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カテゴリ:生老病死を巡る問いかけ
生命倫理研究者 橳島 次郎
欧州に比べ無関心な日本 薬でも新しい手術法でも、再生医療でも遺伝子治療でも、人で試す臨床試験の前に試験管の中で、次いで、他の動物で実験して、安全性と有効性を調べていおかなければならない。そこでふるいにかけられた医療技術だけが臨床試験に進める。 動物実験は、医療応用を目指す開発研究だけでなく、生命現象や病理を明らかにする基礎研究でも行われる。日本で1年間に使われる実験動物のおおよその数は、マウス(ハツカネズミ)が最も多く320万匹、次いでラット(大型のネズミ)90万匹、モルモット7万匹、ウサギ4万5000匹、イヌ4800頭、サルとブタが各々3000頭に及ぶ。 動物実験は、生涯を加えたり病気にかからせたり、遺伝子を働かせなくさせたり、終了後は殺処分し解剖したりと、人間にはできない残酷なことをする。だから動物保護の観点から動物実験には多くの規制が課される。 実験者は、最も基本的は規範として、出来るだけ動物を使わない実験を選ぶ(代替)、使う動物の数は必要最小限とする(減数)、与える苦痛は最小限のものとし、殺処分は苦痛のない方法とする(洗練)、という三つの倫理的原則を守らなければならない。事前に実験計画を提出して、倫理原則を守っていると認められたものしか実施できないことになっている。 海外では、多くの国でこの倫理原則が法律で義務付けられているが、日本では努力規定都市化されていない。また、海外では実験を行う機関と研究者は公的な免許を取るよう日本ではそうした縛りはない。 動物を使わない代替実験法の開発が海外では積極的に進められているが、日本では取り組みが遅れている。医学、医療の発展のために動物実験は欠かせないとの研究者側の主張の方が優勢だ。 動物実験の公的規制は海外、特に欧州諸国では非常に厳しい。それに比べると日本の規制は、なきに等しいと言わざるを得ない。その背景には動物保護運動の活発さと、それを支持する世論の厳しさの差がある。日本ではイヌやネコなど愛玩動物の保護は近年ようやく進められるようになったが、実験動物には無関心なのが大勢だ。 高度な医療を受けられるのは、動物実験の支えがあってのことである。人間のために動物をどこまで犠牲に負わせている苦痛に、もっと思いをいたさなければならない。
【生老病死を巡る問いかけ〈15〉】聖教新聞2019.5.16 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 15, 2019 01:49:09 AM
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