10年前に日本で開かれた村上作品をめぐる国際シンポジウムの全記録。リチャード・パワーズの基調講演では、ミラーニューロンに絡めて村上作品が反響し相互作用する働きを刺激的に論じられた。また、パネルディスカッションでは、翻訳家たちが、村上春樹の魅力と各国での読まれ方を語り、ワークショップでは、テクストと社会科学の二つの視点から様々な見解が飛び出した。
思うのは、村上作品を誰よりも精読しているのは、作者本人を差し置いたら、村上作品の翻訳家だろう。そんな彼らの考察は、鋭く、深く、ときにユーモアがあり、つまりは「ハルキ的」であった。
個人的には、卒論の執筆時期に嫌というほど論評を読み漁ったためか、それからは全くハルキ関連本(作者本人が参加しているもの以外)は読まないようにしていたが、今回は柴田さんの名が挙がっていたので読んでみたら、アタリでした(笑)。
あと「みみずくは黄昏に飛び立つ」を併読したのも、とても良かった。お互いが反響し相互作用し、立体的に楽しめたから。