増大する家庭のCO2排出量
「北海道の家づくりマガジンリプラン」VOL. 69 掲載増大する家庭のCO2排出量 地球温暖化防止のための京都議定書は、日本の温室効果ガス(CO2)の排出量について、目標達成期間(08~12年)の平均値で、90年比で6%削減することを義務付けています。ところが、03年度の排出量は逆に、90年よりも8%増えています。 図1の部門別排出量を見ますと、特に家庭の排出量が年々増え、03年度は90年比の28.9%も増大しています。目標達成が危惧される深刻な事態です。 家庭のCO2排出量の詳細な内訳は分かりませんが、建設から最終処分までの「住宅一生」の排出量と家庭生活に伴う排出量に大別できると思います。図2は、建築関連のCO2排出量の内訳です。 住宅は建設からメンテナンスを経て解体されます。それから、材料別に分離・分別され、リサイクルあるいは最終処分されて、その一生を終え、建て替えられます。解体と最終処分に伴うCO2排出量を図2からうかがい知ることはできませんが、石油化学物質を複合した材料やさまざまな家電製品を組み込んだ住宅ほど、解体と最終処分に多大なエネルギーを必要とし、環境負荷が大きくなります。 家庭生活に伴って排出されるCO2は、暖房、冷房、給湯、家電、照明、ガスなどに分けられます。その詳細な内訳と推移はともかく、昨年度の北海道電力の販売電力量は前年同期比の2.2%増で、家庭用も1.3%増となっています。 ここ数年、住宅の建築戸数は減少していますから、建設と解体に伴うCO2排出量も減少していると思われます。そうしますと、家庭のCO2排出量が増大する最大の要因は、家庭生活におけるエネルギー消費にあり、年々増える家電製品にあるとするのが自然です。これでは、高気密・高断熱で冷暖房の灯油消費量が減っても、何もなりません。 現在のような石油化学物質と電力に依存した住建築では、家庭におけるCO2排出量の削減と建築廃材による地球環境負荷低減はできません。自然素材と自然エネルギーをベースにした住建築が求められる所以です。水は大切な自然エネルギー 住まいと暮らしに応用する自然エネルギーは、太陽熱と太陽光、風力、水とその潜熱、地熱、バイオマスなどで、利用の仕方はさまざまです。エネルギー転換して電力として利用できるのは、水力、風力、太陽光、バイオマスですが、北海道は風力資源が最も豊かな地域だと言われています。 また、再生可能な唯一の燃料は薪や炭ですが、現在の高気密住宅では給排気計画を慎重に考えなければ一酸化炭素中毒の危険性があり、特に主暖房としては適していないと思います。 別の機会にご紹介したいと思いますが、私のセラミック住宅では、一部地中熱を利用しています。深さ2メートル余りの地中で熱交換した外気を床下に導入し、暖炉の燃焼空気にしているだけですが、それでも床下温度は10℃以下になりません。ただ、地中熱は地下水が熱源になっていますから、厳密には水エネルギーの利用です。水は最も蓄熱容量の大きい物質であり、毛細管現象で自由に移動しますから、地中では熱媒体でもあります。 さらに水には、液体、気体、固体の3つの状態があり、それぞれの性質と潜熱が違います。近代文明は、この水の性質を利用した技術、蒸気機関の発明から生まれたといっても過言ではありません。 ところが、建築の世界では水は悪者、邪魔者扱いです。水と対決し、排除するような技術思想からは、水の性質とエネルギーを利用する新たな建築技術は生まれません。水と共生する建築を可能とするのみならず、自然素材と自然エネルギーの活用を促進し、「住宅系」の地球環境負荷を低減するのが調湿材のその応用なのです。「リプラン」は札促社より発行されている地域住宅雑誌です。(3月25日・6月25日・9月25日・12月20日発売)