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August 7, 2022
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新型コロナの変異株が脅威

感染拡大を抑えるために

インタビュー 大阪大学  宮坂 昌之名誉教授

みやさか・まさゆき 大阪大学免疫学フロンティア千九センター招へい教授。1947年、長野県上田市生まれ。京都大学医学部卒業、オーストラリア国立大学大学院博士課程修了。医学博士。東京都臨床医学総合研究所等を経て、大阪大学医学部教授、同大学大学院医学系研究科教授を歴任。200708年に日本免疫学会会長。著書に『免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンとの免疫のしくみ』(講談社)、『新型コロナ7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体』(同)、『新型コロナワクチン本当の「真実」』(同)、『新型コロナの不安に答える』(同)など。

 

――国内で新型コロナウイルスの変異株による感染が急増しています。これまでに比べ、現在のウイルスには、どのような特徴があるのかを教えてください。

 

現在流行しているオミクロン株には、免疫回避性といって、私たちの体内の免疫系の働きを逃れる力を持っていることが分かってきました。

ウイルスの表面には、多数の目印があり、私たちの免疫系は、この目印によって「これが異物だ」と見極め、すぐにウイルスの働きを抑える抗体や免疫細胞を作ります。免疫系は通常、こうした目印をすぐに認識するのですが、ウイルスの変異が進むと、免疫系が認識しやすい目印が少しずつ消えていき、このために免疫が反応しにくくなってきます。だから、前にコロナに感染していても、再びコロナに感染するということが起こっているのです。

こうした変異が起きるのは、免疫系とウイルスが常に戦っているからです。目印が減ったウイルスが生きの頃、広がっていくので、結果として免疫回避性のものが増えていくのです。日本では「BA・5」に続き、{BA・275}というオミクロン株の亜系統も広がり始めていますが、今後も、もっと感染力の強いものが出てくるかもしれません。

 

 

ワクチンの有効性

――ウイルスの変異によって、ワクチンの効果が低下しているとの指摘がありますが。

 

確かに、ワクチンを打っても作られる抗体の量が時間とともに減るだけではなく、その効き方が減ってきています。玄奘のワクチンは接種し、体内に免疫ができても、それが一生にわたって続くのではなく、その効果が時間とともに下がります。さらに、ウイルスも目印の少ない方に変異しているので、抗体が効きにくくなっているのです。

ただし、ワクチン接種によってできる抗体の方が、自然感染によってできる抗体よりも強く、変異ウイルスに対して高い防御力を持ち、重症化を防ぐことができます。また、ウイルスの目印が少なくなったとはいえ、残っているものもあるので、ワクチンを追加接種して免疫系を活性化させておけば、その少ない目印に気付いて、これに反応する抗体や免疫細胞が新たにできてきます。つまり、追加接種をすると、弱りつつあるワクチン効果が強くなるのです。

東京都のデータでは、ワクチンを2回打つよりも3回打った方が中和抗体価が上がり、2回の摂取だと7ヶ月で100(AU/mL)を着るのですが、3回接種では7カ月後でも1000程度を保つなど、その効果が持続すること分かっています。1000くらいの値であれば、十分に感染防御に働きます。従ってオミクロンに対しては2回ではなく、3回接種しておかないといけません。

では、4回打つと、どうなるか。まだ6070代しかデータがありませんが、接種後に今までに見られなかったほど高い抗体が得られています。3回接種で7カ月続いているので、4回接種だと効果はもっと長く続くことが期待できます。

ですので、現状のオミクロン株に対しては、3回接種以上、特に高齢者の場合は免疫が落ちやすいということを考えると4回接種が勧められています。

その上で免疫の働きは、抗体だけではないということも大切です。

 

〝まだ戦いは続く〟との認識で

日常的に対策行うニューノーマル(新常態)を

 

免疫機構は総合力

――具体的には、どういうことでしょうか。

 

私たちの身体には、大きく分けて自然免疫と獲得免疫という二つの免疫機構があります。自然免疫とは、私たちが生まれつき、誰しもが持っているもので、獲得免疫とは、生後に獲得するものです。

その上で、私たちがワクチンを接種すると、最初に活性化されるのが自然免疫で、血液の中でウイルスや細菌を食べる食細胞などの働きを強くします。これは新型コロナだけでなく、他のウイルスや細菌の増殖も抑えます。

その後に起きるのが、コロナだけに働く獲得免疫を介した反応です。中でも、ヘルパーT細胞は、獲得免疫の司令塔のような存在で、この細胞がB細胞に命令を出すと、B細胞が抗体を作って、細胞の外にいるウイルスの働きを止めてくれます。一方で、ヘルパーT細胞は、感染した細胞をウイルスごと殺すキラーT細胞も活性化させます。こうした自然免疫・獲得免疫の両方が働くことで、ウイルスが排除されるのです。

その上で大事なことは、

➀自然免疫だけでも一程度、ウイルスを抑える

②B細胞が作る抗体には、ウイルスを細胞内に入れないようにする働きがあり、初期防御に重要

③T細胞の働きが重症化阻害に重要―ということです。

実は、ワクチンは、こうした免疫全体の力を大きく高める効果があるので、抗体価だけを見て、それだけでワクチンの効果を判断することはできません。

 

 

重ねるほどに効果

――私たちの感染対策はこれまで同様、ワクチン接種に加え、マスク着用や3密回避といったことに変わりはないのでしょうか。

 

ウイルスが変異したとはいえ、相変わらず飛沫による感染が主なので、基本的対策は変わらず、むしろもっと気をつけて取り組まなければいけなくなったこととも言えます。

というのは免疫回避性が強まったことで、たとえワクチンを打っても、ウイルスを大量に浴びれば、重症化はしなくても、感染することがあるからです。

さらに、感染症も上がっているので、これまで以上に微小な飛沫、空間を漂うようなエアロゾルでも感染しやすくなっています。

ただし、感染が成立するためには、おそらく何千という粒子を吸い込むこむことが必要で、吸い込む数を10個や100個といった一定数以下に抑えれば、感染しません。特にマイクロ飛沫には、そこに含まれるウイルス量も少ないわけですから、これまでの感染対策に加え、送風・喚起をしっかりと行えば、感染するリスクも減らせます。

その上で、これからは「感染対策は、重ねるほど強い効果を引き出せる」という考えをもつことが大切だと思います。

一例として、次にそれぞれの対策による感染リスク低減の度合いを数字で示しました。

これまでは、人と会った際、双方がマスク着用をすると、感染リスクは約10分の1になるといわれてきました。

次に、対人距離を保つこと。これは何m離れるかで実際の数字は異なりますが、2㍍以上離れたら、2分の1になったとします。また、送風・喚起をすると感染リスクが約2分の1、双方がワクチン接種を受けることで約5分の1となると仮定します。

ここで挙げた数字が厳密に正確であるかは別にして、大事なことは、これら4つの対策をお互いに独立事項なので、全て行えば、その効果は掛け算となるということです。つまり何も対策を講じない人に比べ、ウイルスを吸い込む量が200分の1になる可能性があるということです。

もし、これら全ての対策が完璧にできなくても、重ねるほど高い防御効果を獲得できるので、たとえオミクロンのような感染症の高い者でも防げる可能性が出てくるのです。

 

 

感染症対策は重ねることで強い効果を引き出すことができる

以下の数字が正しいことは別として、例として挙げる

●双方のマスクの着用で、感染リスクが役10分の1

●双方が対人距離を保つことで、感染リスクが約2分の1

●室内では送風・換気を保つことで、感染のリスクが2分の1

●双方のワクチン接種で、感染症リスクが薬分の1

これらの対策を全て行うリスクの減少の程度は、掛け算となる

1/10)×(1/2)×(1/5)=(1/200

→何も対策を講じない人に比べ、200分の1となる可能性がある

 

 

基本を知る大切さ

――ウイルスが変異するたびに、さまざまなデマが出てきますが、宮坂名誉教授は、そうした背景には、どのようなものがあるのかとお考えですか。

 

多くの場合は、データを読み間違え、誤解しています。例えば、ワクチンを打つと、卵巣にワクチンが分布するというデータがあります。これは人間で使う量の約500倍を動物に投与した時のものです。実際に人間にうつワクチンは微量ですが、それだとどこに分布するのが見えないので、わざとたくさん入れ、分布を見やすくしているのです。たしかに、卵巣にも一時的に入りますが、濃度はすぐに下がり、動物実験でワクチン投与後に機能的な影響は見られていません。しかし、卵巣にたまったということだけに固執する人たちは、絶対に悪いことをするはずだと間違えてしまうのです。

それだけの量を打てば、不断起こらないことは、いくらでも起こります。

例えば、コーヒーも1日に数杯なら問題はありませんが、100杯も飲めば命に関わります。だからカフェインは劇薬に指定されています。これはワクチンも同じです。量を間違えたらだめです。こうした実験は、あくまで安全性や分布を調べるためなのですが、多くの誤解は、そうした知識を持たないことから生まれています。

一方で、私は、全員が全てに関して深い知識を持つ必要はないと思っています。

病原体の場合には、どのような経路で侵入し、どのような条件で感染が成立し、身を守るためには何が必要か、といった基本的なことだけを理解すればいいのです。そうすれば誤ったメッセージに惑わされることが少なくなります。また、疑わしい情報に触れた時は、周囲の友人などと意見を交わす場を持つことも大事でしょう。

 

 

絶対に甘く見ない

――コロナ収束に向け、またサル痘などの新たな感染症に備えて、どのような心構えが必要でしょうか。

 

英医学誌ランセットで本年6月、新型コロナの抗体の陽性率から世界各国の感染率を推測したデータが掲載されました。これによれば、昨年11月までの段階で、世界の約半数(439%)の方が少なくとも1回は感染していたとのことです。また、論文発表時点で、感染による死者数は500万人程度とされてきましたが、こうした統計を踏まえると、実際には1500万人以上がコロナで亡くなっていた可能性があります。

つまり、新型コロナの感染は、予想をはるかに超えて世界中に広がっているのです。そして、パンデミック(世界的大流行)はまだ続いています。日本だけが守られているという可能性は少なそうです。日本が収束しても、世界ではまだコロナとの戦いは続くでしょう。

加えて、絶対に甘く見ないことが大切です。

よく「コロナにかかっても、インフルエンザ程度だ」と楽観視する人がいます。確かに、若い人たちでは致死率や重症化は下がりました。しかし、一方で感染率が上がり、今までの何倍も感染者が増え、それに応じた数の重症者や死者が出ています。高齢者におけるオミクロンの致死率は今でもインフルエンザよりも高いです。また「ウイルスは弱毒化していく」ともいわれますが、こうした弱毒化は1020年の単位でみられる現象です。むしろ、当面はウイルスが私たちの免疫をすり抜けるようになり、より厄介なものが残りつつあります。

その事実のもとに、ここからはむしろ〝完全に元の世界に戻ることはない〟という認識のもと、何が起きても大丈夫な体制を構築することを考えるべきです。私たちが実行できるニューノーマル(新常態)をつくっていかなければなりません。こうした考え方は、新たなる感染症がきた時にも、とても重要だと思います。

 

 

利他的な心を持ち

――ニューノーマルとは、どのようなものですか。

 

感染症との戦いは特別なものではなく、むしろ日常のこと、という前提で、行動していくことです。

日本では今、行動制限を掛けずにオミクロンに対応しようとしています。行動制限によって感染を一時的に抑えても、解除すればすぐに再拡大します。経済も同時に動かしていく必要があることから、このやり方自体は仕方がないと思います。この点、大事なのは、感染が広がるのは個人を会してである、ということです。厳しい一律の行動制限を掛けない以上、一人一人が先ほどの掛け算のような考え方のもとで、これまで以上に感染リスクを低減する行動を心掛けることが求められています。

その上で、今後は人に言われてからではなく、自らが感染対策を重ねることによって感染リスクを下げていくことが大事です。

このウイルスは、私たちが予想するよりもずっと賢く、変異して、どんどん感染を広げています。その中では、特定の人だけが守られているということはありませんし、やはり、みんなで抑えないといけません。重症化しやすい高齢者や、さまざまな理由でワクチンを打てない方など、一人でも多くの人を守るためにも、一人一人が「自分さえよければいい」ということではなく、周囲を思う利他的な心をもって生きていきたいものです。

 

 

【危機の時代を生きる】聖教新聞2022.8.5






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Last updated  August 7, 2022 06:30:29 AM
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