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July 27, 2021
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今日をしのぎ明日を開く

コロナ禍の長期化に立ち向かう

NPO法人 全国こども食堂

支援センター「むすびえ」理事長

東京大学特任教授  湯浅 誠さん

 

新型コロナウイルスの感染拡大の長期化と、私たちはどう向き合うべきか。NPO法人全国子ども食堂支援センター「むすびえ」の理事長を務める湯浅誠・東京大学特任教授に、コロナ禍で見えてきた社会的課題や「新しい日常」のあり方について話を聞いた。(聞き手=志村清志・村上進)

 

―湯浅さんは、2005年の金融危機の後の「年越し派遣村」で貧困問題の支援にたずさわるなど、数々の社会課題の解決に取り組んできました。今回の長期化するコロナ禍は、私たちにどのような影響を及ぼしていますか。

 

本年春、国内で新型コロナの感染拡大を抑えるため、緊急事態宣言が発令され、外出や店舗営業などの自粛が要請されました。それによって、感染拡大はいったん収まったものの、飲食や観光関連業をはじめ、多種多様な人々の生活が深刻な打撃を受けました。一方、5月中旬以降、各地で緊急事態宣言が解除され、徐々に経済活動が再開される中で、感染者数は再び増加傾向になっています。

このように「感染抑止」と「経済危機」は〝歯車〟のような関係にあって、どちらかを回すと、もう一方も回ってしまう状況が続いています。

自然災害の場合、発生時には人命救助最優先で復旧的な措置に残力を傾けていくという意味で、時間軸の移行が見えやすいといえます。しかし、コロナ禍では経済復興を強く回すと、感染拡大によって人命優先の自粛の方向に戻らざるを得ない中途半端な状況が繰り返され、時間軸が長期化していく。これがコロナ禍の難しさであり、怖さだと感じています。

さらに長期化すればするほど、生活再建に向けての個人差、いわば「復興格差」は広がります。東日本大震災の時も、しばらくしてから孤立死や自殺の問題が顕在化しました。今回も長期化に伴うリスクには、十分注意が必要です。

 

 

NPO法人「むすびえ」は、全国で3700以上もある「子ども食堂」のサポートなどをしていますが、どのような課題と向き合っているのでしょうか。

 

3月頃から、多くの学校が臨時休校を余儀なくされ、給食が食べられないこともあり、「食」に困る子どもや家庭が増えました。

これまで「こども食堂」の多くは、安価な食事などを提供しながら、地域の人たちが気軽に集まれる場所として機能してきました。しかし、コロナ禍によって一緒に食事をすることが難しくなった。

そのような状況で、衛生面等の対策をしながら、食材等を取りに来てもらい配布するフードパンドリーや、個別に宅配するなど、創意工夫しながら事業を継続しようという動きがありました。

そこで「むすびえ」では、各地の「こども食堂」で使ってもらえる食品や運営資金の調達を目指し、全国的に寄付を募り、大きな支援をいただき、現場に届けることができています。ここで大切にしてきたテーマは、「今日をしのぐ 明日をひらく」です。

 

「平時のつながり」づくりと「非常時の安全網(セーフティネット)」の構築を

 

―「むすびえ」が今回の取り組みのテーマに掲げた「今日をしのぐ 明日をひらく」

には、どのような思いが込められていますか。

 

「今日をしのぐ」とは、生活危機の進行に歯止めをかけ、生活の崩壊を防ごうという視点です。フードパンとリーや宅配などの取り組みが当てはまります。「明日をひらく」とは、コロナ禍からの復興、さらには行政や企業などと連携いて、誰も取り残されない地域を目指す、中長期的な視点を意味します。

6月中旬、「むすびえ」は、全国の「こども食堂」を対象にアンケート調査を実施しました。その奏で印象に残ったのが、「こども食堂」で人が会話できなくなると、「食べることだけの場所になることへの疑問がある」「多年代交流ができないのが残念」といった、「こども食堂」の「本質」に立ち返る記述が多かったことです。「明日をひらく」という観点で、このことは非常に示唆的だと考えています。

感染流行する前の平時にあっては、「こども食堂」は、食事提供だけでなく、地域の交流を促進する場でもありました。いわば〝アクセル〟の役割です。そして、コロナ禍という非常時にあっては、食事提供を通して、生活危機に歯止めをかける〝ブレーキ〟の役割があるといえます。

「平時のつながり」と「非常時のセーフティーネット(安全網)」―アクセルとブレーキを踏み分けるように、この二つのサイクルを循環させることが、地域におけるつながりを豊かにし、結果的には災害に強い地域を作っていきます。「こども食堂」には、その〝起点〟としての機能が期待されています。

「こども食堂」が初めて造られたのは2012年。東日本大震災の翌年です。その後も、日本では多くの災害が発生しました。そして、それと呼応するように、「こども食堂」も全国につくられていきました。愛媛県の宇和島市は、もともと、「こども食堂」がありませんでしたが、18年の西日本豪雨水害の後の1年間で13カ所も開設されました。

「病気になって初めて、健康のありがたみを知る」といいますが、非常時になって、多くの人が繋がりや居場所の大切さを実感したのでしょう。そうした経験の蓄積が、「こども食堂」をつくる機運を高めた、と考えられます。

 

 

―「新しい日常」を考える上で、リスクとの向き合い方は欠かせないテーマの一つといえます。その点、湯浅さんはどのように考えていますか。

 

ここ10年、日本は多くの災害に見舞われました。そのことを考えると、世会は「長い平時の合間に非常時がある」のではなく、「非常時と非常時の間に平時が織り込まれている」と捉える方が適切ではないかという気がします。平時と非常時の反復そのものが、「新たな日常」といえるでしょう。

今回のコロナ禍も、ワクチンが普及しない限り、リスクは大きくは減少しません。先月の豪雨水害では、避難所での感染防止が迫られたように、複合的なリスクが立ち現れることも視野に入れる必要があります。

また非常時というのは、社会全体で同時になるものとは限りません。個人や家族単位で見れば、交通事故や病気などは、いつ何時、誰に起っても不思議ではありません。昨日まで〝支える側〟にいた人が、急に〝支えられる側〟に回ることもあります。

そう考えると、今まで以上に重要視されるのが「地域」の存在です。コロナ禍の影響で、私たちの生活圏域が縮小したこともあり、そう実感している方も多いのではないでしょうか。自分の周囲に「非常時のセーフティーネット」を築くためにも、いかにして「平時のつながり」をつくっていけるかが、この「新しい日常」を送る上で大切な視点になります。

2020年という節目に感染症の世界的大流行が起ったことは偶然に過ぎませんが、わたいはそこから2020年代を生きる教訓を引き出したいと考えています。今までの10年は、多くの災害を通して、人とのつながりや居場所の重要性を実感した10年でした。そして、これからの10年は、リスクに強い地域・社会を定着させるための〝勝負の10年〟だと思います。

「誰も置き去りにしない世界」をうたうSDGS(持続可能な開発目標)のゴールでもある2030年をどのように迎えるか―今の私たちの行動が、問われている気がします。

 

多様な悩みを包摂できる〝居場所〟の存在が不可欠

 

―現代は「無縁社会」といわれるように、人と人との関係が希薄になりつつある社会です。その中で、つながりを豊かにするために、何が必要でしょうか。

 

私の実感ではありますが、度重なる災害の経験を経て、社会における「共助」の感覚が強まっている印象を受けます。「むすびえ」が行ったグランドファンティング(インターネットで広く資金を募ること)に関しても、10年前だったら、「そうはいっても、現実は変わらない」という冷たい反応も少なくなかった。しかし今は「10円でも100円でも寄付する方が、大事だ」という雰囲気があります。つながりをつくる〝土壌〟のようなものが、つくられてきたと思います。

その上で、地域社会を見てみると、〝縦割り〟の課題別組織が多く存在しています。例えば、病院や警察、役所などは、個々の課題を解決するために機関です。ある人が抱える、さまざまな課題をひとまとめに受け入れることは、しにくいといえます。

ここでいう「つながり」とは、人を課題別で見ないで、多様な悩みを、全て包摂するような深い信頼関係を意味します。

そうした関係性をつくるためには、ありのままの自分を受け入れてくれるような〝居場所〟が不可欠です。残念ながら、今の社会では、あらゆる人にとっての〝居場所〟になり得るものが不足しています。

そうした状況にあって、創価学会のように、地域に根を張ったコミュニティーは、ますます存在意義を増すでしょう。コロナ禍の中で、電話やメール、手紙などで友人とつながろうとした学会員の方は多くいたと思います。平時から〝一度つながった人とは、つながり続けよう〟という意識があってこそ、今回のような非常時に行動に移すことができるのではないでしょうか。

今後、より多くの個人・団体が「平時のつながり」と「非常時のセーフティーネット」のサイクルを回すことが求められます。それぞれが、地域のつながりを豊かにする〝起点〟となって、共々に、信頼関係を広げていきたいと思います。

 

 

【危機の時代を生きる】聖教新聞2020.8.22






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Last updated  July 27, 2021 03:55:15 AM
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