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January 8, 2023
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日本の新型コロナワクチン接種は

想像以上に順調な進み方

インタビュー 大阪大学 宮坂 昌之名誉教授

 

高い有効性・安産性

——近著『新型コロナワクチン 本当の「真実」』には、ご自身が本然、ワクチン接種を受けようと決断するにいたった経緯が書かれています。今と違い、昨年の時点でワクチン接種に慎重な意見をお持ちだったそうですが……。

 

もちろん、接種の判断は一人一人の自由です。それを前提とした個人的な見解では、接種が可能ならば「打たないという選択肢はない」と、今は思っています。しかし、昨年までは、必ずしもそうではありませんでした。

私は、いくつかの著作で、今、接種が進んでいる「mRNAワクチン(※注1)」というタイプのワクチンについて書きました。新型コロナウイルスに対しても、こうしたワクチンが強力な武器になりうると予想していました。

ただ、mRNAワクチンはコロナ禍の前から「がんワクチン」などとして研究されていましたが臨床試験(治験)があまり進んでいなかった。

また、エボラ出血熱などに対してもワクチンが使われていたものの、何十万人という単位でのデータはありませんでした。したがって、新型コロナワクチンがどれだけ有効でどれだけ副反応が出るのか、当初は予想するのが難しかったのです。

昨年11月にはファイザー社やモデルな社から、ワクチン有効率(※注2)が90%をこえたという、臨床試験の結果が発表されました。インフルエンザ向けワクチンの友好率が4060%程度なので、これは驚異的な数字です。

しかしながら、その時点で「安全性」について具体的なデータは、まだ十分でないように感じました。それで私は、「接種については慎重に考えたい」という意見を述べていたのです。

 

 

——しかし、その後、意見を大きく変えられています。

 

今年に入ってから、米国のCDC(疾病対策センター)が、約2300万人に及ぶコロナワクチン接種者の副反応データの分析結果を公表しました。「重篤な副反応の頻度は、従来のワクチンと同等」という結果でした。つまり、コロナワクチンが他のワクチンよりも危険ということはないと。90%を超える驚くべき有効性があり、「感染予防」の三つの働きが、そろって非常に高い。加えて「安全性」も明らかになったことで、私は「打たない選択肢はない」と確信するに至ったのです。

 

 

短時間での進展

——コロナワクチンは短期間で開発が進み、人類が経験したことのない規模で実用化されました。その中では、何かと「リスク」ばかりが強調されがちですが、日本での接種はイメ、日本での接種は今、累計回数で世界第5位となっています。

 

日本の接種の進み方は、予想をはるかに超える、順調な伸び方です。

今年の5月、政府が「1日に100万戒」との目標を示した時、私は、それはとてもできないだろう、そこまで行くにはかなり時間がかかるだろうと思いました。ところが関係者の皆さんが、やりましょうということで立ち上がって、力を合わせた。

私も今、大阪市での接種をお手伝いしています。接種を担う医師や看護師、役所の方々、アルバイトの皆さん——ものすごく大きなチームが一丸となって、熱心に動いています。接種に関わり始めた当初、短時間でこれほどのチームの動きができるのかと、感動しました。デジタル化の遅れなどなどの課題もありますが、ワクチン接種の実施という点では、見事な進展だと思っています。

また、私は、海外からのワクチン確保・供給が、そんなにスムーズに進むはずはないと思っていました。昨年の感染拡大の当初、ヨーロッパやアメリカには、人口比で見ると日本の50倍から100倍に及ぶ新規感染者がおり、そうした地域のワクチンの必要性が非常に高いと思われたからです。また、世界的なパンデミックで、どの国も有効率の高いワクチンを使いたいのは同じですから、ワクチンが日本に来るのが少し遅れてもやむを得ない状況でした。

 

 

免疫が働く仕組み

——コロナワクチンの有効性の高さは、どんな仕組みで実施されているのですか。

 

ワクチンは、人の免疫に病原体の情報を覚え込ませておいて、実際に病原体が体内に侵入した時、その外敵から体を守る効果を発揮させるものです。

私たちの免疫は「自然免疫」と「獲得免疫」の二段構えの機構になっています。「自然免疫」は、体内に入ってきた多様な病原体に素早く反応します。一方、「獲得免疫」は体内に入った病原体の特徴を〝記憶〟することができ、その病原体が再び体内に侵入してきた時、強く反応し、より多くの抗体(ウイルスなどの異物を体内から排除するたんぱく質)や免疫細胞をつくって体を守ります。

コロナmRNAワクチンは、コロナウイルスの遺伝子(RNA)の一部だけを体の中に送り込んで働かせ、あたかもウイルスそのものの感染があったような反応を起こして、自然免疫・獲得免疫を活性化させる仕組みです。このワクチンには、実用化に当たって、多くの工夫がされています。

例えば、ワクチンに含まれるコロナウイルスRNAを脂質膜で包み、「脂質ナノ粒子」と呼ばれる形にしたことも、素晴らしい工夫の一つです。自然免疫を働かせる細胞の一つで、獲得免疫を働かせる鍵となる「樹状細胞」や、獲得免疫の主役となる「リンパ球」は、「リンパ節」というところに集中して存在しています。脂質ナノ粒子は、そのリンパ節につながる「リンパ管」に入り込みやすいという特徴があります。

インフルエンザの「ワクチンなどは、「水溶性」であり、筋肉注射すると、その個所から全身に散らばっていきます。そのため、リンパ節に入っていく量は、どうしても少なくなります。しかし、コロナのmRNAワクチンは、脂質ナノ粒子の形にしているため、血管に入らず、選択的にリンパ管に入り込むのです。そのため、ワクチンが直接的に、〝免疫の砦〟であるリンパ節に再び運び込まれ、非常に効果的に、強い免疫反応が起きるようになるのです。

 

ワクチンは人が持つ「戦う力」を

何倍にも引き出してくれる

 

——ワクチンは人体にとって「異物」ですが、そうしたワクチンと免疫の関係は、仏教でいう「縁」と「因」の関係を想起させます。ワクチンが「縁」となり、人体が本来持つ力を引き出してくれるというイメージで……。

 

当に、そう考えていいと思います。私たちは、もともとコロナウイルスにも反応する力を持っていますが、その力は、そんなに多くない。そして、非常に大きな個人差もあります。しかし、ワクチンは、もともと人が持っている〝戦う力〟を十倍、百倍、千倍にしてくれる。そうして接種を受けた多くの人が、異物に対抗する大きな力を持てるようになる——そういうことだと思います。

その上で、例えば「おたふくかぜ」のワクチンの効果が続くのは20年から30年ほど。破傷風、はしかなどは、高価が50年くらい続きます。ところが、インフルエンザはワクチンを打っても4カ月ほどで効果が半減します。つまり、ワクチンの中には、免疫を長期間、持続させてくれるものと、そうでないものがある。

これは、ワクチンが悪いのではありません。病気亦ウイルスの中に、長期の免疫を付与するものと、そうでないものがあるのです。

その違いの原因については残念ながら、まだメカニズムがよくわかっていません。免疫学者も、答えを見つけられないでいるのです。この問題を解決できたら、ノーベル賞ものだと思います。

 

 

ブレイクスルー感染

——宮坂名誉教授は、「変異株」に対するワクチンの有効性についても、繰り返し語らえています。

 

変異といっても、その遺伝子の変化は非常に小さく、ワクチン接種による発症予防効果は以前、かなり大きいといえます。その上で、感染者の保有するウイルスが最も多くなる「デルタ株」の登場で、ワクチンの効果が少し下がりつつあることは事実です。ワクチン接種者が感染する、いわゆる「ブレイクスルー感染」もあります。

ただし、例えばイギリスのデータを見ると、ファイザー社・モデルな社のmRNAワクチン、またアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチン(※注3)ともデルタ株によって効果が少し下がっていますが、重症化率はどちらも10分の1ほどに抑えられています。また、ブレイクスルー感染による感染者は、ワクチン接種者の中の割合で見ると、非常に少ないです。

では、社会に飛び交うウイルス量が変異株によって増えたこと、またワクチンの防御力が、何でも完全に防げるようなものではなかったことが考えられます。

社会のウイルスの量を雨に例えるなら、私たちは当初、ワクチンを2回打った人というのは、どんな雨にも濡れない「厚い鎧」をまとったくらいの防御力を得ると思っていました。祖化し、実際にワクチンで得られるのは、「厚い鎧」ではなく「トレンチコート」「レインコート」くらいの防御力だった。

すると、ある程度の雨を防ぐことはできても、世間にまだワクチン未接種者が多く、変異株によってウイルスの量も増えると、その「土砂降りの雨」は防ぐことができず、ぬれてしまう。つまり、感染する意図も出てくる。他国の例を見ると、ワクチン接種が6割くらいの状況で、マスク着用などの社会的制限を解除してしまえば、やはりブレイクスルー感染は増えるようです。

一方、ワクチンを接種していない人は「裸」の状態といえますので、たとえ雨が少量だったとしても、当然ながらぬれてしまうことになる。やはり、ワクチンは接種した方がよいわけです。

日本では、海外ほどブレイクスルー感染が起こっていません。「変異株=ワクチンの効果が落ちた」とばかり強調する報道もありますが、マスク着用などの対策を社会的に行っていれば、そうした感染は抑えられるのです。

そうした対策をとりながらワクチン接種を粛々と進めることで、社会にフルウイルスの『雨』の量を減らせば、トレンチコート・レインコートを着ている人なら基本的には大丈夫ということになるわけです。また、ウイルスの変異は感染者の体内で起こるので、感染者が減れば、新たな変異株が誕生する確率も減ることになります。

 

 

抗体カクテル療法

——「抗体カクテル療法」(※注4)にも、コロナ禍を打開する上で、大きな期待が集まっています。

 

昨年、綿井は首相官邸で、コロナの今後の対策についてお話する機会がありました。そこで申し上げたのは、「ワクチン」とともにコロナ対策のゲームチェンジャーになるのは「抗体カクテル療法」だということでした。

日本でも、国内製薬会社がこの治療薬を作っており、その効果は劇的です。東京都では、重症化リスクの高い人に治療薬を投与すると、23割の人は2日以内に症状が消え、残りのうち半数は、症状が

出ないまま1週間以内に退院できています。

まだ、世界的な供給量の不足や価格などの課題もありますが、この治療薬が広く実用化すれば、重症者が激減すると思います。

 

 

誤解を解きたい

——ワクチンについては、玉石混交の情報、悪質なデマ情報も飛び交っています。

 

最近は、厚生労働省のホームページなども、情報発信の工夫を凝らしていますね。

コロナワクチンのような「mRNAワクチン」については、がんワクチンなどの形で開発されてから、すでに10年がたっています。その間に、さまざまな実験も行われており、ワクチンのウイルス遺伝子が子孫に遺伝していかないことや、体内に注射したmRNA2日以内に分解されましたが、その基幹的な研究には長い歴史があるのです。

私が本を書いている一番大きな理由は、どうしたらワクチンに対する世間の誤解を解けるか、という思いがあったからです。

〝免疫学の祖〟の一人は、北里柴三郎という人です。つまり、免疫学は日本人によって始まっている面もあるわけです。日本の免疫学は今、世界のトップクラスでしのぎを削っていますが、まだまだ、さまざまな謎が解けていません。日本の若い人にはぜひ、免疫学の分野で、ノーベル賞を受けるくらいの活躍をしてほしいと願っています。

 

1 「メッセンジャー・アール・エヌ・エー・ワクチン」ウイルス遺伝子(RNA)の一部を含むワクチン。その遺伝情報をもとに体内でウイルスのタンパク質の一部が作られ、これに対して抗体などが産生されることで、ウイルスに対する免疫ができる。

 

2 ワクチンが発症を減少させる割合。「ワクチン降下率=[1-〈接種者罹患率÷非接種者罹患率〉]×100」。例えば、摂取した100人のうち5人が発病し、摂取しなかった100人のうち50人が発病したなら、接種者罹患率5%、非接種者罹患率50%で、有効率は90%。

 

3 発病性のない(コロナとは別の)ウイルスをベクター(運び屋)として利用するワクチン。

 

4 2種類の抗体を組み合わせた薬を投与する治療法。軽症・中等症の治療に用いられ、日本では現在、点滴で投与されている。

 

みまさか・まさゆき 大阪大学免疫学フロンティア千九センター招へい教授。1947年、長野県生まれ。京都大学医学部卒業、オーストラリア国立大学大学院博士課程修了。医学博士。東京都臨床医学総合研究所等を経て、大阪大学医学部教授、同大学大学院医学系研究科教授を歴任。2007年~08年に日本免疫学会会長。著書に『免疫力を強くする 最新科学が語るワクチンと免疫の仕組み」(講談社)、『新型コロナ 7つの謎 最新免疫学からわかった病原体の正体』(同)など。

 

 

【危機の時代を生きる】聖教新聞2021.10.8






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Last updated  January 8, 2023 05:30:23 AM
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