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カテゴリ:心理学
人はグループになると、どんな心理が働くのか? 集団精神療法でも、人がグループになったとき、どんな心理が働くのかについていろいろと観察されてきました。 その代表が、ビオン(Wilfred Ruprecht Bion‘1897~1979年、インド生まれのイギリス人精神科医、精神分析家。集団精神療法の先駆者)という学者で、人間というのは、グループにされ、明確な課題を与えられると、その課題をみんなでやるというかたちで比較的グループがまとまるし、それを作業グループ(ワーキンググループ)と呼びました。 学校でも、進学校とかスポーツの名門校のように、みんなが向いている方向が一致している場合、社会でも、創生期に一丸となって同じ方向性に向かっている時などは、メンバーは非常に強い結束を見せるし、その分、成果も上げることは、みなさん、経験的によくご存じでしょう。
ところが、実質的なリーダーが不在になったり(今の日本のようですね)、リーダーが何を考えているかよく分からない、などといった状態になると、グループメンバーに不安心理が募り、グループがある一定のパターンの行動をとることが多くなると、ビオンは言っています。 すなわち、そうしたグループは、ある一定の不安が募らないよう、リーダーとは関係のない方向でまとまろうとする。もしくはリーダーを実力以上に過度に祭り上げてまとまろうとします。つまり、課題が明確ではないときほど、一人のカリスマに依存してしまう、みんなが言うことを聞いてしまうということが起こりやすいというのです。ビオンは、こうした状態のグループのことを依存グループと呼びました。
独裁者を創る以外に、依存グループがまとまる方法としては、仮想敵をつくるというものがあります。昔から、国をまとめるために仮想敵をつくるという方法は、ふつうに行われてきました。ナショナリズムの高揚にスポーツを使うのはその応用ですし、外ではなく内側に、つまり、集団内の誰かをスケープゴートにする方法も用いられてきました。学級内のいじめもその一種です。
グループの不健全なまとまり方の3つめは、つがいグループとかペアリングとよばれるもので、たとえば、我が社が次に出す新製品はすごそうだとか、これが開発されたらこの国もすごく伸びるぞといったぐあいに、何か希望があるとき、その希望でグループを盛り上がりまとまろうとする状態です。それ自体、悪いことではなさそうですが、問題は、往々にして、その希望に関する現実的な検討がなされないことにあります。
このように、集団心理というのは、えてして健全なかたちでは語られないものですが、これも上手に利用することができます。たとえば、グループのまとまりが悪いときは、めちゃくちゃ強いリーダーシップを発揮するとか、ライバル会社などを仮想的に、(打倒!○○)と言い出すといった方法が意外に功を奏したりするものです。 ともあれ、個の心理と集団の真理の両方を知り、観察し、応用していくことが、リーダーには強い味方となるでしょう。
【脳科学より心理学 21世紀を頭の良さを身につける技術】精神科医野田秀樹著/携書discovar お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
April 9, 2024 05:04:17 AM
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