テーマ:最近観た映画。
カテゴリ:レビュー
「ウォーター・ボーイズ」の矢口史靖監督による、女子高校生ジャズバンド青春映画の登場である。
東北の片田舎の高校。補習組のぐーたら落ちこぼれ女子たちは、野球部の応援ブラスバンド用の弁当を届けるべく言われ電車で出発したが、なにぶんいいかげんないまどきの女子高校生の集まり。異様に時間がかかったせいで、それを食べたブラスバンド部員が皆食中毒になるという事件を引き起こしてしまう。 一人難を逃れた男子部員の中村は、お前たちのせいだ、と次の試合までに即席ブラスバンドを作り、応援演奏をしろとつめよる。補習がさぼれるとばかりいい加減な気持ちで参加を決めた補習組女子ときわめて真剣な中村で、人数的に足りるビッグバンドを結成することになるが・・・ こう書くと、ああ、それでちょろちょろっと苦労して、最後には嘘みたいに短期間で上手になって終わりね、と簡単に想像されるかもしれないが、この作品はその期待をいい意味で裏切ってくれる。 いろいろな伏せんが張り巡らされる中で、、補習を逃げられた(?)数学教師竹中直人ももちろん絡んで、イマドキの女子高校生たち(その冒頭の弁当運搬のシーンはあまりのダメ人間ぶりで、見ていて腹が立つほどである)が、紆余曲折しながらも、「自分の力で吹いて」音を出さねばならない管楽器を17人一丸となってプレイするようになるまでを、この映画は「お決まりであってお決まりでない展開」でユーモアたっぷりに見せてくれるのである。単純なようで案外盛りだくさん、それがこの映画のおいしいところなのだ。(ここが、ダメ部員が成長する様を描く点でテーマがかぶる、「ロボコン」とは違う点だろう) また、「ウォーターボーイズ」よりも、その笑いのセンスに磨きがかかっているのも見逃せない。私がここ数年に見た映画で最も笑ったと断言できる「イノシシ」がからむシーンは、あきらかに安い大道具に、最新の画像技術という組み合わせの、あ、っと思わせる手法と、バックグラウンドミュージックとの抜群な相乗効果でまさにスタンディングオベーション(スタンディング大笑いでも良いが)に値する。 この映画のコメディセンスは、とにかく一言で言って、「センスが良い」のだ。ジャズのリズムにのって歩く生徒たちの上でたたかれる布団に、「そんなわけないだろ!」と思わず突っ込むほどの転げ落ち方の高校生・・・そういった小さなユーモアがストーリーの中に組み込まれるテンポの巧妙さ、軽快さは、今までの日本映画にはあまり見出せないものだ。(頭に浮かぶとしたら、岡本喜八監督の「大誘拐」くらいのものか) 以前、「ゲロッパ!」で、井筒監督がハリウッド娯楽を(無意識に?)やろうとして失敗した、と書いたことがあるが、「スィングガールズ」は、むしろ、ハリウッド娯楽とともに育ったからこそ無意識にテンポの良さを身に着けた、という表現が当てはまるかと思う。それは、最近のジャパニーズポップスの若手たちが、明らかにかつての「歌謡界」よりも(メロウさは薄くなったが)リズム感で優れていることと同じであるのかもしれない。 欲を言えば、多少映画としての「感動」が薄いことだろうか。もう少し笑いの前フリ部分を減らし、登場人物たちの内面の葛藤を深く織り込めば、最高に笑えて、最高に感動できて、最高にスィングできる映画になったのに、とだけ辛口で評しておこう。 ちなみに、モデルとなったのは兵庫県のこちらの高校。部員が少ないことからビッグバンドに転向、成功を収めている有名ジャズ高校バンドである。また、 「スウィングガールズ」のオフィサルサイトには、映画の登場人物たちのキャラクター紹介が映画を超えて事細かに書き記されているので、すでにご覧の方は必ずチェックのほどを。 映画として 8/10 コメディとして 9/10 俳優たちが練習して演奏するまでになったことをたたえて 10/10 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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