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カテゴリ:体験談
「あさが来た」の誕生 左股関節の手術からさらに二十年の歳月が流れた。 83歳、無名にも等しい私にとって、奇跡としか言いようのないことが起こった。『小説 土佐堀川』が出版から27年を経て、第93作目となるNHKの連続テレビ小説に決まったのである。 夢ではないかと思った、しかし真実であった。 NHKドラマ制作のエグゼクティブ・プロデューサーS氏は、第93作朝ドラ制作のために、わざわざ東京から大阪NHKに転勤になったという。 朝ドラは東京NHKと大阪NHKとが交代で制作している。S氏は、朝ドラになりそうな何かいい本はないだろうかと図書館巡りをされました。しかし神戸や京都の図書館に行っても、満足できるような本はなかった。 さらに大阪の図書館も回ってみた。大坂の図書館にもやはりないように思われた。ただあと一軒だけ、中之島公会堂裏の府立図書館が残っていた。そこの本棚に『小説 土佐堀川』という大阪の川の名前の本を発見し、手にとって読んでみた。初代日本初の女性実業家、広岡浅子の生涯を書いた本であった。これはもしかしたらいいドラマになるかも知れない。 しかし心配はあった。主人公が生まれたのは嘉永2年(1849年)、つまり髷の時代である。これまでの朝ドラの髷ものは一つもない。そんな古い時代から始まる物語が、果たして朝ドラに向いているのか、どうか。そして視聴者がついて来てくれるのか、どうか。しかしS氏は決断をなさった。そのごお会いしたS氏は、謙虚で優しく、立派なお人柄であった。 2015年9月28日、朝ドラ「あさが来た」の第1回が放映された。 主演は波留さん、他の出演者は玉木宏さん、宮崎あおいさん、寺島しのぶさんなどの豪華キャストである。大河ドラマなみのキャストだと言った人もいる。 初めに秋元康氏作詞の「365日の紙飛行機」の主題歌が流れる。明るく希望に満ちた歌で、あっという間に人気が出て、やがておばあちゃんから幼児まで日本中で歌われるようになった。ドラマは、世紀一の視聴率をあげた。
ふるかわ・ちえこ 青森県生まれ。高校教諭を経て、執筆活動に入る。著書にNHK連続テレビ小説「あさが来た」の原案本『小説 土佐堀川』のほか、『きっと幸せの朝がくる 幸福とは負けないこと』など。日本文芸家協会員。
【古川智映子の負けない人生第15回】聖教新聞2022.8.28 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
January 18, 2024 05:03:58 PM
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