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September 28, 2020
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多様な不安を受け止めて共感を示すことから始める

 

長期化するコロナ禍にあって、私たちはそのように不安と向き合えばよいか—。今回の「危機の時代を生きる」では、社会心理学を専門とする新潟青陵大学大学院の碓井真史教授に、話を聞いた。(利き手=志村清志・村上進)

新潟青陵大学大学院教授  碓井 真吏教授

 

インタビュー

—新型コロナウイルスの流行は、社会にさまざまな不安を呼び起こしました。

 

心理学において、「不安」は、眼に見えないものや未知のものに対して抱く感情とされます。一方で「恐れ」は、対象のはっきりしたものに対して抱く感情です。

人間は、ウイルスのように、肉眼で認識できないものに対しては、不安を強く抱きます。すると、その不安をかき消そうとそわそわしたり、適切な判断ができなくなったりして、非合理的な行動をとってしまいがちです。

今回の感染が流行し始めた頃、ウイルスに関する情報が少なかったこともあり、社会全体が〝浮足立っていた〟印象があります。マスクやトイレットペーパーを必要以上に買い占めるような過剰な行動は、不安の裏返しであり、一時の安心を得るためのものという側面がありました。

 

「ゼロリスク」を求め過ぎない

 

—コロナ禍の影響が、今後も続いていく中で、私たちは、不安とどのように対峙すればよいでしょうか。

 

危機的な状況下では、ある程度の不安は、自分の身を守るために必要です。むしろ、その不安を自分でコントロールできるかどうかが求められます。そのためには、リスクを完全になくす「ゼロリスク」のようなあり方を求め過ぎないことが大切でしょう。

そもそも、ウイルスの感染症を完全に防ぐことは不可能に近い。身体的距離の確保や3密の会費など、感染リスクを抑える方法は提示されていますが、リスクを完全になくすことは難しいと思われます。

にもかかわらず、「ゼロリスク」にこだわり続けると、かえって誤った情報に振り回され、感染者への差別といった過激な行動に走ることもあります。不安との適度な距離が必要でしょう。

最近では、流行初期のような混乱は減っているようですが、感染リスクに対する不安の度合いに、大きな個人差が生じてきていると感じます。こうした感じ方の違いは、ライフスタイルの野となり、社会の分断にもつながりかねません。

政府の提示する「新しい生活様式」は、義務ではなく、一つの実践例といえます。大切なのはそれぞれが、自他の健康に配慮しつつ、時々の状況に合わせて自らの清潔様式を生み出すていくことであって、他人に強制し、縛るためのものではありません。

マスクを着用しない人に対するバッシングも問題になりました。着用しない人の中には、心肺や皮膚の疾患など、さまざまな事情で〝着用できない〟人もいます。また一方では、感染リスクに過敏になって、心身ともに余裕がなくなっている人がいることも理解する必要があります。

いずれにしても、社会や地域には、さまざまな感じ方の人がいるという認識を大事にしてほしい。違う考えを持つ人に対して、責めたりしても何の解決にもなりません。真っ向から否定するのではなく、まずは共感を示すことから始めるのが大切だと思います。

 

 

正しさは刻一刻と変化する

十何に対応する視点が必要

 

 

—不安をコントロールするうえで、情報との向き合い方も大切になります。具体的なポイントはありますか。

 

情報を発信する側には、感染症のような危機に直面した際のリスクコミュニケーションの質を高めることが求められます。情報の正確性は必要ですが、そのうえで相手が、その情報をどう理解するかという視点が大切です。

例えば、「今夜、1時間に100㍉の雨が降る」と発信するだけでは、深刻さが伝わらない可能性がある。相手に伝わる情報でなければ、不安を取り除いたり、リスクへの対応を促したりすることはできません。その意味では、単に「正しい言葉」というより、「伝わる言葉」を使うように心掛けていきたいと思います。

心理学の研究によれば、部屋を散らかした子どもに「お片付けしましょう」と言うより、あえて「散らかして遊ぶのって楽しいね」と言った方が、子どもはきちんと片づけをするといわれます。たとえ一言であっても、相手の心情や状況を考慮した言葉使いが重要になってきます。

また情報を受ける側にも注意すべき点があります。災害のような危機的な状況になると、デマ情報が拡散しやすい。ある研究によると、それらは2種類に大別されます。一つは「恐怖デマ」です。「こんな恐ろしいことが起きている」「今夜、もっと恐ろしいことが起きる」といった情報は、もし本当であれば大変なことになります。〝家族や友人に伝えなければ〟と思う人も少なくないでしょう。そうした心理から、恐怖を煽るようなデマが広がりやすくなります。

もう一つは「希望デマ」です。危機的状況から抜け出す方法は、情報としての価値が高い。周囲に伝えたい心理が働きます。実際、今回のコロナ禍では「お湯を飲むと感染が防げる」といったデマ情報が拡散しました。

SNSが普及している現代社会では、誰もが簡単に情報の「発信者」にも「受信者」にもなり得ます。一人一人が情報の取扱いには、慎重になるべきでしょう。

 

 

—正しい情報を見極めるために、私たちが気を付けるべき点は?

 

そもそも新型コロナウイルスは、未知のウイルスです。科学的に正しいとされる情報は、まだ決して多くはありません。専門家の論文でも、それぞれの内容が食い違っている場合があります。現状の感染の防止策も、絶対正しいとは言えないかもしれない。

コロナ禍にあって、「正しさ」は単一ではありません。刻一刻と変化するものだと考える方がよいでしょう。時々の状況によって、最適解を選択し、対処する「柔軟性」が求められます。

もちろん「正しさ」を求める姿勢は大切ですが、「正しさ」を求めすぎてしまうと、情報に振り回され、デマを信じてしまう可能性もあります。メディアとの向き合い方や使い方を工夫し、意識的にテレビを消すなどして、心を整理する時間も必要でしょう。

 

 

こころの免疫力高める宗教に期待

人間の本質再考させるコロナ禍

 

 

—当面の間、感染リスクがなくなることはなさそうです。その中で、不安な状況に柔軟に対応するために、心掛けるべきことはありますか。

 

今回のコロナ禍のように、長い間、不安にさらされると、本人でも気付かないうちに心身の健康を損なう恐れがあります。感染が流行してから約半年が経過し、少しずつ緊張が解けてきた分、今までの〝疲れ〟が出ることによるリスクも考える必要があります。

ウイルスの感染を防ぐためには、体の免疫力を上げることが有効だとされますが、同様に、不安にさいなまれないためには「心の免疫力」を高めることが大切だといえます。「心の免疫力」が高ければ、多少の不安を抱えたとしても、平静を保つことができます。

では、どのようにして高められるか—。日々の生活が充実しているか、良好な人間関係に恵まれているか、といった「日常の安心感」を持てるかが、大切になってくるでしょう。

人々に「安心感」を提供するという意味で、私は、信仰の果たす役割は大きいと考えています。信仰は、不安や困難に立ち向かうための「心のよりどころ」になります。そうして得られる安心感は、「何とかなるから大丈夫」といった〝気休め〟とは違う感覚です。

また創価学会のような地域に名指したネットワークの存在は、ソーシャルサポート(社会的支援)の役割も期待できます。悩みを相談できる存在が身近にいること、また自分自身も人のために行動切るという感覚も、「心の免疫力」を高めると思います。

 

 

—コロナ禍という、先行きの見えない状況にあって、私たちが前向きに生きるためには、何が重要となりますか。

 

心理学の研究によれば、「幸福」は特別なぜいたくから生まれるわけではなく、日常生活の「安定」から生まれます。しかし、その安定はいつまでも続くわけではありません。事実、コロナ禍の影響で、私たちの日常は大きく変わりました。経済的困難や心身の不調を経験した人も多いかと思います。

変化の過程において、人間は不安や戸惑い、喪失感を抱く場合が多い。そうしたネガティブな感情を乗り越えるためには、「希望」が必要になります。ウイルスとの共存を想定した「新しい日常」に踏み出した今、多くの人が希望を求めていることでしょう。

今回のコロナ禍は、一側面から見れば、哲学的な問題ともとらえられます。「生きる意味とは何か」「生命はどのような存在か」—新型コロナは、そうした人間の本質を再考するような問いを示しているような気もします。

コロナ禍を機に、私たち人間の生き方に、新たな変化を生み出すことができると考えれば、そこに大きな希望見いだせるのではないでしょうか。感染症の流行という危機的な事態を、人類の「転換点」としていけるかどうか。それは私たちの行動にかかっていると思います。

 

うすい・まふみ 1959年生まれ。東京都出身。日本大学大学院文学研究科博士後期課程心理学専攻修了。専門は社会心理学。2006年から現職。新潟市のスクールカウンセラーとしても活動する。テレビやラジオにも出演多数。著書・監修に『あなたが死んだら私は悲しい—心理学者からの命のメッセージ』(いのちのことば社)、『史上最強図解 よくわかる人間関係の心理学』(ナツメ社)など。

 

 

【危機の時代を生きる】聖教新聞2020.9.26






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Last updated  September 28, 2020 07:44:41 PM
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