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December 24, 2022
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気候変動で岐路に立つ世界

コロナ後こそ行動への好機

米ジョンズ・ポプキンス大学 高等国際問題研究大学院 ヨハネス・アーパライネン教授

都市封鎖を50!?

——国連の気候変動の政府機関パネル(IPCC)が先月、最新の報告書を発表し、人間活動の影響で地球温暖化が進んでいることについて「疑う余地がない」と断定しました。グテーレス国連事務総長は、報告書は「人類への赤信号」だと警告し、COP26の成功を呼びかけています。

 

IPCCの報告書が明らかにしたのは、気候変動による衝撃が、私たちが当初予想していたよりも、はるかに速く、より深刻な被害をもたらしているという、まぎれもない現実です。

米国の西海岸では、国書と乾燥によって山火事がたびたび発生し、膨大な面積の森林が焼失しています。農業で生計を立てる人が多い国では、気候変動がもたらす干ばつが深刻な問題です。例えばインドでは、耕作に適さなくなった土地から、すでに多くの人々が移住を強いられています。

米国のマイアミやイタリアのベネチアなど、海面水位の上昇が重大な問題になっている都市もあります。国土の大半が低地のバングラデッシュでは、海面上昇と異常気象によって土地が失われ、〝気候難民〟が生まれています。次の20年から50年で、完全に海に沈むと予測されている小さな島国もあり、全人口の移住が実際に計画されています。

二酸化炭素などの温室効果ガスを排出し続ければ、こうした問題が一層深刻化し、南極の氷床が溶け、海面が急上昇するという、取り返しのつかない「てぃっピングポイント(転換点)」を、人類は迎えることになります。水や食料などの資源が枯渇し、人々は生活できる場所を追われます。大規模な移民の発生によって、世界はより敵意に満ちたものになるでしょう。

 

——昨年からコロナ禍によって世界の経済活動は停滞し、温室効果ガスの排出量は大きく減少しました。教授はコロナ後の気候・エネルギ―制作について分析した論考で、先ほど述べたような危機を防ぐには、同規模の経済停滞が今後50年間、定期多岐に繰り返される必要があると論じています。

 

昨年は一昨年と比べ、温室効果ガスの排出量が世界全体で4%から8%減少したと推測されています。これほど急激に減ったのは、戦後初めてのことです。

科学者たちは、2070年までに温室効果ガスのネットゼロ(排出量から吸収量を差し引いて実質ゼロ)を実現すれば、3分の2の確率で、産業革命以降の地球の気候上昇を2度以内に抑えられるとしています。〝コロナ禍級〟の経済停滞を、半世紀にわたって何度も続ければ、この目標は達成できないのです。

当然、ロックダウン(都市封鎖)を続けるのは非現実的であり、各校経済は通常に戻りつつあります。そうした中、21世紀の温室効果ガスの排出量は、コロナ危機前の19年よりも増えると予想されています。

極端な経済停滞なしで気候変動を緩和するには、さまざまな方法が考えられます。一つは、再生可能エネルギー生産時の二酸化炭素の排出量を、可能な限り減らすことです。さらに、電気自動車など新しい技術を駆使して、産業を「脱炭素化」させる必要があります。そして、森林破壊を止めることです。

しかし、これらすべてを実践しても、地球温暖化を2度以内に抑えることはできないでしょう。過去に排出された二酸化炭素を吸収する「ネガティブエミッション(負の排出)」が不可欠です。大気中の二酸化炭素を直接吸収して地中に埋める技術など後、それに当たります。

 

 

面目を保った日本

——教授はどう論考で、「2019年が「気候変動の年」だったとすれば、220年は、気候変動に関心が寄せられなかった『パンデミック(世界的大流行)の年』だ」と記しています。

 

私たちは一昨年、熱波や山火事など気候変動が与える深刻な影響を、実際に目の当たりにしました。また、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんから始まった抗議運動が全世界に広がり、気候変動への関心は、かつてないほど高まりました(一昨年9月のストライキは、160カ国以上で約400万人が参加)。

一方、昨年は新型コロナのパンデミックが世界を襲い、人々の関心は〝コロナ一色〟になりました。ただ、私がその論考を執筆した昨年8月頃まではそうでしたが、驚くべきことに、気候変動への関心は決して衰えてはいませんでした。

例えば、昨年9月、中国が2060年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引いてネットゼロにする「炭素中立」)の達成を目指すと宣言。続いて日本が10月、2050年までに、カーボンニュートラルを実現した脱炭素社会を目指すと表現しました。当時、発足したばかりの新政権が、脱炭素社会の生命を出していなければ、日本の面目は保たれなかったでしょう。韓国も同月、2050年カーボンニュートラルを宣言しました。

米国では本年1月、バイデン大統領が就任初日にパリ協定に復帰する大統領令に署名し、2050年カーボンニュートラル目標を掲げました。これで、ほぼすべての主要経済国が2050年までのネットゼロ宣言をしたことになります。

 

——教授は「パンデミック後の時代は、耐久性があって持続可能な世界経済を再構築するための非常に大きな機会を提供している」と論じています。その理由は何でしょうか。

 

コロナ危機によって世界経済は深刻なダメージを受けました。各国政府は経済回復のために巨額の資金を投入しますが、その投資先を再生可能エネルギーなど脱炭素の分野に向けることで、経済成長と気候変動対策の両方を追求することができます。

さらに、二酸化炭素を排出する化石燃料業界も、コロナ禍によるエネルギー需要の縮小によって損失を被りました。これを機に、化石燃料中心のエネルギー供給システムに依存する「カーボンロックイン」を脱して、再生可能エネルギーを中心とする代替システムに移行できれば、気候変動を緩和できる可能性は飛躍的に高くなります。

今のところ、脱炭素の未来を実現できる具体的な計画と予算を公表しているのは、欧州連合(EU)のみです。他の国々は、目標は設定しても、どうやってそれを実現するのか、そのために予算をいくら割くのかなど、具体的な行動をまだ公表できていません。

 

「脱炭素」が国際社会の潮流に

市民の三角が未来開く鍵

 

——そうした意味でも、今秋のCOP26が注目されているのですね。

 

気候変動という21世紀最大の「危機」を食い止めるために、私たちが残された時間はあまりにも限られています。コロナ禍という「危機」をチャンスに変えて、今すぐにでも、温室効果ガスの排出量を削減し始めなければなりません。

新型コロナのパンデミック以来、初めて開催されるという点で、COP26は極めて重要です。今回の会議で、それぞれの締約国が、現状、どういった計画を持ち、実行しようとしているのかを確認し、目的達成のための新たな行動を約し合うことができなければ、人類の未来は暗いと言わざるを得ません。

 

 

 

目標だけでは不足

——会議の一番のポイントは何でしょうか。

 

COP26を通し、各国がそれぞれ定める温室効果ガスの昨勉目標「国が決定する貢献(NDC)」を、どこまで引き上げられるかです。

パリ協定の前身である京都議定書は1997年、第3回締約国会議(COP3)で採択されました。しかし〝トップダウン〟で、先進国にのみ削減目標を課したために不評でした。

長年にわたる交渉の末、2015年の第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定は、途上国も含め、それぞれの国が削減目標を決めるNDCが基盤になっています。いわば、各国の主権を尊重する〝ボトムアップ〟の協定です。

パリ協定では、世界における今世紀末の、産業革命以降の平均気温上昇を2度(理想的には1.5度)に抑える目標が決まりました。1.5度に抑えるには、2050年までに世界全体でカーボンニュートラルを達成しなければなりません。どれだけの締約国が、これと整合性のある目標と計画を示せるかどうかが、COP26成功のカギとなります。

途上国への資金援助も焦点の一つです。先進国が約束した年間1000億㌦(約11兆円)にまだ達していないため、途上国は怒りを隠していません。ここが改善していなければ、交渉が難航する恐れもあります。

 

——私たち一人一人の市民が、気候変動の緩和のためにできることは何でしょうか。

 

ガソリン車ではなく電気自動車に乗る、あるいは、なるべく公共交通機関を利用するなど、二酸化炭素の排出を削減する方法はたくさんあります。食生活で肉の量を減らすのも、大きな効果があります(肉の生産過程では、飼料の栽培や輸送などで大量の二酸化炭素が生まれる)。代わりに植物性食品を増やすのは、自身の健康にも、気候変動対策にも良いことです。

しかし最も大事なのは、政治に参画することです。自分たちが選ぶ議員が、どうカーボンニュートラルを達成しようとしているのかを問うべきです。なぜなら、気候変動の問題は、エネルギー政策という社会全体のシステムを変えなければ、決して解決することができないからです。

そうした意味で、日本政府が昨年10月に、2050年カーボンニュートラルを表明したことを私は高く評価しています。

今後さらに重要なのは、目標ではなく具体的な行動です。2050年までではなく、2030年までに何をするかです。全ての主要経済国にとって、それが現在の焦点になっています。

グレタさんをはじめ、世界中の若者が立ち上がる、大人たちに圧力をかけ、気候変動対策が世界的な潮流になりました。

気候システムの崩壊は、今、私たちの目の前に現れてきています。未来の世代だけの問題ではないのです。目標を宣言するだけの期間は終わりました。私たちは、今すぐに行動しなければならないのです。

 

Johannes Urpelainen フィンランドのタンペレ大学で国際関係学の修士課程を終了後、米ミシガン大学で政治学の博士号を取得。米コロンビア大学の准教授等を経て、現職。ジョンズ・ポプキンス大学高等国際問題研究大学院で、エネルギー・資源・環境プログラムのディレクターとして研究と大学院生の指導に当たる。慧海トップレベルのエネルギー・環境政策のエキスパートとして、インドをはじめ新興経済国で大規模な研究プロジェクトを主導し、地方政府や国際機関にアドバイスを重ねてきた。共著に『再生可能エネルギー(仮訳)』など。

 

 

【危機の時代を生きる】聖教新聞2021.929






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Last updated  December 24, 2022 06:09:02 AM
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