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February 12, 2023
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16SDGsの理念と実践

 創価女子短期大学准教授  青野 健作さん

誰も置き去りにしない社会の実現へ

「善の連帯」を広げる挑戦

地球と人類の未来を守るために——気候変動地策は〝待ったなし〟の状況です。

記録的な猛暑や大雨、台風の頻発など、近年、国内外で見られる異常気象によって、気候変動の深刻さを身近で感じるようになりました。こうした異常気象は、長期的な地球温暖化の傾向と一致しているといわれています。貝」

故に、気候変動という危機に立ち向かうには、温室効果ガスの排出量を減らしていけるかが鍵となります。

2016年に発効した「パリ協定]では、地球の気温上昇を、産業革命以前と比較して「2度より十分低く、可能であれば5度」に抑えることが、世界共通目標として掲げられました。

各国は、温室効果ガスの排出削減目標を自ら設定し、5年ごとに自国の目標を更新することになっています。現在開かれているイギリス・グラスゴーでのCOP

を前に、各国が削減目標を再提出しましたが、それらを含めても、「2度」の目標達成には届かないのが現実です。

各国の努力をさらに加速していけるか。正解はイメ、ターニングポイント(転換点)を迎えています。

◆◇◆

 

経済活動が地球を覆う「人新世」時代

気候変動対策は〝待ったなし〟

 

 

言うまでもなく、地球環境は有限です。にもかかわらず人類は、まるで地球の資源が無限であるかのように、環境を開発し続けてきました。

エコロジカル・フットプリントという指標で見ると、現代の人類社会は、地球の再生能力の「1.69倍」に及ぶ資源を消費することで成り立っています。日本の生活レベルで計算すれば「2.76倍」です(南博・稲葉雅紀著『SDGs 危機の時代の羅針盤』岩波新書)。今までは、地球が「持続不能」であることは明らかです。

述べる化学賞受賞者のパウル・クルッツェン氏は、地球学的に見て、今は「人新世(ひとしんせ)」という新しい時代区分であると提唱しました。人類の経済活動が、地球を覆い尽くす時代という意味です。

これを裏付ける研究が、ヨーロッパを中心に発展していきました。

一つが「グレート・アクセラレーション(大加速)」です。人口や実質GDP(国内総生産)、観光など12の「社会経済的な指標」と、大気中の二酸化炭素濃度や地表温度など12の「地球環境的な指標」が、1950年代後半以降に、急激に変化してることを示したものです。

そしてもう一つは、「プラネタリー・パウンダリー(地球の限界)です。

地球には本来、外部からの変化や衝撃を緩和する回復力が備わっています。温室効果ガス排出に起因する熱が海洋によって冷やされたり、人間が排出した二酸化炭素が自然生態系に吸収されたりするのも、回復力の例です。

しかし地球環境に負荷がかかれば、こうした回復力は徐々に失われていきます。「地球の限界」は、気候変動や成層圏オゾン層の破壊など九つの指標で、安定的かつ回復可能な状態であり続けるための限界値を示しています。

重要なことは、互いに変化を緩和することで、均衡を保っていた地球の生態系要素が、ある点を境に、変化を助長し合って不均衡を促す、正反対の方向へと変貌してしまうということです。地球に与える負荷が飽和点を超えたとき、「地球は突然、友人から敵に変わる」「ある均衡状態から別の均衡状態に不可逆的に移行する」のです(J・ロックストーム/M・クリム著『小さな地球の大きな世界』武内和彦・石井菜穂子監修、丸善出版)

九つの指標のうち、気候変動、生物多様性祖損失、土地利用の変化、そして窒素とリンの循環については、すでに限界値を超え、危険域に入っているといわれています。

持続可能な地球の未来のために、人類の連帯と行動が求められています。その道しるべとなるのが、SDGs(持続可能な開発目標)です。

SDGsは20159月に、国連で採択されました。2030年を目指して取り組む、17のゴールと169のターゲットを定めています。

成立の背景には、SDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)の反省がありました。

MDGsでは、発展途上国の開発のための、8つのゴールと21のターゲットが定められました。貧困削減をはじめ大きく前進した分野がある一方で、進展は地域によって差があり、サハラ以南のアフリカでほとんどのターゲットが未完成でした。

また、MDGsが発展途上国の問題を扱うにもかかわらず、一部の専門家によって決定されたことや、途上国の問題の多くが先進国の経済活動によって引き起こされたものであることなどに、不満や批判があったのも事実です。

これらの反省を踏まえて、SDGsが、実に3年半に及ぶ交渉の末、先進国も途上国も含む、国連加盟国の合意によって成立したことは、画期的な出来事でした。

地球問題に、人類全体で取り組んでいく。気候変動をはじめとする現代の危機を前に、こうした姿勢がSDGsという形になったのです。

◆◇◆

SDGsの〝生みの親〟は一人の外交官でした。南米コロンビアで、外務省の環境局長を務めていた女性です。2011年に行われた、翌12年の地球サミットに向けた準備会合において、彼女は、MDGsで抜け落ちていた地球環境問題についても、同様の目標を設けるべきだと語ったのです。これを端緒として、SDGsの議論が国際社会の潮流となっています。

わたしが外務省で働いていた時、コロンビアとの経済交渉を担当したことがあります。同国は、世界で最も生物多様性に富む国の一つです。コロンビアなどの発展途上国では、自然も、伝統的知識や文化の多様性としての〝財産〟であると考えていることを学びました。

環境を大切にするコロンビアの人たち——印象的だったかつての出来事を、数年後、SDGs成立の経緯を学ぶ中で思い出し、合点がいったのを覚えています。

実際にSDGsは、環境を含む「社会・経済・環境」のお領域を柱として整理されました。17のゴール、169のターゲットと広範な指標を定めていますが、それぞれが個別に存在するのではなく、相互に依存し、影響し合っていることを前提とした、統合的なアプローチをとっています。

 

一人の幸福に尽くす生き方がSDGsを体現

 対話によるエンパワーメント(内発的な力の開花)を変革の柱に

 

人間に立ち戻れ

SDGsの特徴の一つは、国家間の合意に基づいて権利・義務関係を定めた「条約」ではないという点です。公的拘束力を有した条約(ハードロー)に対して、共通のゴールをもって働き掛けるものであり、国際法では「ソフトロー」に位置付けられます。

義務や罰則などを定めると、条約を「守る」「守らない」といった点に目が行き、容易に政治問題にもありえます。また、理念には賛同するが㊤屋には加わらない、といった国が増える可能性もあります。

その点、SDGsでは共通の目標を掲げつつも、その手段はそれぞれの国や人々にゆだねています。一国、一市民の行動を、外からの発露によって促すものであり、それは遠回りのようであっても、究極の解決の方途であるといえます。政治では解決の難しい問題にも、国際協調という「全の連帯」で立ち向かうからです。

◆◇◆

169の多様なターゲットを定めたSDGsは、あらゆる企業や個人に参加の機会を提供しています。これは、民衆のエンパワーメント(内発的な力の開花)を促す取り組みであるといえます。

地球的な課題に取り組む上で、大切なのは「人間」に帰着すること——これが現代の共通認識となっているといえるでしょう。

1969年、池田大作先生は米コロンビア大学ティーチャーズ・カレッジで講演し、戦争や環境破壊、格差などの地球的問題群の底流にあるものは、「あらゆる分野において、『人間』を見失い、『人間の幸福』という根本の目的を忘れてきた失敗」であると語られました。

そして、「『人間』こそ、私たちが立ち戻り、また新たな出発をすべき原典でなければなりません。人間革命が必要となっています」と。

〝SDGs時代〟の到来を前に、人間に立ち返るべきであると断言されていることに感動を深くします。

この講演を指針として、創価女子短期大学も、創立者のご期待に応えるべく、世界市民育成の教育に力を注いできました。

 

一点突破の大切さ

本年、私は創価女子短大のSDGs推進担当を拝命しました。何から始めようか悩む中、学内関係者にもご協力いただき、まずは青のゼミの学生と一緒に取り組もうと考えました。取り上げたテーマは「整理「誰も置き去りにしない」という理念があります。行動する上では、この根本理念を繰り返し、の貧困」です。

経済的な理由などから、生理用品の入手が困難な女性は多くいます。そうして人たちを取り巻く「生理の貧困」を解決することは、ゴール5の「ジェンダー平等」をはじめ、SDGsにも直結します。

私たちの取り組みは、一人一人のゼミ生の思いが結実して達成されました。「生理の貧困」に向き合っていたいという彼女たちの強い思いが、学内に波及していったのです。

稲で議論を重ね、生理用品を無料で提供する必要性を大学に訴えていきました。その結果、全国の大学に先駆けて、短大口内の女子トイレに、生理用品を無料で提供するディスペンサーが設置されることが決定したのです。

学生が自ら考え、行動し、大学を動かす——ボトムアップで「生理の貧困」に取り組んだ大学は、私たちが初めてであると自負しています。

「生理の貧困」の解決は、ジェンダー平等だけでなく、ゴール③「すべてに人に健康と福祉を」、ゴール6「安全な水とトイレを世界中に」の推進にも通じます。

一人からゼミへ、そして大学全体へ。あるいは、SDGsの全体へ——。大きな変化を起こすためには「一点突破」が大切であることを、学生たちから教えてもらいました。

◆◇◆

SDGsの根底には、「誰も置き去りにしない」という理念があります。行動する上では、この根本理念を繰り返し、思い起こし、共有していくことが大切だと思います。

たとえば、ゴール1「貧困をなくそう」には、1日1.25㌦未満で生活する「極度の貧困」を終わらせるといったターゲットがあります。日本では「極度の貧困」をイメージしにくい人もいるかもしれませんが、では、相対的貧困はどうでしょうか。ひとり親家庭の貧困、子どもの貧困、そして整理の貧困等々——どれも深刻な問題です。

「誰も置き去りにしない」という理念に照らした時、解決に向かっているように映る課題の奥に、また別の課題があること気付きます。

そうした姿勢は、個人にとっても重要だと考えます。エコバックの使用や節電など、個人にできることは多くありますが、それらはあくまでSDGsへの入り口であるからです。入口に立つだけでその先の行動を止めてしまっては、「SDGsウオッシュ」(=見せかけの取り組み)になりかねません。

こうして考えると、SDGsとはどこかに終着点があるのではなく、「誰も置き去りにしない」社会の実現を目指し続けるといえるのではないでしょうか。そして、誰もが自分の足場を見つけて挑戦を重ねる、「生き方」そのものであるとも思うのです。

 

わが事と捉える

それは、一人を大切にする私たち仏法者の生き方と深く響き合います。

創価学会員が実践する「民衆のエンパワーメント」——その手法は対話であり、人間革命の運動です。

眼前の一人の幸福を祈り、無限の可能性を信じて関わり続ける。そうして立ち上がった一人が、今度は他の誰かを励ます側となる。そして、相手に寄り添い、ともに歩む日々が、自分自身の人生にも大きな元気と活力を与えてくれている——。

「善の連帯」を広げるこの挑戦に終わりはありません。自他供の幸福を目指す仏法者の生き方それ自体が、SDGsを体現する生き方であると強く実感します。

「ますます相互依存が進む世界では(中略)世界の誰もが、ほかの誰かの『裏庭』に住んでいる」(前掲『小さな地球の大きな世界』)

網の目のように結ばれた今日の世界にあって、SDGsは地球上の問題について想像力を働かせ、「わが事」としてとらえるよう呼びかけます。

牧口常三郎先生が「人生地理学」でつづられ、戸田城聖先生が「地球民族主義」として構想され、そして池田先生が識者との対談や「SGIの日」記念提言などで訴えてこられた、世界市民としての自覚と生き方、それらを育む教育の大切さが、いかに先見の明に富んだものであったか。

SDGsに生きる日々は、私にとって、学会員としての誇りを再確認する日々にほかなりません。

一人の生きる姿勢が、誰も置き去りにしない社会をつくる原動力となる。このことを確信し、人間革命の哲学を胸に刻みながら、具体的な行動を起こしてまいります。

 

 

【危機の時代を生きる■創価学会学術部編■】聖教新聞2021.11.4






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Last updated  February 12, 2023 06:28:17 AM
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