カテゴリ:読書記録
著者【 井上真偽 】の『 聖女の毒杯 』を読み終えたので、記録も兼ねて紹介します。
まず、第51回メフィスト賞受賞作『 恋と禁忌の述語論理 』では、ある三つの事件を、三人の個性的すぎる名探偵が、それぞれ解決した後で、それらの推理を、天才数理論理学者( アラサー美女 )が論理だけで検証し、秘められた真相を暴いていくというような、 なんとも斬新な、凄まじい作品で、雑学や小ネタも豊富であり、数理論理学の入門書にしても面白い上、短編集のようなものかと思いきや、最終的には、ちゃんと全てが繋がって、ミステリーとしても驚嘆させられましたが、
その中にも登場した、ひときわ異彩を放つ、三つ目の事件を担当した探偵【 上苙 丞 】を中心とする作品( シリーズ )が、この【 その可能性はすでに考えた 】です。 今回、紹介する『 聖女の聖杯 』は、前作の『 その可能性はすでに考えた 』の【 続編 】という感じであり、 前述した【 デビュー作 】の時から圧倒的な存在感を示していた【 ヤオ・フーリン 】という女性は勿論、前作で出てきた登場人物も、続々と現れますので、こちらを先に紹介しておきましょう。 というか、数々のミステリーランキングにノミネートされ、最早【 本格ミステリ 】を語る上で、絶対に欠かせない作品として、確固たる地位を築いているので、未読の方には、是非ともオススメせざるを得ませんね。
何がそんなに凄いのかというと、その【 上苙 丞 】という探偵は、類まれなる才能を発揮して、事件の【 真相 】を暴くのではなく、その事件が人為的なものではない【 奇蹟 】だということを、論理的に【 証明 】しようとするのですが、 まぁ、初めて聞いた人には、一体、何を言っているのか、よく分からないと思います。 ただ、ミステリーとして重要なのは、その【 証明 】の過程が、非常に興味深く、面白いという点であり、ある一つの事件について、色んな人が推理をし、多種多様な【 仮説 】を立ててきて、 こういう【 可能性 】があるから【 奇蹟 】じゃないかもしれないじゃないか!と、その探偵に説明すると、なんと、彼は「 その可能性はすでに考えた 」と宣言し、事件に関する情報を元にして、その【 可能性 】を論理的に否定してしまうのです! そうやって、人知の及ぶあらゆる【 可能性 】を排除していき、場合分けされた【 可能性 】の全てを悉く否定することができれば、その事件は人為的なものではない【 奇蹟 】だ、ということになるわけですね。 しかも、そんな数々の【 論理バトル 】が繰り広げられるだけでなく、最終的に、それらは驚異的な思惑に収束していき、ある意味、理想的な結末を迎えるのですが、これには、誰もが度肝を抜かれたことでしょう。
そして、前作が、既に【 奇蹟の証明 】を終えたと公言する探偵に、それを覆す【 可能性 】を秘めた【 仮説 】を持った【 挑戦者 】が次々と現れる、という構造の作品だったとすると、今回の『 聖女の毒杯 』は、多少、趣が異なります。 というのも、物語の冒頭では、当の探偵は海外にいるとかで、なかなか出てこない上、中盤で、ふと衝撃の事実が明かされたり、場面が変わって見方を変えると、同じ事件でも全く異なる様相を呈してきたりと、 その、先の読めない展開に、個人的には、いっそ推理を忘れてしまうほど、心踊らされました。 叙述トリックとかではないのですが、その類のものに完全に引っかかった時にも似た感動を味わえるはずです。 その上で、一つの事件に対して、様々な【 仮説 】が打ち出され、しかも、それを更に論理的に否定していく【 奇蹟の証明 】も健在ですし、意外な伏線の、その鮮やかな回収は、相も変わらず、読んでいて心地よいので、是非、オススメします。 ついでに、論理的思考力も鍛えられるかもしれませんよ? ( ホーム )http://plaza.rakuten.co.jp/kiagorod/ ( 実直に【 人気ブログランキング 】に参加しています。) 日記・雑談 ブログランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.07.09 13:07:52
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