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ふらりかずたま ひとり言 

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2011年08月09日
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カテゴリ:旅行・山関係
群馬県六合村(合併により中之条町六合地区)の南端に赤岩という集落があります。
草津からの帰り道に当たるのですが、時間がなくていつも素通り。今回やっと訪問することができました。

関東でもあまり知られていない小さな集落ですが、「富岡製糸場と絹産業遺産群」として世界遺産国内暫定リストに登録されているのです。幕末の開港後、茶と絹が日本の重要な輸出品となります。特に生糸は「世界の工場」といわれたイギリスに向けて大量に輸出され、明治政府の富国強兵策を推進する立役者となりました。

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製糸産業の近代化を進めた富岡製糸場(当時の錦絵)

政府は、江戸時代から養蚕・製糸・絹織物が盛んであった群馬県に富岡製糸場を建設、これを官営模範工場として、大規模な器械製糸産業育成の拠点としました。全国から集められた士族や豪農の娘たちが富岡で技術を習得し、各地にその技術を伝播させていったといいます。

大正から昭和にかけて民営製糸工場が主流になるなかで、「ああ、野麦峠」「女工哀史」で描かれた女工さんに対する非人間的な扱いが広がっていきました。募集時の誘拐に始まり、1日12時間労働、低賃金、不衛生な宿舎…「蟹工船」にも匹敵する奴隷工場で年端もいかない娘たちが働かされ、弊履のように使い捨てられていったのです。

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山間に広がる養蚕の里・六合村赤岩集落のジオラマ(ふれあいん家所蔵)

群馬でも秩父でも養蚕業が盛んになり一時は活況を呈しますが、明治中頃になると、一つには生糸が工場~輸出に集中し、大掛かりな買占めが横行。地場の製糸・織物産業が生糸不足に陥ります。また、明治政府のデフレ政策のため生糸価格が大暴落しました。これらによって養蚕・製糸・織物に携わる農家は困窮を極めます。そうした事情と自由民権運動が結びつき、群馬事件・秩父事件など農民蜂起が各地で起こったのです。

絹にまつわる歴史は、近代日本建設に貢献した光の部分と、女工や農民に塗炭の苦しみを与えた影の部分を持っています。現在展開されている「世界遺産登録」推進活動は、どうもプラス面だけを前面に押し出し、マイナス面を覆い隠している気がします。

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伝統を感じさせる赤岩の建物群

それは脇に置いておくことにして、赤岩地区に残る養蚕農家の佇まいを見て回ることにしましょう。ちなみに、赤岩集落は「重要伝統的建造物保存地域」の国指定も受けています。

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独特な構造を持つ養蚕農家が保存され、伝統を感じさせる静かな町並みが印象的。また、「蚕ん家(かいこんち)」「土室ん家(どむろんち)」など、養蚕作業や製糸作業の実演・資料展示館も設置されていました。

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木造3階建の養蚕農家。梁を出っ張らせた2・3階ベランダ。廂のせり出しも大きい

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写真上:蚕の共同飼育所「土室ん家」。写真下:楠の葉に繭を作る天蚕と緑の糸

感性の低い私たちには、建て替え・増改築が目につき、伝統的建造物としての保存状態があまり良くないように見えます。地元ではさまざまな活動が進んでいるようですが、同じ指定を受けている他の地域(例えば函館や川越、大内宿、白川郷など)が巨大観光地化するのに対し、山間の養蚕農家群という特徴を生かせればと思います。

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写真上:集落内の道祖神。写真下:毘沙門堂。このほか神社、観音堂など多くの祠が大切に祀られている

この集落は幕末の蘭学者・高野長英が隠れ住んだ歴史も持っています。
老中・水野忠邦と腹心の鳥居耀蔵が引き起こした蘭学者への言論弾圧事件「蛮社の獄」で、渡辺崋山らとともに高野長英も獄につながれます。終身刑の判決を受けた長英は伝馬町の牢屋敷から脱獄。硝酸で顔を焼いてまで逃亡を続けた高野長英が、赤岩集落に辿りつき、数か月のあいだ湯本家に匿われていました。
今回内部を見学することはできませんでしたが、長英の部屋は当時のまま保存されているとのことです。

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珍しい土蔵風3階建の湯本家。この2階が高野長英の部屋

集落のはずれにある水車小屋と高灯篭。その隣には観光案内所「ふれあいん家(ふれあいんち)」があり、別棟の「赤岩ん家(あかいわんち)」は食堂と物産販売所。素朴な冷やしぶっかけそばがとてもおいしかった。

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私たちの脇で、その店の坊やがそろばん練習をしはじめました。忙しそうなお母さんに代わって私が掛け算問題の添削。久しぶりにそろばんの感触を楽しみました。そのせいでもないでしょうが写真撮影をすっかり忘れていました。

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右奥が「ふれあいん家」。左が食事処「赤岩ん家」(赤岩ウェブから拝借)

上州日記あと1回、お付き合いください。





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最終更新日  2011年08月10日 00時26分34秒
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Re:世界遺産めざす絹の里へ (08/09)   iwana4510 さん
富岡製糸は教科書にも載っているほど有名で、長野に行くときに長野自動車道にある富製糸の案内板を見るたびに、行ってみなくては、といつも思いあなが、素通りしています。 (2011年08月10日 16時03分22秒)

Re:世界遺産めざす絹の里へ (08/09)   ふろう人 さん
突然お邪魔します。紀州しいたけさんからお伺いしました。
白根山のコマクサ堪能させてもらいました。
すごい群生ですね。
私も登ったこと有りますが季節が違ったのか記憶がないのです。 (2011年08月11日 05時06分16秒)

Re:世界遺産めざす絹の里へ (08/09)   紀州しいたけ さん
おはようございます。

歴史ある建造物は大事に保存して欲しいですね。世界遺産登録
をめざしているのですね。
木造3階建ての家は此方ではあまり見かけませんが、その土地で育った木材を柱や梁に使用して建築されているのでしょうね。
厳しい風雪に耐えているのも伝統ある建築方式が伝承されている証でしょうか。
(2011年08月11日 09時38分03秒)

Re:世界遺産めざす絹の里へ (08/09)   ハッピィベア さん
赤岩ですか。。。。知らなかったです。
養蚕農家は、独特の建物なんですね^^ (2011年08月11日 21時20分26秒)

Re:世界遺産めざす絹の里へ (08/09)   blackberry2 さん
光と影、両方を生かして上手い具合に保存できるといいですね(*^^)v(家々は本当に現代の田舎っぽい印象です)

そろばんの添削、ご苦労さまでした(笑)写真はまた撮れるけど、その子とは一期一会かもしれないわけで・・・
(2011年08月12日 23時18分29秒)


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