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カテゴリ:医学
「メンタルヘルス」の理解のために㊤
近年、「メンタルヘルス」(こころの健康)の重要性が一層、高まっています。「こころの病気」で病院に通院や入院をしている人たちは、国内で400万人を超え、日本人のおよそ30人に1人の割合になっています。 今、コロナ禍の影響により、「こころの病気」を抱える人たちはさらに増えています。自分を守り、大切な人を守るために、今号では、「メンタルヘルス」の理解を深め、一緒に考えて聴く機会となるよう、ドクター部の専門医を交えて、語り合ってもらいました。(内容は個人的見解によるものです)
「こころの病気」は特別な人がなるもの? 酒井(ドクター部長)●長引くコロナ禍により、「メンタルヘルス」への深刻な影響が懸念されていますね。
村松(中部総合ドクター部長〈精神科医〉)●「メンタルヘルス」とは、「こころの健康」「精神保健」といった意味として表現されています。 最近では、「心身ともに充実した健康状態をめざそう」という意味でも多く使われ、私たちの生活における身近なテーマといえます。
木内(東京ドクター部書記長〈精神科医〉)●「メンタルヘルス」の問題は、長年、警鐘が鳴らされ続けてきましたが、コロナ禍の影響により、さらに喫緊の課題となっています。 残念なことは、2009年以来、10年間、減少傾向にあった自殺者数は、2020年に入って増加に転じてしまいました。
遠藤(東京ドクター部副書記長〈精神科医〉)●近年、「こころの病気」、あるいは、「うつ病」「依存症」といった言葉を耳にする機会は多くなっていますが、いまだに理解が十分に広がっていないのが実情ですね。
長渕(中国ドクター部長〈精神科医〉)●「こころの病気」は、生涯を通じて、5人に1人がかかるともいわれ、決して特別なものではなく、誰にでもかかる可能性があるものといえます。
村松●私たちが、「メンタルヘルス」に取り組む上で、大切な第一歩は、「こころの病気」への理解を深めていくことではないでしょうか。
「偏見」「誤解」が生まれる背景 長渕●「こころの病」について、なかなか理解が広がらない背景は、さまざま考えられます。 日本に限らず、歴史上、「こころの病気」に対する「偏見」や「誤解」は根強く存在し、世間の人々の目に、実情が見えにくい状況が続いてきました。
村松●当事者や家族の方々の信条としても、ケースによっては、〝あまり人に知られたくない〟という思いから、積極的に周囲の人に語ることもためらわれてきました。そのため、結果的に、「こころの病気」が、〝聞きづらい話題〟や〝触れてはいけない話題〟のようになってしまったと考えられます。
長渕●長年、「こころの病気」については、〝自分とは関係のないところで起こっている出来事〟にとらえられ、〝できれば触れたくないこと〟として、避けられてきてしまったのではないでしょうか。
断片的な情報から誤ったイメージ 遠藤●また、一部の「こころの病気」を抱えた人による事件や事故について、マスコミ報道などで、あたかも、「こころの病気」が原因であるかのように伝えられてきたことも、大きな影響を与えてきたのではないでしょうか。
木内●「こころの病気」を抱えた人が犯罪を起こすことはむしろ少なく、逆に犯罪被害に遭うことが多いとも言われていますね。報道により、偏見や誤解が助長されてしまうことも懸念されています。
長渕●断片的な情報をうのみにして、先入観をもとに〝自分流に解釈してしまう〟ことにより、〝「こころの病気」の人は危険〟といった偏見に陥ってしまうこともあるかもしれませんね。
遠藤●こうした中で、「こころの病気」は〝特別な病気〟〝よくわからない病気〟〝一生治らない病気〟といった偏見や誤解を抱いてしまうことも少なくありません。 また、〝気の持ちようだ〟〝心が弱いから病気になった〟という誤った誤解やイメージが、定着したままになっているとも考えられます。
「こころの病気」への理解 それが、自分を守り、 大切な人を守る〝第一歩〟
正しい情報を見分けるむずかしさ 木内●近年になって、自殺者が急増し、その正確な原因の究明とともに、自殺者を出さない対策が強く求められるようになりました。
村松●身の回りの友人や職場の仲間、学校の同級生など、自分が関係する人たちの中でも、「メンタルヘルス」の不調を起こす人が多くなり、医療機関で治療を受ける人も増えていきました。 そうした結果、「メンタルヘルス」に対する対策が急務となり、「他人事」ではなく、「自分事」として、考えられるようになったのではないでしょうか。
酒井●こうした「メンタルヘルス」の問題は、個人で学ぼうとしても、なかなか難しく、また、何か正しい情報なのかを判断するのも困難なため、いまだに深い理解に至っていないという現状もありますね。
大きく異なる一人一人の理解 遠藤●「メンタルヘルス」については、世代や人生経験、また住んでいる地域、家庭環境や友人関係の違いなどにより、一人一人の理解が大きく異なっていることも、特徴といえます。
木内●「こころの病気」の話題が、多くの人の中で、オープンなものとして語り合われたり、学び合ったりする機会が少ないことも一因ではないでしょうか。 また、専門家の中で見解が分かれていることも、理由に挙げられるからかもしれませんね。
松村●「こころの病気」だけでなく、身体の病気、また、さまざまな事象も含めて、医学的に解明されている、ともあれば、いまだに解明されていないことも多くあります。 現時点で正しいことは何か、また、自分自身が理解できていないことは何かなど、ありのままに受け止めていく「開かれた心」が大切ですね。
「開かれた心」による「開かれた会話」 木内●自分が一度、理解したことを固定化し、絶対化してしまうと、その子Lと自体が、偏見や誤解につながる可能性があります。 また、一面的な物差しだけでは、全体的に理解することができなくなってしまう恐れもあります。
遠藤●そうならないためには、様々な対場の人の考え方や感じ方なども尊重していくこと、そして何より、当事者の方々の経験や背景なども、先入観にとらわれずに理解していくことが大事ですね。
酒井●自分自身の偏見や先入観、また執着などにとらわれず、ありのままに受け止めていく「開かれた心」で、他者の意見や考え方を聞き、立場の違う人とも「開かれた対話」を続けていく。このことが、今後、さらに大切になって来るのではないでしょうか。
早めに周囲の人や専門機関に相談を 長渕●「こころの病気」は、誰にでも起こりうるものといえます。身体の病気と同じように、早期発見・早期対処が大事です。
木内●早めに適切な治療や社会的なサポートを受けるなど、回復しやすいことが分かってきていますね。
遠藤●心の不調やストレス症状が長く続き、日常生活に支障が出ている場合は、自己判断せずに㎡早めに、周囲の人や専門機関に相談することがとても大切です。 結果的に思い過ごしであってのいいので、変化を感じたら、相談することをお勧めします。 〈「心の病気」の初期サインや専門機関への相談については、厚生労働省のサイトなど(85㌻)もご参照ください〉
「本当に深い慈悲の境涯を開き、 豊かな人間性の社会を築いていく」 「病気の姿を現していても、 その生命の偉大さは変わりません。 全員が、尊貴な宝の存在なのです」
焦らず、じっくりと温かく、長い目で 村松●池田先生は、「こころの病気」について、次のように語られています。 「長い人生だし、決して焦る必要はありません。専門家に相談して、じっくりと適切な治療を行っていただきたい。 皆、いろいろな状況がある。一律に「こうすればいい」という処方箋はありません。 でも、一点、妙法を持った皆さんが不幸になることは絶対にないと、私は断言できます。 周りの人は、病気で苦しむ本人を温かく、また長い目で見守りながら、ご家族に真心からの励ましを送っていただきたい。 そばで支えてくださっている方々は大変です。ときには工夫して、休息をとっていただきたい。 こころの病を抱えた人を大切にすることは、本当に深い慈悲の境涯を開いていくことです。豊かな人間性の社会を築いていくことです」
酒井●私たちが、「メンタルヘルス」に取り組んでいく上で、とても大事な指針ですね。
悩んだ人ほど偉大になれる 正真正銘の地涌の菩薩 長渕●池田先生は、このようにも呼び掛けられています。 「ともあれ、悩んだ人ほど偉大になれる。つらい思いをした人ほど、多くの人を救っていける。偉大な使命があるんです。これが仏法です。菩薩道の人生です。 戸田先生は「時には、〝貧乏菩薩〟や〝病気菩薩〟のように見えるかもしれない。しかし、それは人生の劇を演じているんだよ。正真正銘の地涌の菩薩なんだ」と、よく言われていた。 また『大病を患った人の人生の深さを知っている』語っておられた。全部意味があるのです」
酒井●「三千大千世界(大宇宙)に満ちる珍宝をもってしても、命に替えることはできない」(新1463・全1075、通解)と日蓮大聖人は仰せです。 池田先生は、この御聖訓を通して、「病気の姿を現していても、その生命の偉大さ、尊さ、素晴らしさには何の変りもありません。皆さんを全員が、一人も残らず、最高に尊貴な宝の存在なのです」とも語られています。 一人一人の「生命の尊厳」を大切にして生ける「豊かな人間性の社会」を共に育んでいきたいと思います。 (㊦に続く)
〈厚生労働省〉 こころの健康・メンタルヘルス 治療や生活を応援するサイト
みんなのメンタルヘルス総合サイト https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/ 若者を支えるメンタルヘルスサイト https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/ 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
【「福徳長寿の智慧」に学ぶ】大白蓮華2022年1月号 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 3, 2023 03:17:13 PM
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