カテゴリ:リワーク
<2.就労にむけた多様なトレーニング等(就労準備・訓練>
ここからは効果的に内定を取得するための訓練・行動等について解説していきたいと思います。リワークが必要となった主原因の内容によって、トレーニング方法は異なる部分が出てきます。理想を言えば、対象者一人ひとりに応じてカスタマイズした支援をすることが最適な支援といえます。ただし実際の現場では、必要な時間・財源・マンパワー等はいずれも不足することでしょう。ですので、講義・訓練内容をいかに効果的かつ体系的な内容にできるか? 対象者自身の力・意志を引き出せるか? 対象者のセルフワーク割合をいかに増やせるか? がキーポイントとなります。 しかし、対象者には「スキル」と「知識」がありません。セルフワークに至るまでの受容・教育・指導・カウンセリング等が不可欠です。野球少年に例えると、未経験で入部して、最初から素振りを効果的に出来る子は一人もいません。効果的な指導が行われてはじめて、効果的に素振り(セルフワーク)できるわけです。 一方対象者側にも、自分が何を不足していて、何を身に付けたいという動機、自己観察力、やる気(主体性)を持つことが望ましいといえます。カウンセリングは本人の意思決定の尊重・能力向上などを支援しますが、本人に全く意志・動機がないケースでの支援は、効果はあまり望めません。それが現場の現実だと思います。それを引き出すための効果的な働きかけを行うことがトレーナーには求められます。 つまり、支援側は対象者に効果的な教育・指導支援を行うことが求められます。その過程で自主性育成も含めてセルフワークの部分を拡大させるように働きかけます。一方支援を受ける対象者の方にも、不完全・不十分でよいので問題を改善するための意識があることが望まれます。 【日常生活を規則正しく送る訓練】 これは対象者の時間管理を容易にする基礎訓練です。離職期間が長い、罹患の影響等で、生活リズムが崩れている対象者は多くいます。 決まった時間帯に起床、摂食、帰宅、就寝するという基礎面を鍛えます。日内時計は起床時間と日光を浴びる量でリセットされるので、本人、トレーナー、本人の身近な家族等が連携して起床習慣の形成を最重要にします。 施設まで通うことは、時間管理だけでなく、体力も相当使う作業になります。日常生活を規則正しく行うリズムで施設にとりあえず通うという課題は、相当なメリットを有しています。本当に馬鹿にできません。支援側はその努力に対して対象者が ☆何かしらの快楽・嬉しさ・安心を感じられるように支援することが大切でしょう。 【体力づくり】※マイペースでセルフワークを導入しやすい面あり 基礎体力の向上は、対象者の生活の質を大幅に向上させ、やる気も向上させます。運動がもたらず脳内物質・ホルモンの分泌が原因と言えますが、効果は絶大です。 朝・晩のストレッチは体調のコンディションを上げ、怪我等のリスクを低減し、朝は目覚めさせる効果、晩は入眠しやすくする効果があります。また呼吸法を併せて指導すれば、自律神経調整訓練、副交感神経優位訓練の効果も期待できます。 筋肉トレーニングはモチベーションの向上、免疫増大、セルフイメージの向上に効果があります。本人の体力を正確に把握しながら、超回復理論(適切に筋肉を休めること)に則った筋トレをすることが大切です。筋トレの負荷を軽めにして、毎日継続できることに対する自信を養う訓練に位置づけることもできます。 持久力訓練は職場で求められる体力に一番近い体力が養われるので体力づくり上では最も重要といえます。最も逃げ出したくなるトレーニングでもあるので、楽しさ、他人との交流をしながら、ごほうびを用意しておく(外発的動機付け)などを工夫することが大切になります。自然と運動自体が快楽に感じてくる段階になれば、大幅に内定獲得に近づいたといえるでしょう。 【コミュニケーション訓練】 理論と実践の双方を支援することが重要となります。メラビアン学説をはじめとするコミュニケーションについてのノウハウ、効果や必要性を対象者に講義すること。それを実際のロールプレイングで面接突破レベルまで高めるところまでが支援範囲となりでしょう。とはいえ殆どの対象者にとって、ロールプレイングは「とてもやれない」ものと認識することが多いでしょう。施設に通う中で自然なケースにおいて少しずつできるようにする側面は絶対に必要となることでしょう。またゲーム性の高い実戦訓練の導入も非常に有効です。 【ビジネス基本スキルトレーニング】 講義と実践の双方を実施するようにして、次の項目の指導・訓練を行うことが大切です。お辞儀。挨拶。身だしなみ(ネクタイ結び等)。電話対応。接客対応。名刺の交換。メモをとる。報告・連絡・相談。短文作成(報告用)。PC操作。タブレット操作。この辺は一通りやっておきたいものです。優秀である必要は無く、一般的に社会で通用できる程度でも十分と個人的には思います。ルーティーン内容については次第にセルフワークできる範囲が多くなります。 【自分の精神的弱点補強トレーニング】 これはカスタマイズ性が非常に大切なトレーニングとなります。あらかじめ対象者の個人的な精神的弱点の特徴・詳細を把握しておきます。その上で解消に効果的な講義・カウンセリング・ワークを実施していきます。代表例をあげるとうつ病に効果的なのは認知行動療法というわけです。 【カウンセリング】 これには主に、対象者のコンディションを底上げする優しい支援、対象者の精神的弱点の克己支援、問題点の明確化や問題解決的プロセスとなるキャリアカウンセリング、等が有効となるように感じられます。実施できるトレーナーは限られてくるかもしれません。来談者中心療法、認知行動療法、交流分析、対人関係療法等が実績もある療法に感じられます。また家族全体が問題を抱えている場合には家族療法的に家族でカウンセリングを受けてもらうことも有効です。ただし、対象者の親こそが最も困難な相手になりうることを肝に銘じておかないといけません。 【受診継続】 これは精神障害、発達障害等を持つ対象者には非常に重要です。相当に症状が軽い場合をのぞき、医療機関へのトレーナー同行が重要です。また服薬指示を対象者が遵守しているか、具体的に錠剤の数のカウント等を行って、服薬管理支援を行う必要性もあります。数があっていても対象者が廃棄したりODする場合もありえるので、予め対象者が服薬管理できない場合に起き得る症状を予備知識でいれておくことが重要です。マンパワーの不足等で困難な場合でも最低☆対象者がいつもとちがっていないか? には非常に敏感になっておくことが必要でしょう。 【自分のキャリア(人生)の棚卸し作業】 これには2つの意味があります。1つは対象者の精神的弱さを解消・緩和するための自己理解を深めるという意味。もうひとつは自分の興味・自信・強み・経験・スキル等を把握して、応募書類作成及び面接に活用していく就職活動スキル向上という意味です。精神疾患等を抱えている場合は、必ず指導者と同席して行うようにした方が無難です。自己分析内容は同じ内容を何度も行いながら、次第に本音・本質に近づいたり、詳細かつ現実的な内容へとブラッシュアップされていく傾向があります。ブラッシュアップの後半は、対象者が自力で行うことも可能になってきます。ただし、医師・精神保健福祉士等への報告と許可が重要となります。 【ターゲットの選定・仕事理解】 これは対象者がセルフワークしやすいプログラムとなり得ます。最初は求人票・求人情報の概要・意味等を講義します。そして模擬ターゲットを選ぶ訓練を行います。その後は求人情報の注目ポイントを指導し、応募書類・面接時の訴求行動にどう活用するかを指導していきます。最重要点は☆応募書類はデーター上の自分PRであり、面接は情報通りの自分である証明作業であることを徹底的に実践する点です。 【応募書類作成講義・添削】 自己理解と仕事理解を双方できるようになってきた対象者に対し、最初は架空のモデル企業でよいので、応募書類の作成方法を指導・添削していきます。しつこいようですが、☆応募書類は自分の能力等のデータ資料となる本質を理解してもらい、具体的ハウツーを講義していくことが大切です。※後半になると対象者が自力で作成した課題を、添削・指導するだけの状態にもっていけます。 【面接ロールプレイング】 要は面接の練習になります。面接には基礎的コミュニケーション力が必要不可欠ですが、その為に既にコミュニケーション訓練を実施しておくわけです。そして応募書類で相手に訴求した内容を証明するためのコミュニケーション作業であることを認識して、実践を挟みながらスキルアップしていきます。 大切なのは、面接の場における表現方法だけでなく、その源泉になる自己理解内容のブラッシュアップを連動させることです。自己理解内容を充実させることができれば、相手にどんな変化球的質問をされたとしても、表現が多少下手になることはあっても、伝える内容に大きな間違いが起こることはまずなくなります。それが面接の場における自信獲得に圧倒的な効果を生みます。 【リハビリトレーニング】 長期間に渡るリワーク期間を確保できる場合、リハビリ期間としてアルバイト期間を設けることは有力な選択肢の1つとなります。アルバイト期間で各種能力を取り戻したり、育成したりしつつ、総合的なコンディションを上げることが無理なく可能です。さらにアルバイトへの応募作業自体が、正社員等を目指す場合の実戦ロールプレイングになってくれます。 注意点としては対象者とのゴール設定を行っておき、アルバイトを免罪符にして逃げはじめることを阻止する必要はあります。アクションシートや目標設定シートを期限を設けて、対象者の意思を反映させて作成しておき、実施時期の多少の前後はあっても実現に向けて支援することが重要です。ただし客観的に認知のゆがみの修正が不十分だったり、体調の問題が残存したりと、☆逃げではなく現実的に正社員就労が難しい状況であれば、逆に焦る対象者に現実を受容してもらう優しい支援が必要ともなってきます。 【人と交流する楽しさを思い出す】 これはトレーナーと対象者間の信頼関係もさることながら、対象者同士で「戦友」関係を作れると、大いに支援的状況を作り出すことができます。いわばピアカウンセリング・患者会での支援機能の本質部分を、リワーク・就労支援の現場に応用するわけです。☆あのグループの子達は、みんな立派に巣立っていったわね という現象が散見できるのも、その効果の為です。 ただし運任せにするのは支援者としてのプロフェッショナルには反するので、いかにそうした雰囲気を作れるかがトレーナー個々のリーダーシップが問われていきます。実際はそのトレーナーたちを管理する管理者のリーダーシップも対象者の目には見えにくいのですが、非常に重要です。 【※面接同行】 対象者が障害者枠等であれば、応募先から許可がある限りですが、是非とも行いたい支援です。訓練ではないのですが、補足として記述しました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021.04.26 20:53:28
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