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カテゴリ:危機の時代を生きる
ウクライナから逃れた人々に 速やかに支援を届ける NGO「ジャパン・プラットフォーム」 小美野 剛 共同代表理事
流動的な情勢 ――「ジャパン・プラットフォーム(JPF)」では現在、ウクライナ危機に対して、どんな人道支援を行っていますか。
ウクライナで戦闘が始まった2月24日の翌25日に緊急の書道調査を行うことを決定し、26日にはJPFの加盟NGOのスタッフが隣国ポーランドへ。現地のパートナー団体と協力しながら、支援ニーズの把握を開始しました。現在までに、15のJPF加盟団体が、モルドバ、ポーランド、ルーマニアなどの周辺国で支援に当たっています。 難民・避難民、その上で、〝アセス・テンド・デリバー(調査・評価と配布)〟が、人道支援の基本です。 今回の危機では、巨大な人の流れがあり、情勢も刻々と変わっています。戦火から逃れてきた人が一つの地域にとどまらず、違う場所に移っていくことも少なくない。流動的な状況の中で、避難してきた人、また現地で支援する人が今、何を求め、必要としているかを正しく把握することが大切です。 初動対応は、こうした支援ニーズの調査が主な目的ですが、目の前に苦しむ人がいれば、その都度、水や食料、衣服や医薬品等を配布することはもちろんです。
弱い立場の人々 ――ウクライナから国外に逃れた人の多くは女性や子ども、高齢者です。どのような支援が求められ、どんな点に留意が必要なのでしょうか。
私たちは今、「保護」の活動を重要な支援として位置付けています。とりわけ、弱い立場にある女性や子どもを、性的搾取や虐待、ハラスメントから守るという視点が不可欠です。今回の危機においては、教会などの宗教施設が支援の拠点になることもあります。 核NGOは、自然災害も含めた数々の人道危機に際しての支援から、豊富な経験を蓄積しており、ハラスメント被害を未然に防ぐための方策を備えています。 むろんスタッフ自身の安全確保も重要であり、JPFでは、知識を深めるために以前からセミナーを開催してきました。
苦しむ人が何を求め必要としているか 周辺国の市民と緊急に連携して支える
平時からの努力 ――今回、戦闘が勃発してから、即座に初動を開始したことに敬服します。
JPFには現在、さまざまな専門性に有する42のNGOが加盟しています。 例えば、加盟NGOであるピースウィンズ・ジャパンは、物質の調達はもとより、国境を越えるための法的手続き、輸送ルートの確保などの知見が豊富で、今回のウクライナ危機でもいち早く支援を届けています。 ピースウィンズ・ジャパンはヘリコプターを使った緊急的な医療物資の供与など、平時から即時対応のためのトレーニングを重ねています。他のNGOも同時に、平時から努力を続けています。 そして、書く団体の根底には〝困っている人がいるのに、支援しないのはありえない〟との心意気と、不可能を可能にしてみせるとの〝カルチャー(文化)〟が、流れ通っていることを感じます。だからこそ、緊急時にも素早く対応できるのでしょう。 私たちJPFは、そのような覚NGOを結び、各組織の専門的な知識やノウハウを共有していくことを目指しています。 また、JPFでは国内外の諸団体と信頼関係を醸成するために、平時からネットワークを大切にしています。現地のどんな組織と共同すれば最も効果的な支援を行えるかを的確に見極めることが、私たちJPFの役割だと考えています。 創価学会とも防災の分野で協力していますが、平時に連携しているからこそ、いざ緊急時に共に支援を行うことが可能になるのだと思います。
心のケアも ――JPFの発表によると現在の緊急支援の「初動対応」と位置づけられています。小美野さんご自身のアフガニスタンなどでの人道支援の経験を踏まえ、難民をめぐる環境やフェーズは今後どのように変化していくと想定されるでしょうか。
危機が長期化すればそれだけ苦しい状況が慢性的に続くわけで、精神的な影響は計り知れず、心のケアの必要性が高まっていくでしょう。医師や看護師不足も伝えられます。子どもたちについては、教育を継続して受けられる体制づくり、家族との別れ等に起因するトラウマ(心的外傷)のケアがすでに喫緊の課題となっています。 また、仮に早期の停戦が実現し、人々がウクライナに帰還するにしても、荒れ果てた国土の回復という重い課題が残ることが想定されます。ともあれ、この危機が早く収束することを願うとともに、各段階での支援に尽力していきます。
現場主義の支援 ――JPFは、NGO、経済かい、日本政府が協働し、2000年に発足した緊急人道支援の仕組みです。小美野さんご自身も20年近く援助に従事されてきました。その中で、人道支援活動の分野やそれを取り巻く環境は、どう変化しているでしょうか。
私どもは「ローカライゼーション」と呼んでいますが、近年では現場主義の支援を心掛けています。難民・避難民を実際に保護するのは、外から来た団体ではなく現地の市民やNGOなどです。その事実を忘れてはなりません。そうした方々に敬意を払い〝一緒に考える姿勢〟があってこそ、現地で必要なことがらを誤りなく把握できると思います。
尊厳を守るために ――先ほど小美野さんが想定として述べられたように、危機の長期化も懸念されます。息の長い支援のために、また、難民の方々の尊厳を守るために、私たちや国際社会は何人を大切にしなければならないでしょうか。一般の市民ができる支援はあるでしょうか。
JPFとして3月7日には、中長期的な支援策として「ウクライナ人道危機2022」支援プログラムを立ち上げました。政府による「ウクライナ及び周辺国における緊急人道支援」の決定を受け、日本の民間支援組織を代表してJPFに約15億円が供与されることになっています。ただし事態の深刻化を受け、より以上の計画も視野に入れ、広く寄付を募っています。 私たちは現地でキャッシュ(現金)の提供も行っています。苦しんでいる人が、自分の必要な物やサービスを自分でお金を払って購入する――それが尊厳の確保につながると考えています。 難民というと〝かわいそうな人〟というイメージを持たれるかもしれません。しかし、一人一人がさまざまな能力や個性を持ち、さらには将来の夢を抱いて人生を歩んでいます。こうした人々の可能性に敬意を払いながら、支援を進めていくべきではないでしょうか。 とはいえ、私が知る範囲では困難が大変に多いのが実情です。支援とは、難民・避難民の方々が自分の力で人生を切り開いていくお手伝いをすることだと思います。その手目に、JPFは今後も幅広い授業に取り組んでいきます。
こみの・たけし 1980年、神奈川県生まれ。これまでアフガニスタン、パキスタン、ミャンマー、タイなどで支援業務に従事。東日本大震災への緊急支援を行うため、「CWS JAPAN」を設立し、現在、理事兼事務局長。ジャパン・プラットホーム(JPF)の共同代表理事、アジア防災・災害救援ネットワーク(ADRRN)理事兼事務局長などを兼務し、国内外の人道支援や防災のネットワーク構築のリーダーシップをとる。
【危機の時代を生きる】聖教新聞2022.3.23 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 19, 2023 05:24:46 AM
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