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カテゴリ:教学
竜の口の法難・下 捕縛された日蓮大聖人は、佐渡国の守護(国ごとに置かれ、軍事・行政を統括する職)である北条(大仏)宣時の邸宅に身柄を置かれました。文永8年(1271年)9月12日、50歳の時です。
八幡大菩薩を叱責 後に大聖人は、自らが置かれていた状況を次のように記されています。 「去ぬる文永八年九月十二日、すべて一分の科もなくして佐土国へ流罪せらる。外には遠流と聞こえしかども、内には頸を切ると定めぬ」(新290・全356)
夜中の連行。駆け付ける四条金吾
夜中になると、兵士たちが大聖人を連れ出します。この後の様子は「種々御振舞御書」に詳細に記されています。(新1230~1234・全912~915、参照)。若宮小路(現在の若宮大路。鎌倉の鶴岡八幡宮前から由比ヶ浜まで延びる大通り)に出たところで、大聖人は、「八幡大菩薩〈注〉に最後に申すべきことあり」と言って馬から降り、鶴岡八幡宮に向かって叱責されます。 「いったい、八幡大菩薩はまことの神であるのか……今、日蓮は日本第一の法華経の行者である。その上、自身に少しの過失もない」 八万代菩薩は源氏の氏神であり、鶴岡八幡宮は鎌倉の宗教的中心でした。その八幡大菩薩に対して、大聖人は、〝法華経の行者を守護すると誓ったではないか。どうして、この場に来ないのか!〟と叱責されたのですから、兵士たちは驚いたに違いありません。
頸の座 由比ヶ浜に出て御霊舎(現在の御霊神社)の前に差し掛かると、熊王という従者を遣わし、鎌倉の門下の中心的存在である四条金吾(頼基)を呼ばれます。 急を聞いた金吾は跣のまま、人とも4人ともいわれる兄弟と共に大聖人のもとに駆けつけました。 「今後、頸を斬られに向かいます。この数年間、願っていたことは、このことです。……日蓮は徳の少ない身と生まれて、父母への孝行も思うようにできませんでした。国の恩にお応えできる力もありません。『このたび、頸を法華経に差し上げ、その功徳を父母に回向しよう。その残りは弟子たちに分け与えることにしよう』と申し上げたのは、今この時のことです」
「これほどの悦びをわら(笑)えかし」
大聖人が語り掛けると、金吾たち兄弟は馬の口に取りついて供をし、腰越・竜の口(神奈川県鎌倉市腰越付近および藤沢市片瀬付近)まで行きました。 午前2時頃、処刑の場と思われる場所に着くと、兵士たちの動きが慌ただしくなります。その様子を見た金吾は、「ただ今が最期です」と涙を流しました。自分も切腹しようという緊迫感です。すると、大聖人の声が響きました。 「不かく(覚)のとのばら(殿原)かな。これほどの悦びをわら(笑)えかし(なんという不覚の方々か! これほどの喜びを笑いなさい!)」 その時です。 「江の島の方向から月のように光った物が、毬のような形をして、東南の方から西北の方へ、光を発しながら渡って」いきました。 頸を斬る役目の兵は目がくらんで倒れ、兵士たちは、おじけづいていました。 大聖人はお声をかけられます。「頸を斬るなら急いで斬るのがよかろう。夜が明けてしまえば見苦しいだろう」 しかし、誰も返事をする者はいませんでした。斬首は未遂に終わったのです。 この大難に際して、処刑まで大聖人に付き従おうとした四条金吾に対する御心情を、大聖人は、6年後の建治3年(1277年)に綴られています。 「なんといっても今でも忘れられないことは、私が首を切られようとした時、あなたがお供をしてくださり、馬の口にとりついて泣き悲しまれたことです。このことは、どのように生まれ変わっても忘れることはできません。 もし、あなたの罪が深くて地獄に生まれ変わるならば、仮に日蓮に対して釈迦仏がどれほど「仏になれ」と、お誘いになったとしても、受け入れることはありません。あなたと同じく地獄へ入るでしょう。 日蓮とあなたが共に地獄に入るなら、釈迦仏も法華経の地獄にこそいらっしゃるにちがいありません」(新1595・残1173、通解)(続く)
池田先生の講義から 大聖人は、一つ一つの大難をみずから乗り越えられることで、門下にその生き方を教えられたと拝したい。そして、その究極の生き方を、四条金吾に対して、まざまざと指南されたのが、辰の口の法難であったとも言える。弟子のためであり、未来のためです。 金吾もまた、迷いの心がなかった。師弟ともに仏果に至ったのです。竜の口が常寂光土になったのです。 (「池田大作全集」第32巻)
〈注〉八幡神。古くは農耕の神とされた。神仏習合の伝統から八幡大菩薩ともいう。鎌倉時代には源氏の氏神として深く尊崇され、武士全体の守護神とされた。
【関連御書】「下山御消息」、「種々御振舞御書」
[参考] 「池田大作全集」第32巻(「御書の世界〔上〕第八章」、「大白蓮華」2012年5月号「勝利の経典『御書』に学ぶ」(「種々御振舞御書」講義②)、小説「新・人間革命第11巻「躍進」
【日蓮大聖人 誓願と大慈悲の御生涯】大白蓮華2023年1月号 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
April 8, 2024 07:38:41 PM
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