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カテゴリ:lovesick
宗太郎の両親は、宗太郎からは想像できないくらいの、物静かなご夫妻だった。一体彼らの何をどうしたら、こんな息子ができちゃうんだろう?不思議だ。宗太郎は俺に、本当に「ちらっと」だけ挨拶をさせて、家を出る。
車に乗ってから、宗太郎に聞いてみた。 「宗太郎」 「ん?」 「楓と謙吾のことなんだけど」 エンジンをかけようとしていた手を止め、こちらを向く宗太郎。 「2人の間に何があったか知るのは、楓が話してくれるまで待とうと思ってるんだけど」 「ああ」 「だけど、ちょっと予備知識として知りたいんだ」 「いいよ、何?」 「謙吾、あの時楓に片思いって言ってたけど、いつから?悟さんがいた頃からなんだよな、もちろん」 宗太郎は、シートにもたれ、 「ああ、そうだよ。いつからって、そうだな、、」 少し考えてから、 「多分、謙吾も楓に一目ぼれに近いくらい、出会ってすぐからだったんじゃないかな。謙吾がこの町に来たのは、俺たちが中学2年の時だった。もちろん当時から男前でさ。あいつ、既に簡単なモデルみたいなことしてて、周りの女達はかなり騒いでたんだよ。だけど、誰にもなびくわけじゃなくて、仕事あるから忙しいし、時々俺と悟とつるんで遊ぶくらいで。たまに、彩と楓も一緒に。」 黙って聞いていた。 「俺と悟は、本当に小さいときからずっと、それぞれ彩と楓のことめちゃくちゃ好きだったけど、こんな近所に住んでて、いつも一緒にいられるから逆に、恋愛のステップはゆっくり踏もうって思ってたんだ。焦る必要がないっていう気持ちと、もちろん、大切にしたいって気持ちと」 懐かしそうに話す宗太郎。 「だから、ちゃんと恋人になったのは、信じられるか?あいつらが高校に入った時だったんだよ。それまでは、キスしたり抱きしめたりしなかったんだぜ。手を握るのだって、ほとんどなし。下手に手を触れると抑えられなくなりそうでさ。どんだけ我慢したか」 あまりに必死な言い方に、少し笑うと、 「しかも、、前に言ったように彩たちが20歳になるまでHはしないって決めてたし。決めたのはほとんど悟だけど、彩は悟の妹だからさ、悟がいなくなってからも、必死で約束守ったよ。ったく、今時22まで、童貞ってさ。ありえる?ありえね~よな。」 宗太郎は、 「あれ、えっと、何の話だっけ。。あ、そうか、だから、謙吾が悟に楓を好きだって言ってきたときには、まだ悟と楓は、形的にはただの幼馴染だったんだよな。うん。」 「悟に言ってきたの?」 「ああ、俺達が高校に入った頃だったかなあ。3人で河川敷で寝転んでたら、謙吾が1人起き上がって、『俺、楓が好きなんだ』って、そういったんだ、悟に。」 「で、悟さんは?」 「悟もゆっくり起き上がりながら、『知ってたよ』、ってさ。」 「知ってた?」 「ああ、『知ってたよ。だけど、謙吾も知ってるだろう?楓は俺しか見てないよ』って」 宗太郎は、今はいない悟さんを恐らくは懐かしく、思い出しながら、 「それから、悟は、『だけど、謙吾が本気なら、楓の気持ちだって分からない。』って言った。あの目でじっと見据えながら、『いいよ、くるなら全力で奪いにこいよ。俺も全力で守るから。絶対渡さないぜ。』って」 悟さんって、つえ~っ。俺、謙吾相手に、そんなタンカ切れるかな。。。いや、、今は、、まず無理だよ、実際。。 ← 1日1クリックいただけると嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.02.03 00:16:37
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