中東:血みどろの時代へ
東欧、中東、アフリカ、、、これらの地域の共通点は、「自分たちが同じ国家の構成員だ」という認識が希薄なことだと思う。そしてそれは、今までずっと大国の都合によって翻弄されてきた歴史の積み重ねでもあるだろう。東欧は古くは西欧とモンゴルの争いの場だった。モンゴルの崩壊後は、ドイツとロシアがそれに取って代わった。中東も、資源を狙うイギリスやロシア、アメリカにずっと翻弄され続けてきた。アフリカは言うまでもない。そうした国々にいる人たちが、第二次世界大戦後、急に国境を与えられ、独立していった。しかも、その国境の多くは民族など関係ない(あるいは、そもそも国境で分けられるような単純な地域構造になっていない)ものだった。そのような地域に住む人たちをまとめ上げ、「国家」を維持するのは至難だ。西欧諸国は民主主義、民主主義と声高に叫ぶ、、、でも、彼らにとっては民主主義と国家の両立は非常に困難だった。民主主義(崩壊)or国家(独裁)ということだ。しかし、独裁的な体制も結局長くは続かない。多くの場合、どこかで崩壊する。長く続く独裁体制は、国土をきっちり実効支配する強い力と、民衆との妥協点を見つけ出す優れた行政手腕がなければ成立しない。独裁体制の崩壊後は、国境の中で多くの勢力が血みどろの争いを繰り広げることになる。「同じ国家に属する国民である」という意識は最初から無いのだから、当然のことだ。忘れてはならないのは、欧州にしても、アメリカにしても、日本にしても、こうした(現在国家とされている)地域内での血みどろの争いを長い歴史をかけて経てきているということだ。そうした長い歴史を紡ぎ、ようやく所属意識と、他集団との妥協を体得していく。EUなどはその象徴だろう。WW1、WW2という血みどろの殺戮を経て、ようやく欧州は「欧州である」という感覚と、妥協を得たのだと思う。今まで中東はアメリカが無理やり維持してきた。それは、アメリカの理想と、石油を抑えるという現実が絡んだものだった。しかし、アメリカは内向きになり、シェール革命により原油は自分で賄えるようになっている。民族、宗教、歴史が極めて複雑に絡み合っている中東への介入は、極めて高コストだ。誰もアメリカが果たしていた役割を肩代わりできないだろう。つまり、中東は血みどろの時代へ突入し、この時代は100年単位で続くかもしれない、ということだ。参考記事民主主義/権威主義に関してイラク情勢:概観普通の大国に変わり行くアメリカイスラム/アラブ世界 概括 2014/2