安全性の保証と負担軽減を
安全性の保証と負担軽減を尾松 亮使用済燃料の残る自治体㊦メインヤンキー原発(米国メイン州)は1997年に完全閉鎖し、2005年に廃炉完了を認められた。しかし原発閉鎖後20年以上経過した今も、立地自治体ウィスカセット町には同原発の使用済燃料貯蔵施設が残る。日本でも同じように原発閉鎖後、さらには解体工事後の原発敷地内で使用済燃料の保管を求められる可能性がある。原発敷地内の「鑑識貯蔵施設」(燃料プールで冷却済みの使用済燃料を空冷保管する施設)が実質上、長期保管施設になってしまうという状況は、現実となりつつある。浜岡(静岡県)、伊方(愛媛県)等、各地の原発が敷地内での貯蔵容量を拡大する申請を出しており、廃炉が決定した福島第二原発でも敷地内乾燥式貯蔵が検討されている。資源エネルギー庁は敷地内乾式貯蔵について「あくまで一時的なものであり、使用済燃料が永遠にサイト内に貯蔵されるわけではありません」と述べている。しかし廃炉原発立地自治体にとって切実な問題は、「永遠」でないとして「どのくらいの期間」になるのか、ということである。広大な国土を持つ米国ですら最終処分場は決まらず、ウィスカセット町のように20年以上搬出先がないという状況もある。東海第2原発に併設された施設内にある乾式貯蔵用容器(茨城犬東海村、共同) 米国では超党派の上院議員グループが、廃炉原発立地自治体の負担軽減に向けた新法案「座礁原発法案」を提出した。同法案の規定では、連邦政府が国家基金をつくり、「保管する使用済燃料の量に応じた補償を対象自治体に払う。エネルギー省はこれらの自治体のために経済発展プロジェクトを推進する義務を負う。「座礁原発法案」に定められた立地自治体補償策は、あくまで「移行期措置」として位置付けられることも重要だ。「この新法案は使用済燃料の保管により悪影響を受ける自治体を支援する移行期の支援策です。政府は法に元図いて使用済燃料の最終処分政策を進めなければなりません」とスーザン・コリンズ上院議員(メイン州選出)は自身のサイトで述べている。「使用済燃料」という原子力政策の負の遺産を回収する責任は連邦政府にある、ということが前提である。そのうえで使用済燃料を抱える自治体の経済・財政支援策を政府に義務付けるのである。日本でも廃炉が決定した厳パル敷地内に燃料貯蔵施設が長期間残るという事態は生じうる。あくまで「移行期措置」としてうえで、立地自治体の安全性の保証と負担軽減策を国に求めていく必要がある。(廃炉制度研究会代表) 【廃炉の時代—課題と対策—④】聖教新聞2021.2.2