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August 13, 2022
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3「病」と向き合うために

コロナ禍は、「生老病死」という問題に、人類がいかに立ち向かうべきかを投げかけている。『危機の時代を生きる——創価学会ドクター部編』の第3回は、「生老病死」の「病」がテーマ。外科医で、30年以上の長きにわたって、がん治療に取り組んできた西崎隆さんが、「『病』と向き合うために」と題して執筆した気候を紹介する。

 

外科医  西崎 隆さん

コロナ化で受診控え増

手洗いやマスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避の行動で、インフルエンザを含め、新型コロナウイルス以外の感染症は激減しました。

その一方、感染を恐れての受診控えから、さまざまな問題が起こっています。なかでも、昨年のがん検診の受診率は、日本対がん協会によると、対前年比30.5%の大幅減と報告されています。これを反映してか、今年になって、早期がん、いわゆる治るがんが減り、逆に進行がんや、切除不能のがんの患者さんが、以前に比べて増えてきました。

がんの種類によっても差はありますが、早期がんから、進行がん、切除不能がんへと進展していくのに、おおよそ3年かかるとされています。ゆっくりと進むようにも思えますが、検診を1年開けてしまうと、それだけ進行に、治る者も治らなくなる可能性があります。

「今年ぐらい大丈夫だろう」と軽く考えてしまったり、あるいは何らかの症状があるのに、病院へ行くとコロナに感染するのではないかと考え、受診を控えてしまったりする方もおられます。

医療機関では感染対策を徹底しており、そう簡単に感染するものではありません。放置して治療が遅れるリスクを考えれば、迷わず受診することをお勧めします。

◇◆◇

さて、がんは、日本人の2人に1人が、一生に一度はかかる国民病ですが、医療技術の進歩に伴い、がんに立ち向かう武器も増えました。

これまでのがん治療では、手術による切除、抗がん剤の投与、放射線療法が行われてきましたが、現在は、免疫療法を加えて4本柱となりました。さらに抗がん剤の分野では、がんゲノム医療が導入され、今後、この分野は飛躍的に進歩する可能性があります。

がんゲノム医療とは、一人一人のがんの個性を遺伝子レベルで明らかにし、患者さんに、より適した治療などを行う次世代のがん治療です。これによって、今まで肺がんや乳がんなど、がんの種類で標準的な治療薬が決まっていましたが、遺伝子を調べることで、がん遺伝子の異常に適合した薬が選ばれるようになったのです。

現状では、がん治療にはガイドラインがあり、標準治療薬の投与が全て終了し、次の治療薬がない患者さんに限定して、がん遺伝子パネル検査(多数の遺伝子を同時に調べる検査)が保険診療として行われていますが、あと10年もすれば、がん遺伝子の検査を先に行い、最も効果の期待できる治療薬を選択していく時代になると思われます。

 

医療の進歩で「がん」は排除から共存へ

負けずに生き抜く心を

 

変異が起こる原因

そもそも、がん細胞は遺伝子のコピーの失敗から生まれるものです。1日約1兆個もの細胞が生まれ変わる人間の体で、将来、がん化する可能性のある異常な細胞は、毎日、数千個の単位で体内に発生していると考えられています。

一方、私たちの体には、遺伝子の変異を修復するシステムが備わっています。この修復システムに異常が生じてしまうと、遺伝子の異変は体内に蓄積していき、がんの発生につながることがあります。

がんの発生に深く関わるのは、特に細胞の分裂と増殖に関わる遺伝子で、この遺伝子に異常が生じると、分裂が止まらず、細胞が際限なく増殖してしまうのです。そして増えすぎた細胞は、やがて周囲の組織を圧迫したり、また別の臓器に飛んでいったりして、体を衰弱させ、やがて命を奪うのです。

なぜ、遺伝子の変異はおこるのでしょうか。実は、長い生命の歴史の中で、変異があったから、私たちは存在しているとも言えるのです。

生命は、さまざまな環境のなかで生き残っていくために遺伝子を変異させ、その中で多様な生物が生まれました。そして、環境に適応できた生物のみが生き残ってきました。しかし、この生命の進化を支えてきた変異によって、がんも生まれてしまうのです。そう考えると、がんは、生命の中に組み込まれた「宿命的存在」とも言えます。

ただ、がん遺伝子を必要以上に発現させないことはできます。

興味深い研究があります。それは一卵性双生児、つまり同じ遺伝子を持つ双子を調査した結果です。同じ遺伝子なら、発がんリスクも同じだと考えられますが、遺伝子要因は3割程度しかないないことが分かりました。残りの7割は、生活習慣などの環境的な要因で決まるということです。

遺伝子の変異が起こる原因として、最も高いリスクは、たばこや食物に含まれる発がん物質を取り込んでしまうことです。特に日本の研究で、がんの原因は、男性が30%、女性で5%が「たばこ」だと考えられています。

また、運動不足、肥満なども、がんの発生リスクを高めます。健康のためにも、禁煙はもちろん、バランスのとれた食事、適度な運動を心掛けたいものです。

 

 

日常の中で暮らす

ただ、いくら良い生活習慣を心掛けても、がんになってしまうことがあります。そうした場合でも、対応できる光が見えてきました。

その一つは、抗がん剤の一つである「分子標的薬」です。

従来型の抗がん剤が、がん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃してしまうのに対して、分子標的薬は、がん細胞の増殖や遺伝子に関わる特定の分子(タンパク質や遺伝子)を狙い撃ちします。

副作用が全くないわけではありませんが、従来のがんの治療薬に比べると、より患者さんの負担が少なくなりました。文指標訳単独、あるいは従来型の抗がん剤と組み合わせて用いることで、治療効果が得られます。

また、「免疫チェックポイント阻害薬」も注目を集めています。

免疫細胞は、体内に2兆個もあるといわれ、体の中の異常な細胞を検知し、排除します。ところが、がん細胞には、この免疫細胞にブレーキをかける仕組みがあるのです。

この仕組みは、がん細胞が免疫細胞の攻撃をかわす〝透明マント〟に例えられます。この透明マントを取り除くのが「免疫チェックポイント阻害薬」で、それによって免疫細胞は本来の働きを取り戻し、がん細胞を認識して攻撃することができるようになるのです。この薬を使う方の中には、がんの縮小は見られないものの、長期にわたって大きくならず、上手に付き合いながら暮らせる人もいます。

◇◆◇

こうした医療の進歩の中で感じるのは、切除や抗がん剤の投与などによって「がんを完全に排除する」という考えではなく、宿命的存在である「がんとの共存」という発想が出てきたことです。

糖尿病や高血圧症といって慢性の病気では、治癒ではなく、悪化させないで現状維持を目指すことが多くあります。がんの治療も同様に現状維持、いわば「がんとの共存」を目指すということです。

ましてや、現代は超高齢社会です。長く生きれば、その分、発がん物質に触れる機会も多くなり、がんになるリスクも高まります。

がんが体内に存在しても、それが大きくならなければ、日常の中で暮らしていけるのです。がんになることは特別なことではないのですから、たとえ、がんになったとしても、落胆したり、絶望したりするのではなく、「前を向いて生きる心」を持つことが、ますます大切になります。

 

今こそ宿命転換の時

苦難に意味を見いだす創価の哲学は希望

 

「仏の御計らい」

がんが進行すると、身体的な強い痛みを起こすことが多く、前を向き、未来を思う余裕など、とても持てません。しかし、がん緩和医療が進歩し、末期がんの患者さんであっても、適切な鎮痛剤や睡眠導入剤の利用、精神科医師、臨床心理士、社会福祉士の助けによって、「身体的な苦痛」だけでなく、「不安や孤独感といった精神的な苦痛」にも対応することができるようになりました。もちろん、完全に苦痛が消えるわけではありませんが、病にあっても、これまでの人生や将来について、深く考えることができるようになったのです。

仏法は本来、「生老病死」の四苦という、人間の根源的な苦悩と向き合うところから出発しており、「人生の価値が見いだされないスピリチャルな苦痛」の解決に対するヒントを与えてくれます。

どうすれば「病む苦しみ」を乗り越え、「前を向いて生きる心」を持てるようになれるのでしょうか。

日蓮大聖人は、女性門下に対し、「この病は仏の御計らいであろうか。そのわけは、浄明経、涅槃経には、病のある人は仏になると説かれている。病によって仏道を求める心は起こるものである」(御書1480㌻、通解)と仰せです。病気になれば、もちろん落ち込みます。しかし、それによって命の尊さを知り、充実した人生を歩むきっかけにしていくこともできます。だからこそ、大聖人は、病を嘆かず、むしろ〝意味のあるもの〟と捉えて深い信心を奮い起こしていくよう、励まされています。

そもそも、生きる力が弱くなれば、病に負けてしまいます。健康のためには、前を向き、生きようとする心を強くすることが大切です。ましたや、がんは逃れることはできない宿命的存在です。だからこそ目をそらすことのではなく、〝意味あるもの〟と捉え、立ち向かっていくことが重要だと思うのです。

その上で、〝意味がある〟と捉えていくには、周囲とのつながり、支えがとても大切です。大聖人は「ふがいない者でも、助けるものが強ければ倒れない。少し弱い者でも独りであれば、悪い道では倒れてしまう」(同1478㌻、通解)と御教示されて、人を支える善知識、つまり、よき先輩や良き友人、よき師匠が大事だと言われています。

このつながりの重要性を、医療の場合でも実感します。

治療の選択肢を選んでいただく時、かつては家族のつながりが強く、家族と話し合う中で、選択することができたのだと思いますが、今では、家族とも疎遠で周囲とのつながりも薄く、相談する人がいなくて、一人で悶々と抱え込んでしまう方を見かけるからです。

 

 

励ましの絆こそ力

こうした現実の中で、学会を見た時、ここに希望があると感じます。

学会員は、たとえ病気になっても、〝今がまさに宿命転換の時。今からスタートだ〟〝自分の闘病の姿を通して同じ病で苦しむ人を励ますために、あえてここに生まれてきたのだ〟と意味を見いだし、前を向いて生き抜いています。

自他供の幸福のために生き抜く学会員は、普段から地域の中のネットワークを大切にし、周囲の友が病気になれば、自分の病は二の次に、その友のために題目を送り、励ましを送っています。

こうした前を向く哲学、励ましの絆は、病に負けない力になり、悔いのない人生を歩む力になると確信します。

感染症が世界中に広がり、「病」を誰もが身近に感じる今こそ、仏法の哲学や学会の存在が求められている時だと思います。

 

 

 

【危機の時代を生きる■創価学会ドクター部編■】聖教新聞2021.7.3






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Last updated  August 13, 2022 06:16:27 AM
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