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倶楽部貴船

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お菊人形 -11-



「なんで、山本のしゅうは、大西川に入っちゃいかんの? 
そんなきまり、聞いたことないよ!」
お菊は、上がりかけた土手をまた降りてきて、一人で男の子たちの前に立った。
「なんだ?こいつ」
「なまいきを言っとるな!」
お菊は、大きく息を吸って
「大西川は、みんなの川だら? 
なんで山本のしゅうばっかり、仲間はずれにするんな」
お菊のけんまくに、男の子達は一瞬、静かになったが、すぐにガヤガヤと話を始め、
「あんなあ、ずっと昔から、そういうきまりになっとるんな。
家に帰って、おかあちゃに聞いてみなよ」
体の大きい子は、肩をぐっと前に出してお菊の方をにらんだ。
「おかあちゃに聞いたけど、そんな事ないって言っとった。
みんなの川だって言っとった。
川東のしゅうは…川東のしゅうは、みんな、いじわるだ!!」
お菊は、お腹の底から声を出した。
耳がガンガンした。
のどが、ヒリヒリとくっつきそうで、あわててつばを飲み込んだ。
頭の中がかーんと割れそうだ。
「なんだと!お前な、小さいから、ここで遊んでた事もおこらなんでおったけど、オレ達に言いがかりをつけるんか?」
「川東のしゅうは、いじわるだ? とんでもネェ。
川東の学校へ来とるお前ら、山本のしゅうは、なんだよお。
どっちがいじが悪いか、考えてみろ!!」
お菊は、目をかっと開くと、
「大西川は、みんなの川だ。
川東の物でも山本の物でもないって、おかあちゃが言っとった。
川や山は、みんなの守り神だって。みんなで大事にするんだって!!」
お菊のけんまくに、男の子達は黙ってしまった
一年生のチビだと思っていたのに、早口でくってかかってくる様子は、真剣だった。

─11─


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