|
カテゴリ:抜き書き
五つのいじめ脱出法 今日の職場や学校が管理社会化し、人々がその中に取り込まれ、囲い込まなければいじめはそれだけで頻繁となる。しかも社会における上下関係や水平関係を決定する基軸が多様化し、あいまい化し、アノミー(無規範)化している情報社会では、いじめは多角化し、多大化する上に、その方法も多様化し、陰湿になるのである。 つまり、うかうかしていると、部下が上司を、学生が教師を、子どもが親を、妻が夫を、OLが課長を、助教授が教授をいびるというようなことが容易に起きる世の中になったので、上位者、強者とされているほうも大様に構えていられず、つまり、「いじめのバトルロイヤル」のような状況が起きているのが今日の社会であるといえる。 他方では、「忍従の美徳」が象徴され、信望が愚かしいこととされる風潮の中で、いじめの被害者のほうも、一般に耐え性がなくなっているということも問題を深刻化させている。 上述のように、職場内いじめは人間性の本質に根差し、かつ管理社会化が進行すればするほど増幅することがあるので、これに対する特効薬もなかなか見いだしにくいのである。 しかし、権力を持つ上位者は、自分自身、劣等感や被害者意識をもっているほど、ついそれを下位者や弱者に転嫁し、そのことを自覚していないということになりがちであることを銘記してほしい。人はいじめたことはよく忘れるが、いじめられたことは忘れないのである。
自分は職場でいじめに遭っていると自覚している人には、次のような脱出法をすすめたい。 ➀被害者のおちいりやすいいちばんの危険点は、冒頭の広島大学事件の場合のように、そのことしか頭にない「蟻地獄症候群」におちいることである。職場を離れたら職場のことを忘れること、そのためには職場でも家庭でもない趣味や研究グループのような第三の空間をもつこと。「いじめっ子」の悪口を言うのにもそのほうが安全な聞き手が見つかるであろう。
②状況を客観化し、ドラマ化してみること。イラストレーターの真鍋博氏は「いじめられ状況」を脚本か漫画として、頭の中に描いてみることをすすめている。そうすることで少しは相手の立場に立ってものごとを考える余裕が生まれることもある。自分でそれができない人のためにカウンセラーは「サイコドラマ(心理劇)」という方法を用いる。
③サイコドラマは、また、「猫とネズミ」状況となり、苦手な上役に向かって言うことも言えない場合に用いられる。これは「主張訓練法」といい、「いじめられた状況」を切り抜けるシミュレーションを用いるのである。
④敵の敵は味方、友だちの友だちは皆友だち――たとえ、周囲が皆よってたかって自分をいじめているというように見えても、余裕をもって見れば、相手のいじめに必ず対立は生じる。その時、一方に「自分は味方だ」と言ってやること。そして味方になればかつていじめられた旧怨は忘れること。
⑤たとえ自分がへまが多くて、周囲からつつかれ通しであっても、長いあいだには「ここで抗議すれば勝てる」という状況が一度は来る。この機会をのがさないことであり、この場合の秘訣は「余裕と観察」なのである。
【権力者の心理学】小田晋著/講談社α文庫 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
October 9, 2023 06:39:57 AM
コメント(0) | コメントを書く
[抜き書き] カテゴリの最新記事
|
|