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テーマ:お勧めの本(7403)
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「大人の階段登る」とか「恋が愛に変わるとき」とか、人って日々成長するものだ。何か大きな起点があってオセロをひっくり返すようにパタリと一気に成長することもあれば、知らぬ間に少しずつ成長してある日振り返ってみれば、「ああ、私大人になったんだな」としみじみ感じ入ることもあるだろう。
さてさて、話は変わって最近めっきり寒くなってきました。寒くなってくると当然体が冷えることもしばしばです。体が冷えると当然お腹も冷えるわけであります。お腹が冷えれば、きゅるきゅる、ごろごろとお腹の調子が芳しくなくなるわけで。そうなると、突発的にトイレに駆け込む事態になることも多いかと思います。そうです、あれ辛いですよね~。あれ。腹痛?お腹下す?いえいえ、ぼかさず言えば下痢です。下痢、辛いですよね。 よく人の痛みは誰にも測れないといいますが、あの下痢時の腹の痛みは世に数ある肉体の痛みのなかでも最高に近いのではないかと個人的には思われます。ひどい時には痛さのあまり意識を失いそうになったことさえあります。それに下半身丸だしで便座に腰かけながら激痛に耐えなければならないという情けなさも加味されて 精神的にも痛さの度合いは最高潮に達するのではないでしょうか。しかも、この下痢とやらは最高に痛いし情けないのにも関わらず普通に生きていれば、誰もが一度は経験するであろうポピュラーな状況。そう、普通にいつ、誰にでも起こる現象なのです。 自分自身はもちろんのこと、大切な人々、家族や友達、またはペット、そして、そして好きな人や恋人にでさえ。 で、ここまで引っ張って一体なにが言いたいのかと申しますと、こういうことなのです。 「あなたは、好きな人や恋人の下痢は許せますか?」 下痢といっても好きな人や恋人が過去に下痢したとか、伝聞で耳にしたときは除いて下さい。ここでいう状況は好きな人や恋人と二人でいるときに突発的に相手が下痢に襲われた時として下さい。 「いやいや、自分の好きな人や恋人はおしっこもしないし」とか逆に「いやいや、下痢なんか全然オーケー。寧ろ興奮するくらいだ」といった極端な意見もここではふれないことにします。 さて、好きな人が下痢になったら? 私ももうアラサ―。ドモホルン○ンクルのCMなんかもやけに気になったりする年齢です。なので許すも許せないも恋人の下痢くらい、バッチ来い!てな感じで問題なく受け入れられます。もし二人でいるときに突発的に恋人が下痢になったとしても「大丈夫?」と心配100パーセントで気遣うことが出来ます。恋人を好きな気持ちに下痢はなんら影響を与えません。 でも思い起こしてみると、私は昔からこんな感じだったのだろうか?恋人や好きな人の下痢という状況を右から左へ流すようにすんなりと受け流すことができただろうか? 思い出すのは小学校の遠足のこと。 好きだったクラスメイトの男の子がバスに酔って吐いてしまったのだ。しかも私はその時風邪で遠足に参加していなかったのでそのことは後に人づてに聞いたのである。しかし、私はその話を聞き即効でその男の子を嫌いなった。 ゲロでさえこんなんなら、きっと下痢だったなら小学生の私は受け入れることなんて到底無理だろう。嫌いになるどころか口さえ利かなくなりそうだ。 酷過ぎるよー!!小学生の私! 自分だって乗り物酔いするくせに!お腹弱いくせに! 一体何様のつもりなんだ自分! 思い出すだけで昔の自分の薄情さにほとほと嫌気がさしてくる。それでも当時の私は好きな人の下痢を受け入れられなかっただろうと思う。ほとんど確信に近い感じでそう感じる。 さて、中学生の自分である。 思春期で中二病真っ只中で、夜更かししてポエムなぞをしたためていた当時の自分も好きな人の下痢を受け入れることは無理だっただろう。甘酸っぱい妄想の世界に生きていた中学生の私は好きな人と下痢という単語を並べることでさえ出来なかったのではないだろうか。 なのでもし好きな人が目の前でお腹を抱えてトイレに駆け込んで行ったら、二秒もかからずに嫌いになっていたような気がする。 本当に、なんて慈悲のかけらすらない中学生の私だろう。 それでは、いつ頃から変わってきたのだろうか。 思い起こせるのが高校2年くらいの頃だったと思う。 漫画「ブラックジャック」を読んでいたときのこと。「ブラックジャック先生すごいな~、神だな~」とブラックジャックの凄腕に讃嘆して憧れさえ抱いて読んでいた私はある場面で衝撃を受けることになる。 それは、ブラックジャック先生が山奥で一人きり具合が悪くなったときのこと。あまりの痛みに動けなくなり人一人いない山奥で下山も叶わす誰にも助けを求めることの出来ないブラックジャック先生は、なにせ凄腕なのでなんと自分で自分を手術するという荒業にでるのだ。 そこでブラックジャック先生はまず具合悪さの原因を突き止めなければならないと、自分の下痢した汚物を持っていた顕微鏡で観察し病原菌を突き止めようとする。 「ブラックジャック先生―!!いやー!!」 ブラックジャック先生にほのかな恋心さえ抱いていた私はその場面を目にして非常に大きな衝撃を受け、叫び声をあげそうになったのは言うまでもない。 「あ、あのニヒルなブラックジャック先生が下痢?」 「血も涙もない守銭奴めいていて、本当は弱者には優しいあのブラックジャック先生が下痢?そしてそれを顕微鏡で?」 わなわなと震え、信じられないものを見た思いで当時の私は一旦本を閉じた。 中学までの私だったらそこでブラックジャック先生に幻滅を覚え嫌いになっていたに違いない。しかし、中学だけでなく、恐らく中二病も卒業して高校生になった私は、「いやいや待てよ。ブラックジャック先生は具合が悪く、しかも苦しんでいて生死が関わる状況なんだぞ。下痢がどうのこうのいっている場合ではないのだ」と一人自分を戒めた。 心を落ち着かせてそう念じているうちに私は次第に 「ブラックジャック先生死なないで!」と下痢で苦しむブラックジャックに憐憫の情を覚えるまでになっていった。 多分その辺りからだと思う。心の中での動揺は隠せないまでも少しでも下痢で苦しむ好きな人に一応「大丈夫?」と気遣ってあげられる感情が芽生えてきたのは。 これが大人の階段登る瞬間?恋から愛に変わるとき? 私がわずかながらでも成長したとき? そんなことを思い出していたら、アラサ―にもなって昔とちっとも進歩していないと感じていた自分もきっと今でも少しずつ成長しているんだと思い、希望が湧いてきたのだった。 って下痢の話題でこんな終わり?! 山崎マキコ「ためらいもイエス」 仕事一筋のOL奈津美の弱点は恋愛だった。そんな主人公の成長物語。 家族への嫌悪から仕事以外に耳をふさいで生きてきたアラサ―の女性の成長を描いた物語です。成長物語といっても、登場人物や語りがコメディタッチなので重苦しくなく、さくさくと楽しんで読めます。 主人公は彼氏いない歴が年齢という恐ろしく仕事一筋の性格で仕事はバリバリ出来るのに、恋愛となると全く駄目というギャップが読んでいてとても面白かったし、そんな不器用な主人公にとても好感が持てました。 この主人公の何が凄いと言えば、仕事に対する姿勢でしょうか。 会社を「俺の城」と呼び、休日出勤や泊まり込みも厭わない、休みの日にもスキルアップの為、自宅で猛勉強をする。まあ、それだけ仕事に打ち込んでしまわなければならない理由もあったわけなのですが。 でもこの作品を読んだ後、自分が働いていた頃を思い出し、なんだか無性に情けなくなりました。私はこの作品の主人公のようにバリバリ仕事をするタイプではなかったのですが、もう少しこの主人公のような意識を仕事に持てなかったのかと。 あの頃にこの作品を読んでいたならもう少し仕事に対する意識が変わっていたかもしれないと感じました。 ただ、この作品、成長物語としてみればとても良い作品なのですが、ラブストーリーとして見るとちょっと疑問が残ってしまいます。 それというのも、ギンポ君の存在です。ギンポ君が決して嫌いなわけではなく、寧ろ好きです。だって、あのギンポ君って女の子なら誰しも求めている存在ではないでしょうか。デートでは行きたいところ食べたいものをほとんど叶えてくれて、卒なくスマートにエスコートしてくれる。不意に会いたくなったら逢え、電話をかければいつでも出てくれる。そして、自分の駄目なところ情けないところも幻滅しないで話を聞いてくれ、落ち込んだ時には慰めて、時には叱って励ましてくれる。そんな自分を全て受け止めてくれる男の人。もう最高じゃないですか。 欲しいよ。彼に常に側にいて欲しいよ。 もしギンポ君がスタンドだったらスタープラチナよりもギンポ君欲しいよ。 しかし、しかし、だからこそ現実として考えてしまうとこんな素晴らしい存在の人は決しているわけないと感じてしまうのです。ギンポ君、まるでファンタジー的存在です。 この作品の仕事やそれを取り巻く環境など現実としてみても、とても共感出来る部分も多かっただけに、彼のファンタジーさが返って成長物語の足を引っ張ってしまったような印象を受けてしまいました。 ファンタジーがあったって、フィクションだから良いじゃんと思う人もいるかもしれませんが、ファンタジーのなかにリアルがあるのは真実味を感じれるのに、この作品のようにリアルの中にファンタジーがあるとそれまで築いてきた真実味が薄れてしまうような気がしてしまうのです。 ネタばれ防止です↓ まあ、これは好みの問題だとは思うのですが、他が素晴らしかっただけに恋の結末をファンタジーで締めくくってしまったのは残念だった気がします。恋の結末にもリアルさが欲しかった。 たかがリアル、されどリアルです。 なのでラブストーリーよりも成長物語として読むことをおすすめします。とても素敵な主人公の成長物語です。主人公の働きっぷりを是非味わって下さい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.12.05 23:52:23
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