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カテゴリ:看護師の事
人が死を迎える場面は何度経験しても慣れない。何度経験しても涙が目ににじんでしまう。このような私を専門職じゃないと言う人も少なくないだろう。私は専門職である前に一人の人間だから、心の中の感情まで殺すつもりは無い。でも、私は専門職にはなれない。この分野においては…。
ある方が最期への時間を過ごされていた。看護師の先輩方は朝から様々な予測を立てて話している。家族の方々は午前中から集まって、ロビーで葬儀屋の話をしている。そんな中、私は30人近い点滴者の準備を始め、様々な仕事に追われて走り回っていた。 夕方になると、次第に心拍は落ちていき普段は100前後ある方なのに、60台へ落ち、見る見る40台、20台へと落ちていった。心電図のアラームが鳴り響く。 そして最期の時が来た。 奥様は、日中は「もう駄目だよねぇ?」「手が冷たいもんね」「何を言っても駄目だよね」と言い続けていたけれど、亡くなられて出発される時には「もっと生きていると思った・・・」と本当の心を述べていた。 「もう駄目だよねぇ?」は、「何とかならないのかな?」、 「手が冷たいもんね」は、「どんどん手が冷えていくよ。不安だよ。」、 「何を言っても駄目だよね」は、「何とか反応してくれないかな。」 私は奥様の心に秘められた言葉を感じていた。最後に奥様が言われた言葉が私の感じたものを確かなものとしていた。 次第に衰弱し、水さえも飲めなくなるご主人様のそばで編み物をしたり、こっそりと甘いものを食べさせたりしていた奥様。毎日毎日、朝から晩まで通いつめる中で奥様は何を感じておられたのだろう。 人の死は、とても重い。 何度経験しても慣れない。慣れたくもない。 それが専門職じゃないと言われても、それでいい。 私の心だけが取り残され続けていた悲しい晩秋の1日だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年11月25日 22時05分09秒
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