カシコギという哀しい魚がいる。
母カシコギは子供を生むと、子を捨てて去ってしまう。残された父カシコギは、食べずに餌を探し、眠らずに外敵から子を守り、文字通り命がけで子を育てる。そしてとうとう子が立派に育ち、巣立っていくのを見届けると、父カシコギは身を岩にぶつけて自ら命を絶ってしまうのだ。
本書の主人公は、白血病の子を持つ父親。妻は病気の子を捨て、浮気相手と一緒に海外へ。残された父は子供の治療費をまかなうために、あらゆることをする。果てには・・・。
こんなに哀しい話があるなんて。しかしこんなにも勇気を与えてくれるなんて。読みながら涙が止まらなかった。