「ナポレオンの愛人」
劇場未公開作品をDVD化する場合、何か基準があるのでしょうか。たぶんある程度のセールスが見込めるという判断のもと、DVDになるのでしょう。商売ですから当然のことです。制作=2006年 イタリア、スペイン、フランス 110分。監督・脚本=パオロ・ヴィルツィ 。出演=モニカ・ベルッチ、ダニエル・オートゥイユ、エリオ・ジェルマーノ、サブリナ・インパッチャトーレ、ヴァレリオ・マスタンドレア、フランチェスカ・イナウディほか。1814年、イタリア・エルバ島。若い教師マルティーノ(エリオ・ジェルマーノ)は反ナポレオンを唱えていました。そんな時、皇帝ナポレオン(ダニエル・オートゥイユ)が流刑になり、エルバ島へやってきます。司書として雇われたマルティーノは、最も嫌う男の回顧録を記すようになるのですが、次第に彼の偉業と"暴君"と言われたイメージとは違う彼の人間性に惹かれていくのでした。自身の愛人である男爵夫人エミリア(モニカ・ベルッチ)をナポレオンが見初めます。本作を借りた最大の理由は、モニカ・ベルッチが大胆に脱ぐとパーッケージに書いてあったからです。結果的に、それは裏切られました。ほかの作品のほうが豊満な胸を拝めますから騙されないようにしましょう。ナポレオンの新解釈としてイタリアで話題を呼んだ小説『N』を映画化。この原作は読んでいません。従って、どこが新解釈なのか、わかりませんでした。ナポレオンについては様々な解釈があり、決定版は未だにありません。それだけ複雑な人物なのでしょう。囚人のはずなのに、エルバ島の人々はナポレオンを大歓迎します。反ナポレオン派の若い教師も、司書兼秘書に抜擢されて嬉々として引き受けてしまう始末。一度は皇帝の暗殺を企てますが、失敗するとあとは忠実な僕(しもべ)となるのでした。この映画の特徴は、女優がいずれも美形なことです。男爵夫人はもとより、主人公の姉、小間使いなど、若い女優陣の水準が高いのはプラス。イタリア系、フランス系の美女ですから、日本人の好みにぴったりでしょう(たぶん)それはいいのですが、中身はあまり推奨できません。早い話が全体に退屈なのです。ナポレオンの魅力もあまり出ていません。世界史でも有数の英雄ですから、強烈な個性の持ち主でしょう。それが表現されていないのです。それとも希代の英雄は意外にも常識人だった、というのが新解釈なのでしょうか。いずれにせよ、映画としては失敗作です。面白くありません。エルバ島の自然やヒステリックな美女たちは鑑賞に値しますが、それ以外は取り柄のない凡作でした。