茨城味自慢:「常磐もの」のヒラメをご賞味あれ!
茨城県を代表する「県のさかな」はヒラメです。ヒラメは、晩秋から冬にかけて旬を迎える白身魚。鯛と肩を並べる高級魚のひとつです。その中でも通称、常磐(じょうばん)ものと呼ばれるヒラメは、市場関係者や食通の間で高い評価を受けています。漁業者は品質維持のために「30㎝未満のヒラメは獲らない、売らない、食べない」をスローガンに資源管理に努めていますし、毎年ヒラメの稚魚を放流して、資源量の増加にも努めています。 <「常磐もの」のヒラメはブランド魚>「常磐もの」とは、福島県から茨城県にかけての沿岸の黒潮と親潮がぶつかり合う潮の流れと、広大な砂浜、沖合に点在する磯、そして栄養が豊かな漁場で水揚げされる海産物全般を指しますが、特にこの海で水揚げされるヒラメは有名で、味は癖がなく淡白、それでいて滋味あふれる肉質。おすすめは刺身やあらい、昆布締めなど生で味わうと最高ですが、煮魚にしてもまた格別です。ムニエルやフライ、フリッターなど洋食との相性も抜群。中落ち部分はアラ煮やアラ汁にすると、上品で深みのある出汁が最高です。忘れてはいけないのが、縁側と呼ばれる部分。ひれを動かす筋肉の部分で、1匹からほんのわずかしか取れない稀少部位である縁側は、脂がしっかり乗っていて食感はコリコリ。「常磐もののヒラメ」は豊洲市場において高値が付くブランド魚なのです。 <ヒラメの生態的特徴> 沖縄を除く日本沿岸から朝鮮半島および樺太に分布。主に,水深 100 m 以浅の砂地に生息する。稚魚期には,アミを捕食しているが,成長に伴って強い魚食性を示す。成長が早く,1 歳で全長 30 cm,3 歳で 45 cm ほど になり産卵親魚となる。 寿命は,雄 10 年以上,雌 20 年以上の長寿だそうです。 <漁法と盛漁期> 茨城のヒラメ漁法は主に、釣り、底引き網、刺し網という漁法で漁獲されます。底引き網は禁漁期の7、8月を除く周年、刺し網は6~8月、釣りでは11~2月にかけてが盛漁期で,「寒ヒラメ」と言われて特に人気です。釣りの餌はイワシやメロウド(いかなご)、イカ等を使いますが、漁師によっては自作の疑似餌を造るそうです。この疑似餌針には漁師それぞれの個性があり、それによって漁獲量が違ってくるともいわれています。 <量より質へのこだわり>2019年度のヒラメの漁獲量は6,290tで、県別では1位は北海道(1,013t)でシェアは14.6%。2位の宮城県、3位青森県の3道県あわせて、国内漁獲量の約39%を漁獲しています。茨城県(308t)は6位で4.5%でした。常磐もののヒラメは決して漁獲量の県別順位では上位ではありません。底引き網で漁獲されるヒラメの重さは味の良い1~2㎏が主流。漁獲のモットーは、”量より質“。30㎝を下回る小さいものは水揚げしていません。船上に網を引き揚げると、素早くヒラメを選別。一緒に網に入った他の魚でヒラメが傷つけられるのを防ぎます。水揚げから鮮度管理され,最高の状態で出荷されます。 <ヒラメの種苗を放流しています>茨城県では,水産資源の維持・増大を図るため,種苗(稚魚・稚貝)を生産し,海に放流して増やす「栽培漁業」を実施しています。このうちヒラメについては, 栽培漁業対象種として H7 年以降、県栽培漁業センター(鹿嶋市平井)において種苗の大量生産・放流に取り組んでおり, 以降, 毎年全長 10 cm の稚魚数 10 万尾を放流して、漁獲量の増加や安定化といった成果が上がっています。 <ヒラメの栄養素と選び方>栄養素:ヒラメの白身は高タンパクで低脂肪。利尿作用のあるカリウムや、別名「脂肪のビタミン」ともいわれ、脂肪の代謝を促進するビタミンB2が多く含まれており、生活習慣病の予防に効果があります。また、縁側には良質のコラーゲンやマグロのトロと同じくらいのDHA、EPAが含まれています。 選び方:新鮮なヒラメは、・身にハリがある・目にハリがあり飛び出している・ 触ったときに、しっかりとした硬さが感じられる・表面が乾いていない・ 肉厚で、厚みが極端に偏っていな・エラの中が鮮やかな赤色などで選ぶと 間違いなし。 <ヒラメの豆知識>1.ヒラメの旬は11~2月。冬の寒い時期は、脂がのりつつ、身が引き締まってい てとても美味です。春から初夏にかけてが産卵期で、産卵を過ぎると身が痩 せ、味も劣るため美味しくありません。3月に入ると身が痩せていき4月~6月 の産卵後は「夏ヒラメは猫マタギ」と言われるように猫でも食わぬというほど 味が落ちます。実際には、夏のヒラメも昆布締めなど、ひと手間加えると美味 しく食べることができるのです。2.カレイとヒラメの見分け方は2つあって、(1)目の位置が違う「左ヒラメに右カレイ」の左って?魚をパッと(違和感なく)置いたときに、目が左にあればヒラメ、右にあればカレイです。でもこれは日本だけで通用するもので、外国産には目の位置が反対のものもいるそうです。(2)口や歯が違う カレイは底に住むイソメ類やエビなどを食べているので、口が小さく、 歯も発達していません。一方のヒラメは小魚や、甲殻類、イカなど、大 きくて動きの速いものを捕食するので、口が大きく、くわえた獲物を逃 さないように歯が鋭く発達しています。3.漢字はさかなへんに「平」と書いて「鮃(ひらめ)」と表します。では海外で はなんと呼ばれているのでしょうか?和英辞書によると、こちらも平らな魚と いう意味で「flat fish」と表すようです。どちらも見た目どおりにつけられてい るんですね。でも少しちがうのは、この「flat fish」はヒラメだけではなくカレ イとのこともさすと書かれています。アメリカやイギリスではヒラメとカレイ の区別をしないのだとか。 <養殖ヒラメ>養殖ヒラメの全漁獲量は2,186tで、海面漁業の6,290tに対して、1:3の割合になっていて養殖ヒラメの存在感は大きいです。養殖が盛んなのは、1位の大分県(647t)でシェア32.0%です(2019年)、2位の鹿児島県、3位愛媛県の3県あわせて、国内生産量の約69%を生産しています。養殖ヒラメは九州や四国、関西地方を中心に比較的温暖な場所で行われているのが分かりますね。ヒラメを陸上養殖する場合は、海水を継続的に引き込み飼育する「かけ流し式陸上養殖」で育てるのが一般的です。必要なスペースと酸素消費量が少ないこと、また18~24度と一定の水温で生育する魚であることから、近年のヒラメ養殖は特に陸上養殖が盛んになっています。 冬の「常磐もの」ブランド代表は、ヒラメとアンコウが有名ですが、特に高級魚の「ヒラメ」は消費量が多く、「県のさかな」として指定するほどに自信があります。是非、常磐もののヒラメをご賞味あれ!