テーマ:旅するシーカヤック(153)
カテゴリ:あるく、みる、きく
金曜日は有給休暇。 今日は、前から楽しみにしていた、お気に入りの『生名島』をベースにしての『しまなみキャンプツーリング』
10時過ぎ。 いつもの浜に到着。 数ヶ月振りとなる生名島。 残念ながら曇り空だが、今夜からは雨が降るとの予報なので、今日は漕げる天気で良かったなあ。 *** 造船所にて *** カヤックに乗り込み、まずは岩城島の北端を目指して漕ぎ進む。 ここには造船所があるのだが、最近の船舶需要の高まりで景気が好いらしく、いつ行っても新しい船が次から次へと造られている。 今回も、ほぼ完成間近とおぼしき新しい船が2隻岸壁に舫われており、あまり近づき過ぎないように、バウを右に振った。 見上げるほどの大きな船。 船上では、何人かの人たちが打ち合わせをしているようだが、その内の一人の人が大きく手を振っている。 うん、危ないからあまり寄るなということだろうな。 わかってます。 更にバウを右に振る。 すると、その人はますます手の振りを大きくし、何か叫んでいる。 え、離れろって事じゃあないのか。 *** 方向を変えて、船に近づくと、遥か上におられるその方から話しかけられた。 『おーい、どっからきた?』 『出たのは生名島からです』 『生名の人間か?』 『いいえ、今日は呉から来たんですよ』 どうやら、シーカヤックが珍しくて、呼び止められたようだ。 船の上と、私が居る海の上とでは、おそらく2、30メートル位は離れているので、大きな声でのやりとりとなる。 『大学生か?』 ・・・、そうだよなあ。 平日の昼間、しかも寒い冬にカヌーを漕いで遊んでいるなんて、40代半ばの真っ当な会社員のすることじゃあないよな。 『会社員です。 今日は、有給休暇を取って遊びにきたんです』 すると、おじさんたちは苦笑い。 *** 『どこまで行くんか』 『今日は、岩城島を一周しようと思ってます』 『レースかなんかの練習?』 『いやいや、漕いで遊ぶだけですよ』 『・・・』 どうも、釣りをするでもなく、レースの練習でもなく、ただ単にシーカヤックを漕いで遊ぶというのは理解しがたい様子。 『この船は、もう完成ですか?』と私。 すると、『そうそう。 もう年明けには出航じゃ』 『そうですか。 いい船ですねえ』 『邪魔したな。 そんな小さい船じゃけえ、大きな船に轢かれんように気をつけて行けえよ。 じゃあの』 『はーい、ありがとうございます』 *** 舵帆 *** そこからは、岩城島の西岸にそって南下していく。 この前の瀬戸内カヤック横断隊の時には、強烈な向かい風で泣かされた所だが、今日は若干の追い潮で風もなく、順調に漕ぎ進む。 漕いでいると、汗が噴き出してくるほどだ。 しばらく行くと、数隻の漁船が見えてきた。 そうだ、今日は『あのこと』を漁師さんに聞いてみよう。 一艘の小さな漁船に近づき、『こんにちは。 ちょっと聞いてみるんですけど、この後ろの小さい帆は、何のためにあるんですか?』 そう、漁船の後ろにある小さい帆。 この謎を解きたかったのである。 この帆について調べたいと思ったきっかけは、瀬戸内カヤック横断隊で漕いでいるとき、ユージさんから、『あの小さい帆は何のためにあるんか?』と聞かれたこと。 後ろに小さな帆を張った漁船の姿は昔から見慣れているので、これまで何の疑問も持たなかったが、言われてみると、確かに??? 『あるく、みる、きく_旅するシーカヤック』を実践するフィールドワーカーとしては、これは絶対に調べねばならぬ! *** 『ちょっと聞いてみるんですけど、この後ろの小さい帆は、何のためにあるんですか?』 『これか? これは、舳先を風上に向けておくための帆じゃ』 『あー、なるほど』 『潮の流れも見ながらこの帆を調節して、船が風上を向くようにしとるんよ。 じゃけえ、『舵帆』いうて呼ばれとる。 人によっちゃあ、舵は上げてこの帆を舵代わりにして走る人も居る』 これで謎が解けた。 船を停めて漁をしているときに、横風を受けないようにするための帆であった。 そう、シーアンカーのようなものだ。 スッキリした! *** 蛸と漕ぐ *** 『ところで、何が釣れるんですか』 すると、『イカやタコ。 今は、蛸を釣りよるんじゃ』 『どう、食べるか? 一匹やろうか?』 『ええんですか?』 『ええよ、小さいけどの』 船の生け簀から網ですくわれたのは、大きな蛸。 『でかいですね! 一人なんで、小さいのでええですけど』 『そうか。 じゃあこれ』 『袋もなにも無いんですけど』 『おお、じゃあ絞めといてやろう』というと、細長い針金のようなものを蛸に突き刺し、『これで大丈夫よ』 『じゃあ、いただきます』といって、スプレースカートを開け、漁師さんにまだ足が動いている蛸を放り込んでいただいた。 『ほんまに、ありがとうございます。 今日はキャンプなんで、夜の楽しみができました』 『足を、このまま火で炙って食べてみ。 おいしいで』 『じゃあ、失礼します。 本当にありがとうございました』 コックピットに、まだ生きている大きな蛸を入れたまま、お昼ご飯を食べる予定の『岩城島』へと向けて漕ぎだした。 ああ、なんというすばらしい休日なのだろう! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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