カテゴリ:絵画・美術展
彼のカレンダーの5月の絵として選ばれていたのが、 この「アペレスの誹謗」(もしくは単に「誹謗」とも言う)でした。 初期ルネッサンスのもので、 フィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されています 紀元前4世紀のギリシャの画家アペレスの作品が参考になっており、 その寓意的擬人像が極めて特徴的です。 王は金のハイライトの入ったオリーブ色の長衣を身にまとい、「誹謗」を歓迎して手を差し出す。そして、王の驢馬の耳に対して「無知」と「猜疑」が何かを囁きかけている。 台座の前にはボロボロの暗褐色の上衣を着た「憎悪」がいて、王の目に向かって鋭く尖った爪のある手をつきだし、真実が見えないようにしている。 「憎悪」によって腕をつかまれている「誹謗」は美しい女性であり、純白の衣装に空色のマントを身につけている。彼女は左手には復讐に火を灯す松明を持ち、右手で無実の若者の髪をつかんで床の上を引きずっている。この若者は、なすすべもなく両手を合わせて祈るのみ。 「誹謗」の侍女は「欺瞞」と「背信」である。「欺瞞」は女主人の髪を結い、「背信」は女主人の肩と髪に花を飾ることで嘘を優美にとりつくろおうとしている。 喪服のような黒いマントを着た「悔悟」は彼らの後からのろのろとした足取りで続く老婆の姿で描かれ、最後にいる「真理」を振り返って見つめる。 そして、天を仰ぐ「真理」が真剣な面持ちで天の裁きを指し示す… カレンダーだと「真理」の部分が切れていましたが、 ある裁判が行われようとする様子を象徴的に描き上げたものであり、 均衡の取れた美しい構図の作品であると思います。 解説がないと分かりにくいのですが、 じっくりと鑑賞するほどに深読みできる絵でしょう。 2度も告発されたことのあるボッティチェリが 自身の体験を基に抗議したものとも考えられているそうです でも、そもそも謎に満ちた絵なので、 最終的な解釈は観る者に委ねられている…といったところでしょうか。 恣意的な裁判が真理と程遠いものであることを指し示すもの? 真実を見定めることが、感情によって阻まれてしまうという警告? もしくは真理が無力であることへの嘆き? それとも、天の裁きが下るから最後は真理が勝つということなのか? 結局のところ、裁判とは一体何なんでしょう? 誰が裁くのが最も適切なんでしょうか? …この絵を見ていると、こういった疑問が湧いてきたりします。 ――――― 裁判員制度に関する法律が出来たのが、平成16年5月28日 ちょうど3年たった節目として、 一枚の絵を取り上げてみましたm(_ _)m 悲観視しているわけではないけれど、 決して楽観視できる制度でもないような気がして… お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 29, 2007 02:30:34 AM
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