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キータンのひとりごと~昭和せつなく懐かしく

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キータン.

キータン.

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2007.01.25
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昔の家には煙突があった。台所や風呂では薪を使った。
薪を使うと煙が出る。煙を外に出すために煙突が必要だった。

煙突を、長く使っているとススかたまる。
ススがたまると煙の出が悪くなる。
ススを取り払う必要がある。

その時に、登場するのが、煙突掃除のおじさんだ。
夫婦とか兄弟でやっていた人が多かった。
そうふたり対になって作業する。

おやじさんが屋根に上って上から細く切った竹の先にブラシをつけたものを差し入れる。ゴシゴシと押すとドサッと下にススが落ちてくる。
下にいる人がそれを外に掻き出すのだ。

その作業はなかなか面白い。私達はみんなで並んで眺めた。
作業している人の顔が次第に真っ黒になってくる。
労働をしているなとひしひしと思った。

その煙突掃除屋さんがガスコンロや電気釜の登場で消えていった。
消えていったが、私達、地方にはまだ煙突があった。
父が兄が私が協力して煙突掃除をしなければならなくなる。

「さあ、やるか」
日曜日の昼下がり、父のひとことで兄と私は緊張する。
タオルでマスクをする。頭にもタオルを被る。完全防備だ。

運動神経の発達している兄が屋根に上がる。
「ヨシッ、ブラシを入れろ」
父の号令により兄がブラシのついた針金を入れる。

やがてドサッとすすが落ちてくる。ブラシが上下される。ススがまた落ちてくる。
それを台所と風呂の煙突で繰り返す。一時間ほど働いたろうか。父が号令をかける。
「ヨシッ終わりだ。お疲れさん」

父、兄、私、タオルを取る。目の縁が真っ黒だ。
私が父や兄を見て笑う。父も兄も私を見て笑う。みんなで笑っていると母の声がかかる。
「みんな、お風呂に入って顔をよく洗って下さいな」

水風呂に入ってすっきりする。母と妹がビールと粉末ジュースを持ってくる。
父は美味そうにビールを呑む。兄と私は粉末ジュースを飲んでいる。
それはささやかであるけれど、穏やかなしあわせなひとときだった。

文明が発達すると家族全員で働くことが少なくなったような気がする。
「便利になって消える幸せもある」ということを最近よく知らされる。

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Last updated  2007.01.25 07:37:23
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