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カテゴリ:秩父巡礼
第3番札所
山号:岩本山(いわもとさん) 宗派:曹洞宗 本尊:聖観世音菩薩 巡拝日:2008年4月1日 -------------------------------------------------------------------------- 巡礼のはじめには、 “巡礼をしている人など自分以外にもいるのだろうか?” と漠然とした不安を抱えていたものだけれど、 いざはじめてみると、これがけっこういるもので、安心する。 ガイドブックなどでは、回りやすさを考慮して、 札所の番号を無視して回る道順なども案内してあるけれど、 やはり一番から回らないとご利益が薄いような気がして、そうしている。 他の人たちもやはり同じ思いのようで、一番で見かけた人たちに、 二番、三番でまた遭遇するようなことも、決して珍しくない。 二番の納経所である光明寺を出て西へ向かい、横瀬川の橋を渡り、 民家の間の細い路地を抜けると、開けた視界の先に三番札所が見渡せる。 そこには、一番札所を占拠していたあのおばさまたちが、すでに到着していた。 ここでも口々に“あーしんど”と言っている。 見渡す先、山肌を整地した墓地の右手に、観音堂が見えた。 山肌には桜の木が何本も植えられていて、ほんのりとピンクに染まっている。 遠目にも花盛りが近いことがわかるが、残念ながら一分咲きにも至っていない。 観音堂は、簡素な外見の本堂を通り過ぎ左手、10段余りの石段の先にある。 この石段の周辺にはアジサイが植えられていて、案内板によれば、 秩父のアジサイ寺と呼ばれているらしい。その季節にまた訪ねてみたい。 この観音堂、もともとは秩父神社の境内にあった蔵福寺というお寺の薬師堂だったそうで、 その寺が明治の廃仏毀釈のために廃寺となり、明治3(1870)年にここに移築されたとか。 一見簡素なお堂のように見えるけれど、羽根を広げたような四方の屋根の反りと、 正面の立派な大唐破風が、誇らしげに存在をアピールしている。 さらに見所として定評なのは、その大唐破風の下の彫刻。 色彩はなく地味だけれど、見る者を威嚇するような表情で、龍がとぐろを巻いていた。 お参りを済ませ、築150年の本堂の前を通り過ぎ、納経所でご朱印と書き入れをいただく。 お寺の人は誰かと談笑していた。談笑しながらでも筆はするすると進む進む。 いったい1日に何回ぐらい、この作業を繰り返しているのだろうか。 その手つきは、まるで無意識にでも文字を乱すことがないように思えるほどだった。 さて次の札所へ、と境内を横切ろうとすると、日陰に座り昼食をとる親子の姿があった。 どう見ても巡礼の途中である。お母さんはまだ若い。僕と同じぐらいか、もう少し若いか。 息子はまだ5~6歳だろうか。 自分以外にも札所を回ろうなんて考える同世代の人がいるんだなあとうれしくなる。 と、昼食が済み、お母さんが立ち上がり、歩き出した。 足を引きずっている。きっと先天性のものだろう。 足取りは、息子のそれより、確実に遅い。 抱えているもののない人生なんて、誰にもあり得ないのだな。と思う。 三十四の観音様たちは、そんな人たちに、今も昔も、ずっとすがられているのだ。 岩本山常泉寺 埼玉県秩父市山田1392 tel.0494-23-2050 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008年10月20日 11時36分15秒
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