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チョ・インソン~ジェミンに恋して

チョ・インソン~ジェミンに恋して

愛再び~告白1

倒れ込んだイヌクは、切れた唇を押さえながらゆっくりと立ち上がった。

「すまなかった・・・」

イヌク自身、スジョンがあのまま連れ去られるのではないかと恐怖を覚

えた事も事実だった。

考えただけでも、そら恐ろしく自分の力のなさを恨んでいた。

ジェミンはイヌクを睨み付けながら聞いた。

「いったい何があった・・・」

イヌクはテーブルに酒を出して、ふたつのグラスに注ぎ

「まぁ、座れよ」

と、ジェミンに言った。

「結構だ・・・それより、きちんと説明をしてもらおうか」

ジェミンはわき上がる怒りを抑えている。

イヌクはグラスを一気に飲み干して

「おまえは変わったな・・」

とジェミンに言った。

「なにぉ」

「愛の力か・・・」

イヌクは自嘲するように笑いながら言った。

以前のジェミンなら、何が何でも自分の気がすむようにしたに違いない。

もう一度酒を注ぐと、イヌクはグラスをもって立ち上がり、窓に寄り添って

美しく光る夜景に目をやった。

「スジョンを呼び出したのもこのホテルだった・・・今夜みたいにきれいな

夜だったよ」

「おまえがスジョンを呼び出したのか・・」

「スジョンは俺が呼び出したことを知らないで来た。おまえをイギリスに行

かせた晩だった」

ジェミンはやはり今回の件は、イヌクの策略だったと確信した。

「おまえ、いったいスジョンをどうするつもりだった」

ジェミンはいらだたしそうに聞いた。

「おまえから奪うつもりだ・・返してくれないか俺に」

「何だと・・・これ以上、スジョンを苦しめるのか」

ジェミンはイヌクに近づき、イヌクの胸ぐらをつかんで詰め寄った。

するとイヌクはじっとジェミンを見つめ、静かに言った。

「おまえは幸せか?」

ジェミンは、イヌクが何を言いたいのかがわからなかったが、イヌクから手

を離して、答えた。

「幸せだ・・・だから何だ」

イヌクは小さくふっと笑い、ソファに腰かけた。

「俺はおまえに言った。俺は金を手に入れて愛を失った。おまえは財産を失

って、愛を手に入れた・・と」

ジェミンがスジョンを連れ去るときのことだった。

ジェミンもふと、そのときの事を思い出していた。

「おまえ・・・あのとき何故俺を撃たなかった・・・」

イヌクはか細い声で、目を潤ませながらジェミンに言った。

「あのとき俺を撃っていれば、いまさらスジョンにこれほど苦しい思いをさ

せずにすんだんだ・・。」

ジェミンが答えないでいると、イヌクはさらに続けた。

「そして俺も・・・これほど苦しまなくて良かった・・。あのとき、心から

スジョンの幸せを願ったまま・・・何もかも捨てたかった。」

ジェミンはそのときを鮮やかに覚えていた。

自分がイヌクを殺そうと二人の部屋に忍び込んだとき、スジョンが自分の前

に立ちはだかり、大きな涙を流しながら必死で止めた。

そのとき、イヌクが

「おまえの勝ちだ」と言ったのだった。

「今更なにを言っているんだ。おまえが二度とおまえの前に現れるなと言っ

たから、俺とスジョンはバリを離れてニューヨークに来たんだ。それなのに

おまえは、俺達を追ってきたのか?」

「いいや・・・これも運命だ・・おれの気持ちを察して、神様が巡り合わせ

たのかな。」

イヌクが寂しそうに微笑んで言った。

「スジョンを・・・おまえの女を、俺にくれないか」

ジェミンはあきれたように笑って答えた。

「おまえ・・・いったい自分が何を言っているのかわかっているのか?」

「ああ、わかっているさ。その変わり、P財閥の株をすべておまえに返して

やる。今の会社からも勿論手を引かせる・・。だから、スジョンの前から姿

を消してくれ。」

ジェミンはこれ以上話をしていても仕方ないというように、ドアに向かって

帰りかけ、振り向きざまに言った。

「スジョンが俺の女だと?あいにくだな・・・あいつは俺の命だ」

勢い良く閉まるドアを見つめてイヌクが静かに目を閉じた。


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