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さいきん「ハンズフリー」とか言って、こんな耳掛け式の携帯電話をしてる人がいませんか。日本のことはよく分かりませんが、アメリカではこれが急速に普及していて、おかげでアブナい人とそうでない人の区別がつかなくなってきました。 今日は、会社の売店のレジに並んでいたら、前に並んでいたヤンエグ風のビジネスマンがレジに向かって一方的にブツブツ喋っていて、レジのお姉ちゃんがお釣りを渡そうとしたら「そうそう、それだよ、それ!」とか言い始めるので、何かと思ったら、耳にこのワイヤレス携帯電話を掛けていて、電話の向こう側の同僚と会話をしていたのでした。 先日は、ロビーに飾られていたクリスマスツリーの前で、あらぬ方向を見ながら目に見えぬ誰かと延々と会話をしているお姉ちゃんがいて、…あ、アブナイ人だ!と思って、でもよくよく見ると、耳に掛けたこのワイヤレス携帯電話が長い髪に隠れて見えなかっただけなのでした。 ボクは、基本的にキチガイに対して説明困難な強い好奇心を持っていて、路上でブツブツ言っている人とかを見るとワクワクします。 アメリカだと、武器を持っているキチガイもいるので、いくら興味があってもこういう人とはあまり関わらないようにしていますが、日本にいるときこのテのアブナイ人と電車で一緒になったりすると、ときどきガマンできなくなって、その人の独話に「へー、そうなんですか。」「フ~ン、それで?」とか合いの手を入れてしまうことがあります。 だいたいの場合、このテの人たちは、「私の世界を邪魔しないでください」とでも主張するかのように、ボクの合いの手を無視するのが常です。 ところで、このテの人たちの独り言の中には、たまにほんとうに独創的で感動的なものがあります。 ボクがいちばん感動したのは、NYCの日本食レストランでバイトをしていたときの経験で、ある日ホームレス風のオッサンがレストランの入り口付近で立ち止まり、ポケットから取り出した何かに向かってブツブツ喋っていたかと思ったら、「…どうしたんだ。Talk to me!!」と必死に叫び始めました。 いったいどうしたのかと思ってそのオッサンのところに行くと、彼はブクブクと泡をふいた手のひらのカニをオイラに見せて、「コイツが、ぜんぜん返事をしないんだ!」と真剣な声でボクに訴えました。 日本の電車の中などで一緒になるこのテのアブナい人の話をじっと聞いてみると、家族関係や仕事関係の話が多いように思います。そして、目に見えない誰かと会話をしているという“外向的”なのよりも、脳内の誰かに対して自分の考えを訴えているような内向的な独白調のものが多いです。たとえばこんな感じです。「僕はそれはよくないことだと思うんだ。でも、○○さんは××だと言うんだ。今度そんなことがあったら、僕は絶対言ってやろうと思う。そうだ、きっと言ってやるんだ。」大抵はすごく思いつめた感じで、ちょっと哀しいものばかりです。 そういうボクも、さいきんではそういうことが少なくなってきたと思いますが、日本にいた頃はよく英語で独り言を言っていたそうです。たぶん、日本語でいうところの「くそーっ!」とか「しまったーっ!」とかいう感嘆詞のたぐいを英語で言っていただけだと思いますが、ボクのことをよく知らない人はきっと「アブナイ人」だと思ってさぞ気味悪がっていたに違いありません。 ところで、今から四半世紀も前、ウォークマンがちまたに出回り始めた頃、電車の中とかで突然リズムをとり始めたり、サビらしき部分を歌い始めたりする人が出現して、「なんじゃ、コイツは!」と思った経験はありませんか。本人は自分の脳内に響く音楽に没入しているだけなのでしょうが、周りの人たちにはその人の脳内に聴こえている音楽は聞こえないので、ただのアブナイ人に見えたものです。 でも、ウォークマンが普及するにしたがい、とつぜんリズムを取り始めたりする人の姿はフツウになってしまい、何の違和感も感じなくなるまであっという間だったように思います。 同じように、耳掛け式の携帯電話がより小型化し普及するにしたがい、携帯電話を通じて電波を受信している人も、脳内に直接電波を受信している人もだんだん区別がなくなって、1人でブツブツ言う人たちに何の違和感も感じない日が来るのもあっと言う間であるに違いありません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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