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かなりすmieux

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November 18, 2004
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カテゴリ:カテゴリ未分類
  
窓から彼岸を見ていたら、
下の枠からにゅぅっと
黒い透明なものが這ってきた。
枠しか嵌ってない窓。
ガラス売りはコクトウ氏の部屋へ
入ったきりで、
自転車だけが眩しく光っている。
かなりす=アクトウも、
せんだっての戦争で粉々になった
ガラスを嘆きつつ、
早く窓ガラスが欲しいと頼んでいるのだが、
レスがない。そのために、
ガラス売りの足もどうりで
こちらに向かないという次第である。

昨晩から、そこに靴が転がっている。
昼間には私の足にすこんと嵌って、
しびれるという感覚を控えめに伝えてきた。
いいえ、靴屋から買ったのではなくて、
やっぱり窓から入ってきた双子の黒猫が、
ストーブの前で眠りこけているうちに、
尻尾はストラップに、
蚤の卵たちは繻子のりゅみえーるとなって、
黒いサテンの靴になってしまったのだ。
開いていたマルケスの文庫本から
強い麝香の気配が出ていたせい
なのかもしれない。
私は紙の上での話しでないと、
その匂いは受け入れ難いのだけれど。
それとも、月が桃のようにとろけて
寝ずの番もできなったかったか。
それなら、よく知っている匂いだわ。

コクトウ氏の部屋を眺めれば、
彼は鏡に向かって、何かささやき、
ペンを走らせていた。
コップには一輪の水仙が挿されている。
右手は左手に、左手は右手に。
ねえ、あなたはどちらが利き手なのかしら。
知らないヒトを想うように、
そうね、死んだだれかを見るように。
見惚れてらっしゃるのね。

『鏡は死が出入りする扉です 。
誰にも言ってはいけませんよ。それに、
生涯鏡のなかを 見つめていてご覧なさい。
そうすれば、死がガラスの巣のなかの
蜜蜂のように働くのが見えるでしょう。』

彼は自分を見つめるように、
瞳を双眼鏡で目隠ししながら、そう言ったわ。
あ、あ。靴たちが、かたかた鳴る。
ガラス売りが私の家に来ないのは、
死に与えられるべき蜜が
見あたらないからかもしれないって。
砕けたガラスは、どこへ行ったのだろう。
脆くもはかなくもなく、
強靱にミラーコートさえ
されていたのに。

あった。手袋の中。
いいえ、それは私が集めたコトバたち。
かわいそうに使えなくなったもの
さえある。ヘンやツクリ、点々を
落としてしまったもの。
あんなに星のように瞬いていたのに。
ぐったりしている。乾燥しているものも。
だめ。永遠のウソに誓ってきらめいていて。
せっかく有頂天になって選んできたのに。

気づけば黒い透明なものは
振り返ることもできないほど、
私を背後から支えていた。
ああ、息はどうやってすればいい?
そうなれば、それもかわいいもの。
さあ、コトバをもういちど見つけなおそう。
花のように枯れても、それらは
また生まれなおすのだから。









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Last updated  November 19, 2004 01:27:14 AM
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Comments

かなりすmieux@ ありがとうございます。 東京暮らしが落ち着いてきましたので、 …
団子屋3916@ おかえりなさい 青い鳥以来の復活ですね。 再び、熱いの…
三堀智久@ ん? これかぁ!?。
三堀智久@ Re:第四百十九夜 ジャグラー(10/26) でも、言葉つかってるうちに つい考えて…
三堀智久@ Re:第四百十九夜 ジャグラー(10/26) 方法で退屈しないなら だれも退屈しない…

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