。山賊たちは驚いて酒を飲むのをやめていろいろ脅かすがへっちゃらだ。「それじゃ、こわいものを見せてやろう。この壷と、粉と、バターと砂糖を持って、あの下にある墓場に行って、お菓子を焼いて来い」と山賊のお頭が命令する。子どもはすっかり温まって元気よく駆け降りていく。小川から水を汲んで壷に入れ、粉とバターと砂糖を混ぜ合わせお菓子を作る。作り上がって火を消すと、いきなり墓の中から一本の腕がニューと出てきて声がした。「それは私のお菓子なの？」「死んだ人間に生きた人間の食べ物をやったりするものか」子どもはスプーンでぴしゃりと腕をたたいて、愉快そうに山賊のもとに戻っていった。山賊たちはその話を聞いて、「ここにいたってこわいものは見つからない。山の向こう側に深い池がある。そこへいけばこわいものが見つかるだろう。」子どもはすぐにでかけていった。月明かりの中に池が光って見えた。そばに大きなブランコがあって、一人の子どもがおいおい泣いて座っている。すると一人の娘が近寄ってきて、「私の弟を、ぶらんこから出してやりたいの。でも高くてとどかないから肩に乗せて」いいよと子どもは答えると、娘はさっと肩にのぼった。すると娘は恐ろしい力を両足にこめて子どもの首をしめたのだ。子どもは息がつまりそうになったので、腹に精一杯の力をこめてぐっと娘をつきあげて遠くに投げ飛ばしたのだった。娘がいなくなると土の上に腕輪が一つ落ちていた。「家を出てからおかしなことばかりおきるなあ、こいつを持って帰ってお母さんに思い出話をしてあげよう。」子どもは腕輪を腕にはめ、山を降りて町へ出た。すると大通りで、一人の男がいきなり子どもの腕輪をつかんで「どこで、腕輪を手に入れた。これは私のだ。」「違うよ、僕のだ。」「そうじゃない。すぐに渡せ、さもないとひどい目にあわせるぞ。」「裁判官に前へ行って、ぼくたちの話をしよう。そして裁判官の判定にまかせよう。」裁判官は、二人の話を聞いてどちらが正しい持ち主か分からない。「この腕輪の対になっているのを持ってきなさい。持ってきた方が正しい持ち主だ。それまでこの腕輪は裁判所で預かっている。」子どもはその後あてどもなくさまよった。海岸に出ると、船が座礁して今にも沈みかけていた。乗組員達は絶望的な表情でわめいている。「こわいものにあったのですか？」子どもが大声で質問しても「助けてくれい！溺れてします！」子どもは着物をぱっと脱ぎ捨てて船へと泳いでいった。船にあがると船長が「海のなかにひきづりこまれてしまう。死神がせまっている。おそろしいことだ」という。子どもは体に綱をしっかりまいて海の底にもぐっていった。おいおい、これからどうなるの、一週間いろいろ想像してしまった。子どもはこわいものに出会ったのか？それはどんなものだろうか？自分なりのストーリーをつくるのも面白いかもしてないね。

  2007年06月16日

• 二宮尊徳の教えが現代ビジネスに生きる実例を検証するby三戸岡道夫

  １０月２１日、小田原の市民会館で報徳サミットがあった。作家の三戸岡道夫さんの講演があり、聞きにいってきた。「現代に生きる報徳の教えー二宮尊徳の教えが現代ビジネスに生きる実例を検証する」という長いテーマである。以下、記憶で書きましたので文責はＧＡＩＡにあります。「４年前『二宮金次郎の一生』という本を出版しました。すると今までの本と違う。読者からの手紙が多いのです。１０枚ぐらいの便箋にぎっちり書いてあったり、長さ２ｍの巻紙に書いたのがきたりしました。「薪を背負った金次郎の像は知っていたが、生涯を通して６００以上の農村振興した偉大な人間であることは知らなかった」とあった。どうにかして現代に生きる二宮尊徳を知らせたいと思った。すると知人が「二宮尊徳とドラッカー」という論文を見せてくれた。なるほどこんな切り口もあるのかと思った。そういうことから書いたのが「二宮金次郎と１３人の世界人」という本です。尊徳が夏ナスを食べたら秋ナスの味がしたので農民達に飢饉に備えさせて、稗など植えさせた話は有名ですよね。そういう「良きせぬこと」をキーワードにできないかと思った。段ボールメーカーで何万の単位で業者に段ボールを売っている。ところが百、二百欲しいという小口の要望があって、うちは大口しかできませんと断っていた。社長が調べさせると結構な量になる。今はネットの時代で業者が直接消費者に送ることが多くなった。すると段ボールで送る、でも千、万の単位は必要ない、百、二百あれば十分なのです。そこで社長さんは手間はかかるけれども小口の注文にも応ずることにした。すると大口は値引きの要求がきついのだが、小口は上乗せしても買ってくれるというメリットがあった。また八百屋の話ですが、キュウリなどで曲がったのは捨てていた。ところがお得意の給食センターで従業員の人が急に来れなくなった。人手が足りない、困った。そこで八百屋に刻んだキューリを持ってきてくれと注文が入った。予期せざる出来事です。八百屋さんは近所の主婦の手助けを借りてキュウリを刻んでもらった。すると曲がったキューリでも半分折れたキューリでも刻めば立派な商品となる。今まで捨てていたが、活かせば一割程度のコストダウンができた。予期せざる情報は周りにある。いかにみつけるかです。尊徳の考えを経営に活かしている企業が長野にありますよと聞いて行ってきた。寒天パパで有名な伊那食品です。ここの会社の目標は「社員を幸福にすること」と書いてある。利益は社員を幸福にする手段にすぎないというのです。社長さんに伺うと座右の銘は「遠くを見るものは栄え、近くを見るものは滅びる」という二宮尊徳の言葉だという。伊那食品では収益の目標はないが、毎期増益増収になっている。安定的に伸びている。それを年輪経営という。営業計画を作らない。計数計画がない。あるのは前年を下回らないという目標だけ。全社員の１０分の１が研究職。従業員が３００人だと３０人が研究に従事する。寒天は昔は和菓子の材料だったが、固まらない寒天、ゴムより固い寒天、粉末の寒天など開発している。最近では落ちない寒天が口紅などに応用されヒットしている。寒天の用途が医薬品、バイオ、化粧品にまで広がっている。その根底にあるのは農民を愛した尊徳の考えです。人を愛する心が現代の経営にも生きているのです。

  2006年10月22日

• 狼少女の記録より

  「1941年、デンバー大学とエール大学の２教授によって重大な記録が発表された。それは、インドで狼に育てられた２人の子どもを発見し、これを捕らえて育てた記録だ。２人の子どもはシング神父に養育された。狼の洞窟から捕らえられた人間の子どもは、一人は満２歳くらい、一人は満７歳くらいの女の子だった。小さい子はアマラ、大きい子はカマラと名づけられた。狼に育てられた人間の子は、四つ足で歩き回り、目は狼のように暗闇でも見え、嗅覚はきわめて鋭敏だった。四つ足で犬のように早く走り、肩は広く、下肢は股のところで曲がって伸びていなかった。物も手は使わず口でくわえ、犬と同じような食べ方をした。年長のカマラは生肉を好み、腐肉も喜んだ。暑いときには舌をたれて犬のようにあえいだ。掌にはたこができていた。物音がすると歯をむいてうなった。カマラは闇を好み、火と太陽を恐れ、昼は眠ったり横になって、日が暮れると活動した。午後の１０時、午前１時と３時にほえた。２人は孤児院に入っても長い間、狼の習性をすてなかった。１年半たって、カマラはようやく直立することができたが、歩行は困難だった。数年後、カマラは歩行できるようになったが、急ぐ時は常に四つ足で走った。カマラは２年間、地面に置かれた皿に口をつけて食べたが、直立できるようになって初めて手でご飯を口に運ぶようになった。水を犬のように飲むことだけはなおらなかった。カマラは、庭で死んだ鶏をみつけるとそれを口でくわえて林の中に走りこみ、口のまわりを血だらけにして帰ってきた。また鶏を追いかけてかみ殺す癖はやまなかった。アマラのほうは、２ヶ月孤児院にいるうち、喉がかわいたとき水という言葉を発した。アマラは人間の世界に入って１年目に死んだ。カマラの嘆きは大きかった、涙を２粒だけこぼした。幾日も食事をとらなかった。カマラは５年目にコップから水が飲めるようになり、入浴する習慣もついた。７年目には４５の言葉が言えるようにまでなった。また歌を歌うようになった。着物もひとりで切れるようになった。カマラは７年目の秋、腎炎を発病し、９年目に尿毒症を続発して推定１７歳で死んだ。」鈴木鎮一先生はこう言われた。「このカマラの一生はわたしたちをして人間とその育ち行く本質について、深く考えさせずにはおきません。 環境に順応してどのようにも育つ高い可能性をもつ人間の一断面を、カマラはまざまざと私たちに教えてくれているのです。　直立歩行が人間の本質だとされていたのに、カマラが獣の四つ足歩行で走りえたということは、私たちの常識では考えも及ばなかったことであり、夜中の遠吠えの習性が消えなかったということにいたっては、あまりのそらおそろしさに慄然とするのであります。　乳幼児時代に育てられたものが、このように根強く人間の能力を決定してゆくかを思い知らされるのです。」☆鈴木先生が、ある会場で母親達にこのアマラとカマラの話をされたことがある。「子どもは生命活動で親の放射するものはなんでも吸収し、そして人間形成してゆくんですよ。つまり環境に適応して能力としていくのですから、親の言葉、親の行為はそのままよい手本となっていることを知らねばなりません。まだ幼児だからそんなことはわかるまいと親が考えていても、子どもはちゃんと見ているのですよ。この幼児の敏感な感受性というものは大人たちの想像以上です。たとえばお母さんがドアをバターンと閉める。お父さんが足で戸を開ける。すると子どもはそれを見てすぐまねをする。親たちのやっていることを子どもがまねる。これは教育していることと同じではありませんか。すると、親たちの生活の反省がまず第一だといわなければなりません。」すると聞いていたお母さん達は自分の生活のあり方を反省されて涙ぐむ方もいらっしゃる。最後の主催者側のあいさつに立たれたお母さんが「わたしたち狼の親たちは・・・」と挨拶され、それを聞いていたお母さん達がすすり泣きされたので鈴木先生は大いにお困りになったことがあるとのことです。

  2006年08月27日

• 心の中の小さい声

  赤リスのチャラッターはかごの外に飛び出しました。雪の積もった石垣をさっと駆け抜けると真直ぐ果物畑の家に向かって駆け出した。「チッカリー、チッカリー、チッカリー！」チャラッターは駆けながら叫びました。チャラッターが果物畑に無事着いたとき、それを最初に見つけたのは四十雀（しじゅうから）のトミーでした。トミーは、きつつきの古い巣のある大きなリンゴの木で、忙しく働いていたのです。ちょうどその時、チャラッターがそこへやってきたのです。トミーはチャラッターがブラウンさんの息子に穀物倉で捕まったことを知っていたので、止まっていた枝から落ちそうになりました。「おや、おや！君は、ほんとにチャラッターなのかい！」とトミーは叫びました。「どうやって、逃げ出してきたんだ。結構、結構、よく逃げ出して来られたね。」チャラッターは、トミーがよくやるような生意気な格好で尻尾をひらりと振ってみせました。そして目をキラキラさせました。自慢する絶好のチャンスです。「その、そのうー」チャラッターは、つまりました。それから、また喋り始めました。どうも言おうとしていることが、うまく出てきません。チャラッターの心の中の、あの小さい声が、また喋っているのです。「恥ずかしいと思え、チャラッター。恥を知れ。ほんとうのことを話せ。本当のことを話すんだ。」トミーは尋ねました。「こう言うんじゃないだろうね。僕は頭がいいから、ブラウンさんの息子をだましてあの小さな頑丈な檻から抜け出してきたんだって。」「そうじゃないんだ。」チャラッターは思わず答えてしまいました。「そうじゃないんだよ、トミー。本当はこうなんだ。ブラウンさんの息子は、わざと扉を開けておいてくれたんだ。僕を逃がしてくれたんだ。ブラウンさんの息子はみんなの考えているより、半分も悪い人じゃないぜ。」そのとき、後ろのほうから大きな声が叫んでいるのが聞こえました。「あっは、は、は！逃げていけ、赤いちびの腕白ものめ。」やはりブラウンさんの息子は、うっかり扉を開け放しにしたのではないのです。チャラッターをわざと逃がしてくれたのです。チャラッターが今度こそあの息子と仲良しになろうと決心したのはその時でした。トミーは「僕なら喜んで息子の手から食べ物をもらうぜ。あの人を信用しさえすれば、あの人は一番いい友達になるだろうぜ。」チャラッターは暫く迷っていたが、トミーにならってブラウンさんの息子からおいしそうなくるみをもらうことを決意する。半分ほど走っていって、はっとたちどまった。心の中の小さな声がはっきりと叫んでいた。「僕は怖いんだ」それは本当です。チャラッターはこわいのです。するともう一つの声が聞こえてきた。今度は心の中からではなく、果物畑のりんごの木のてっぺんからでした。「いくじなし、いくじなし、いくじなし！」かけすのサミーでした。自分で自分に「こわいんだ」というのと人からそういわれるのとでは随分違います。「なに、いくじなしだって・・・そんなことあるものか！僕は怖がってなんかいないぞ。」チャラッターはさっと前に走り、ブラウンさんの手からくるみをひったくり石垣に戻ってきました。「なあんだ。その気になったら随分前からなかよしになれていたのに。」そうなんです。そのとおりだったのです。☆「心の中の小さな声」とはなんだろう。「おしゃべりりすのチャラター」で、チャラターが穀物倉庫のねずみとりに気づくとき、チャラッターの「心の中の小さな声」は何度も何度もチャラッターにささやく。「ほっとけよ。そんなものに構うなよ。　」「わけのわからないものに構ってろくな目にあったためしがないぞ。　」「近づかないほうがいいんだぞ。　」「離れていたほうがいいぞ。　」「およし。およし。　とうもろこしがたっぷりあるじゃないか。それにそろそろ家に帰る時間だぞ。　」そのたびにチャラッターは、その声を無視して、結局わなにひっかかってします。これは良心というわけでもなさそうだ。どうも真実、とるべき正しい道を見抜く知恵が私たちの中にあるということであろうか。そしてこのことはキネシオロジー（以下キネシという）を思い起こさせる。キネシオロジーとは、「医学を基礎にした身体の運動に関する筋肉の解剖/神経/物理機能/生化学機能/運動機能を専門的に研究する学問」だとある。「パワーか、フォースか」（デヴィット・ホーキンス著　三五館）にはこうある。「キネシオロジーに関する最も衝撃的な発見は、体が有害な刺激にさらされると、筋肉が即座に弱くなるということです。たとえば低血糖症の患者が筋反射テストの際に砂糖を舌に置くと、三角筋（肩の筋肉で筋反射テストでよく用いられる）は即座に弱く反応します。これとは逆に体によいものだと、筋肉は即座に強くなるということが発見されました。特定の筋肉は、それに対応する臓器の病気に対応した反応を示したため、キネシオロジーは病気を見つける上で非常に役に立つ臨床手段として認められ、欧米では大学等で授業され、病院で診断テクニックとして広く使用されるようになった。研究者達は、結果が再現可能であり、信頼できることを確認した。たとえば人工甘味料を封筒にいれて、テストする側も被験者もその中身を知らない状態でも被験者の筋反射は弱くなる。このことは驚くべきことを示していた。つまり意識では気づかなくても、肉体（ＢＯＤＹ）は正確に答えてくれる。著者ホーキンス博士自身も１０００人の聴衆の前で講演していたとき、まず５００人に人工甘味料を含む５００個の封筒が配られ、残り５００人にはビタミンＣが入った別の封筒が配られた。二人ずつ組になって代わる代わるテストした結果、全員が人工甘味料には弱く、ビタミンＣには強く反応した。聴衆は封筒を開けてその事実を確認したとき、どよめきにも近い驚きの声があがった。アメリカでキネシオロジーを使った診療活動をされているドクター本間はある方にこの働きをこんなふうに説明されている。「例え話をするとね、最近の高級車には、スーパーコンピューターが備えられていて、エンジンに傷がついたり、オイルが漏れたりすると、そのスーパーコンピューターが、すばやくそれを察知して、どんなに、ドライバーが、アクセルを踏んでも、安全の為に、スピードが出ないようにする制御装置があるんだよ。　人間の肉体も同じように、スーパーコンピューターが、備わっていて、肉体の中で、例えば、心臓や肺が傷ついたり、胃や腸に問題があると、その傷を察知して、どんなに、人間が、筋力を出そうと思って、力んでも、力が出ないようにする制御装置があるんだよ。　つまり私たちの体に「毒」となるものが、口の中に入るとき、私の意識が、どんなに力を入れても、私のさらに大きい意識（ハイアーセルフ）が、肉体を守るために、パワーダウンさせている状態なんだよ。　これが、キネシオロジー（Kinesiology）、正確には、AK（アプライド・キネシオロジー）というんだよ。」　そして、キネシオロジーの作用に熟達してくると、「ある状態（人、場所、物、感情）を心に思い浮かべるとき、被験者はそれが自分によいかどうか筋反射を通じて知ることができる。」おそらくチャラッターがネズミ捕りのわなに入るとき、キネシで筋反射を確認したとすれば、即座に弱く反応したに違いない。これが心の中の小さな声の正体にほかならない。それはキネシによって始めて再現可能な診断方法として認識されるようになった。私たちの体は、ある状態が自分にとってよいことか悪いことかを知っているのだ。それを注意深く自分のうちに探すとき、経験的に体の中の「小さな声」として言い伝えてきたのではなかろうか。私はかってドクター本間に質問したことがある。Ｑ　自分の心と体は宇宙に繋がっている。それはいわば受信機みたいなもので、すべて答えはそこにあり、キネシオロジーの筋反射テストで確認できるということでしょうか。Ａ　「自分の心と体は宇宙に繋がっているかどうか、私は証明できません。ただ確かなことは、自分のこころも体も単に自分の思い通り（我のとおり）には動いていないことはキネシで確かにわかります。 　キネシをする時、体は受信機みたいな働きもします。すべて答えはそこにあるかはわかりませんが、キネシオロジーの筋反射テストで自分の思考以外の働きが自分の中にあることは確認できます。自分の思考の範囲を広げます。」ドクター本間の医学に携わるものとして確実なことだけを回答しようとする態度に私は感動した。キネシオロジーによって、自分の心も体も自分の思い通りには動いていないことがわかる。キネシオロジーの筋反射テストで自分の思考以外の働きが自分の中になることが確認できる。それによって自分の思考の範囲を広げることができる。先日ドクター本間からエア・メールが届いた。開くと一枚のビラが入っていて、こう書いてあった。「ここ数年、日本でも少しずつキネシオロジーの知名度が上がってきました。このキネオロジーとは、人間のからだ・こころ・顕在意識・潜在意識に反応し、心身共に健康になるための近道を示してくれる、素晴らしいセラピー・健康法です。道具も要らず、疲れず無痛です。またキネオロジーは、他のどんな分野とも融合します。カタリナ島でのセミナーは、20年の臨床経験を持つDr.本間の、目の行き届いたきめ細やかな指導のもと、実技を中心に少人数で行われます。ヘルスサポート・キネシオロジー５日間集中セミナーinカタリナ島」ふふふ、時間とお金のある方はぜひドクター本間のセミナーを受講することをお勧めする。それはきっと思考の範囲を広げ、新しい世界が目の前に広がるに違いない。

  2006年03月18日

• あなたが相手によくすれば　敵がみかたに変わります

  　本当の悪人は　いないもの　誰でも　美点は　持っている　あなたが　相手によくすれば　敵が　みかたに　変わりますりすのチャラッターは、ブラウンさんの息子のしかけたネズミとりの罠（わな）にまんまとひっかかって捕まってしまいました。猫のプーが一噛みにしようと息子にすりよってきて、チャラッターは生きた気持ちがしません。でも、ブラウンさんの奥さんのとりなしで命は助かったものの、「そら、これがおまえの新しい家だ。」と奇妙な箱のてっぺんから入れられました。はじめ、チャラッターは牢屋（息子はカゴといっていました）で暮らすくらいなら、死んだほうがましだと考えていました。チェラッターは、もう食べまいと決心したのです。ブラウンさんの息子が入れたとうもろこしには手も触れません。かごの中の切り株のほらあなの中で、丸くなって死ぬまでじっとしてやろうと決心しました。長い一日の間、チャラッターは一度だって、鼻の先を穴の外に出しませんでした。何べんも何べんもブラウンさんの息子は見にきました。そして口笛をふいてやさしく呼びかけました。しかしチャラッターはこそりとも音をたてません。とうとう夜になりました。さあ、チャラッターのおなかがグウグウ鳴り出しました。「僕は飢え死にすることに決めたんだ。」とチャラッターは繰り返し繰り返しひとり言を言いました。おなかが囁きました。「こっちは空っぽだよ。　強情さえ張らなければ、たっぷり詰め込めるだけの食べ物が、目の前にあるじゃないか。」おいしい食べ物のことを考えまいとすればするほど、そのことを考えてしまいます。いらいらして落ち着かなくなり、もぞもぞ、ごそごそ体を動かしました。チャラッターは、小さな丸い穴の外に頭を突き出した。あたりま真っ暗で、耳をすましても何も聞こえます。おなかが囁きました。「あそこで、とうもろこしの山が待っているよ。」チャラッターは荒々しく言いました。「触ってだってやるもんか。」ちょうどそのときチャラッターの足が何かにぶつかりました。それはコロコロと転がりました。くるみでした。まるまるとしたくるみです。「ひ、ひとつだけ、飢え死にする前に食べてみよう」とチャラターはつぶやきました。一つ食べてしまうと、もう一つくるみが見つかりました。それを食べるともう一つ。こうなったらとうもろこしまで・・・もうおなかは一杯です。もう飢え死にしたい気持ちはなくなっていました。「しばらく様子をみよう。それには居心地をよくしなくちゃ。」そこでかんなくずやボロ布を木の穴に運び始めました。そして居心地のよい寝床ができました。チャラッターは生きていく決心をしたのです。☆ああ、ふと昔、ある人から聞いた話を思い出した。もう戦前のことだろうか、その方のお父さんがおまわりさんをしていて、ある日猿島という島から鹿が一頭海を渡って泳いできた。その父君は鹿を捕まえて危険だからと角を切り落とした。するとその後、父君からは絶対に餌をもらわなかったというのです。生き物の意地というかそんな話を思い出した。チャラッターは、生まれてからずっとブラウンさんの息子を敵だと思っていました。ところがブラウンさんの息子は動物たちと仲良しと思って動物たちを追いかけていたのです。捕まえなければ友達になれないと思っていたのです。しばらくして追いかけたって捕まるものじゃないことがわかると、動物たちは自分と仲良しになりたがらないのだと思いました。そこでブラウンさんの息子は動物たちをいじめはじめました。動物たちを知恵でだしぬいてやるのは、なかなか面白いことなのです。チャラッターも「僕はブラウンさんの息子は嫌いだ。二度とあいつの顔なんか見たくないんだ。」と自分に言い聞かせていた。でも、ブラウンさんの息子は、来るたびに何かしらおいしい木の実やチャラッターが遊び道具を持ってくるのです。いつもまにかチャラッターは息子の来るのを楽しみに待つようになりました。ある日、ブラウンさんの息子が持ってきたくるみを見れいる前で食べました。なんとはなしに怖がらなくてもいいとわかって、また一個食べました。息子はうれしそうに笑っていました。「いつかはきっとおまえと仲良しになれると思っていたんだよ。」

  2006年03月02日

• りすのチャラッターつかまる

  悪い　行いをした人はやがて　いつかは　思い知る犯した罪は　消えはしない必ず　報いが　やってくるチャラッターにもこのことがぴったりとあてはまります。チャラッターがお百姓さんのブラウンさんの穀物倉からとうもろこしを盗み出したことはいけないことだったのです。ブラウンさんの息子がしかけたネズミとりによりにもよってチャラッターがつかまってしまったのです。あれだけ心の中の小さな声が止めたのに。「へへんだ！僕はこわいと思うようなことにお目にかかってことがないんだぜ」とピーター・ラビットに自分が知恵が働くことを自慢していたのに。さて、チャラッターの鋭い歯もネズミとりの丈夫な針金には、全然役に立ちません。外に出ることができません。チャラッターは心臓がドキンドキンと胸の中で、踊って痛いぐらいでした。おや！あれは何でしょう。小屋の扉の外で足音がします。ブラウンさんの息子がやってくるのです！小屋の扉が開きました。光がさっとさしこんできて、それと一緒にブラウンさんの息子が入ってきました。「いよう！」と息子は叫びました。「そうか、泥棒はお前だったか。そうか、そうか、この赤い悪者め。泥棒は最後にはろくな目にあわないってこと、知らなかったのかい。さあて、お前をどうしてやろうかな。」息子はネズミとりを持ち上げ、小屋の外に出ました。外は美しい広い野原や畑です。ブラウンさんの息子は、ネズミとりを地面において、それから大声で叫びました。「プー、プー来い。」チャラッターの心臓は今度は驚きのあまり、打つのが止まったようでした。子猫のプーがいるのです。子猫はネズミとりの周りを歩き回って、しきりに匂いを嗅いでいるうちに、その黄色い目はランランと光ってきました。「お前の朝飯にご馳走してやろうか」とブラウンさんの息子が言いました。「にゃあ」と鳴いて子猫は、背中を丸くしてブラウンさんの息子の足に体をすりつけました。「どうだ、こいつを離してやったら、お前はつかまえられるかい？」「にゃあ」と子猫は鳴きました。「よし、よし。後で試してやる。ほら朝ごはんの鐘が鳴っている。それにまだヒヨコに餌をやっていないからな。」「なんだね、そこに持ってきたのは。」大きな声が尋ねました。お百姓のブラウンさんの声です。朝ごはんを食べているところでした。「うちの小屋からとうもろこしを盗んでいた泥棒を捕まえたよ。赤りすのならずものだよ。」「お前はこいつをどうするつもりだ。」「さあどうしよう。猫に朝飯としてやってもいいんだけど。ずっとせっつかれているんだ。」息子の目はいたずらそうにキラキラしています。「いいえ、とんでもない。そんなことをしちゃいけません。そんな恐ろしいことをしてはいけないわ。」とやさしい声が叫びました。「みどりの森へ連れていって、離してやりなさい。」目に憐れみの色を浮かべたやさしい顔がネズミとりの上に近づきました。「ごらん、このかわいそうな小さなけものがなんと怖がっていること！朝ごはんがすんだら、みどりの森へ連れて行って、すぐ、離してやりなさい。」「まったく、お母さんらしいなあ」と息子が叫びました。「神様がこんな小さな生き物をおつくりになったのよ。そして神様のお考えの中では、みんなそれぞれが住む場所を持っているのよ。」とお母さんがいいました。「全くお母さんの言うとおりだ。しかし困ったことには、やつらが時々そこにじっとしていないことだ。とにかくこいつの住む場所は緑の森であってわしらの穀物倉じゃない。」とブラウンさんは愉快そうに笑っていいました。「じゃ、その正しいすみかに戻してあげなさい。」そこでみんなにこやかに笑いました。こうしてりすのチャラッターは一命をとりとめたのでした。☆作者のバージェスは生まれて9ヶ月目に父親がなくなりました。お金などない家でしたから、お母さんが苦労して息子を育て上げたのです。バージャスも小学生の頃から家計を助けるために働きました。このブラウンさんの奥さんにはきっと、バージェス自身のお母さんの面影があるのです。なんという優しいそして凛とした強さをもったお母さんだったことか・・・。それにこんな会話がきっとあったに違いないとさえ・・・。目に憐れみの色を浮かべたやさしい顔が近づきました。「ごらん、このかわいそうな小さなけものがなんと怖がっていること！バーチェス、朝ごはんがすんだら、森へ連れて行って、すぐ、離してやりなさい。」「まったく、お母さんらしいなあ」とバーチェス少年が叫びました。「神様がこんな小さな生き物をおつくりになったのよ。そして神様のお考えの中では、みんなそれぞれが住む場所を持っているのよ。その正しいすみかに戻してあげなさい。」

  2006年02月26日

• たとえ小さなことでさえうかうかぼんやりしていると油断大敵、災難があなたのところにやってくる

  光姫さんよりメッセージをいただいた。光のメッセージに来ていただいてありがとうございました。嬉しかったです。ビリーおじさんのストーリーをここで拝見できて感激です。もう、すっかり内容は忘れてしまっていたんです!歌をプレゼントしますね。昼の月忘れるほどのさやかさが胸にしみいる母の愛ほど」そもそもこの「バージェス・アニマル・ブックス」を読んだきっかけは光姫さんのこんな文章を見たからだ。「ふくろねずみのビリーおじさん」という本だったと思うのですが、小学校の時、大事な文章を読みました。ふくろうが教えてくれたのだったかな。『ケンカは両方が怒ってないと成り立たない。』相手が怒っていても私は怒らないことにしよう、と決意しました。そうしたら、ケンカは回避されますもんね。」そして読んでみると、91歳で100冊近い本を書いたソーントーン・バーチェスという人の本は「気づき」の言葉に満ちている。そして光姫さんのように小学生のとき、確かにそのメッセージを受け取って一生の指針とする人もいるのだと感銘する。「おしゃべりりすのチャラター」は他のアニマル・ブックスとは違って、そうした子どもへの「気づき」のメッセージが枠で囲って章の冒頭にポンと置いてあるのが面白い。「たとえ小さなことでさえうかうかぼんやりしていると油断大敵、災難があなたのところにやってくる」この教えを、すぐ忘れる人がいるようです。チャラッターもそうでした。あんな災難（いたちに追いかけられて命からがら逃げた話）にあって辛い思いをしたのだから、この教えをすっかり憶えこんでおけばよかったのに。毎朝毎朝チャラッターはお百姓さんのブラウンさんのうちの人が起き出す前にブラウンさんの穀物倉にしのびこんでいきました。そしてブラウンさんの息子が出てきて、朝の仕事に取り掛かる前に見つからないように自分のうちに帰ることにしていました。チャラッターは穀物倉では盗んでも分からないようなところからだけ盗むように気をつけました。・・・本当にチャラッターはなんとまあ賢くて抜け目がないんでしょう。しかし、暫くの間、何事も起こらないとチャラッターは安心して用心しなくなりました。・・・チャラッターは時々とうもろこしの粒をこぼしましたが、すっかり不精になってそれを拾おうともしませんでした。ブラウンさんの息子は毎朝鶏にやるためにとうもろこしを取りにきて、このこぼれた粒に気がつきました。しかし息子はそれはとうもろこしを運び込むときに、こぼれおちた粒だと考えました。ところがある朝チャラッターは、粒を食べてしまったじくを落としたのです。自分のうちに戻ってからそのことを思い出しました。「まあ。いいや。たいしたことじゃない。明日の朝拾って隠しておこう」その朝ブラウンさんの息子はチャラッターの落としたじくをみつけて目をむきました。「は、はあん、そうか！」と息子は考えました。「つまり泥棒がいるんだな。ネズミが入ってきたのかな。ようし、捕まえてやるぞ。ネズミくん、お前をここに入れとくわけにはいかないんだ。」そう言ってブラウンさんの息子は家に帰って、「ねずみとり」をぶらさげて戻ってきました。さて、チャラッターはいつものように小屋に忍び込んできました。チャラッターの鋭い目は前にはなかった変なものを見つけました。それは扉の近くの床の上においてありました。それはとても奇妙な格好をしていました。いったいあれは何なのだろう。チャラッターは油断のない目つきでそれを見ました。危険なものには見えません。動かないからです。チャラッターは二、三歩近づいてキイーとうなってみました。見知らぬものに出会ったときいつもやる癖です。それでも相手はじっとしています。チャラッターは小屋の小さなさんにとびあがってその奇妙な格好をしたものを上から見下ろしました。それは中が見通しでした。中に何か食べ物が置いてあります。チャラッターの心の中の、小さな声がいいました。「ほっとけよ。そんなものに構うなよ。　」「だけど、見たいんだ。見て。そしてすっかり知りたいんだ。」「わけのわからないものに構ってろくな目にあったためしがないぞ。　」と小さな声がいいました。「だけど、とっても奇妙な格好をしているし、でも生き物じゃないからかみつきっこないよ。」そう言ってからチャラッターはとうもろこしの山にかけもどってそれを食べようとしました。ところがどうしてもあの床の上の奇妙なものから目を離すことができないのです。心の中の小さな声が注意しました。「近づかないほうがいいんだぞ。　」「見つめるぐらいいいじゃないか。ケガするわけじゃあるまいし」そしてチャラッターはもう一度少しずつその奇妙なものににじりよっていきました。とうとうチャラッターはそばまで来てにおいをかぎました。チャラッターがにおいをかいでいたものは何でしょうか。もちろん皆さんはもお分かりですね。それは「ねずみとり」でした。チャラターは触りました。何もおこりません。それからその上にとびのりました。それでも何もおこりません。するどい歯でそれに噛み付きました。だが、とても噛み切れません。中には何かおいしいものが置いてありました。とてもいいにおいがするのです。いったいどんな味がするのかな。「離れていたほうがいいぞ。　」と小さな声が心の奥のほうで言いました。「ふ、ふんだ。こんなもの、こわいもんか。」チャラッターの目の前には針金のドアのついた小さな丸い入り口がありました。二、三度鼻でおした後、チャラターはとうとう首をつっこみました。すると、そら、目の前にあんなにも食べたがっていた食べ物があるじゃありませんか。「さっと、飛び降りてあれをくわえて、またさっと引き返してくればいいんだ」とチャラッターは考えました。「およし。およし。　」と心の中の小さな声がいいました。「とうもろこしがたっぷりあるじゃないか。それにそろそろ家に帰る時間だぞ。　」「帰るには１分もかからないよ。あれがどんな味がするか、本当に食べてみたいんだ。」そういってチャラッターは中にとびいりました。パチン！チャラッターは上をみあげました。小さな針金のドアはしまっています。とうとう災難にあってしまったのです。☆心の中の小さな声との対話が印象的だ。きっとバーチェスは、子ども達に心の中の小さな声に耳を傾けてほしかったんだな。私達の体は宇宙とつながっていて耳を傾けることができれば、真実に到達できる。ソクラテスのデーモンもきっとそういうものなんだな。

  2006年02月24日

• ああ、人のことなんか構うんじゃなかった、ぺちゃくちゃお喋りなんかするんじゃなかったチャッタラーは必死で逃げながら思った。

  アメリカのソーントン・バージェスの（1874-1965）は、優れたアニマル・ブックスを次々と書いた。シートンや椋鳩十のように動物の行動を通して子ども達に生きる知恵や勇気を与える文章を書いた。バージェスは母子家庭で苦労して育った。そして少年時代から家計を助けるためよく働いた。でも少年バーチェスは、海岸の松林に吹き付ける風の音を聞くとじっとしていられなかった。戸外にとびだしては、野原や林の中や、沼地や海岸を飛びまわった。魚釣りをしたり、動物たちの後をつけてみたり、鳥の巣を探したり、花を摘んでお母さんにあげたりする子だった。バーチェスの文章にはそうした動物達に対する愛情と観察眼が生きている。残念ながら金の星社から出ているアニマル・ブックスは絶版である。図書館等で借りて読んでいただくしかない。ここではその中の一部をはしょって紹介している。小さなお子さんがいらっしゃったらぜひ挿絵の載った本を読み聞かせしていただきたいものだ。ああ、子どもが小さいうちに知っていれば、読み聞かせしてあげたのに。読み聞かせするうちにバーチェスが物語りにこめた父から息子への気づきのエッセンスをミルクを飲むように飲みほしていくことだろう。【おしゃべりりすのチャタラー】よりおしゃべりりすのチャタラーは、いつも文句を言っていました。胸がどきどきするような面白いことがなかなかないからです。胸をどきどきさせるために、チャタラーは寝ているあらいぐまのボビーを起こすようなこともしました。ボビーはものすごく怒ってお前を生きたまま食べてやると脅かしました。赤りすのチャッタラーはボビーの周りを跳ね回っていろんな悪口をいってからかうのがとても面白いのです。そうです。たまらなく面白いのです。それというのも、のろまのボビーがいくらその気になったって、チャッタラーを捕まえっこないからです。チャッタラーはそのことをよく知っていました。ところが今日は違います。これほど胸がどきどきしたことはありません。というのはチャタラーは今命がけで逃げているのです。そう、本当に命がけなのです。心の中にあるのは、こわい、こわいという思いだけでした。今チャタラーの後ろから目を真っ赤にして追いかけてくるやつは、チャッタラーのいけるところへは、どこへでも行けるし、チャッタラーが入り込める穴ならどんな穴だってもぐりこめるのです。おわかりですか。いまチャタラーを追いかけているのは、いじわるイタチなのです。いじわるイタチは、とても体がしなやかなので、チャッタラーだって通り抜けられないようなところでも、するりと入ったりするのです。チャッタラーはもうどこをどう通っているのか分かりません。頭の中にあることは一つだけです。走って走って走れなくなるまで走って、それから、ええと、そうです。とてもかなわないことは分かっています。でも最後にひと噛みでも噛み付いてやることでした。「ああ、困った、困った」チャッタラーは木の枝から次の枝へ飛び移りながらすすり泣きました。「ああ、人のことなんか構うんじゃなかった。ぺちゃくちゃお喋りなんかするんじゃなかった。黙っていればいじわるイタチも僕がいることに気がつかなかっただろうに。　」（ぷふっ*^.^*、チャングムのちっちゃい頃の後悔みたいだな。人の悪口を言ったり、自分の自慢をしたりしちゃいけませんよね。）チャッタラーは命がけでにげていきます。そのとき、チャッタラーは命がけの冒険を思いつきました。うまくいけばいじわるイタチから逃げることができるかもしれません。チャッタラーは高い栗の木のてっぺんに近いところに大きな茶色の丸いものがあるのを見つけたのです。チャッタラーは、ありったけの力を振り絞ってその木に向かって駆け出しました。茶色の丸いものはいったい何でしょう？おやおや、それはなんとあの赤いしっぽの鷹なのです。鷹が首を肩の間につっこんで、うつらうつら居眠りをしているのです。鷹は眠っていて全然こちらに気がついていません。気がついたら鷹はりすだっていたちだって同じように飛びかかっていくでしょう。だからチャッタラーは大変大胆な冒険を考え出したのです。「下手をするとつかまってしまうかもしれない」とチャッタラーは木を駆け上りながら考えました。「だけどこれしか助かる方法はない。」チャッタラーはどんどん木を登っていきます。後を追いかけていじわるイタチが登ってきます。いじわるイタチはチャッタラーをつかまえるのにあんまり夢中になっていて鷹に気がついていません。チャッタラーは鷹のすぐそばを真直ぐにのぼっていきます。そして通り過ぎるとき、鷹のしっぽの先をグイとひっぱりました。（さあ、チャッタラーといじわるイタチの運命やいかに）

  2006年02月11日

• ピーター・ラビットはのねずみダニーが涙をふいてくれているのに気がつきました。（続き）

  「のねずみダニーのぼうけん」より犬のバウザーは、まだ、ピーター・ラビットの姿を見つけてはいませんでした。けれどもピーターの足跡を見つけていました。ですからすぐにもピーターの姿を見つけるに違いありません。かわいそうなピーター・ラビット！棒杭を噛み切ってしまう時間はありません。ピーターはびっくりしてわなにかかった時と同じように跳び上がりました。けれども前と同じことでした。ピーターはペタンとひっくり返ってしまったのです。そのとき、犬のバウザーがピーターを見つけました。バウザーは大きな口を開けてうなりながら近づいてきます。ピーターは気違いのようになって跳び続けました。すると棒杭がポキッと折れました。その勢いでピーターの体はすってんどうと転がりました。ピーターは一生懸命に走りました。棒杭をひきずって走るのは大変な仕事でした。けれどもピーターは走り続けました。そしてピーターはやっとの思いでくだもの畑の石垣の中へとびこみました。犬のバウザーは、ピーターが石垣の中へ入るのを見るとがっかりして、月に向かってほえました。ピーター・ラビットは、お百姓のブラウンさんのくだもの畑で石垣の中にすわっていました。お月さまが明かりを消して真っ暗にしてくれるのを待っていたのです。お月さまが明かりを消せば、元気な丸くて赤いお日さまがバラ色の寝巻きを脱いで真っ青な空をのぼりはじめます。ところが冬になるとお日さまは寝坊です。ですからお月さまが明かりを消してから２，３時間真っ暗になるのです。ですからこの時間はピーターが住みなれたいばらのやぶへ帰るのに一番安全でした。そこでピーター・ラビットは暗くなるのを待ち続けました。ピーターの足はますます痛くなっていました。ピカピカの針金がピーターの足にくいこんでいたからでした。その上棒杭は折れましたが、まだ針金の端についていました。棒杭をひきづっては、何かに追いかけられても早く走れません。ですからピーターは真っ暗になるのを待つしかありませんでした。お月さまがすっかり明かりを消しました。ピーターは耳をよく働かせました。何の音も聞こえませんでした。そこでピーターは石垣からはいだしました。ところがすぐに困ったことが起こりました。針金の先についていた棒杭が石垣の間にはさまってしまったのです。ピーターは足をぐっと後ろへぴっぱられました。その時の痛いことといったらありませんでした。涙が出てきました。けれどもピーター・ラビットは歯をぎゅっとかんで、我慢すると棒杭を石垣からはずしました。そして棒杭をひきづったまま歩き出しました。ピーターはゆっくりとくだもの畑を横切って反対側の柵をくぐりました。足は一層痛くなるばかりで、雪にさわってもヒリヒリしました。そして棒杭はひきづるたびに重くなるように思えました。やぶのしげみを棒杭を引きずって進むのは大変やっかいでした。棒杭はしょっちゅうやぶにひっかかりました。そのたびにピーターは泣きたくなるほど足が痛みました。ピーター・ラビットは繰り返し自分に言い聞かせました。「用事もないのにどうして桃の木のくだもの畑なんかに行ったんだ。　みどりの森のいばらのやぶで満足していればよかったんだぞ。」のねずみダニーは、ピーター・ラビットにお百姓さんのブラウンさんのくだもの畑に行かないように一生懸命言いました。ところがピーター・ラビットは、ダニーの心配を笑いとばして元気よく出かけてしまったのです。それにしてもピーターはなぜ帰ってこないのでしょう。のねずみダニーは歩きながらひとり言を言っていました。「ここだって素敵じゃないか。　それで満足していればいいのに。　とびだしていかないで、　おとなしくここにいたほうが　いいんだよ」のねずみダニーはいばらのやぶの端っこに座って、ピーター・ラビットを待ち続けていました。ピーターはいばらのやぶに近づいてきました。ピーターはやっとのことで秘密の道にはいあがりました。ところが引きずっていたものがいばらにひっかかりました。ピーターは雪の中に倒れてしまったのです。ピーター・ラビットは雪の上に倒れて泣いていました。ピーターはひどいめにあって疲れきっていました。その上自分の家の入り口まで来て、動けなくなってしまっては悲しくなるのも当たり前ですよね。やがてピーター・ラビットは誰かが涙をふいてくれているのに気がつきました。それはのねずみのダニーでした。ダニーはおかしなキーキー声で歌っていました。「泣いたってしようがない。　どうにもならないよ。　涙をふいて　頭を使うんだ。　あしたのことだけ考えよう　そうすりゃ悲しくないさ。　きのうは行っちゃった。　あしたはまだ来ない。　きょうの心配ごとを　つまみだそう。　あしたはきっといい日だよ。」この歌を聞くとピーターはちょっと笑いました。「そうそう、ピーターもっと笑えよ。思い切り笑うんだよ。心配事なんてもうたくさんだろ。君と僕と二人一緒に考えれば何でもできちゃうよ。」

  2006年02月07日

• ピーター・ラビットはのねずみダニーが涙をふいてくれているのに気がつきました。

  「のねずみダニーのぼうけん」よりピーター・ラビットはくだもの畑の石垣の中に長い間隠れていました。そのうちあたりが静かになって月の光が雪の上に木のかげを作りはじめました。ピーターはやっと石垣からはいだしました。犬のバウザーはどこにもいませんでした。くだもの畑は前の晩と同じように静かでした。ピーターは大急ぎでまっすぐ家に帰ろうと決心していました。ところがピーターは知りたがりやでした。ブラウンさんと息子が若い桃の木につけていたものを見たくて仕方がありませんでした。そこでピーター・ラビットは近くの木のそばに行きました。木の幹は地面からピーターが届かないほど高いところまですっかり金網で包まれていました。ピーターがおいしい幹の皮をかじれないようにしてあったのです。ピーターは食べれないと思うと少しでいいから桃の木の皮を食べたくなりました。ところが隣の木も金網で包まれています。ピーターはやはり家に帰ろうと思いました。けれども前の晩に食べた幹の皮はなんておいしかったことでしょう。ピーターはそれを思い出すと帰るのをやめて３番目の木に行ってみました。３番目の木も同じように金網で包まれていました。くだもの畑の端まで来てピーター・ラビットはとうとう金網がついていない桃の木を見つけました。「きっと　金網をつけ忘れたんだ。」と思ってピーターは目を輝かせました。あたりの雪の上にたくさんの小さな針金が光っていました。けれどもピーターは針金に気がつきませんでした。若い桃の木のおいしそうな皮しか見えなかったのです。ピーターは雪の上の針金の中に飛び込みました。ちょうど幹の皮にかぶりつこうとしたとき、片方の後ろ足に何かがまきつきました。ピーター・ラビットは驚いて逃げようとしました。ところがピーターは飛び上がると同時にペタンとひっくり返ってしまいました。その上、後ろ足に巻きついたものは、ますますしっかりとピーターをつかまえてしまいました。ピーターは怖くなって雪の上に寝転ぶと足をけりました。力いっぱいもがいてみました。けれどもピーターが暴れれば暴れるほど、足にまきついたイヤなものはきつくなるばかりでした。とうとうピーターは疲れきって足をける元気もなくなりました。しばらくしてからピーターラビットは起き上がって足にきつくまきついたものを調べました。それはピーターがときどきつまずく木苺のつるに似ていました。けれども光っていて棘も枝もありません。そして一方の端は棒杭にしっかりと結び付けられていました。それは針金の　わな　だったのです。ピーターはブラウンさんが桃の木に何をつけたのかと知りたがらなければよかったのにと思いました。大きな涙がピーターの頬を転がり落ちました。どうすればわなからぬけられるでしょうか。やがてピーターは針金のわなが結びつけられている棒杭を思い出しました。木の棒杭ならピーターの歯で噛み切れるはずです。ピーターは元気を出して、周りの雪を掘ると棒杭をかじり始めました。ピーター・ラビットは一生懸命に棒杭をかじり続けました。そして半分以上噛み切りました。ところがその時、くだもの畑の端でくんくんという音が聞こえました。見ると誰がいたと思いますか。そこにはもちろん犬のバウザーがいたのです。(続く）

  2006年02月06日

• ピーター・ラビットは知らずにとても悪いことをしていたのです。

  「のぬずみダニーのぼうけん」より「行かないで、ピーター。　行っちゃあいけないよ。」のぬずみのダニーは頼みました。けれども、ピーター・ラビットは、茨のやぶのはしへ跳んでいきました。そして、月の光の中で、雪でおおわれたみどりが原やお百姓さんのブラウンさんの家の裏にある丘を見回していました。その丘に若い桃の木が植わっているくだもの畑があるのです。ピーターはしじゅうからのトミーから桃の木のことを、行ってみたくて仕方がなかったのです。若い桃の木の柔らかな幹を考えるたびに、ピーターは口に唾がたまるのでした。「ぼくはとても勇敢だ　そらゆけ　ピョンピョン　ピョン　世界を見にいく　ピョンピョン　ピョン　ぼくの耳は長い耳　強くて長い足もある　今夜は月夜だ　気分もいい　そらゆけ　そらゆけ　ピョンピョン　ピョン」こんな歌を歌いながら、ピーター・ラビットは安全な住み慣れたいばらのやぶを出ていきました。ピーター・ラビットは月の光の中を急いで行きました。時々立ち止まるとあたりを見回して耳をはたらかせました。森の向こうでふくろうが食べ物を探して恐ろしい声で鳴いていました。けれどもふくろうの声は遠くに聞こえました。ですからピーターは何も怖くありませんでした。ちょうどいい頃にピーター・ラビットは若い桃の木があるくだもの畑に着きました。しじゅうからのトミーが言ったとおりでした。ピーターは一番近くの桃の木に飛びついて幹をかじりました。そのおいしいことといったらありません。ピーターは桃の木を回りながら、幹の皮をかじって、幹を裸にしていきました。長い後ろ足で立ち上がると精一杯上のほうまでかじりました。それから雪を掘って下のほうまの幹の皮も食べました。そして食べるところがなくなると次の木に移りました。ピーター・ラビットは何も知らずにとても悪いことをしていたのです。ピーターが幹の皮をみんな食べてしまったら、若い桃の木は枯れてしまうのでした。桃の木は根っこから枝の先まで続いている細い管から食べ物をもらって大きくなるのです。そしてこの細い管というのは、幹の皮の中にあります。ですからピーターが皮を食べてしまうと細い管もなくなってしまいます。細い管がないと桃の木は食べ物をもらえなくなって、死んでしまうのです。ピーターはおなかがいっぱいになるまで食べ続けました。そしてピーターは桃の木の皮があまりおいしかったので、周りに注意することを忘れてしまいました。ピーターがもっと皮を食べようとした時でした。突然すぐ後ろで大きな唸り声がしました。ピーターは驚いて飛び上がりました。ピーターはあわててくだもの畑の反対側にある石垣へ飛び込みました。大きな口でうなっていたのは、犬のバウザーでした。犬のバウザーは一晩中石垣の近くを歩き回っていました。ピーターは家に帰れなくて困ってしまいました。みなさんも失敗をしてしまったとき、あんなことをしなければよかったと思うでしょう。ピーター・ラビットも同じでした。ピーターは石垣の中でくだもの畑に来なければよかったと考えていました。やがて、お百姓のブラウンさんと息子がくだもの畑に入ってきました。二人はピーターが皮を食べて裸にしてしまった桃の木を見ていました。二人の話し声を聞いていると、とても怒っているようでした。二人は一旦帰ってすぐに戻ってきました。ブラウンさんと息子は一日中桃の木に何かをつけていました。「ぜったいにこらしめてやるぞ！」ピーター・ラビットは、これを聞いて考えました。「こらしめるってどうしてだろう。誰をこらしめるのだろう。僕かな・・・。まさか。僕はこらしめられることなんて何もしてないもん。」☆自分のことって、なかなか分からないものですねえ。そういえば、　松井秀樹さんが、世界一受けたい授業に出演したという日記があった。「１００％のパフォーマンスを発揮させるために「経験」、「記憶」、「ルーティン」、「集中力」が大切だというコト。「記憶」という話では、自らの４００本以上のホームラン全てを記憶していました。」そして「僕は天才ではない」と話したそうです。その話を聞いていた、脳科学者の茂木先生が「自分を客観的に見るコトが出来、どういう風に努力すれば知っているのが天才。だから松井選手は天才なんだ」と話していました。」

  2006年02月05日

• のねずみのダニーが空から降ってきた

  「のねずみダニーのぼうけん」（バージェス著）よりピーター・ラビットは茨（いばら）のやぶに住んでいました。ある朝ピーターが、まだうとうとしていた時、四十雀（しじゅうから）のトミーが飛んできました。そしてピーターに挨拶しました。「ディディ　チュクチュク　おはよう。　だーれだ。　あててごらん。」ピーターが目を開けると、トミーはピーターの頭の上の、いばらの枝からのぞきこんでいました。トミーはあっというまに、ピーターの前に降りてきたかと思うと、またいばらの枝に飛び上がりました。あっちに行ったりこっちに行ったり、少しの間もじっとしていません。「ディディ　チュクチュク　楽しいなあ。　みんな　僕に親切だもの。　ディディ　チュクチュク　きょうも一日　楽しいぞ」「おはよう、トミー。どこから来たの？」「丘の上からさ。　農夫のブラウンの新しいくだもの畑からだよ。　あの果物ばかけの若い桃の木には虫のたまごがいっぱい付いているんだよ。」ピーターはトミーから聞いた果物ばたけが忘れられません。若い桃の木を食べたくてしかたがなかったのです。そのときドスンと空から何かが落ちてきました。ピーターはひっくりかえりそうなほど驚きました。いばらの中にいれば安心だとわかっていましたが、怖くて心臓が止まりそうでしだ。ピーターはしばらくして元気を取り戻すと、何が空から落ちてきた見に行きました。落ちてきたのはのねずみのダニーでした。ダニーはゆっくりと目を開けました。けれども急いで怖そうにまた目をつぶりました。「ねえ、ダニー、君はいったいどこから落ちてきたんだい。」はて誰の声でしょう。ピーター・ラビットの話し方に似ています。ダニーは目をあけてみました。やはりそこにいたのはピーターでした。「ここはどこ？」「茨のやぶの真ん中にぼくと一緒にいるんだよ。」「だけどダニー、どうやってここへきたんだい。　まるで空から降ってきたみたいだったよ。」のねずみのダニーはぶるぶるっと震えました。急にいろいろなことが思い出されてきたからでした。ふくろうが大きな鋭い爪でダニーをつかまえると、月の光に照らされたみどりが原の上を飛んでいったこと。ダニーがあばれたら、ダニーのコートがやぶけてどんどん落ちていってやわらかい雪の上について気を失ったこと。そしてふくろうの怒った恐ろしい声まで思い出しました。帰ろうとするダニーをピーターがひきとめました。「だめだよ、ダニー。　ここにいるほうがいいよ。　この茨のやぶはね、世界中で一番安全なんだ。　君も知っているだろう。　ぼくは、草の種を食べないんだ。　それにばく時々ここで一人ぼっちだと寂しいんだよ。　ここにいてぼくと一緒にくらそうよ。」「ありがとう、ピーター。ぼく、ここにいることにする。」ダニーはピーターの親切がうれしくて仕方ありませんでした。こうして茨のやぶにもう一人のねずみのダニーが住むことになったのです。（つづく）

  2006年02月04日

• どんなものも、いつも、見たとおりにきれいで安全だとはいえません。

  「のねずみダニーのぼうけん」よりのねずみのダニーは、毎日のようにかくれんぼしています。なぜならダニーが太っちょのちびさんなので、たくさんの獣や鳥たちがどうにかしてダニーをつかまえて朝ごはんか晩ごはんのご馳走にしたいと待ち構えているからです。北風のお兄さんが騒がしくみどりがはらを吹きまくり、雪の雲を粉々にくだいて、雪をふりまいていきました。そのうち、みどりがはらは雪で深く深く包まれてしまうのです。ダニーは雪が好きです。大好きです。雪をほって、いろいろな方向にトンネルを作るのが、とても楽しみでした。トンネルを通って誰にも見られずに、好きなときに好きなところへ行けます。それが面白くて仕方がないのでした。ところがキツネのレッドは、ダニーがトンネルを作って入り口をつけたのを知っていました。ある朝、レッドは忍び足で、みどりがはらを通っていました。すると何を見たと思いますか。のねずみのダニーの頭がトンネルの入り口からぴょこんと出ているのを見つけたのです。レッドは静かにダニーに近づき、「えいっ」と飛び込みました。ところが、おやダニーはそこにいませんでした。レッドは気違いのように掘り続けました。その間にダニーは、トンネルを走り抜けて、別の入り口から顔を出してレッドを見て笑いました。こうして何度もかくれんぼが続いてレッドはあきらめて帰っていきました。ダニーはそれを見ながら歌いました。「きつねのレッドはりこうでずるい。ハイハム　ディドルデーオそれでも僕はきつねよりあたまのきれるねずみさまハイハム　ディドルデーオ」その晩レッドはおばあさんにのねずみのレッドをつかまえようとしたことを話しました。「あしたの朝、私もみどりがはらへ一緒に行くよ。のねずみめ、自分で思っているほど、りこうかどうか試してみようじゃないか。」と　ばあさんぎつねはレッドに言いました。次の朝ダニーはばあさんぎつねとレッドがみどりが森から出てくると、すぐに二人を見つけました。ダニーは、ばあさんぎつねを見ると胸がどきどきしました。なぜならダニーはばあさんぎつねがとても利口であるのを知っていたからです。「これは面白いことになりそうだ。」とダニーは独り言を言って姿を消しました。そしていつでもさっと走り抜けられるように、トンネルをきれいになっているかどうか確かめにいきました。ばあさんぎつねは、入り口に近づくと匂いをかぎました。ばあさんぎつねは匂いで誰がそこにいるかはっきりと分かるのでした。ばあさんぎつねはとうとうダニーが隠れていた入り口まで来ました。そのとき、突然ダニーの足元へ何かが雪をつきぬけて飛び込んできました。ダニーはびっくりして、きゅーと叫びました。ばあさんぎつねは、とがった小さな耳をたてて一心に聞いていました。ばあさんぎつねはダニーがトンネルを走っているのをはっきりと聞いていました。ばあさんの黒い手が二度もダニーの尻尾に触りました。けれども幸い触っただけですみました。「しまった！もうちょっとでつかまえるとこだったがね。」とばあさんぎつねは、悔しがりました。きつねのレッドもご馳走をつかまえる方法でしたら、すぐ覚えます。レッドはばあさんのやりかたをじっと見ていました。そして今度はばあさんより先にとんでいきました。可愛そうにのねずみのダニーは生まれてからこんなに驚いたのははじめてでした。ダニーは、もうどこを曲がってどこへ走っていけばいいのか分からなくなって、とうとう座り込んでしまいました。ところがダニーは一番いいやり方をしたのでした。ダニーが物音ひとつたてずにじいーと坐っているとばあさんぎつねとレッドはダニーがどこにいるか分かりません。「ふーん、のねずみめ、じっとして私をだますつもりだね。それなら脅かしてやろう。」ばあさんは、あっちこっち、やたらと雪の中へ飛び込みました。いくどめかに片方の爪がダニーをひっかきました。「そら、いたぞ。」とばあさんは叫びました。「さあ、もう、のねずみをじっとさせておくんじゃないよ。こうして走らせていれば、のねずみも疲れて、すばしっこく走れなくなるだろうから、そのときこそ・・・」ばあさんぎつねはお終いまで言わずに、口の周りをなめまわしました。そしてまた雪の中へとびこみ始めました。トンネルの中で、ダニーは命からがら走り続けました。けれどもだんだん疲れてきました。ダニーはもう息がとまりそうでした。そのうえ悲しくなってきました。片方の足がずきずき痛み始めました。「あーあ、ひどいことになっちゃった。せめて考える暇があったらなあ。」とダニーは息をハーハーさせながら思いました。「どっかにいかなくちゃダメだ。どこかつかまらないところに行かなくちゃ。」ダニーはそのとき、古い管があったのを思い出しました。その古い柱は倒れて土の中に転がっていました。柱の中は穴があいており、尖ったとげがたくさんついた長い針金がまきつけられてありました。ダニーは雪が降り出した日に、柱のところまでトンネルを作っておきました。柱の穴に草の種を隠してあったからです。ダニーは思いつくとすぐに柱のところへ続いているトンネルにもぐりこみました。怖くて胸がドキドキしました。けれどもダニーは力いっぱい速く速く走りました。助かるかもしれないと思えてきたからでした。こんなときは誰でも元気になるものですね。ばあさんぎつねは古い柱のことを知っていました。とげのある針金がまきつけられていることも思い出しました。そのうえばあさんが柱が雪で隠れていても、どこにあるか分かっていました。ですから柱の前に来ると、ばあさんは雪の中へ飛び込むのをやめました。きつねのレッドはあまり夢中になってつい忘れてしまいました。「おやめ！」とばあさんが慌てて怒鳴りました。けれどもレッドは雪の中へ思い切りとびこみました。「わあ、わあ、うー、うー」きつねのレッドは悲鳴をあげました。レッドは片方の黒い足を針金のとげの上につっかけてしまったのでした。レッドはばあさんのガミガミ怒られながら、びっこをひきながら帰っていきました。「針金があるのを忘れた罰さ。」「そうだよ」とレッドは弱弱しく答えました。きつねのばあさんは、のねずみのレッドのことを考え続けていました。必ずダニーをつかまえると決心しました。「ダニーめ、一日か二日はあの柱から鼻も出さないだろう。だが、そのうち、じっとしているのにあきてくるさ。そうなれば、入り口から顔を出して、外が安全かどうか見るだろう。もし安全だったら、トンネルを出て、雪の上に顔を出している草の種をとろうと走り回る。それでも危険がなければ少しずつ遠くへ出て行くだろう。」みどりが森のはずれに隠れてきつねのばあさんは、のねずみのダニーを見張っていました。ばあさんが空を見上げると雪が降っていきそうでした。「よし、明日の朝、太っちょのねずみを朝ごはんのご馳走にしてやろう」次の朝、愉快な丸くて赤いお日様が起きる前に、きつねのばあさんはレッドを連れてみどりがはらへ出かけていきました。そしてまっすぐ雪に埋もれた古い柱のところへ駆けつけました。もう雪が振り出していました。古い柱のところに来ると、きつねのばあさんはぺたりと地面に寝転びました。そしてレッドに降ったばかりの柔らかな雪でばあさんの体を隠すように命令しました。「さあ、お前はみどりが森へ帰って隠れておいで。すぐに朝ごはんのご馳走にのねずみを持っていってやるからね。」そしてばあさんは自分の利口なやりかたに感心してニヤニヤ笑いました。ダニーは２,３日きつねのばあさんとレッドの姿を全く見かけませんでした。けれどもダニーは毎朝近くに危険なものがいないか確かめました。「もし、誰かがこの入り口に僕がいるおをみつけたら次の朝、同じ入り口で僕をつかまえようと待ち伏せしれいるかもしれないもの。だから、外を見るのだって毎日入り口を変えなくちゃ。」とダニーは独り言をいいました。ダニーの頭は小さくても大変よく働きますね。ダニーは遠くの木に鷹がいるのを見つけました。けれども、鷹はずっと遠くのほうにいたので、ダニーは少しも怖くありませんでした。「怖いものなんてなにもないや。」のねずみのダニーはそのまま長い間坐って周りのものをよく観察しました。きれいで真っ白な世界でした。ダニーはこんなうっとりとするほどきれいな原になにか嫌なものが隠れているとは思えませんでした。けれども、どんなものも、いつも、見たとおりにきれいで安全だとはいえません。ダニーは前からそのことを知っていました。もう一度周りをよく見ました。少し離れたところに小さな雪の山がありました。その小山こそきつねのばあさんだったのです。さあ、それからどうなったか？「のねずみダニーのぼうけん」を読んでみてください。実にバッジェスの文章は、ダニーの側に立ったり、ばあさんぎつねの側にたったり交互に文章が進んでいって巧みだ。ちっちゃな子どもは小さくて弱い自分をダニーに照らし合わせてドキドキしながら聞くんだろうな。尊徳先生のこんな道歌を思い出す。「ちうちうと嘆き哀しむ声聞けばねずみの地獄猫の極楽」

  2006年01月29日

• お日さまは、いつものとおり輝いているなあ、ダニー。

  ソーントン・バージェスの動物童話は気づきに満ちています。バージェスは、1874年生まれのアメリカ人で幼くして父が亡くなり母一人子一人で苦労して育ちました。小学校の頃から働き家計を助けてきたのです。「ビーバーが森にやってきた」の冒頭の歌Work， work all the day「働け　働け　一日中」にもそんな生き方が反映されているかもしれません。でも、I have got no time to playではなく、野原や林や沼地が大好きな少年でした。新聞記者となり、大好きな自然や動物などを書いて評判となりました。バージェスは、1905年に結婚し、翌年男の子が生まれましたが、夫人は出産後亡くなりました。母親を亡くしたわが子に毎晩森の動物や鳥の話をしたのです。その子が大きくなり、祖母のもとに引き取られると、毎日動物たちの楽しいお話を書いては郵送したのです。それを聞いた友人からぜひその話をまとめるように言われて「西風かあさんのお話」が出版されたのです。ですから、これらのお話には親からわが子への人生の訓えが愛情いっぱいにくるまれて語られているのですね。「のねずみダニーのぼうけん」には弱者が知恵や友情で危機を乗り越える話です。のねずみダニーは自分の家の入口に座って頬づえをついて憂鬱そうでした。実はいとこの白足ねずみの尻尾を見ていらい、自分のずんぐりした、小さな尻尾がきになって、白足ねずみのような長い尻尾が欲しくてしようがなかったのです。誰かがくると自分の尻尾が恥ずかしくてこそこそ隠れ、お日様の下で遊ばなくなり、しかめっつらばかりしていたのです。ある日、ひきがえるの爺様が「どうしたんだね」って尋ねました。「なんでもない」とダニーは答えたものの、爺様は親身になってこう言ったのです。「お日さまは、いつものとおり輝いているなあ、ダニー。　食べるものも、飲み物もいっぱいあるんだろう。　いい服を着ているじゃないか、ダニー。　天気はいいし、食べ物も飲み物もいっぱいあるし、その上いい服を着て、いいことばかりじゃないか。ダニーや、どうもお前には満足ってことが分かってないようじゃな。」ダニーはやさしい爺様の言葉に自分の悩みを打ち明けます。「そんなことだったのか。ハッハッハッ。」と大笑い。「ところで長い尻尾があったら、どんな得があるのね。言ってごらん。」「ぼ、ぼくだってもし尻尾が長かったらもっといい格好に見えるよ。」「ダニーや、お前は長い尻尾ののねずみを見たことがあるかね。勿論ないだろうな。そんなのねずみがいたらなんと変な格好じゃろ。ほっそりとしてハンサムでないと、長い尻尾は似合わんのじゃ。それぐらいは分かるだろ、ダニー。それに長い尻尾など厄介じゃ。いつも尻尾ばかりを気にして注意してなくちゃならんからな。わしを見てごらん。わしは醜い。見るのも嫌だというヤツもいる。だがな、お百姓のブラウンさんの息子がきれいな毛皮が欲しくててんのビリーを追いかけるようにわしを捕まえたがるものなんか一人もいやしない。いい声で鳴くからって、蛙のわしを籠で飼いたがるものもいないよ。だからわしは今のままで満足さ。なあ、ダニーやわしの言うことが分かれば、短い尻尾で満足できるだろう。」ダニーはしばらく考えて答えました。「そうかもしれないね。それじゃ短い尻尾で我慢してみるよ。」きっと子どもが自分の容姿や能力にコンプレックスに悩むのを、バージェスは、蛙の爺様を通してやさしく言い聞かしたのかもしれない。

  2006年01月28日

• かけすのサミーは仲間のために尽くすことがこの世で一番の喜びだとわかった

  　かけすのサミーは仲間のために尽くすことが　　この世で一番の喜びだとわかったバージェス・アニマル・ブックスは、気づきの寓話だ。「ビーバーが森にやってきた」を図書館から借りてきた。　Work, work all the night While the stars are shining bright; Work, work all the day; I have got no time to play. 働け　働け　朝までずっと　星が明るく輝くあいだ　働け　働け　昼間もずっと　遊んでなんぞいられないビーバーのパデイは、緑の森の奥に自分の池を作ろうと一生懸命働いていた。そしてこんな気づきの文句がある。「パデイは、仕事を始めるとやり遂げるまで遊びません。それが成功するたった一つの方法であることをパデイは知っていました。本当にパデイの言うとおりですね。 」Now he was ready to go to work, and when Paddy begins work, he sticks to it until it is finished. He says that is the only way to succeed, and you know and I know that he is right.　十二月中、ブリキのおもちゃ博物館長の北原輝久さんのビック・トークのＣＤを聴いていたが、その中で北原さんが全く同じようなことを語っていた。「この間新幹線の中で頓知クイズの本を読んだんですよ。アフリカのある部族が雨乞いをすると、必ず雨が降る。さて、どうしてでしょうか？わかります？答えはね、雨が降るまで雨乞いするんですって(笑）一週間でも一ヶ月でも一年でも雨が降るまで雨乞いする。僕はこの頓知クイズを見た時、真理を見ましたね。夢なんてできるまで思い続ければいいんですよ。途中でみんなあきらめちゃうんですよ。それからボケちゃうんですよ。イメージが。」北原さんは、そういって７億円の豪邸を買った経緯やおもちゃの博物館ができた経緯を熱っぽく語っていた。○かけすのサミーは森のみんなの嫌われ者。ビーバーのパデイが大きな木を切っているところに飛んできて、ここぞとばかり「どろぼう！どろぼう！」と大声で騒いだ。「やあ、おはよう、かけすくん。」とパデイは声をかけた。「どろぼうって誰のこと？自分のことでも言ってるの？」隠れて見ていた兎のピーターは思わず大笑いした。「サミーはいじわるできるときは、幸せなんですよ。」かけすのサミーは、ピーターをにらみつけ、パデイに「お前はどろぼう！どろぼう！僕らの木を盗んでる！」「この木は、緑の森のものだよ。緑の森は、森をかわいがる皆のものだよ。僕たちは皆必要なものを森から貰っていいんだよ。君が樫の実を拾って食べるように。」とパデイは答えた。サミーはその後もやってきてはパデイを罵った。ある日の朝、パデイは岸に不審な足跡を見つけた。コヨーテの親父のだ。よし昼間の明るいうちに木を切ってやれ。コヨーテの親父は緑の森にやってきて、「ビーバーは非常においしそうだ」と舌なめずりして夜になると待ち伏せた。だけど、パデイは昼間仕事して夜は岸に近づかなかったから、あてが外れてがっかりだ。「ビーバーのやつ、わしが狙っていることをどうして知ったんだろう。そうだサミーが告げ口したに違いない」とサミーをにらみつけて恐ろしい言葉を並べて脅かした。サミーはパデイへの怒りを忘れ、コヨーテに向けて悪口を言った。コヨーテの親父は今度は昼間来てパデイの背後からゆっくり注意深く迫った。その時だ。「危ない、パデイ！」サミーが声をかけて間一髪に逃げた。「かけす君、命を助けてくれてありがとう。本当に有難う。今日のことは忘れないよ。君は僕にどんな金切り声をあげてもいいよ。僕はちっとも怒りはしない。君は僕の命の恩人なんだからね。」この言葉を聞いてサミーは喜んだ。ほめられることなどめったになかったからですね。友達になった。パデイはハコ柳の木まで溝を掘りたい、君に見せてあげられるといいんだがなあと言った。サミーにいい考えが浮かんだ。「そうだ。いいことがある。君が働いて、僕が見張りをする。」そしてサミーは美しい羽を広げて飛び立ちコヨーテの親父が家にいるのを確かめた。そしてパデイの手助けをして見張りをした。　するどい声と　するどい目　不意の敵から　守ってくれる　かけすのサミーが　いなければ　きょうの仕事は　できないだろう　Sharp his tongue and sharp his eyes-- Sammy guards against surprise. If 'twere not for Sammy Jay I could do no work today."パデイの歌を聞いて、サミーは得意でした。うれしくてうれしくて体中をふくらませました。サミーはいつもみんなから悪口ばかり言われていました。ですからパデイにほめられて本当に心からうれしかったのです。そしてパデイのためなら何がなんでもやりとおさなければと思いました。サミーにとってパデイはもうすばらしい友達の一人でもありました。パデイは立派な溝を作り終わりました。「かけすくん、ありがとう。僕たちの仕事はどうやら終わったようだよ。」「えっ、もう終わったの。」サミーはとてもがっかりしたようでした。そうです。「サミーはたった今、この世で一番大きな喜びは、森の仲間のために尽くすことだとわかりはじめたところでした。　」You see, he had just begun to learn that the greatest pleasure in the world comes from doing things for other people. サミーは、また、自分にいてほしいというものが周りにいることは、なんて楽しいことなんだろうと、しみじみ思いました。

  2006年01月23日

• 亀のスポティは「もともと自分が持っていないものを、あればいいって悔しがるなんて愚かなことだ」と気づいた

  「じゃこうねずみジェリーのたんけん」に亀のスポティが丸太と棒と泥でできた壁の向こう側に行こうとする場面があります。「スポティは、壁の向こう側には何があるのだろうと不思議に思いました。『あの壁は僕にはよじのぼれないな。ぼくの足はよじのぼるようにはできていないんだから』スポティは、自分の小さい黒い足を見て情けなさそうに言いました。『灰色リスのハッピイ・ジャックのようにスルスルとよじのぼれたらなあ』そう思ったとたん、スポティは気づいたのです。スポティの顔がぱっと明るくなりました。『きっとハッピイ・ジャックだって、僕みたいに泳げたらいいなあと思うことがあるだろう。僕は木登りできないけれど、ジャックは泳げない。もともと自分が持っていないものを、あればいいって悔しがるなんて愚かなことだ。』そう思うとスポティの不満は吹き飛んだのです。スポティは、どうやったら自分の短い足と辛抱強さを精一杯使って役にたてることができるか一生懸命考えました。そして思いついたのです。＜ざわざわ川＞の土手のてっぺんから、その不思議な壁の上へ歩いていかれるはずだ」って。亀のスポティは早速土手をのぼりはじめます。三歩登れば二歩すべり落ちるような大変なことでした。でもスポティはあきらめなかったのです。はあはあ、ふうふうあえぎながら何度もこんな歌を歌いながら登ったのです。でんぐりかえって出発点に戻っても　きっとやれる　と信じて。　その気になれば　きっとやれる　やれることは　やりとげる　その気になって　やるならば　きっと　あそこへいきつける

  2006年01月20日

• ふくろねずみのビリーおじさんv,s,りすのハッピィジャック

  先日、光姫さんのメッセージの中でこんなのがあった。「ふくろねずみのビリーおじさん」という本だったと思うのですが、小学校の時、大事な文章を読みました。ふくろうが教えてくれたのだったかな。『ケンカは両方が怒ってないと成り立たない。』相手が怒っていても私は怒らないことにしよう、と決意しました。そうしたら、ケンカは回避されますもんね。」「ふくろねずみのビリーおじさん」という絵本は、金の星社から出版されているが、Googleで検索したら絶版だという。でも、どうも気になって今日図書館から借りてきた。公園の裏手の小山に登る手前にあるベンチに座って読んでみる。昨日は久しぶりに午後から雨が降ったが、日の光がやわらかく包んでいる。絵本の出だしはこうだ。全部ひらがななので、漢字混じりにしてみた。「ビリーおじさんが、つかまった　ある夕方＜みどりがはら＞は、大騒ぎになりました。　向こうの＜むらさきがおか＞から、黒い影が、しのびよってきて、あたりを、まっくらにしてしまったようにみえました。きつねのレッドが、悪いニュースを持ってきたのです。レッドは、うれしそうに、にやにやしながら、「ふくろねずみのビリーおじさんが、死んだよ。お百姓のブラウンさんの、息子が、あいつのしっぽをつかんで、裏へ、運んでいくのを、俺は、この目でみたんだ。な、あいつは、君たちが思っていたほど、りこうじゃなかったんだ。」と言いました。　けれども、始めは誰も、きつねのレッドの言うことなど、本気にしませんでした。レッドが大うそつきだということを、みんな知っていたからです。けれど、スカンクのジミーが、泣き出しそうな顔で＜くねくね　こみち＞をやってきて、レッドの話は本当だというと、みんなも、信じないわけにいかなくなりました。(略）」実はビリーおじさんは、ブラウンさんの鳥小屋に忍び込んで、卵を夢中で食べていたのです。急に鳥小屋の戸が開いて、ブラウンさんの息子が入ってきたのです。ビリーおじさんは逃げるひまがなく、その場で死んだふりをしました。ブラウンさんの息子はビリーのしっぱをつかんで、家の裏にずるずるひきずっていきました。そこをきつねのレッドとスカンクのジミーが見かけたのです。ところが息子がビリーを薪割り台に置いて、薪を取りにいった隙に逃げ出したのです。きつねのビリーは、ビリーおじさんを嫌いだったので、死んだと思い込んで大喜びで言いふらしたのですが、結局大恥を欠いたのでした。でも、ビリーおじさんは懲りずにブラウンさんの鳥小屋に忍び込んで、卵を夢中で食べたのです。しかも眠気がさして、鳥小屋のふかふかの藁の寝床の中にもぐりこんで寝入ってしまったのです。ブラウンさんの息子は、食べ散らかした卵の殻を見つけてかんかんに腹を立てます。「こんちくしょう。どろぼうめ！きっと　つかまえてやるからな。」そしてなんと入り口という入り口にわなをしかけたのです。外では犬のバウザーが見張りをしています。さあ、ビリーおじさんは今度は逆に小屋から出るに出られなくなりました。ところが、ある日、雪が降り始めました。雪は一晩中降り続き、戸の前にもわなの上にも降り積もったのです。ビリーはチャンスだと一生懸命穴を掘ってやっと外に出ることができました。ところが雪の上にはビリーの足跡が付きます。ビリーは、後ろを振り返って、「これではどこまでも息子が追いかけてくるだろう」とうめきました。ビリーが思ったとおり、息子は犬のバウザーを連れて足跡を発見してついてきたのです。足跡は、一本の木のところで終わっていました。その木のてっぺん近くに木の穴がありました。息子は斧を家から取りに帰って、その木を切り倒しにかかったのです。息子は力いっぱい斧を振りました。木はゆっさゆっさと揺れて、とうとう　ずっっしーん！　と倒れました。ところが、倒れた木の穴には、ふくろねずみはいなかったのです。どうしたかって？ビリーおじさんはこういうことがあろうかと自分の巣穴のある木には戻らなかったのです、そして木の梢が重なっているのを伝って隣の木の穴に隠れていたのです。息子は、「へんだなあ。あいつめ羽でも持っているのか」と不思議そうにつぶやいてひきあげていったのです。ビリーはすっかり安心してその穴の中で眠ってしまいました。ところがその穴はリスのうかれジャックの前使っていた巣穴でした。「ぼくは散歩が大好き　遊ぶのが大好き　一日中、とってもとっても愉快だよ　ぼくは雪が大好き　柔らかくて白いから　明るく輝くお日様も大好き　世の中の何もかも大好き　だってわかるだろう　　世の中はいいことばかりだもの」ジャックはそんな歌を歌いながら、中に木の実が残っていないかしらと穴をのぞきました。するとふくろねずみのビリーがねていたのです。「一体全体、何の怨みがあって、正直者を脅かすんだ」とゆくぬくと楽しい夢を見ていたビリーは怒ります。「人のうちに勝手に入り込むなんてそっちこそどういう気持ちだ」とジャックもまけずにどなりかえしました。ビリーは、穴の口に座り、ジャックは外の枝に座って、たがいにののしりあいがはじまりました。けれどもビリーは本当はお人よしでした。だからだんだん気持ちが落ち着いてジャックの穴に勝手に入り込んだ自分のほうが悪いのだと気がつくと、おなかの虫はおさまってきました。まもなく、にやにやしてきてしまいにはワハハと笑いだしました。もともと、喧嘩というものは、両方が腹をたてているのでなければできません。相手が怒っていないのに、こっちだけ怒るのは難しいものです。ビリーのにこにこ顔を見ていると、ジャックのほうも気がぬけてきました。そしてまもなく、笑い始めました。「ワハハハ・・・」二人は声をそろえて、笑いました。そして仲直りしたのです。それじゃあ、雪の中、ビリーおじさんはどうやって無事に足跡を残さず、奥さんと子供たちの待っている巣穴に戻ることができたか。興味のある人は図書館で借りてみてください(^｡^)/

  2006年01月15日

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