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「今日は、どっちにいるんだ?美莉ちゃん」
今日の芝居を見に来てくれていた事務所の仲間が楽屋から出て行った後、俺はそそくさと着替え始めながら、同じようにそそくさと着替え終え、腕時計を着けている慶介に問いかけた。幸せそうなオーラを出して、帰る準備をする慶介。向かう先には美莉ちゃんが必ずいるはずで。 手馴れた風に手元を見もせずに、腕時計をつけ終えた慶介は、靴に足を入れ、紐を結び始めながら言う。 「病院」 簡潔にそう答えた慶介は、紐を結び終え、もう一方の紐に取り掛かる。真剣に紐を結ぶ横顔。一度美莉ちゃんを失い、また取り戻してからの慶介は、男ぶりが一段上がった気がする。 今思えば、美莉ちゃんを取り戻しに行くと言った時から違っていた。あの日、夜中に、いてもたってもいられず、 悠斗→慶介:美莉ちゃんと、・・・どうだった? なんて、メールしちゃった俺に、 慶介→悠斗:今、俺の腕の中で眠ってるよ。悠斗も楓もありがとな。 そう穏やかに返してきた慶介。 もう、それまでの、美莉ちゃんが望めば、別れることだって受け入れた、ただ、優しいい自分は脱ぎ捨てて、随分、強くなった慶介。 そして、今、その横顔は、何かを守る者の、強い意志を湛えた、強い男の表情で。 ただ、そんなこと、ぼんやりと思いながら、慶介が靴紐を結ぶのを見ていたら、ちらりとこちらに目を向ける。 「わり、そっけなかった?」 ただ軽い言葉と、目の向きだけで明るい謝罪をくれる慶介。こっちが、黙ったのを、変な意味に解したらしい。俺は慌てて言う。 「いや、そんなことないよ」 そう答える俺に、唇の端を曲げて微笑み、 「そか」 とだけ、答える慶介。一瞬、その目の中に微かな憂いが見えた気がして、 「美莉ちゃん、具合悪いのか?」 「まさか。相変わらず検査のために出たり入ったりなだけだよ。なんで?」 「いや、今、、なんか、タメイキな目だったような」 そういうと慶介は笑って、 「そうか?俺、幸せだよ。美莉のそばにいられて」 本当に幸せそうなゆる笑顔でそう答えてから、 「・・・まあ、ちょっと、悩んでることはあるけど」 「美莉ちゃんの体調以外で?」 「ああ。でも、美莉のことだけど」 「なんだよ?」 「ん~~~」 話し渋る慶介に、 「話せよ」 そう言うと、 「お前だって、そろそろ考えそうなことだよ」 謎かけみたいに、そんなこと言う慶介だった。 ←2コクリでよろしくお願いします。いつもありがとうございます。 初めての方へ・目次内に項目追加しました。 今日のゆる日記の方は、こちらです。バカップルにご注意ください ふぉろみー? lovesick+も、がんばって更新中。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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