カテゴリ:絵本
月のしかえし 文: ジョーン・エイキン 絵: アラン・リー 訳: 猪熊葉子 徳間書店 セッピーは、馬車作りをしているお父さんの7番目の息子 おじいさんは、国一番のバイオリン弾きでした セッピーはおじいさんのようなバイオリン弾きになりたかったのですが、お父さんは、"それでは食っていけない"と言います ある日、セッピーは悪魔が住んでいると噂のある空き家に行き(セッピーは天使かもしれないじゃないか、と言っています)、バイオリン弾きになるにはどうしたらよいか、と尋ねました すると、"七晩続けて月に靴の片方を投げろ"という返事が返ってきたのです セッピーは満月の近いある晩、海岸へ行き、月に向かって靴の片方を投げました 7日目の晩、最後の靴の片方を投げた後、月は心底怒っているようでした 怒った月はセッピーの部屋にやってきて ⚫︎願いは叶えてやる ⚫︎今後7年間、セッピーは裸足で過ごせ ⚫︎投げた靴を元に戻さない限り、妹は口を聞くことができない ⚫︎セッピーと家族に大きな災難が降りかかる と告げたのです それから何年もの月日が流れましたが、月が予言した通り、セッピーは靴を履くことができませんでしたし、生まれた妹が口を聞くことはありませんでした セッピーはずっと隠れてバイオリンの練習をしていました でも聞いているのは、妹と動物たちだけです ある時、セッピーと妹は海岸で難波船の積荷と巨大な靴を見つけます 靴を見たセッピーは不安になり、それを振り払うためにバイオリンを弾きました すると、王様の幽霊が目の前に現れ、バイオリンを聴いていたのです ずいぶんとバイオリンの演奏を気に入ったようでした 王様が巨大な靴を指差すと、崖が崩れ、セッピーが引きずっていた積荷の箱が開き、中にはなんと美しいバイオリンが入っていたのです 不思議なことに、セッピーがこのバイオリンを弾くと、家族に降りかかる災難を防ぐことができるのでした 7年が経った頃、港に怪物が現れました 村の人たちは恐れ慄き、もう駄目だ、と思いました その時に、口の聞けなかったはずの妹が叫んだのです 「お兄ちゃん、バイオリンを弾いて」 と セッピーがバイオリンを弾くと、怪物は唸るのをやめて、踊り出しました でも、セッピーが演奏を一瞬でも止めると、怪物は唸ります 結局、一晩中、弾き続けました 朝になると怪物はどんどん縮んで、どこかへ姿を消しました 履いていた7足の片方だけの靴を残して この事件以降、月の怒りがおさまったのか、妹は声が出せるようになりましたし、セッピーは人前で演奏する機会が持てるようになりました なんとも不思議な話です "どうしてこんなに7にこだわるの"とか "お願いをするのに、なぜ靴を投げるようなことをするの"とか "空家で教えてくれたのは誰なの"とか "結局願いをきいてくれる方法を教えてくれたんだから善の存在だったの、それとも数々の禍いをもたらすことになったのだから悪の存在だったの"とか 謎がいっぱいなのです ただ、後書きに"西洋の伝承を組み合わせたもの"とあるのを見て納得です なるほど、だから唐突にも思える王様の幽霊やドラゴンのような怪物が出てくるのですね そのせいなのか、遥か昔に書かれた内容に思えるのです でも実は初版でも1995年、比較的新しいのですね 私だけかも知れませんが、「不思議の国のアリス」を読んだ時のような不条理感や、"なんかヘン"なんだけど惹かれてしまう、そんな感覚を覚えました 絵が魅力的です 美しくもあり、ダイナミックで力強くもあり、幻想的でもあり、怖さもあり、の絵です お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.07.07 02:09:32
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