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劇場通いの芝居のはなし

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2019.01.14
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カテゴリ:狂言の稽古
能は「謡」と言いますが、狂言の謡は「小唄」と言います。能よりも軽い、ということでしょうか。おなかからしっかり息を出し、胸や喉にやや力を入れて、固い音色の強い声を出すのは能の謡と同じですが、狂言ではそれほど重苦しい声で歌う必要はないと思います。
能謡が拍子を重視した「ノリ地」を基本とする「強吟」が中心なので、前へ前へと進むように謡ってゆきますが、狂言小唄は音の高低を生かしたな「弱吟」が多く、メロディを楽しむ感じがあります。小唄が唄われる場面は、多くが酒を飲んだときですから、浮き浮きした明るい感じがふさわしいです。
狂言でも、能掛かりの作品や、『三人片輪』のように曲中で能の謡(『景清』)の一部を謡うときは、ノリ地の謡を謡います。また、間狂言で舞・謡がある場合、ノリ地のものがほとんどです。

「ノリ地」は単純に言えば、「四拍子」もしくは「八拍子」の謡で、それぞれの拍を強めに謡います。いわば「行進曲」のリズムです。今ですと、遅い「ラップ」と言えるかもしれません。一拍に一音がのるのが基本ですが、一音を伸ばして二拍以上にする場合もあります。五音や七音の奇数音でできているフレーズでは、そうして四拍子に合わせます。休符がはいることもあります。また五線譜式に言えば、前の小節の最後の拍から出る、「弱起」の場合が多いです。

能の謡は、シテやワキが一人謡をする部分は少しで、主に地謡が謡う「斉唱」(皆が一つのメロディを謡い、ハーモニーはありません)です。数人が声をそろえるので、声のエネルギーは大きく、またそれぞれの自由さはありません。
対して狂言の小唄は、ほとんどが一人で唄いますので、謡のテンポや音の上げ下げ、伸び縮みに、いくらかの自由さというか、演者の勝手が入ってきます。

また、能では演者が舞うときは地謡が謡いますので、謡ながら舞うということはほとんどありませんが、狂言は自分で謡ながら舞うということがよくあります。酒を酌み交わしている場合は、相手に「地を謡うてくれい」と言って謡ってもらいます。しかし酒盛りと関係なく、芝居の要素として謡と舞がある『名取川』や『節分』などでは、一人で長い謡を謡いながら舞わねばなりませんので、演者の負担はきついです。

能や狂言の謡には楽譜はなく、言葉の横に点を打って(実際は短い線です)上げ下げを示します。「ゴマ譜」と呼ばれます。平板に謡うときは短い横棒(点)が引かれ、音程が上がるときは右斜め上に上がる線、下がるときは右斜め下に下がる線です。一音の中で音が上がったり下がったりする場合は、ゴマの横棒の中程から斜めの線にします。伸ばす音は、線の下に二点を打ちます。「あーぁー」のように、音の中でもう一度音を言い直して伸ばす場合は、「逆S字」のような繋がった二重線にして、二点を打ちます。言葉ではわかりにくいですね。すみません。できれば「謡本」をご覧下さい。
by 神澤和明





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Last updated  2019.01.14 09:00:14



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