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March 4, 2021
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途上国での感染防止と医療支援を

米ジョンズ・ポプキンス大学 公衆衛生大学院  ジェレミー・シフマン教授

 

米ジョンズ・ポプキンス大学の集計によると、しいが他コロナウイルスの感染者数は全世界で360万人、死者は25万人を超えました(55日時点)。WHO(世界保健機構)は、中南米やアフリカでの感染拡大が懸念され、パンデミック(世界的大流行)は「終息には程遠い」としています。感染者数が世界人口の25%から30%に上ったとされるスペイン風邪の流行以来、100年に一度の危機に国際社会はいかに立ち向かうべきか――。同大学の公衆衛生大学院と高等国際問題研究大学院で、ジェレミー・シフマン教授にインタビューしました(聞き手=樹下智記者)

 

――米国では感染者が18万人以上、死者は約69000人となり、ともに世界最多です。

 

私は疫学者ではありませんから、政治学者として所感を述べると、米国の感染拡大が深刻になった要因の一つは、政策担当者が感染症の専門家の意見を軽視した事だったのではないかと考えます。もちろん全員ではありません。私が住むメリーランド州の州知事は、専門家の意見に基づいて政策を決定しています。一方、政治的な圧力に反応し、専門家の指摘を採用しない州知事がいることも確かです。

今回のコロナ危機に際し、専門家ではない多くの人々がメディアに露出し、感染症の闘いについて〝ああすべきだ〟〝こうすべきだ〟と騒ぎ立てています。トランプ大統領が、新型コロナウイルスの感染者への治療法として「消毒液の注射」を挙げ、問い合わせが殺到し、実際に洗浄剤を誤用する人がいる状況は、その最悪の例です。必要なのは、国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長のような、科学的根拠をもとに何をすべきかを提案できる第一人者の声を、すべての人が聞ける機会をつくることです。

 

 

――教授は一方、専門家も科学的根拠を示すだけではいけないと指摘されています。

 

これまで途上国の医療体制の充実のために、専門医による政策担当者への働きかけを支援してきました。多くの専門家は、科学的根拠やデータを示せば十分だとする傾向があります。もし人々が耳を傾けなければ、それはその人のたちの責任であると考えてしまうのです。

しかし社会科学の研究が示すのは、証拠やデータは絶対に必要ですが、政策担当者や人々の行動を変えるには不十分であるということです。人々がどのように現状をとらえ、どのような悩みを抱えているのか。その心に寄り添う努力がなければ、根拠やデータも行動改革につながりません。ですから、専門家だけではなく。正確な情報を、人々に心に届く形で伝える役割を担う人たちも重要です。

日本では、専門家の意見を尊重する傾向が強い。それは感染症との闘いでは必要なことです。日本の皆さんには、米国社会の苦しみを経験してほしくないと切に願います。

 

 

――教授はジョンズ・ポプキンス大学のウェブセミナー「新型コロナウイルス感染症との闘い――東アジアからの政策的教訓」で、「危機と怠慢の連鎖」を終わらせる重要性を主張されました。

 

2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、09年の新型インフルエンザ、そして今回の新型コロナウイルスの世界的流行へと続く、国際社会の対応の経過を観察すると、流行終わって危機感が薄れ、次の危機への準備を怠り、また危機を迎える「連鎖」が見られます。危機が終息した時こそ、「次の危機」の準備をすべきです。

SARSを経験した台湾や香港は、その危機を真剣に捉え、今回の新型コロナウイルス対策の準備ができていました。15年に中東呼吸器症候群(MERS)を経験した韓国もそうです。米国とは初動の対応が違いました。東アジアの多くの国や地域は、他より、政府も社会も、新型コロナウイルスにうまく対応できるように見えます。

この「危機と怠慢の連鎖」に終止符を打つには、国内の国民意識と制度改革のみならず、多国間の協調と、国際的な保健機関の強化が必要になります。情報の透明性や科学的根拠に基づいた対策の検証は不可欠ですが、特定の国や団体、または人物を「スケープゴート(いけにえ)」として批判するだけで、協調体制を後退させては逆効果です。

 

 

――今後、途上国における新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されています。

 

先進国であれ途上国であれ、全ての人の生命は平等に価値があります。

「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」の政策歩必要不可欠ですが、人によって影響が違う。米国は貧富の格差が大きく、多くの人が財政的な損失を被って大変なことになっていますが、耐えられる人もいます。途上国では、新型コロナウイルスの感染拡大で深刻な貧困に直面し、感染症よりも飢餓で亡くなる可能性が高まっています。

今回のコロナ危機で陰に隠れていますが、世界では今この瞬間も、マラリアやエイズで亡くなる人が大勢います。麻疹(はしか)のワクチンが摂取できなくて助からない子どもたち、医療体制が脆弱なためなくなってしまう妊産婦さんがたくさんいるのです。コロナ危機の影響で、こうした途上国の人々の命を救う、国際医療体制の能力が低下していることを忘れないでほしい。

だからこそ、自分たちの命を守るためにも、コロナ危機の一日も早い終息のために、国際社会は協力しなければなりません。WHOへの支援も含め、日本にはその主導的な役割を担ってもらいたい。今、自分自身を、大切な家族と友人を、新型コロナウイルス感染症から守る闘いは、救えるはずの世界中の人々の命をも救うことにつながると信じてほしいのです。

 

Jeremy Shiffman 1999年、ミシガン大学で博士号を取得。途上国の保健政策、国際保健ネットワークを研究。アメリカン大学教授を経て、2018年、公衆衛生の分野で全米トップを誇るジョンズ・ポプキンス大学「ブルームバーク公衆衛生大学院」に特別教授として迎え入れられた。同大学・高等国際問題研究大学院の教授も兼任する。

 

 

【危機の時代を生きる】聖教新聞2020.5.6






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Last updated  March 4, 2021 05:32:41 AM
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