カテゴリ:小さい旅
南からやわらかい風が吹いていたから 結果はどうでもよかった メインセイルの照り返しを受けながら いつか見た陸に展示された船体を思い浮かべた シャープなボディにふさわしくない 人間魚雷のようなセンターバラスト とてつもなく長いマスト 塗装の渇いたかさついた船体 走りたいだろうね きっと小さな波の上を滑空するだろう いつのまにか 大島を過ぎて 前を行く龍を左舷に見ながら ジャイブしようとしたらスキッパーの徳さんが呟いた 「夕陽だ」 クルーもぼんやり落ちて行く陽を眺めていた 缶ビールを徳さんに手渡し軽く乾杯した 「陽のあるうちに戻ろう」 「そうだな。よし、巻き返そう。ジャイブ!」 迅速にクルーが動いて 艇はゆっくり白い軌跡で海面に生き生きと円弧を描いた ヒールしながら 滑るように滑空する艇の白い船体が 夕陽に反射して一瞬紅く染まった お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Sep 5, 2006 10:44:31 AM
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