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May 28, 2020
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新型コロナのパンデミック乗り越える鍵は地球規模で考えること

北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター 高田礼人(あやと)教授

 

――新がとコロナウイルスの出現についてどう思われますか。

 

正月明けぐらいに、中国で原因不明の肺炎が流行していると報道され、これが他の地域に広がったら、どのくらい影響を及ぼすかと心配していました。

今回の新型コロナウイルスは、感染しても症状の出ない「不顕性感染」も多いことが対策を難しくさせています。感染者は感染に気付かず、他の人と接触してしまう可能性があるからです。SARS(重症急性呼吸器症候群)やMARS(中東呼吸器症候群)に比べて師地率は高くないものの、今回は警戒が必要だと思います。

 

 

――教授はこれまで、エボラウイルスやインフルエンザウイルスの研究をされてきましたが、今回のウイルスもエボラウイルスと同じく、コウモリのもっていたウイルスと考えられます。

 

新型コロナウイルスに非常によく似ているウイルスがコウモリから見つかっているので、自然宿主(もともとウイルスと共存している動物)はコウモリと考えられます。その上で、どうしてコウモリに、そんなに多くのウイルスがいるのかとよく聞かれます。あくまでも推測ですが、コウモリは洞窟の密閉した空間で密集・密接して生活しているものが多いのです。いわゆる「3密」です。そういった環境は、ウイルスが維持されやすいのだと思います。

ただ実際は、コウモリと共にげっ歯類(ネズミの仲間)もまた、多くのウイルスをもっていることが分かっています。そうしたウイルスがたまたま人や他の動物には入った時に、感染症を引き起こすのです。

 

 

――エボラ出血熱で臨床試験が行われていた「レムデシビル」が、新型コロナウイルス感染症の治療薬として国内で承認されました。

 

新型コロナウイルスは感染した細胞の中に入り込み、自らの遺伝情報(RNA)を複製させていきますが、この複製に際して必要なのは、ウイルスが持っている「RNAポリメラーゼ」という酵素です。「レムデシビル」には、この酵素の働きに作用する性質があり、結果としてウイルス遺伝子の複製を阻害することができます。日本で注目されている抗インフルエンザ薬「アビガン」も似たような機能をもっており、2014年に西アフリカで流行したエボラ出血熱の治療にも使用されました。ともに副作用があることも指摘されていますが、有効な薬の候補であることに間違いありません。

 

 

――RNAをもつウイルスは、変異しやすいといわれています。さらに凶暴化することはあるのでしょうか。

 

それは分かりませんが、そもそも重症化しやすいウイルスは、生き残りにくい。感染者に依存して自分の子孫を増やすウイルスにとって、生き残るためには〝一人の感染者から一人以上に感染させること〟が求められますが、感染者が重症化して寝込んでしまうと、他の人にうつすことができず、途絶えてしまう確率が高くなるからです。なので、毒性が強すぎるウイルスは、生存戦略としても望ましくないのです。また新型コロナウイルスは、ふつうの風を引き起こしているウイルスと同じ「コロナウイルス科」に属します。断定はできませんが、このまま人類に定着するならば、長い年月をかけて弱毒化していくだろうと思っています。

 

 

――ウイルスをまるで生き物のように語られますね。

 

生命活動に必要なエネルギーを生み出す「代謝」を行わず、自らの分裂して「増殖」することができないウイルスは、生物学的には「生物」ではありません。ですから、ウイルスは〝ただの物質〟と考えることもできますが、ひとたび生物に感染すると、生物の細胞の代謝能力などを利用して、自らの遺伝情報を複製させるのと同時に、ウイルス固有のタンパク質を合成させ、子孫をつくっていきます。まさに〝きわめて生物的な物質〟といえます。

また、そう考えるようになったのは、私が長年、人と動物に共通して感染する「人獣共通感染症」を研究対象として来たからかもしれません。ヒトと動物の接触によって起りうる事態を予測し、先回りで予防策を立てるために、これまで各地でフィールドワーク(現地調査)を続けてきましたが、その中で動物を生かし、時には支えながら自分も生き続け、自然界で静かに存続するウイルスの姿を見てきました。そのあり方から、ウイルスも地球上に存在する生命体の一部であると感じるのです。

 

 

――そうしたウイルスがなぜ、人間にとって致命的な病気を引き起こすものに変わってしまうのでしょうか。

 

長い時間をかけて築き上げられたウイルスと自然宿主動物との蜜月な関係に、人類が踏み込んでしまったからでしょう。

人獣共通感染症の多くは、野生動物との接触から始まります。自然破壊などを通して人間の活動領域が広がったことや、地球温暖化による動物や昆虫の生息域の変化で、ウイルスに共生していた動物との接触が増える。すると当然、今までの人との接触がなかったウイルスと出くわす可能性も高くなります。野生動物から家畜に感染し、それが人に伝播するという経路もあります。そのウイルスが人への感染に成功し、爆発的に増殖できる条件を備えたものであれば、高い病原性を示すこともあるのです。

また、人類の食糧問題とも深く関係しています。先進国では野生動物を珍味として食べているかもしれませんが、途上国では生きていくために食べざるを得ない状況もあります。その動物の血液、粘液、尿あるいは糞等に触れることで感染する恐れがあるのです。一方、こうした感染の恐れのある動物を食べないようにするため、農業や畜産業を発展させようと思っても、農地などを広げるためには、やはり自然に踏み込まざるを得ない。こうした環境破壊や食糧問題とどう向き合うかも、人類に問われていると思います。

 

 

――仏法には、環境(依報)と人間(正報)は密接に関わっていると説く「依正不二」という法理があり、自然破壊は人間の命を脅かすものとなり、逆に自然を守ることが人間を守ることにつながると考えています。

 

興味深い視座です。私たちの大学院では今、人の健康、動物の健康、環境の健康は互いにつながってていると捉える「ワンヘルス」という考えをもとに教育・研究を進めています。「依正不二」とも共鳴するものではないでしょうか。

ともあれ私たちが研究を続けているのは、今の脅威はもちろん、新たに遭遇するかもしれないウイルスにも備えるためです。近年は遺伝子の配列を高速で調べることができる「次世代シーケンサー」と呼ばれる装置も生まれ、今まで発見できなかったウイルスも検出できるようになりました。こうした科学技術の力も使いながら、獣医学、環境学という分野の垣根を超えて、感染症対策に当たっていきたいと思っています。

 

 

――最後に、新型コロナウイルス対策で私たち市民が心掛けるべき点を教えてください。

 

世界がこういう事態になっても、悲観も楽観もせず、なるべく平常心でいてほしいと思います。

その上で、たとえ緊急事態宣言が解除されても、「自分の地域は大丈夫」と人々が一気に動き出せば、当然、再び感染は広がります。感染が世界に広がっている以上、日本だけが乗り越えればよいという問題でもありません。

私自身、「シング・グローバリー、アクト・ローカリー」という言葉、つまり〝地球規模で考え、足元から行動する〟ことを大切にしていますが、一人一人が世界全体のことを考え、今できることを地域や個人レベルでやっていく。この心掛けが大事だと思います。

 

たかだ・あやと 1968年、東京都生まれ。獣医学博士。専門は獣医学、ウイルス学。北海道大学獣医学研究科助手、東京大学医科科学研究所助手などを経て現職。エボラウイルス研究の第一人者として知られる。著書に『ウイルスは悪者か』(亜紀書房)など。

 

 

【危機の時代を生きる】聖教新聞2020.5.27






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Last updated  May 28, 2020 01:30:18 PM
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