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カテゴリ:real stories (非小説です)
私が差し出したのは、白い平たい棒状のプラスティック。中央にある小さな円と少し大きめの四角の窓。その両方の中央に、ブルーの細いラインが通っていた。ケースケは、ほんの少し見て、ぽかんと口を開け私の顔を見た。
「サぁ、これって、、、」 「妊娠検査薬」 「妊娠って、、で、、この反応って、、、」 私はうなずいて、 「陽性だったの」 「そ、、それじゃ・・サぁ、、赤ちゃん。。が、?」 あまりにうろたえた様子のケースケに、あぁ、やっぱりまだ言わない方がよかったのかな、と思い、目を伏せかけた瞬間、思いっきり抱きしめられたし。 「まぢで~?やったー。俺、あああ、そうか~。。サぁ、うわ、、そうか。そっか~。赤ちゃんが。そっかそっか。嬉しい、な、、って、、、オイ」 意味不明な、でも確かに喜びの声をあげていたケースケが、ふと我に返ったように腕の力を緩めて、私を離し、顔を覗き込む。 「サぁ、、は、嬉しくないの?」 「そんなことない、嬉しいよ、もちろん」 微笑む私に、ややほっとしつつも、不安げに問いかけるケースケ。 「だったら、なんで、隠そうなんて、、。なんですぐ言わないんだよ。表情だって暗かったし」 「なんか、、どう言っていいのか、分かんなかったんだもん。ケースケがもし、、まだ子供なんて欲しくないっていったらどうしようとか、、思ったりして、、怖くて」 「はあ?そんなこと言うわけないじゃん。何言ってんだよ。第一、結婚するって決めたろ?」 「そうだけど、、・・でも、ケースケまだ、若いし、学生だし、、、子供は早すぎるかなって」 「また、それかよ?俺達1コしか変わんないしさ、俺、ずーっと、ちーこに早く弟か妹作ってやりたいって言ってただろ?だいたい、もうちーこがいるのに、子供が早いも遅いもないじゃないか」 「そんなこと言っても、ちーこは、ヒロトの、、」 言いかけた私の唇をお得意のキスでふさぐケースケ。 「それ言うなって言ってるだろ?ちーこはもう、俺とサぁの子だって。怒るぞ?」 私は黙る。ケースケはもう一度私を抱き寄せて、 「あ~、でも、サぁ、、ほんと、ごめんな」 ごめん?と思ってるとケースケが続ける。 「実は、身に覚えあんだ、、俺。盆に1週間出張行って帰ってきた夜とさ、サぁに最後のプロポーズした夜」 そう、何度も何度もプロポーズしてくれていたケースケの気持ち、やっと受け入れる、って決めたから、ケースケがシチュエーションにも凝って、心のこもった最後のプロポーズしてくれたんだ。今思い出しても、胸があったかくなる。。けど、、ちょっと! 「2度も?!」 驚いて言う私に、ケースケは慌てて、 「だって、サぁ、出張中に、ブログのコメントのとこで、プロポーズほぼオッケーくれたじゃん?だからちょっと、、浮ついちゃったって言うか。。ただでさえ、1週間も離れたあとだったからアレだったし。。。それに、プロポーズの日だって、俺、、オッケーしてもらえた嬉しさでさ、ちょっと興奮しちゃったって言うか、気が緩んじゃったっていうか。。その、、ちょっと、思い当たるんだよな、、わざとじゃないんだぞ?なあ。。ほんと、ごめん。ちゃんと籍入れて安心できる状況になってからすべきだったのに。。」 私は、その言い方に笑って、 「後悔してるの?」 って言ってやった。ケースケは案の定、大慌てで、 「まさか。後悔なんてしてないよ。するわけないだろ?・・ああ、サぁは、やっぱり怒ってんの?サぁは後悔してる?」 私はしょうがないなっていう風に笑って首を振ってあげる。 「ううん。さっきも言ったけど、すごく嬉しいよ。ケースケとの間に新しい命を産めること。本当に」 ケースケはほっとしたように、 「よかったー。だけど、あれだぞ?いくらなんでも、サぁが、プロポーズ受けてくれてなかったら、絶対に、中で出したりなんてしてなかったからな」 中で・・、、、その露骨な表現勘弁して欲しい。 「当たり前でしょ?プロポーズ断られて、そんなことしたら、犯罪だよ」 「分かってるよ~、でも、サぁ、いつ気づいたんだよ?」 「旅行から帰った夜、、かな」 「なんで?」 「前の日にちょっとだけ出血してたの。でも、その日だけで終わったから」 「そんなんで分かったのか?」 「ううん。全然。そんなの初めてだったし、不思議だったからネットで調べたんだ。そしたら、着床出血ていうのがあるんだって。で、しばらくはただ悩んでたんだけど、、検査薬買ってきて夕べ調べてみたの」 「3日も経ってんじゃん。1人で悩んでないで、すぐに言えよな、ったく」 「いえないよ。大切な出張中なのに」 ケースケは、やれやれとでも言うように、ため息をついて、 「病院は?」 「まだだよ。だから、まだ夕べ自分で調べたとこなんだってば」 「・・明日いく?」 「明日、日曜日じゃん。それに、まだ、早いんじゃない?」 「そんなことないって。月曜日行くか。俺、ついてけるし」 「ついてきてなんていらないよ」 「絶対行くし。あ、、それに、入籍急ごう」 「え~っ?」 「当たり前だろ?子供が生まれるんだぞ?」 「そうだけどさ~、まだ先だよ?」 ケースケは取り合わず、壁のカレンダーを振り返って、 「3日が大安だな。じゃあ1日に病院行って、3日に入籍だな。。。それと」 「それと?」 「サぁのお父さんにちゃんと報告しなくちゃな、明日、日曜だし、ちょうどいいから、実家行くか」 ちょっと緊張した顔のケースケに言ってやる。 「ちゃんと、、って、もう、、既にちゃんとじゃないような・・・」 「あ、そういうこと言うなよな。・・でも、確かに、、兄弟そろって。。。」 確かに、うちのお父さんは少し変わってるから大丈夫と思うけど、普通の感覚からしたら、ひどい兄弟だな。と思って、吹き出す私に、 「でも、ちがうぞ。俺は、ヒロトとは違うって。ちゃんと責任をとるんだから」 その言い方~っ!私は、なんだかちょっとむっとして言い返す。 「あのね、ヒロトだって、妊娠したこと知ったら、絶対死んだりしなかったし、責任だってとってくれたはずだよっ」 そう、それはヒロトの死後、随分経ってから妊娠に気づいた日から、ずっとずっと思ってきたことだった。、、なんでもっと早く妊娠に気づかなかったんだろうって、そうしたら、ヒロトは死なないでいてくれただろうって。ケースケはそのこともよく知っていたから、慌てて謝ってくる。 「あ、、ごめん。いや、確かにそうだと思うよ。・・でも、、おま、、そこで、兄貴かばう?違うだろ?俺を励ませよ。ただでさえ、サぁのお父さんは怖いんだから」 「知らないっ。無理やり妊娠させられたって泣いてやるもんっ」 「おいっ!まぢ勘弁しろよな」 大慌てのケースケに、私は笑う。 「冗談だよ~。ほんと面白いな、ケースケってば」 「からかうなよな~。まぢ、ブルー入るわ」 「大丈夫だよ。この間、プロポーズ受けたって話はしたんだし、入籍とセットなら何も文句いわないでしょ。喜んでくれると思うよ」 「・・・かなあ・・?」 「それよりさ、ケースケ」 「責任とるってどういうことなの?結婚するってこと?」 ケースケはため息をついて、私を抱き寄せる。 「結婚するだけじゃ意味ないだろ?サぁのこと、ちーこのこと、それと生まれてくる赤ん坊のこと、一生大切に、幸せにする。そういうこと」 私はケースケの腕の中で目を閉じる。この安心感は何物にも変えがたい。夕べ陽性反応を見てから少し気を張っていた心が解けていく。 「ねえ・・?」 静かに声をかける私に、 「ん・・?」 静かに答えてくれるケースケ。 「それ、ちゃんとお父さんにも伝えてあげて。十分、安心してくれると思うよ」 「分かった」 ケースケはふと思い出したように、 「予定日はいつになんの?」 「ん~、ネットの自動計算ってので出してみただけだけど、ゴールデンウイークくらいになりそうかな」 「GWか。。。なあ、サぁ、俺、大学は卒業するぞ?今の仕事続けるからほんとは学歴なんてどうでもいいようなもんだけど、さ。」 私は慌ててうなずく。 「うんうん。それはそうしなよ。お金のことなら心配いらないよ。私も働けるところまで働くし」 「ば~か、金の心配なんてさせないよ。仕事は続けたらいいけど、俺、ちゃんと今のままでもそこそこ収入もあるし、ずっと貯金もしてきたし、卒業したらもっと働きまくるし、とにかく入籍したら、俺が養ってやるから」 「うっわ~、大きく出たね」 「当たり前だろ?」 「なんか男、みたいだった」 「男だよ、ったく、人をなんだと思ってんだ」 私はもう一度ケースケの胸に顔を押し当てる。条件反射のようにぎゅっと抱き寄せて、さっき乾かしてくれた髪を撫ぜるケースケ。小さく深呼吸して、目を閉じる。 ずっとこの人と生きていこう、きっとこの人なら、私を、ちーこを、そして新しい命を守ってくれるはずだから。 ・・って、感慨深い思いに浸っているのに、、ケースケは、 「なあ、ちーこ、俺のこと、パパって呼んでくれるかな、今更」 「式はどうするかな~。サぁ、ほんとにする気ないの?俺は、ドレス姿とか見たいんだけど」 「GWか~、今年は結構休めたけどな~。。来年はどうかなあ。。」 「新婚旅行は、、ちょっとお預けだな」 「ちーこも兄ちゃんか~。、、って、大丈夫かな、あいつ」 「妊娠中に、Hってしていいのかな?ちーこの時は、俺達まだそういう関係じゃなかったからな~。。あ~、俺、今夜はヤル気まんまんで帰ってきたのに。。って、だめか、こういうこと言っちゃ」 1人、リアルなこと、ブツブツつぶやいてるし。 ちょっと黙ってくれないかな、って思っちゃう。 だから、そっと顔を見上げてみた。 目が合ったら、いつもどおり自動的に、キスの体勢に入るケースケ。 私は目を閉じて、キスを受け止める。 いつもどおりの優しいキス。 あ~、やっと黙ってくれた、なんて、思いながら、 段々ケースケのキスに溺れていったんだ。 大好きだよ、ケースケ。ずっとずっと、そばにいてね。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ あは、まるで露出系(?)なお話、読んでいただいてありがとうございました。 というわけで、妊婦化した、ひろ。です。 しかも、あと数時間で、人妻化する、ひろ。です。 正直言って、ケースケとの関係、ここまで進展させられたのは、 もちろん根気強くそばにいてくれたケースケと、 迷う気持ちを小説の形で吐き出させてくれたこのブログと、 それを見守ってくださった方々のおかげだと、心底思っています。 本当にありがとうございました。 妊娠と入籍(予定)のご報告代わりに小説(風?)にしてあげさせていただきました。 今後も、ひろ。は、懲りずにまた小説を書き続けますが、 変わらず、見守っていただけたら幸せです。 よろしくお願いします。 ながさわ ひろ。 ←1日1クリックいただけると嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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