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キータンのひとりごと~昭和せつなく懐かしく

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キータン.

キータン.

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2007.10.11
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私は駅へゆっくりと歩いていた。
電車の発車の時間まで十分な余裕があった。
デパートの前を通りかかった。

十時少し前だった。そう、開店前だ。
それなのに人だかりができていた。
ふふふ、私の好奇心がもたげてきた。

開店瞬間のデパート、どのようなことが起きるのだろう。
デパートの従業員、お客、みんな、どんな反応を見せるのだろう。
九時五十五分、開店まで五分あった。

正面の扉は開いていた。私は人混みを分けて中に入った。
お客達はペチャクチャ話しながら待っていた。

八階の催し物広場で「京都展」が開催されるようだ。
それへの一番乗りを目指すお客達もいるようだ。
お客達の顔は喜々としている。
大人が子供に戻っている。デパートは好奇心を満たしてくれる場所だ。

お客のはしゃぎ顔に反して、デパートの従業員の顔は無表情だ。
それも背筋を伸ばして静かに佇んでいる。
動かない。話さない。笑わない。

はしゃぐお客達、沈黙の従業員、ふふふ、面白い光景だ。

おお、エスカレーターが突然に動き始めた。
それに続いて、十時の開店のオルゴールが鳴った。

おおおおーおっ!従業員が微笑み始めた。
おおおおーおっ!従業員が頭を深く下げた。
おおおおーおっ!従業員が挨拶をし始めた。

「おはようございます。いらっしゃいませ」

「おはようございます。いらっしゃいませ」

あちらこちらの売場で挨拶の言葉が響き渡っていた。

おおおおーおっ!お客はそのような挨拶に関係なく
ガバーッと小走りにひたすら歩いていく。
挨拶する従業員、小走りのお客……ふふふふ。

このような光景が毎日あるのだろうな。

ふふふふ、おっと、電車の時間が迫ってきた。
ふふふふ、私は短い足を全速力にして駅に向かった。

何か凄い風景を見た気がしていた。
私の気持ちはなぜか満足していた。ああ。


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Last updated  2007.10.12 04:39:39
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