警蹕<ケイヒツ>について
警蹕って、一体何のこと・・・?と思われるかも知れませんが。今日は祭典中に神職(神主)が「オー」と声を発する「警蹕」についてお話したいと思います。祭事に参列されている方から、以前、「何の為に『お~』と声を出しているのか。きっと何か理由があってのことだろうが、何でか教えてくれないだろうか・・・」と聞かれたことがありました。警蹕とは、祭事では御扉(神様のいらっしゃるすぐ前の扉)の開閉時に、又、身近な祭事では地鎮祭などの降神・昇神の際などに神職が発する「オー」という声です。「あの「おー」という声を出すことで、神様を呼んでいるのか?」という質問も以前聞かれたことがあります。神様に発するというよりは、むしろ参列者に発せられているのです。「警蹕」の「警」には、「警戒する」という意味があり、「蹕」には行く人を止めるという意味があります。もともと「警蹕」とは、天皇のお出ましや貴人の通行の際、人々が不敬の行為をしないようにと先払いが声をかけて注意をし、警戒するというのが本来の意味です。天皇の出御の際や、天皇のもとに御膳を運ぶ時、また貴人の通行の際などに「おお」「しし」「おし」「おしおし」などと言いながら、先払いするのです。「みさきばらい」「みさきおい」「けいひち」とも平安言葉では言われています。分かり易く、例えると、時代劇などで将軍や身分の高い人が通る際に「したにぃ、したに」などという掛け声をかけながら歩いている様子を見たことがありませんか?まさに、その「したにぃ、したに」の声かけが、神事の際の「お~」という声と同じ意味合いなのです。このことが神事においても、取り上げられ、警蹕の間には神職も参列者も頭を下げて敬礼するようになりました。「警蹕」の発声は一般的に「お」または「を」の音を長くのばすものとされています。