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March 20, 2023
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9皮膚の役割と可能性

志村ヒフ科クリニック院長  佐藤 喜美子さん

眼や耳でも覚知できぬ周囲の状況を読み取る

人体の中で最大の器官

コロナ禍の中、肌荒れで悩む患者さんが増えています。

国内の調査では、実に2人に1人が昨年と比較し、何らかの肌のトラブルを感じていることが明らかになりました。一番多いのは、マスク着用によるものです。マスクの材質による湿疹、かぶれ、ニキビも多くなっています。

マスクをつけると、口周りは保湿されると思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際には口周りが蒸れていることで毛穴が空きやすくなり、皮膚の水分蒸発が起こりやすくなるのです。

加えて、マスク内に書いた汗によって細菌が繁殖し、肌荒れにつながる場合もあります。マスク着用中も小まめに汗をふくなど、雑菌が繁殖しないよう対策を講じていただければと思います。

また、アルコール消毒の頻度が高まったことで、手荒れをきたす人も増えています。小まめにハンドクリームを使って手を保護してください。

◆◇◆

肌荒れは、他の要因でも起こります。

皮膚の表面には、天然保湿因子を持つ角質細胞があり、さらにその上を、皮膚に潤いとツヤを与えるH氏膜が覆っていますが、入浴の際、ナイロンタオルなどで肌をゴシゴシこすってしまうと、皮脂膜や角質が取れ、水分が蒸発して皮膚が乾燥したり、ひび割れしたりしまうのです。

古い角質は自然と剥がれ落ちますし、シャワーを浴びるだけでも取れます。しっかりと汚れを落としたい気持ちも分かりますが、そうした場合でも、ボディーソープを泡立てて洗うなど、肌を傷つけないようにしていただければと思います。

その上で、乾燥から肌を守る基本は、保湿対策です。手洗いや洗顔、入浴後は、できるだけ速やかに化粧水、乳液、クリームで保湿することを心掛けてください。

 

 

五感が全て備わる

皮膚は、単なる〝皮〟ではありません。表面積は畳1畳ほどの約1.6平方㍍あり、人間の身体の中で最大の器官です。命を守る防波堤として、その維持に欠かせない体内の水分蒸発を防ぐとともに、汗を流して体温調節にも努めています。また、絶えず外部からの刺激にさらされる皮膚には、免疫細胞も存在し、さまざまな病原菌の侵入を防いでいます。

さらに皮膚には、周囲の状況を読み取るセンサーも存在します。具体的には〝自分がどんなものに触れているか〟を知る感覚で、主な機能には圧力や湿度、痛みの感覚があります。今年のノーベル医学生理学賞が、それらを感じるセンサーが細胞にあることを発見したアメリアの研究者2人に授与されたことは、記憶に新しいでしょう。

それ以外にも近年、皮膚には光や色、音やにおい、味を感じ取りセンサーも存在し、視覚、聴覚、嗅覚、味覚を含む五感すべてを持っていることがあら鹿になりました。

さらには、目には見えない紫外線や、耳ではきこえない超音波なども感じ取る、優れた感覚器官ということが分かってきたのです。

◆◇◆

なぜ、皮膚には五感があるのでしょうか。

それは、触覚が最も原始的な感覚であり、その他の感覚は、全て触覚から派生したものだからです。生物の進化で見ても、もともと原始生物の皮膚には五感の全てを感じる機能があり、それが眼や口などに分化していったと考えられています。その原始生物の時代に持っていた皮膚の機能が、人間にも残っているとすれば、五感があることは十分に推測できます。

その上で、皮膚は脳とも近い存在です。

人間の受精卵は、細胞分裂していく初期の段階で、外胚葉、中胚葉、内胚葉という三つの部分に分かれますが、皮膚と脳とは同じく外胚葉から生まれ、その後、内側に入ったものが脳となり、外側に露出したものが皮膚となります。

皮膚には、脳で使われる情報伝達物質と同じものや、それらも受容体も存在していることも発見されています。

そう考えれば、むしろ「露出した脳」と言うこともできるでしょう。

私たちは、五感で得られた情報をもとに脳で考えていると思っているかもしれません。しかし五感を有する皮膚は、目や耳で感じられないものを感じ取りだけでなく、その情報を処理し、〝私がどう感じるか〟だけでなく〝私たちにどう感じさせるか〟にも影響を与えているのです。

それは、よく「肌感覚」という言葉で表現されるものかもしれません。

 

皮膚は「自分」と「自分以外」の境界

自己を形成し他者とのつながりを認識

 

 

心身の健康と触覚

私は、この肌感覚は、人間が人間であるために欠かせないものだと思っています。なぜなら、皮膚は、「自分」と「自分以外」の境界に存在するからです。

たとえば、皮膚は「自己」と「非自己」を認識する力が強いことが知られています。現在は、さまざまな臓器移植が行われますが、他人の皮膚を移植することは、現代の医療技術でも難しい状況です。

では、この自分と自分以外の境界にある肌の感覚は、人間にどのような影響を与えるものなのでしょうか。これは二つの角度で考えることができると思っています。

第一に、自分が自分であることを認識させる点です。

例えば、肌を通した他者との触れ合い(スキンシップ)によって、愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンが分泌されますが、これは幼少期の成長に欠かせないもので、心の健康に良い影響を与えることが分かっています。

一方、スキンシップが少ない環境で育った子どもは、成長する過程で、スキンシップが少なかったことを埋め合わせするかのように、自らの手で自らを身体を傷つける行為に走る傾向が高くなることも分かりました。

また家庭でもスキンシップが多かった子どもは、少なかった子どもに比べて知能指数が高いとの調査もありますし、未熟児の赤ちゃんを比較した研究では、スキンシップの多い赤ちゃんの方が、体重が早く増加したという結果も出ています。つまり、触れ合いによる肌の感覚は、心身の成長を促し、自分というものを形づくる効果があるのです。

第二に、周囲とのつながりを認識させることです。

乳児期にスキンシップの多かった子どもは、他人に親近感を覚える傾向が高いのに対し、少なかった子どもは、他人に対し攻撃的になりやすいことが分かっています。

アメリカの実験では、触角は、視覚・聴覚よりも親愛的な感覚を伝達することが明らかになりました。また、人間は感覚で得た情報を信頼するという研究成果もあります。

周囲に対し、笑顔や真心の声掛けなど、視覚や聴覚に訴える努力も、もちろん大切ですが、それ以上に人間は、慈愛をこめて背中をさすった手のぬくもりや、期待を込めて強く握った手の感触などから周囲とのつながりの大切さを感じ取る生き物なのです。その意味で、「肌感覚」とは「生命感覚」とも言えるでしょう。

 

 

触れ合いなき現代

二足歩行をするようになった人類の祖先が体毛を失ったのは、120万年前のことだと考えられています。以来、この肌の感覚を使いながら、いち早く周囲の危険を察知したり、触れ合いの中で互いの気持ちを感じ、支え合ったりしながら生きてきました。

私は皮膚科医ですが、この長い時間をかけて培われてきた肌感覚が、危機的な状況にさらされているのが現代だと感じられてなりません。

例えば自然の木々や土、昆虫などに触れる機会も減り、衛生環境が整ったことで、さまざまな病原体への抵抗力が低下し、逆に後天的なアレルギーなどに悩む人が増えています。アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、花粉症などです。そうしたことから、現在では、幼少期には、なるべく自然環境に触れて育てるのがよいと考えられています。

さらに、今回のコロナ禍によって、人との接触機会も激減しました。孤独を感じる人も増えており、今後、そうした人々の心身に悪影響が出る恐れもあります。ストレスによって血管が収縮することで、皮膚の温度が低下したり、栄養が行き渡らなくなったりして、肌トラブルにつながるのです。

こうした中にあって、学会員は、オンラインでの集いなど、創意工夫を凝らしながら〝誰も置き去りにしない〟励ましに取り組んできました。

実は、直接の触れ合いがなくても、近くにいると感じられるだけで、ストレスが軽減されることが報告されています。坂の下に連れて行き、その傾斜の感じ方を調べたアメリカの実験では、一人でいる人よりも友人と一緒にいる人の方が、坂の傾斜がゆるいと判断することが分かりました。そして、その度合いは、友人との親密度が高いほど顕著になり、それは重い荷物をもって階段を上がったり、痛みに耐えたりするという点においても同様の結果が得られました。

他者とのつながりは、気持ちを前向きに変えます。だからこそ、大事なことは、あらゆる人に本来的に備わる〝万物一体の生命感覚〟を磨き、つながろうと努力することではないでしょうか。

 

 

御書「面にあらずば申しつくしがたし」

親近感が肌感覚で伝わる交流を

 

身根清浄の功徳

さて、ここまで皮膚の役割や可能性を見てきましたが、仏法ではどう捉えているのでしょうか。法華経の法師功徳品には、身(皮膚)が清らかになる功徳について、二つの視点で説かれています。

一つ目は、「清浄の身の浄瑠璃の如くしにて、衆生を見るを喜ぶを得ん」(法華経546㌻)です。磨き抜かれた宝石のように清らかで、誰もが見たがるような、人々を引き付ける魅力ある姿になるというのです。

人が魅力的と思う肌の条件の一つに、ツヤがあります。ツヤで人が受ける印象を調査したところ、ツヤの強度が高いほど、顔の魅力や笑顔、若々しさといった項目でも評価が高いことが分かりました。

肌のツヤを保つためには、食事や睡眠も大切ですが、血流の良さ、表情筋の量の多さも不可欠です。これは、表情豊かで、よく話している人の特徴と深く関係します。人間関係も疎遠になりがちな現代ですが、そうした中でも、相手とつながろうと努力し、自分から笑顔で語りかける学会員の姿そのものではないでしょうか。まさに、そうした日々の活動が肌を清らかにし、より多く人々を引き付ける力となっていくのです。

二つ目は、〝清らかな鑑に一切が映るように、十界のあらゆるものが、その身に映じる〟(同547㌻、趣意)という孤独で、パッとあっただけで相手の生命の傾向性が分かるというのです。

皮膚には五感があり、相手の表情や雰囲気など、私たちが意識する以上にさまざまなものを感じ取っているので、これは科学的に見ても、十分に考えられることです。また近年、脳で学習や記憶に重要な役割を果たす受容体と同じものが、皮膚でも発見されました。つまり人との出会いを重ねることで、肌は相手の心をより深く感じ取り、理解している可能性があるのです。

興味深いのは、この法華経の二つの角度に共通して、肌が「人を結びつける」ためにあるという観点で捉えられていることです。これは、触れ合いを重視した皮膚の本質を突くものだと思わずにはいられません。

◆◇◆

日蓮大聖人は、「面にあらずば申しつくしがたし」(御書1099㌻)等と仰せのように、直接会い、語ることを大切にされました。この肌感覚を大切にしていくところに、人間を人間たらしめ、より良い未来を開いていく道もあると確信します。

コロナ禍になって、今後も、人と会う機会が制限されることもあるかもしれません。しかし、その中でも触れ合いを大事にしながら、知恵と工夫と情熱で、一人でも多くの人と心を通わせて生けるよう、地域の同志と共に歩んでまいります。

 

 

【危機の時代を生きる■創価学会ドクター部編■】聖教新聞2021.12.4






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Last updated  March 20, 2023 05:53:54 AM
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