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本と映画と食事とあひる

2019.10.06
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カテゴリ:映画、ドラマ





 『人が人を愛することのどうしようもなさ』は

石井隆監督の映画。

でも、この映画『彼女がその名を知らない鳥たち』を今日観て、

一番に思い出したのが上記映画のタイトルでした。

原作は沼田まほかる。

『ユリゴコロ』、『9月が永遠に続けば』など

いわゆるイヤミスで知られる方。


出演は蒼井優、阿部サダヲ、竹野内豊、松坂桃李ほか。

豪華なんだか地味なんだか分からないキャスティングですが、

芸達者&適材適所の配置で見応えがありました。

というか、この映画、

途中まで救いようがないくらい嫌な登場人物ばかり出てきます。

感情移入を許さない、観客との距離が遠い内容。

なので俳優の演技や画面作りを堪能できなければ

観賞すら危うい作品。

監督は考え抜いてこのキャスティングにしたと思いますね。


《あらすじ》

 不平不満ばかり、些細なことで店員にいちゃもんを付ける女性

十和子。

彼女は家事も仕事もせず、狭い集合住宅で

だらだら生活しています。

その生活を支えているのは陣治。

建築現場で働く彼は

日焼けしてがさつな男性。

十和子は彼を心底、軽蔑していますが

生活はすべて陣治に任せきり。

掃除・食事は彼の担当。

それでも陣治は年の離れた十和子が可愛くてたまらないらしく、

好き勝手にさせています。

 十和子はデパートの時計売り場につけたクレームが元で

知り合った水島という男と交際を始めます。

彼は妻子持ち。

デパートの時計売場に勤めているだけあって小綺麗かつスマート。

十和子が8年前に交際していた黒崎に似ています。

彼も妻子持ち、端正な顔立ちで女性の扱いがうまい

派手な男性でした。

ひどい分かれ方をしたのに

彼を忘れられなかった十和子は水島にのめり込んでいきます。

ある時、ひょんなことから刑事が訪ねてきて

黒崎が5年前から失踪していると十和子に告げます。

時を同じくして水島の周囲で起きる事件の数々。

犯人は十和子を溺愛する陣治?

5年前に一体何が?

、、、、、、というのがあらすじです。



以下、恒例のネタバレを含みます。

まあ、勘のいい人はあらすじだけでもぴんと来るでしょうが

ご注意下さい。





****************************************







 『ちぎれた愛の殺人』、『すべて彼女のために』、
 
『ヴィオルヌの犯罪』、『薄氷の殺人』、


『人が人を愛することのどうしようもなさ』etc。

洋の東西を問わず、

同工異曲はいくらでもあります、はい。

男性が、一人の女性の為にどこまで尽くすか。

犯罪にまで手を染めるか。

石井隆の名美シリーズは殆どそうですし、

最近では東野圭吾『容疑者Xの献身』など

枚挙に暇がありません。

ここは特に新しくないです。

ただ、この作品の肝は

登場人物の、どうしようもない「駄目さ」

卑近さ、矮小さ。

客観的に見れば愚かでしようがないのに

胸に手を当てて考えると

誰にでも少しは思い当たることがありそうな

身につまされる感覚。

たいていの、この手の作品にある耽美的な要素が無いところです。

陶酔を許さない、ある種の厳しさ。

さすがイヤミスの代表作家、面目躍如。

今回、蒼井優って本当に演技上手いな、、、、と改めて思いました。

陣治役の阿部サダヲは舞台出身。こういう役が上手くて当たり前。

なんでもこなします。一緒に活動していたのがクドカンや松尾スズキですから。

蒼井優も子役とは言え舞台出身(キャリアの始まりが舞台)。

ただ、シェイクスピア劇にしても岩井俊二監督作品にしても

叙情的。観る人を引き込む、可愛く見せる女優さんだと思っていました。

今回は、、、、、もう、醜くて憎たらしい。

(これが中盤まで続きます。ファンにはちょいきつい)

イライラすること請け合い。

多分、気の短い人なら

「なんだ、この身の程知らずのバカ女!!!!!」って

思いますよ。はい。

松坂桃李も上手い。

水島という、安っぽい小物の役がしっかりはまっています。

女性をものとしか思わない外道 黒崎を演じた竹野内豊も

なかなかいい仕事しています。

さて、いろいろあって水島の自分勝手さに

気づいてしまった十和子は

公園で彼を襲ってしまいます。

血まみれになる十和子、そこへ陣治が割って入ります。

病院へ行こうともがく水島に陣治は

「警察に行くなら行け、でも刺したのは十和子ではない

俺だ!警察行くんならお前が十和子にした事をばらすぞ」と

叫びます。

フラッシュバックで十和子の記憶が甦ります。

 十和子は8年前、黒崎と別れるとき

殴る蹴るの暴行を受け、ひどい怪我を負いました。

離婚すると言う黒崎の言葉を信じて、

色々支えて来た十和子を捨てて金持ちの女性との再婚を決意。

実は黒崎の斡旋で十和子は

裕福な老人の慰み者になったことすらありました。

なんと黒崎はその老人の姪を伴侶に決めたのです。

それでも黒崎に惹かれていた十和子。

顔、肋骨、腕の骨を折られたのに、脅迫されたのに黒崎に未練がありました。

5年前、電話で呼び出されてのこのこ出かけてしまいます。

で、思い出話の後に切り出されたのが

また、老人の慰み者になってくれ―。

彼がお金を都合してくれるから、助けると思ってお願い。

衝撃を受けた十和子は咄嗟に黒崎を殺害。

その後、陣治に電話で助けを求めていたのです。

なんとか後始末をして十和子を家に連れ帰った陣治。

十和子はすやすや眠っています。

一人で犯罪の跡を消そうと必死な男。

そして、十和子はちょっと起きたときに血のついた衣服を洗う彼を見て

何をしているの?と問いかけます。

最愛の人に裏切られ、相手を殺害してしまった十和子は

ショックで記憶を失っている。

陣治はほっとして喜びます。

彼女の記憶がない、よかった

普通に暮らせる、、、と。

そして陣治は、いつ記憶が戻るか分からない十和子を見守りながら彼女を自由にさせていたのでした。

 すべてを思い出した十和子はどうしたらいいか途方に暮れます。

が、陣治はすべてを自分が背負っていくといい、

彼女が生き続けるよう説得します。

生きて子供を産んで欲しい、自分はきっと生まれ変わって

十和子のお腹に入るから、と。

そして身投げをしてしまいます。

出逢ってからの思い出が一気に駆け巡ります。

愚直に、一途に十和子に求愛した陣治、

大怪我を負い包帯を巻き、沈んでいた十和子を必死で笑わせようとする陣治。

十和子は最後に、彼の愛の重さを知ったのでした。


うーん、、、、、いないからこんな男性

という身も蓋もない感想は置いておくとして。

俳優はいい仕事をしていましたが、

なんというか十和子の人物像に魅力がなくって。。。

陣治がなぜ、そこまで彼女を愛したのか理解不可能。

若いから?可愛い外見だから?可哀想だから?

まあ、蒼井優なのでありかな?とは思いますが

原作の小説だけだったら納得出来るか疑問。

でも、そこを含めて

外道にほれ抜いていた十和子、

そんな十和子のために命をなげうつ陣治、

人が人を好きになることの理由のなさ、

理不尽さが濃縮していて

胸にキリを刺されるような作品に仕上がっていました。

観客を選ぶとは思いますが、

最近の邦画としては佳作。





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最終更新日  2019.10.07 08:30:07
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