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2011.07.07
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読み始めはこちらから。

展開的には、

2010.05.20 ごめんな。おやすみ。愛してるよ。

に続く妄想wです。

緑ハート

後ろ髪引かれるヒロトとのバイバイにオチた気持ちを、それでも、今日丸一日だけガマンすれば、待ちに待ったデートができるんだからと、ムリに引き立てようとしていた私。トイレで、出血に気づくまでは。

その出血に、私は、違和感を覚える。規則正しく訪れている生理にはちょっと早い気がする・・・。第一、なんだかいつもと違う。

そんな風に思って、はっとする。

・・・これって、もしかしたら、着床出血なんじゃ?

部屋に戻って、PCで検索してみる。

着床出血、受精卵が着床したときに起こる不正出血。妊娠の兆候として最初に認識できるサイン。

・・・私、もしかして、妊娠しちゃったの?

まだどうなのかも分からないのに、そうと考えたらそうとしか思えなくなって、自然とお腹に添えてしまう、右手。

・・・どうしよう。怖い。ヒロト。

私は、部屋の時計を見る。真夜中。ケータイを手に取る。

・・・すぐにでも、ヒロトに相談したい。だけど、もう、仕事の仕上げに意識が戻ってる頃だし。

私はケータイを机の上に戻して、ベッドに横になる。手は、やっぱりお腹に添えてしまう。

・・・赤ちゃんが、いたら、、、、どうしよう。ヒロトは、なんていうだろう。

1人で悩みを抱え込めない私のココロは、情けないくらいヒロトのことを求めている。だけど。だけど、ヒロトは仕事中で。終わったら、一日の休息をとるはずで。だから、、だから、、家に帰されたのに。

・・・ねえ、私。・・・1日くらい、待てないの?



もう二度と会うこともないはずのサラを家まで送り届けて僕は、1人、部屋に戻る。

死を目の前に意識しても、ココロは、驚くほど冷静だ。それはそうだろう。もう、迷ってはいないんだから。

そう思って、仕事の最終チェックをしようと、デスクに腰掛けた瞬間に、ソファが目に入る。

・・・迷っていないのか、本当に?

僕の中の僕の声に、僕は小さく目を閉じる。

さっきまで、ソファで眠っていたサラ。いつまでも眺めていたい寝顔を、揺り起こすまで、随分時間がかかった。

本当はここにいたいはずなのに、僕の仕事を思って、素直に、起こされてすぐに文句も言わずに、帰る準備をしてくれたサラ。

仕事が終わったら、休息日にするよ。ただ、そう告げた僕の言葉の先に、当然、自分とのデートを予測して、明るく楽しい希望をたくさんはしゃいで口にしていたサラ。

・・・もう、何一つ、叶えてやれないんだ。一緒に映画を見よう。たったそんなことすら。

そんなこと、ココロで思ってることを知られないようにすることしか、ただ、黙って、微笑むことしか、できない僕だった。

・・・ごめんな、サラ。

サラと出会った日から4年間の思い出が、一瞬、胸をしめつけてくる。

僕は、首を振る。

・・・もう、決めたんだ。

サラにはサラを幸せにしてくれるにふさわしい人間がいるはずだ。もしかしたら、すぐ、そばに。

僕は、最後の仕事に意識を集中することにした。



・・・眠れない。

電気を消して、ベッドに横になってみても、全然全然、眠れない。

ヒロトの家で転寝しちゃってたから、ていうのも多分にあるだろうけど、それでも。

・・・ああ、もう、頭いっぱいで、どうにかなっちゃいそう。

こんな時間に、友達にだって、こんなこと、相談できないし。

・・・妊娠検査薬さえ、あればなぁ。

だけど、こんな時間に買いに行けるところもないし。

・・・ていうか。

私、もし赤ちゃんができてたら、どうしたらいいんだろう。

どうしたらってなに?

産むかどうかってこと?

どうかって何?

殺すかってこと?

私は、ベッドの中、きつく目を閉じる。

・・・殺すなんてこと、絶対できない。

産みたい。

・・・・うん。私、赤ちゃん、産みたい。

だけど。

・・・ヒロトはどう思うだろう。

私の同級生の友達なんかが、、カノジョに妊娠した、なんて告げられたら、ひるむだろうけど、ヒロトは・・・?

ああ、もう、できてるか、できてないか、だけでなく、ヒロトの答えを知るのも、

・・・すごく、怖いよ。



仕事の最終チェックを済ませて、やっと僕は自由になる。

自分の人生の全てから自由になる。

僕は時計を見る。

・・・あと、24時間。

1人で、人生最後の24時間を、ココロ穏やかに過ごそう。

誰からも連絡がこないように、固定電話のラインを抜く。ケータイの電源も切ろう、そう思って手に取った瞬間、ケータイが鳴り始めて驚く。音で分かる。

・・・サラ?

僕は、もう一度、時計を見る。

・・・どうしたんだろう。

いつものサラなら、休息をとるからと帰した後に絶対に電話などしてこない。

・・・

ココロがまとまる前に、途切れる、ケータイの音。なっていたのは、せいぜい2コールくらいのものだろう。そこに、サラのためらいを感じる。こんなタイミングでかけることを申し訳ないと思っている。

・・・サミシイとか、そういうことなのか?

いや、サラはそこまでは弱くないはずだ。きちんとルールを守ってきたんだから。

・・・何かを察しているのか?

いや、だとしたら、2コールでなんか切らないだろう。

・・・いったい・・・・

僕は考えるのをやめて、サラにコールバックすることにする。

・・・なんだったんだろう、と心を残すよりは。

耳にあて、呼び出し音がなるかならないかの瞬間で、サラが電話に出た、が、声が聞こえない。

「・・・もしもし、サラ?どうかした?」

僕の呼びかけに、

「・・・・ごめんなさい、電話したりして」

小さい声で告げるサラ。もう、聞けなかったはずの声に、胸が震えるのが分かる。

「いいよ。どした?眠れないの?」

「・・・・ぅん。。。」

小さくそう答えただけで、それ以上何も言わないサラに、

「僕に電話しちゃうほど?珍しいな」

少し微笑んで言うと、

「・・・仕事終わった?」

「ああ、終わったよ」

「・・・入ってもいい?」

・・・入っても・・・?

って、おいっ。

僕は、玄関に急ぎ、ドアスコープから外を覗いた。

・・・っ。

ドアガードをはずし、鍵を開け、慌ててドアを開けた。先には、サラ。

ケータイを持ったままの、手を、つかむようにして、引き入れる。

「ったく、何考えてんだっ。こんな時間に、1人で来るなんてっ。何かあったら、、」

いつもなら、大丈夫だったんだからいーじゃない、そんなこといって口をとがらせるはずのサラが、今日は、俯きがちに、

「ごめんなさい」

としおらしく呟く。僕は、サラのそのおとなしい姿に、サラをこの世に置き去りにしようとしている自分が、何を言えると言うんだ?と自分で自分が恥ずかしくなる。つかんだままのサラの手を離して、つながったままのケータイを切った。

「ごめん、大きい声だして」

小さい声で、謝罪し、

「どうしたんだ?」

問いかける言葉に、サラは、ただ唇を噛む。

・・・・?

「とりあえず、入れよ」

そう告げて、背中を向けた瞬間。

「ヒロト・・・、私ね、、」

サラが話し始めたから振り返る。

「私、、、妊娠したかもしれない」

・・・妊娠?

思いがけない言葉に、とにかく思考が停止する僕だった。


その2に続く。


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最終更新日  2011.07.07 17:00:36
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